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DMでは川村と堀島が総合トップに。次戦ではイエロービブを着用して滑る
12月中旬のフランス・アルプ・デュエズ大会が終了し、'23シーズンのモーグルW杯序盤戦の欧州ラウンドが幕を閉じた。
ミラノ・コルティナ五輪でのデュアルモーグル(DM)の正式種目化が決まったことで、モーグル(MO)とDMの大会数が同じとなり、その2つが独立した対等の種目となったことが今季の最大のトピックである。序盤戦を終えた時点で、それぞれの上位陣の顔ぶれは異なり、今後は2種目がまったくの別物として先鋭化されていく可能性さえ感じさせている。
そこで、今回はMOとDMをセパレートさせて序盤戦を振り返っておきたい。
【MO女子序盤戦】3連勝のアンソニーをラフォンと川村が追走
■開幕戦・ルカ大会RESULT
1ジャカラ・アンソニー(AUS)
2ペリーヌ・ラフォン(FRA)
3川村あんり(JPN)
■第2戦・イドレ大会RESULT
1ジャカラ・アンソニー(AUS)
2川村あんり(JPN)
3ペリーヌ・ラフォン(FRA)
■第3戦・アルプ・デュエズ大会RESULT
1ジャカラ・アンソニー(AUS)
2ペリーヌ・ラフォン(FRA)
3エリザベス・レムリー(USA)
北欧での開幕戦、第2戦とも、ペリーヌ・ラフォン(FRA)、川村あんり(JPN)、ジャカラ・アンソニー(AUS)の3強が表彰台を分け合った。しかし、これまでは中央に立つことが圧倒的に多かったラフォンが、その定位置をものにできず。2大会連続してエア点で15点台後半、ターン点で48点台と他を大きく引き離したアンソニーが優勝した。
均衡が崩れたのはフランスでの第3戦である。ここで川村がまさかの予選落ち(23位)。6戦しかないなかで、これは痛かった。かわって表彰台に上がったのは、16歳のエリザベス・レムリー(USA)だ。北京五輪に出場していないアップカマーがMO初の表彰台をゲット。詳細は後述するが、レムリーはDMでも結果を出しており、今後はMO、DMとも要マークの選手となるだろう。
第3戦で悔しい思いをした川村だが、2戦でアンソニーを上回るタイム点を記録するなど、残る3戦で逆転優勝の可能性を期待させる内容をみせている。DMでの好成績も嬉しい材料である。
アンソニーの力強いパフォーマンスはジャッジに高く評価される
■女子MO総合TOP5(第3戦終了時点)
1ジャカラ・アンソニー(AUS)300
2ペリーヌ・ラフォン(FRA)220
3川村あんり(JPN)148
4エリザベス・レムリー(USA)141
5ジェイリン・カーフ(USA)121
【MO男子序盤戦】3強バトルから金メダリストが離脱。新鋭ペイジが初優勝
■開幕戦・ルカ大会RESULT
1ミカエル・キングズベリー(CAN)
2堀島行真(JPN)
3マット・グラハム(AUS)
■第2戦・イドレ大会RESULT
1ニック・ペイジ(USA)
2ミカエル・キングズベリー(CAN)
3ウォルター・ウォルバーグ(SWE)
■第3戦・アルプ・デュエズ大会RESULT
1堀島行真(JPN)
2ミカエル・キングズベリー(CAN)
3コール・マクドナルド(USA)
女子同様、3強による総合優勝争いが予想されたMO男子だが、その図式が開幕戦でいきなり崩れた。北京五輪金メダリストのウォルター・ウォルバーグ(SWE)が負傷欠場したのである。ミカエル・キングズベリー(CAN)、堀島行真(JPN)とともに表彰台に立ったのは、昨季は負傷で存在感が薄かったマット・グラハム(AUS)である。そのウォルバーグは地元・イドレ大会でカムバックし3位となったが、第3戦ではスーパーファイナルに進むも6位。総合優勝争いからは大きく後退した。キングズベリーは3大会連続で表彰台に上がった唯一の選手だが、優勝は開幕戦のみ。第2戦では注目の新鋭・ニック・ペイジ(USA)が初優勝を果たした。ペイジは1440をマスターする高いエア能力が注目されていた選手だが、“いよいよブレイク”といったところだろう。
その第2戦でスーパーファイナル進出も表彰台を逃した堀島は、第3戦では今季初優勝。抜群のスキー操作技術はますます研ぎ澄まされ、キングズベリーに続く総合2位の座にしっかりと食らいついている。キングズベリーは独走状態ではなく、中盤戦以降の巻き返しを狙うウォルバーグが台風の目になる可能性も高い。まだまだ先がよめない男子MOである。
