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バドミントン コラム 2025年2月25日

日本代表が見せた、エースの存在感|S/Jリーグ 2024 TOP4トーナメント決勝 レビュー

バド×レポ by 平野 貴也
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保木が鬼の形相、圧倒的な存在感

保木が鬼の形相、圧倒的な存在感

バドミントン国内リーグの最高峰S/Jリーグは、2月22日に男女の決勝戦を行い、男子はトナミ運輸が2年ぶり12回目、女子は再春館製薬所が2年ぶり4回目の優勝を飾った。

時代が移り変わる中、強豪チームが意地を示す形となった。古くから、日本の主力選手は実業団チームで活躍するのが主だったが、近年はチームに属さずにプロ活動を行う選手や、社員ではなくプロ契約を交わす選手が増加。リーグに出場しないトップ選手が増えている。また、2024年パリ五輪を終えて引退を決断する主力選手も多く、世代交代の時期でもある。各チームの戦力が拮抗した2024-25シーズンだった。その中で、チームを優勝に導いたのは、男女ともに日本代表選手の働きが大きかった。

保木が鬼の形相、圧倒的な存在感

男子のトナミ運輸は、負傷者が多かったが、主将の保木卓朗が気を吐いた。パリ五輪に出場した小林優吾との「ホキコバ」ペアで出場したのは、開幕から2試合だけ。24年11月の中国マスターズで左ひざを負傷した小林は、4月復帰を目指している状況で回復途上だ。23年に日本B代表に選出されていた西田陽耶も負傷で戦線離脱し、苦しい台所事情での戦いを強いられた。しかし、保木は、西田のパートナーである目崎駿太郎とのペアでも勝利を続けた。本来のペアではどちらも前衛だが、保木がネット前で相手の攻撃を次々と寸断し、積極的な前進で相手に圧力をかけてシャトルを沈め、目崎が上から強打をたたき込む形を作り出した。S/Jリーグは、2複1単。第1ダブルス、シングルス、第2ダブルスの順に試合を行う。保木は、出場した6試合のうち5試合で第1ダブルスに出場。ただ勝つだけでなく、チームを勢いに乗せる役割も果たし、圧倒的な存在感を示した。

TOP4トーナメントでは、圧倒的なエースとなる「ホキコバ」不在のために前評判は芳しくなく、保木も「TOP4を勝てる確率は10~20%くらいと思っていた」と話していたが、保木がコートで漂わせる迫力は、別格。タン・キムハー前日本代表男子ダブルスコーチの「コートに入ったら、相手を潰しに行く目でやれ」という教えを実践する、鬼のような険しい表情を見せた。日立情報通信エンジニアリングとの準決勝、BIPROGYとの決勝ともに、保木のプレーには相手監督も脱帽。ペアを組んだ目崎は「練習とは違う姿にビックリした。保木さんが(迫力を持って)前に行くので、相手は避けようと大きく返してアウトになることが多かった。気合いが相手に伝わっていたのかなと思う」と影響を肌身に感じていた。

昨季で連覇途絶えたトナミ運輸、新たな連覇への挑戦始まる

決勝戦は、シングルスの秦野陸が勝って1-1でつないだ第2ダブルスで出場。相手の若手ペアを圧倒し、歓喜の瞬間を作り出した。保木は「S/Jは、自分の中で特別な大会。こういう(周りの期待があり、プレッシャーがかかる)大会で成長できたと思う。それを若手に重要性を知ってもらうことは大事。前回の6連覇挑戦は、過去のOBが築いてきたところでの挑戦。今度は、自分たちで連覇に挑戦し始められる。連覇の重みをしっかり感じてやってもらいたい」と話した。トナミ運輸は、日本リーグがS/Jリーグに改称した2016年から5連覇(20年、21年は大会中止)していたが、昨季でストップ。自身が見せた姿が、今後の主力を担っていく次世代の常勝軍団復活へとつながることを期待した。

