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フィギュア スケート コラム 2025年2月17日

第45回全国中学校スケート大会 フィギュアスケート競技 女子シングルレビュー

フィギュアスケートレポート by 中村康一(Image Works)
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第45回全国中学校スケート大会フィギュアスケート競技が、2月1日-4日の日程で長野県長野市、ビッグハットにて開催された。今年の女子では、ジュニアグランプリ、世界ジュニア選手権等の国際大会で活躍する有力選手が複数出場し、例年にも増してレベルの高い戦いが繰り広げられた。

優勝 和田薫子

和田 薫子

優勝したのは和田薫子。昨年は優勝候補と目されながら満足のいく演技をすることができなかった。3年生、最終学年にして悲願の全中制覇だ。今回のメンバーで唯一の世界ジュニア選手権代表。負けられない立場だったとはいえ、ショート、フリー共に大きなミスなく演技を揃えられたことは素晴らしい一言だ。今回は国民スポーツ大会(国スポ)からの短期間での連戦。国スポではフリーでミスが出て満足な演技ができなかったが、長野入りしてからの調整で調子を取り戻したようだ。公式練習では素晴らしい動きを見せていたが、本人は内心、不安を抱えていたようだ。それでもショートプログラムは65.75。素晴らしいスコアだ。
「国スポのときは3+3のところを特に慎重になっていたので、今回は慎重にならずに行こうって思ってやりました」
この1年間で大きな成長を遂げることができた。
「今季はジュニアグランプリに派遣していただけて、そこでいろんなことを学べましたし、まず1戦目のチェコのときに、納得のいく演技っていうのができて、自分的には良い点数も出せたので、そこからだんだん自信がついてきて、全日本まで駆け上ってこれました」
ただ全日本選手権までの厳しい戦いの後、少し気が抜けて油断をしてしまった、とのこと。それが国スポでの不振に表れてしまったようだ。そして迎えたフリー、大きなミスなく、貫禄の演技で優勝を決めることができた。
「最後の全中でショートとフリー、どちらも納得のいく演技で揃えることができて、優勝することができたのですごく嬉しいです。ところどころちょっと駄目かなって思うところはあったんですけど、ミスが出なかったことが一番良かったかなって思うのと、ちょっと駄目な部分があっても何とかまとめることができて、点数も納得のいくものだったので、そこは良かったかなって思います。ここで気を抜いてしまうと、世界ジュニアも同じミスをしてしまうかなって思うので、気を抜かずにしっかりまた集中し直して世界ジュニアに万全な状態で挑めるようにしたいなって思います」

今季の和田選手は驚くほど、長足の進歩を遂げている。今季がジュニアグランプリ初出場だったとは信じられない。シーズン初めには国際的には無名の存在だった彼女が、ジュニアグランプリファイナルで2位、そして世界ジュニア選手権出場だ。
「自分でもジュニアグランプリでそこまでの結果が得られるとは思ってませんでしたし、チェコのとき(初出場にして優勝)は本当にびっくりだったんですけど、そこから自信もついてきて、いろんな試合でいい演技をすることができました」
以前からスケーティングの上手な選手だったのだが、今季はPCSのスコアも大きく上がった。ようやく評価されるようになった印象だ。普段からジャンプよりもスケーティングの練習をしている時間が長いのだという。納得の滑りだ。
「やっぱり最後の全中だったのでいい演技で納得のいくものにして終わりたいっていう気持ちはすごくありました。不安もあったんですけど、まとめる方ができたので良かったです。
ただここでできたからって安心せずに、もっとジャンプの精度を上げたり、また安定感をもっと出して、世界ジュニアは思いっきりできるようにしたいです」
今回で最後となる、全中での思い出についても聞かせてもらった。
「中1でこの大会出たときは初めてで分からないことも多かったんですけど、なんか伸び伸び滑れていました。去年はショートとフリー、どちらもちょっとずつ悔しい部分があって、悔しい思いで帰る羽目になりました。でも今年はショートもフリーも自分の納得のいくものができたので、最後いい思い出で終われて良かったです」
来る世界ジュニア選手権、初出場の大舞台だ。全中での演技を再現できれば間違いなく上位に入れるはず。更なる活躍を期待したい。

