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足りないものは世界選手権のタイトルだけ!三浦璃来&木原龍一組が史上初の快挙に挑戦 | ISU世界フィギュアスケート選手権2023 ペア プレビュー
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部三浦璃来&木原龍一組
フィギュアスケート世界選手権に、ペア種目が創設されて、今年で115年。2012年大会3位の高橋&トラン組が、日本に初のメダルをもたらし、1年前のモンペリエで三浦璃来&木原龍一組が、銀メダルに輝いた。しかし、いまだかつて、日本のペアが表彰台の最上段に上がったことはない。だが2023年の春、ついにさいたまスーパーアリーナで、栄光の金がもたらされるかもしれない!
「りくりゅう」こと三浦&木原組は、今シーズンここまで、「日本ペア史上初」の記録を積み上げてきた。グランプリ大会カナダ杯で、金メダルをもぎ取り、NHK杯で2大会連続優勝。トリノのGPファイナルでは日本にペア初優勝をもたらし、コロラド・スプリングスの四大陸選手権では、やはり日本人ペアとして史上初の、正真正銘ISUチャンピオンシップ戴冠を成し遂げた。
すなわち全戦全勝であり、今季世界最高得点(216.16点)の保持者であり、現世界ランキングは堂々1位!三浦&木原組に、いまや足りないものは、もはや世界選手権のタイトルだけとなった。
2人でカップルを結成して4シーズン目。まるで運命のように、日本で、世界選手権が開催される。地元ファンの歓声を、力に変えて、母国で史上初の快挙を成し遂げてほしい。
もちろんりくりゅうにとって最大の好敵手は、アレクサ・クニエリム・シメカ&ブランドン・フレイジャー組(アメリカ)。昨大会、祖国アメリカに43年ぶりのペアタイトルをもたらした2人は、おそらく鋼の精神力で、さいたまに乗り込んでくる。
GPFをとてつもない僅差……SPは0.43差、FSは0.87差……で逃した「シメフレ」は、国内選で圧勝した後、母国開催の四大陸選手権をスキップした。ヨーロッパでのアイスショーに参加するためではあったが、最大のライバルとの直接対決を避ける意図があったのかもしれない。
ここ数週間は、難しい時間も過ごしてきた。コーチのトッド・サンド氏が、世界ジュニア帯同中に心臓発作で倒れたのだ。クニエリム・シメカにとっては、夫クリスとのペア時代、前コーチと上手くいかず途方に暮れていた自分たちに温かく救いの手を差し伸べてくれた恩人に他ならない。だからこそ2シーズン前からフレイジャーと新カップルを結成した際も、迷わずサンド氏のもとに留まった。
幸いにも人工呼吸器は外れ、快方に向かっているとはいうものの、サンド氏はいまだカルガリーで入院中。シーズン最大の目標に向けた最終調整を、つまりシメカ&フレイジャー組は、メインコーチ抜きで行わねばならなかった。それでも連日SNSでサンド氏へ励ましのメッセージを送り、外国での治療生活を支えるためクラウドファウンディングの呼びかけを繰り返し行うシメフレ組は、遠いカナダで闘病を続けるコーチのためにも、日本の氷上では、持てる全ての力を尽くすに違いない。
それぞれの想いを背負った金メダル争いの背後では、表彰台の残り1席を巡って、熾烈な戦いが期待される。銅メダル候補に上げられるのは四大陸で表彰台に登ったエミリー・チャン&スペンサー・ハウ組(アメリカ)とディアナ・ステラート&マキシク・デシャン組(カナダ)、さらには欧州チャンピオンのサラ・コンティ&ニッコロ・マッチ組(イタリア)だろうか。
今季カップルとして初めてのGPシリーズ参戦ながら、2度ともに表彰台に上りった「エミスペ」組は、ファイナル進出さえも果たした。四大陸FSでは素晴らしく切れのあるパフォーマンスで、パーソナルベストを13点半以上も更新。心の底から「自分たちらしい滑りが出来た」と銀メダルの喜びを語り、待望の初世界選へ上り調子で挑む。
ちなみにハウの正式名はスペンサー・アキラ・ハウで、母親は日本人。「日本語はほとんど話せません」とは本人は謙遜するものの、2016-17シーズンだけ古河亜美と共に日本ペアとして活動をしていたこともある。いわゆる「ホーム」での世界選手なのだ。
コロラド・スプリングスで、ステラートにとって23年ぶりのISUチャンピオンシップメダル(2000年のジュニア世界選手権女子シングル2位以来!)をもぎ取ったカナダ組にとっても、やはり2人で挑む初めての世界選手権。「今シーズンはあらゆる選手にメダル獲得のチャンスがある」と、39歳の大ベテランは力強く繰り返す。
世界選ペアの女子で、史上最年長のメダリストは、おそらく1923年大会優勝のフィンランドペア女性38歳(翌五輪で銀メダル獲得)。ステラートにはつまり、記録更新のチャンスが十分にある!
サラ・コンティ&ニッコロ・マッチ(イタリア)も、欧州チャンピオンとしての誇りと、GPFで三浦&木原組、クニエリム&フレイジャー組に続く3位表彰台に上がった実力を、大いに見せつけたいところ。
なにより祖国イタリアに、ふさわしい「枠」を持ち帰らねばならない。共にGPFに進出し、欧州選では金銀を分け合ったギラルディ&アンブロジーニ組は、世界ランキング3位だというのに……今大会への出場は叶わなかった。なぜなら1年前の大会直前に2組揃ってコロナ陽性となったせいで、イタリアンペア全欠場を余儀なくされ、結果として今大会は「1枠」しか与えられなかったのだ。
実力的に拮抗する3組の順列は、世界ランキングではイタリア>アメリカ>カナダ。一方でパーソナルベストではアメリカ>カナダ>イタリアで、約6点差内に3カップルはひしめいている。
欧州選でイタリア2組と渡り合ったドイツ2組、アニカ・ホッケ&ロバート・クンケル組やアリサ・エフィモワ&ルーベン・ブロマールト組も、上位入りが期待できる。
終わったばかりのジュニア世界選手権で表彰台に上がった銀アナスタシア・ゴルベワ&ヘクトル・ギョトポウロス・ムーア組(オーストラリア)や銅ヴィオレッタ・シエロワ&イヴァン・コブタ組(ウクライナ)も、シニアの世界一決定戦にも参戦。伸び盛りの若者たちだけに、昨ジュニア世界チャンピオン&シニア世界4位のカリーナ・サフィーナ&ルーカ・ベルラワ組(ジョージア)の例に倣って、センセーショナルな結果を残す可能性あり。
また結成1年目にして世界選出場権をつかみ取った「大ベテラン男性&ペア初心者女性」の2組、エリー・カム&ダニー・オシェア組(アメリカ)とリア・ペレイラ&トレント・ミショー(カナダ)の、さらなる進化にも注目したい。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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