松山のスピードが相手に与える脅威

松山のスピードが相手に与える脅威

女子優勝の再春館製薬所、エースの「シダマツ」は相手が勝負を避ける強さ

女子の再春館製薬所では、パリ五輪銅メダルの志田千陽/松山奈未が、チームを優勝へ導いた。シングルスの大エースである元世界女王の山口茜は、12月の全日本総合選手権で負傷して離脱中。TOP4トーナメントでは、22歳の郡司莉子が山口不在の穴を埋める活躍を見せて、準決勝、決勝ともにチームは2-0で勝利を収めた。郡司の活躍が素晴らしかったことは、間違いない。ただ、伏線として、志田/松山が第1ダブルスを必ず勝つ状況が、相手のシングルスプレーヤーに後がない状況を作り出しており、大きな援護射撃となっていた。準決勝の岐阜Bluvic戦、決勝のヨネックス戦は、相手が志田/松山との真っ向勝負を避け、エースペアを第2ダブルスに起用。第1ダブルスを取られる可能性が大きいことを考慮し、シングルスと第2ダブルスでの逆転勝利を狙う意図が見えた。そのため、郡司は「1-0で(出番が)回って来るのと、0-1では、全然違う。オーダーを見ても(相手が)シングルスを取れそうだというオーダーで来られている。その時点で自分のインパクトが茜さんに比べたら足りていない」と自身がより大きな存在になる必要性に触れるとともに、戦う前から相手に脅威を与えている「シダマツ」ペアの存在感の大きさを感じ取っていた。

相手も志田も驚く、松山のスピードが相手に与える脅威

志田/松山は、24年12月上旬までに、ペアでブロック戦3勝。1月は、松山が休養に入り、志田は松友美佐紀(BIPROGY)とのペアで国際大会に出場。復帰した松山は、25年2月上旬に廣上瑠依とのペアでS/Jリーグ2試合に出場。2人が1カ月半ぶりに組んだのがTOP4トーナメントだったが、圧巻の強さだった。準決勝で対峙した岐阜Bluvicの清瀬璃子/原菜々子は、ともに社会人1年目。原は「相手の緩急に惑わされた。もっと早く合わせられれば、ラリーもつながったのかなと思うけど、相手は縦(並びの攻撃態勢)になるのが、速い」と主導権を奪われ続けた苦しさを吐露。清瀬は、シダマツペアとの初対戦を楽しみにしていたが「スピード感が全然違う。前に詰めるスピードがすごくて、打つ瞬間、打とうとしたときには、もう前に張っている。それが怖くて無駄なミスが増えた」と、相手の高速ローテーションに脅威を感じていたことを明かした。

そのスピードの要因となっていたのは、前衛の松山の動きと、それに対する志田の信用感だ。志田は「これは、シダマツにしかできない決めパターンだと感じることが何回もあった。自分がサイドやラウンドで飛びついたとき、逆(サイド)に(球が)来ても、もう松山が立って決めに行っている。もう、いる!というのが、やっぱり松山にしかできない、シダマツにしかできないプレー」と世界屈指の機動力を誇る相棒に対する信頼感を示した。松山は、ブロックリーグのヨネックス戦は、廣上とのペアで保原彩夏/関野里真に敗戦。雪辱の機会となったヨネックスとの再戦を制し「今度は、シダマツで行けるというところは、自信を持って行けた」正規ペアでの連係にプライドをのぞかせた。

日本が世界に誇る「シダマツ」ペアは、相手がエース対決を避けるほどの存在感、コート上のプレーの両面で格別の力を見せつけて優勝に貢献した。郡司の活躍もあり、再春館製薬所は「エースペアの強さと、山口不在でも勝ち切れる新世代の台頭」という2つの大きな手ごたえを得たリーグ戦となり、タイトル奪還以上の収穫があるシーズンとなった。次のシーズンに向け、各チームや選手がどのような動きを見せるのか。見ごたえある激戦は、次なる戦いのスタートとなる。

文:平野貴也

平野貴也

平野 貴也

1979年生まれ。東京都出身。
スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集・記者を経て、2009年に独立。サッカーをメーンに各競技を取材している。取材現場でよく雨が降ることは内緒。

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