2位 上薗恋奈

上薗 恋奈

2位入賞は上薗恋奈。昨シーズン、彗星のごとく現れたホープだ。今季はジャンプの不調が続いていたが、この全中では復活を期待させる演技を披露してくれた。ショートプログラムでは3ルッツ+3トウを、加点の付く出来栄えで成功。フリップを転倒したにもかかわらず、61.49というスコアで好スタートを切った。
「スコアには自分でもびっくりしたんですけど、転倒があっても点数を伸ばせるっていうところを目標にしていきたいなと思うので、今日は良かったのかなと思います。PCSをもっと出していきたいので、スケーティングの細かい部分、フリーレッグの位置を意識して練習してきました」
身長が伸びた現在の体格に合わせたジャンプの感覚を模索していた今季、それがようやくフィットしてきたように感じる。練習でのジャンプの確率は現在もそれほど高くないのだが、実は好調だった昨シーズンも、練習でいつもパーフェクトに降りていたわけではない。試合本番で合わせる能力に長けた選手との印象だ。
迎えたフリー、後半のフリップジャンプで転倒するなどミスはあったが、今季の上薗選手の演技としてはかなり良い出来栄えだった。本人も演技後に笑顔を見せるなど、納得の様子だった。
「今回の試合は、一番自分が表現したいことが表現でき、そして何よりもすごく楽しんでできたので、そこが良かったと思います。ミスがあっても最後まで笑顔で滑り切れたことがすごく自分にとってもいい試合になったのかなと思います」
今後に向けて、光明を見出すきっかけの大会になったようだ。
「フリーは少し暗めの曲なんですけど、自分でのテーマは、“希望から希望”というテーマになっているので、暗い曲だけど笑顔で演技できるように、そして皆様にも笑顔になってもらえるようにと思います。最初は、“鐘”の部分は戦うイメージで、そこから希望へと向かっていくっていうイメージだったんですけど、先生と話し合って『14歳なので、戦うっていうよりも明るく滑って欲しい』って言われたので、“希望から希望”というテーマに変わりました」

今季のフリー、前半は浅田真央さんがかつて滑った、タラソワ氏の振付のラフマニノフ作曲、“鐘”をモチーフにしている。演技中、自分で頬を叩く振付がある。これはタラソワ氏の振付へのオマージュ的なものだが、この部分の表現について聞いてみた。
「浅田真央さんの演技も観ましたけど、やっぱり最初は弱さが目立っていたので、浅田真央さんの演技を見て少し強さを出しました」
最初はそんなに強く叩いていなかったのだそうだ。ただそれだと浅田真央さんの演技のような強い印象が出せない、ということで叩き方を工夫していたとのことだ。
この後は2月後半の愛知県大会、そして3月の中日カップにも出場するという。試合数を重ねる調整が合っている、との発言もしていたので、少しでも実戦を積み重ねようとしているのだろう。トリプルアクセルへの意欲も聞かせてくれた。現在はまだ試合で投入する段階ではないようだが、調子は確実に上向いている様子。来季は完全復活した姿を見せてほしいものだ。

3位 岡万佑子

岡万 佑子

岡万佑子もまた、今季大きな飛躍を遂げた選手だ。まだ国際大会での活躍は見られないものの、そのスケートの上手さは既に高い評価を受けている。今回も、ジャンプでのミスがありながらも3位と表彰台に乗ることができた。
「ショートプログラムは、全てのジャンプがステップアウトだったり危ないジャンプ、詰まったジャンプになってしまったところが悔しいとしか言えないです」
と本人が語った通り、ショートプログラムはジャンプで得点を伸ばせず、8位スタート。それでも57.41というのはかなり良い評価だった。
「あまり緊張はしてなかったかなって思うんですけど、練習のジャンプは良かったし、それを大会で出し切れなかったことはすごい悔しいです」
そして迎えたフリー、挑戦を公言していたトリプルアクセルは失敗。ダウングレードの上に転倒してしまった。ただそれ以外の要素は着実に点を稼ぎ、フリー2位、総合3位と表彰台に乗ることができた。
「今日は朝の公式練習のときにトリプルアクセルがうまく入らなかったんです。6分間練習のときは朝よりも少し良いアクセルが跳べてたので降りたいっていう思いがありました。でもやっぱりアクセルを失敗したとしても降りたとしても、他のジャンプをしっかり決めるっていうところは意識してたので、すぐ切り替えてできたかなって思います」
順位確定後にも再びコメントをお願いした。