ニック・ペイジ(中央)は'2010年バンクーバー五輪でブライオン・ウィルソンの銅メダル獲得を見てモーグルを始めた
■男子MO総合TOP5(第3戦終了時点)
1ミカエル・キングズベリー(CAN)260pt
2堀島行真(JPN)230 pt
3ニック・ペイジ(USA)195 pt
4コール・マクドナルド(USA)137 pt
5マット・グラハム(AUS)136 pt
【DM女子序盤戦】16歳のレムリーが初優勝。現状では川村が総合トップに君臨
■開幕戦・イドレ大会RESULT
1エリザベス・レムリー(USA)
2川村あんり(JPN)
3ペリーヌ・ラフォン(FRA)
■第2戦・アルプ・デュエズ大会RESULT
1川村あんり(JPN)
2ペリーヌ・ラフォン(FRA)
3ジャカラ・アンソニー(AUS)
あくまで第2戦が終わったのみの段階であるが、特筆すべきなのがMOではトップを独走中のアンソニーの戦績がイマイチであり、DMが苦手のイメージがあった川村が総合トップにいることだろう。川村はMOで予選落ちした翌日のDM(アルプ・デュエズ大会)で今季初優勝といい流れを作っている。
もうひとり要注目なのがDMの開幕戦優勝のエリザベス・レムリー(USA)だ。彼女はまだ16歳。川村のW杯初優勝の年齢(17歳)より若い。MOでも表彰台を経験しており、今後は川村を脅かす存在となってきそうだ。
日本のモーグルファンとしては、川村がこのまま駆け抜けることを期待したいところ。だが、MOとDMが対等のタイトルになったことで、中盤戦以降、これまでにはなかった展開もあり得る。総合優勝争いについては、次の北米ラウンド後に考えるのが賢明だろう。
■女子DM総合TOP5(第2戦終了時点)
1川村あんり(JPN)180 pt
2ペリーヌ・ラフォン(FRA)140 pt
3エリザベス・レムリー(USA)132 pt
4ジャカラ・アンソニー(AUS)110 pt
5アバタイル・キャロル(USA)95 pt
【DM男子序盤戦】キングズベリーが予選落ち!堀島が総合トップを走る
■開幕戦・イドレ大会RESULT
1ミカエル・キングズベリー(CAN)
2フィリップ・グラベンフォース(SWE)
3ニック・ペイジ(USA)
■第2戦・アルプ・デュエズ大会RESULT
1堀島行真(JPN)
2ベンジャミン・キャヴェ(FRA)
3ウォルター・ウォルバーグ(SWE)
開幕戦でフィリップ・グラベンフォース(SWE)という18歳の選手が2位となるサプライズもあり、DM男子は女子以上に予想外の展開が続いている。キングズベリーと堀島が各優勝1回という点は従来どおりのイメージだが、ともに他の1戦では表彰台を逃しているのだ。しかも、第2戦ではキングズベリーが過去にW杯10位以内に一度も入ったことがなかったウィリアム・フェネリー(GBR)という無名選手にラウンド32で敗退。'10シーズン以来の予選落ちとなった。この"まさか"の結果もあり、現段階では堀島がイエロービブを掴んでいる。ただ、MOでは苦しい状態のウォルバーグが、DMではVを狙ってくるのは確実で、キングズベリーもこのまま沈んでいくとは思えず、総合優勝争いを予想するには早すぎる。一戦の結果でランキングはまるごと入れ替わることもあり得るのである。
■男子DM総合TOP5(第2戦終了時点)
1堀島行真(JPN)129pt
2フィリップ・グラベンフォース(SWE)125 pt
3ウォルター・ウォルバーグ(SWE)105 pt
4ミカエル・キングズベリー(CAN)102 pt
5ベンジャミン・キャヴェ(FRA)80 pt
MOトップの2名。3連勝のアンソニー(右)は独走といってもいいが、キングズベリー(左)はいつものシーズンとは状況が異なる
さて、モーグルW杯はしばらくのブランクを挟んで、2023年1月27日のカナダ・ヴァルサンカム大会MOから再開となる。翌日のDMでは川村と堀島がイエロービブを着用して滑る。
文:STEEP
STEEP
スキー・スノーボードの本質を追いかけるWEBメディア。90年代からフリースタイルスキーを追う編集部による、モーグルW杯の見どころを紹介。サイトでは様々な情報を更新中。https://steep.jp/
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