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バドミントン コラム 2022年8月30日

バドミントン日本代表、世界選手権で見えた「パリへの道の現在地」

バド×レポ by 平野 貴也
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2022 バドミントン 世界選手権 女子 シングルス 決勝 山口茜

東京体育館で行われていたバドミントン世界選手権は28日に最終日を迎え、女子シングルスでは山口茜(再春館製薬所)が同種目で日本勢初となる連覇を果たした。また、混合ダブルスの渡辺勇大/東野有紗(BIPROGY)が2大会連続の銀メダルを獲得。女子ダブルスの松本麻佑/永原和可那(北都銀行)は、前回に続く銅メダル。連覇を果たした18、19年から続く4大会連続のメダル獲得となった。海外勢では、各種目で新世代が台頭。24年パリ五輪に向けて新たな有力候補が出てきており、今後の展望が見えてきた。

■重圧の中で山口が実力発揮、混戦の女子単けん引役へ

日本唯一の金メダルは、大混戦の女子シングルスで生まれた。山口が自国開催のプレッシャーに負けず、前向きな姿勢を貫いて優勝。6000人を超す観衆から祝福の拍手を受けた。準々決勝で元女王キャロリーナ・マリン(スペイン)、準決勝では台頭著しい前回準優勝のアン・セヨン(韓国)、そして決勝では東京五輪女王の陳雨菲(チェン・ユーフェイ=中国)を撃破する、文句なしの勝ち上がりだった。決勝は、空調の影響でコントロールが難しいコートで粘り強くラリーを展開し、意表を突いたクロスショットを披露。東京五輪では重圧で力を発揮し切れなかったが「集中してプレーできた中で、相手が待っていないところを見つけられた部分があった。もっと見えて打てるようになると、より楽しくなるのかなという発見はあった」とコートの特性や相手の判断を冷静に見切る戦いぶり。経験を積んで、安定感が増した印象だ。この種目は、比較的順当な勝ち上がりが多く、パリ五輪まで混戦が続く気配だが、その中で金メダルを取った山口は、種目をけん引する一人となる。

■混合複は中国1強を追いかける展開

渡辺/東野が銀メダルを獲得した混合ダブルスは、優勝した鄭思維/黄雅瓊(ツェン・シーウェイ/ファン・ヤーチョン=中国)が圧倒的な実力を見せつけた。東京五輪では同国対決で敗れて銀。一度ペアを解消したが復活し、日本代表を率いる朴柱奉ヘッドコーチが「以前よりも強くなっている」と話した通り、他を寄せ付けなかった。渡辺は「ここまでボコボコにされたので、これ以下はないと思って、思い切ってやりたい」と現在の実力差を認めて再挑戦を誓い、東野は「レシーブや前衛からの球が決まらず、攻撃につなげることできなかったのが敗因」と悔し涙を浮かべながら試合を振り返った。今大会ではマーク・ラムスフス/イザベル・ロハウ(ドイツ)が前回優勝のデチャポル・プアバランクロー/サプシリー・タエラッタナチャイ(タイ)を撃破し、この種目では同国初となる銅メダルを獲得。日本、タイ、そして3位の王懿律/黄東萍(ワン・イーリュ/ファン・ドンピン=中国)が最強ペアを追う構図だが、その後ろから他国が少しずつ差を詰めてきている。渡辺/東野は、3大会連続のメダル獲得。21年東京五輪の銅も含め、19年以降は安定してメダルを獲得している。今後は、ライバルに差をつけるため、パリ五輪までに最強中国ペアとの差を詰めるため、さらなるレベルアップを目指す。

■女子複、松本/永原が4大会連続メダルも中国強し

女子ダブルスも、中国が強さを見せつける結果となった。優勝は、陳清晨/賈一凡(チェン・チンチェン/ジア・イーファン=中国)。松本/永原は、準決勝でこのペアに完敗。得意の攻撃に持ち込んでも形勢逆転され、反対に攻撃を仕掛けられると劣勢をしのげなかった。松本は「王者だなと感じた」と差を痛感。攻守両面で強さを見せつけられた悔しさを噛み締めた。4大会連続のメダル獲得で健在ぶりを示した一方、完成度を高める中国ペアには差をつけられた印象だ。この種目では、志田千陽/松山奈未(再春館製薬所)が日本の次期エースとして期待を受けているが、準々決勝で金昭英/孔熙容(キム・ソヨン/コン・ヒヨン=韓国)にストレートで完敗。出だしからリズムをつかめず、押し切られた。メダルに一歩届かず、志田は「すごく悔しい。まだまだだということを痛感しています」と話し、涙をこらえた。福島由紀/廣田彩花(丸杉)は、福島が左足を痛めて棄権。日本は選手層の厚い種目で、3組が24年パリ五輪の挑戦権を争っていく形になりそうだが、切磋琢磨する中で中国に並びかけられるか注目される。

■最も勢力図が変わりそうな男子複

男子ダブルスは、保木卓朗/小林優吾(トナミ運輸)が連覇を狙ったが、8強止まり。ともに186センチの長身を誇るサトウィックサイラジ・ランキレッディ/チラーグ・シェティ(インド)に1-2で惜敗。保木は「いつもなら抜けるところが抜けず、相手が触ってミスになった場面でも、それがプレッシャーになった」と悔しがった。優勝は、東京五輪で銅のアーロン・チア/ソー・ウィック(マレーシア)で、同国に初めて世界選手権の金メダルをもたらした。インドネシア勢が目立つ種目だが、東京五輪は台湾ペアが金。マレーシア、インドを含め、新たなペアが台頭。最も勢力図が変わりそうな種目となっている。

■男子単はアクセルセンが盤石の強さ

男子シングルスは、第1シードのビクター・アクセルセン(デンマーク)が盤石の強さを見せつけて2度目の優勝を飾った。準優勝は、21歳のクンラブット・ヴィチットサーン(タイ)。新星が24年パリ五輪のメダル候補に名乗りを挙げた。日本勢では、第3シードのアンダース・アントンセン(デンマーク)を破った西本拳太(ジェイテクト)の16強入りが最高。第2シードの桃田賢斗(NTT東日本)は、2回戦でH.S.プラノイ(インド)にストレート負け。21歳の奈良岡功大(IMG)も2回戦で同年代のクンラブットに敗れた。

前回の金2、銀1、銅2から獲得数は落ちたが、2024年パリ五輪に向けた日本の現在地が明確になった大会だった。日本のメダリストは、いずれも東京五輪出場選手。20代中盤から後半で充実期を迎える、まだ成長が見込める世代で、パリ五輪もメダル候補を送り出せそうだ。ただし、男子種目は上位候補が少なく底上げが必要だ。また、福島/廣田だけでなく、女子シングルスの奥原希望(太陽ホールディングス)も負傷で欠場。桃田は不調から抜け出せず苦しんでおり、来年に出場権獲得レースが始まる24年パリ五輪を見据えると、全体の年齢が上がる中でコンディション調整の難しさが出てきているのは、不安材料。どのように若手を鍛え、ベテランを調整するか。かじ取りが大事になりそうだ。

文:平野 貴也
平野貴也

平野 貴也

1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。

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