「ショートでちょっとミスが出た分フリーで巻き返さないといけないなっていう思いがあったんですが、3位になれたことはすごいびっくりしてます。フリーを終えた時点でも反省点とかが見つかったので、この順位は予想してなかったです」
トリプルアクセルへの挑戦について、今後どういうプランなのかを聞いてみた。
「トリプルアクセルはもう多分ずっと入れて、挑戦っていうか、決めるっていう勢いで、頑張りたいなって思ってます」
安全策を取るのではなく、トリプルアクセルを含めた構成で完成度、安定感を目指すとのことだ。既にトリプルアクセル無しでも高い評価を得られている状況なので、来季の活躍が実に楽しみだ。
「ジュニアグランプリの選考会にまず呼んでもらって、そこで海外に派遣される選手になりたいです。2試合出れるように頑張りたいです」
今季の和田薫子のような活躍を、来季は岡万佑子が見せてくれるかもしれない。ジュニアグランプリ出場のみならず、名古屋で開催されるファイナルに名を連ねても全く驚かないだろう。

4位 金沢純禾

金沢 純禾

4位に入ったのは、今季、全日本ノービス3連覇を達成した金沢純禾。今回が全中初出場だ。ノービス年代ながら、ショートプログラムは61.14と素晴らしいスタートを切った。ショートを終えて3位。大健闘だ。
「全中はフリーに進めるのが18人と少ないし、ミスなく終えようと思っていました。トップの方にいられるのはいい経験です」
金沢選手は、技術点では高得点を安定してマークするものの、やはりPCSの部分では年上の選手達に敵わない部分があった。ただそこも最近、力を入れて対策をしているのを感じる。
「全日本ジュニアより演技面とかもしっかりバレエの先生に見てもらったりしてます。ジュニアでトップに立つためには頑張らないと、っていう気持ちで、スケーティング面もしっかり練習するようにしていきたいです」
もう一つ、今回印象が大きく変わった理由に髪型の変化があった。
「韓国ドラマの“イカゲーム2”を観てて、女優さん(ウォン・ジアン)がイケメンお姉さんみたいな感じで、もう本当にかっこよくて、それがこんな感じの髪型で、その写真を美容師さんに見せて、これにして下さいってやってもらいました」
かつては札幌でスケートを習っていたが、現在は京都、宇治の木下アカデミーで練習をしている。家族の支えがあってのことだという。彼女の父は、北海道で仕事をしつつ毎週のように京都に通っているのだという。
「月曜日とかに北海道に帰って週末に京都に来るみたいなことを毎週続けてます。本当にもう家族には、人生かけてきてもらってる感じです」

金沢選手のスケートのために、家族全員が協力してくれていると感謝をしきりに口にしていた。
フリーでは素晴らしい演技だったものの、惜しくも表彰台を逃す結果となった。
「もう終わった瞬間に、やっちゃった、みたいな、もう本当に声出るぐらい、やっちまったと思って。本当にノーミスできそうだったので悔しいです」
最後のルッツジャンプで転倒。これを降りていれば3位になっていた可能性は高い。ただその前の、フリップからの3連続ジャンプでも流れがなく、スタミナ切れを感じさせる動きになっていた。
「試合本番ってアドレナリンが出てるせいか、なんか疲れにくいんです。けど、コレオシークエンスぐらいのときに、なんかいつもの本番より疲れてるなって感じがありました」
氷の影響か、あるいは全国大会特有の緊張からか、普段よりも疲労を感じながらの演技だったようで、それが最後の最後にミスとして表れてしまった、ということのようだ。初めての全中、どんな大会だったのだろうか?
「今回は、ショート3位だからとかじゃなく最初から表彰台を狙ってたんで悔しいですけど、全日本ジュニアが終わってからちょっとモチベーションが落ちてたので、また頑張れるかなと思います」
大目標だった全日本ジュニアが終わってから気が抜けていた面があったようだが、この全中を刺激として、再び頑張ってくれそうだ。今季は試合への投入はなかったが、トリプルアクセルの練習も続けている。来季はジュニアに昇格する。彼女もまた、来季のジュニアでの台風の目となりそうだ。

5位 山田恵

山田 恵

5位入賞は山田恵。昨シーズンから3+3を含めたノーミスの演技を何度も見せてくれていたが、今季は加点やPCSで進化を見せたシーズンとなった。今回の全中は国スポからの連戦となった。国スポから帰ってきた当日は疲労困憊だったというが、全中には調整を合わせてきた。それには3年間、この大会に出場し続けた経験も生かされていたようだ。
「このリンクの氷はやっぱり浮くので、そこを調整できたなって思います。1年目は本当に全然駄目ではまらなくて、2年目はちょっと慣れて、3年目の今年、結構慣れてきたので良かったです」
ショートプログラムは2シーズン目。滑り込んで、ステップでの難しい動きも手堅くこなせていたように感じた。
「2年目にしてやっと慣れてきたかなっていう印象です。いつもスピードを出し過ぎるから全然きっちり踏めなくて、レベル2のこともあるんですけども、今日はレベル3取れていたので、ちょっとスピードを落としたことが良かったと思います」
山田恵の母は、ショートトラックの名選手、山田乃?子さんだ。3歳頃からスケートリンクに連れていかれ、当初はショートトラック、スピードスケートを勧められたのだそうだが、「フリフリの衣装が着たかった」と、スケートリンクで見た周りのフィギュア選手達に憧れてフィギュアスケートの道を選んだのが5歳の時だという。
フリーの演技には「少し悔しい部分がある」と、反省を口にしていたが、セグメント4位の十分に素晴らしい内容だった。減点されたフリップ、そして全体的に慎重になってスピードを出せなかったことが悔しかったようだ。とはいえ、島田麻央の棄権によって急遽出場が決まった国スポからの連戦。共に充実した内容でシーズン後半を締めくくることができた。現在取り組んでいるというスピード強化、来季には実を結ぶことを期待したい。練習中だというトリプルアクセルはまだ完成には至らないようだが、こちらも楽しみだ。

6位 岡田芽依

岡田 芽依

昨年はノーマークの立場から優勝を果たした岡田芽依。この全中での優勝で自信をつけ、今季はジュニアグランプリでも活躍するなど躍進のシーズンとなった。今回はディフェンディングチャンピオンとして連覇を期待される立場であったが、なかなか難しい試合となったようだ。ショートプログラムでは得点源の予定だった後半の3ルッツ+3トウで減点をされ点数が伸びず、5位スタートとなった。
「少し硬くなってしまって、ジャンプも着氷があんまり伸びず、思うような演技ができなくてすごく悔しいです。去年と比べるとやっぱりプレッシャーがすごく大きいのでそういうのも少し今日の演技には出てしまったと思います」
冒頭のフリップジャンプから緊張が見て取れた。入りのタイミングが合わず、予定よりもひとつ余計にターンが入ってしまったのだ。
「最初の入りのところで少しぐらついてしまい、そのあとも一個ターンが入ってしまいすごく焦りました。ただジャンプは着氷できたのでそこは良かったと思います」
迎えたフリー、なんとここで彼女は新プログラムを披露してきた。水色の衣装に身を包んだミス・サイゴン。とても素敵なプログラムではあったが、まだ滑り込みが足りない印象で、ミスも目立ってしまった。
「優勝して連覇っていう気持ちがすごく強くなってしまって、それが演技に出てしまい、ジャンプの転倒があったり、自分の思うように滑ることができませんでした。まだあんまり滑り込めてもないですし、練習がまだまだ足りなかったかなって思います」
特にジャンプに入る軌道がまだはまっていないように見受けられた。
「このプログラムはジャンプのギリギリまで振付が入っていたり、クロスだったり押す部分が結構少ないので一歩一歩しっかり押していかなきゃいけないっていうところがあり、体力も前より削られますし、そういった部分が少し難しく、練習もまだ足りなかったと思います。これからもっと練習して、もっといいものにしていきたいです」
岡田選手の課題として、他のトップ選手に比べるとPCSが低めだということがある。そこの改善のためにもつなぎや技の入りに振付を詰めた新プログラムを用意したのだ。ただ今回はまだ完成度が低かった。来季には素晴らしいものに仕上がっていることだろう。

7位 松浪ひかり

松浪 ひかり

7位に入賞した松浪ひかり。以前からジャンプの安定感には目を見張るものがあった選手だ。現在は関空アイスアリーナにて、細田采花コーチの指導を仰いでいる。
「ジャンプをすべて着氷することができて良かったです。練習から3+3がたくさん飛べたので、このままの調子でいけると自信もありました」
最近はスケーティングの練習も量を増やしているというが、やはりジャンプが好きなのだそうだ。今はトリプルアクセルを練習しているという。ショートプログラムは9位だったが、フリーで順位を上げ、7位入賞を果たした。
「去年よりいい成績が残せて嬉しいです。今年初戦だったのでちょっと緊張したんですけど、まとめきれたので良かったと思います」
最近、細田采花コーチの教え子が活躍している。皆に共通しているのは、ジャンプの質がとても良いことだ。どんな指導なのかを聞いてみると、「ジャンプの入り方の指導が分かりやすい」との言葉が返ってきた。スケートを始めたきっかけは、5歳の頃、全日本で見た宮原知子さんの演技に魅了されたことだという。
「これからはもっとスケーティングが上手くなるように、毎日練習するのを今までよりも増やしていって、もっと表現が上手くなるようにしたいです」
ジャンプが大好き、得意なジャンプはルッツ、と話す松浪選手。まさにジャンパーといったタイプの選手だ。来季の目標は、「再び全日本ジュニアに出て、もっと上の順位を目指すこと」といささか控え目だが、表現力、スケーティングが上達すればより上を目指せる選手だ。

8位 川勝玲奈

川勝 玲奈

8位入賞は川勝玲奈。今季の全日本ジュニアのフリーでトリプルアクセルを着氷。トリプルアクセルジャンパーの仲間入りを果たした選手だ。練習での上手さには以前から目を見張るものがある。ただ試合では緊張する癖があり、なかなか実力を発揮できずにいた選手だ。今回はかなりメンタルのコントロールができたようで、ショートプログラムでは良い演技をすることができた。
「ショートは今までで一番良い結果が出せたかなと思います。ただまだまだ良くできることがあるので、60点台にはいつでも乗れるようにしたい」
全日本ジュニア後に、両足にシンスプリント(骨膜の炎症)を発症したそうだ。ただそれによってジャンプの練習ができない時期に、スケーティング、スピードを鍛える練習を集中的に行ったそうだ。いつも緊張する川勝選手だが、「今日はそんなに緊張しませんでした」とのこと。
「もう思い切って楽しく行こうと思って、そうしたらなんか気軽にできました」
開き直ることで、緊張を克服する糸口をつかんだようだ。素晴らしいことだと思う。

ところで、今回のショートプログラムに使った“サバイバー”、かつてロシアのザギトワがエキジビションで使った曲だが、素晴らしいプログラムだった。ステップも意欲的な内容で、ジャンプもはまりやすく、川勝選手にぴったりの曲だ。当然このプログラムを来季も使うのだろうと想像していたのだが、
「使うのは今日だけです」
何と、新作なのに競技で使うのはこの日だけの予定だという。来季のショートプログラムとしては別のものを用意するそうだ。もったいないようだが、この“サバイバー”、エキジビション用として使うことはあるかもしれない、とのことだ。
トリプルアクセルジャンパーになって心境が変わったのか、という質問に対しては、
「跳べる、ということが分かったので、フリーでも安定させて、いつでも降りれるようにしたいです」
調整過程での怪我があったものの、トリプルアクセルの状態は良いという。ショート後の取材では、
「今、10本中10本ぐらいの確率で降りれています」
と強気のコメント。そして迎えたフリーだが、残念ながら2回目のトリプルアクセル成功とはいかなかった。
「アクセルは力みすぎて変な方向行っちゃったので、そこだけもっと落ち着いてできるように改善していきたいなと思いました」

ショートが終わってから急にアクセルの調子が落ちてしまったのだという。高難度ジャンプならではの良くある話だ。それでも挑戦は続けていくのだという。2月の愛知県大会でも挑戦する予定、また将来的には4回転にも挑みたいという。フリーでは順位を落として、総合8位。それでも昨年の全中に比べれば1年で大きく進歩したと言える。昨年はフリーでトリプルアクセルに挑戦したものの、ひどい転び方をして演技後に病院に搬送された。それでも諦めずに挑戦を続けてきたことが、全日本ジュニアでの成功につながったのだ。練習でのパフォーマンスを試合本番で発揮できれば、すぐにでもトップ選手の仲間入りができる実力の持ち主だ。いつかその日が来ることを期待したい。

代替画像

中村康一(Image Works)

フィギュアスケートを中心に活躍するスポーツフォトグラファー。日本全国の大会を飛び回り、選手の最高の瞬間を撮影するために、日夜シャッターを押し続ける。Image Works代表。

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