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町田樹のスポーツアカデミア【Reportage:アリーナの今を訪ねて】 ~さいたまスーパーアリーナ~ ニーズに合わせた変幻自在の内部機構:スライド式可動席機構
フィギュアスケートレポート by J SPORTS 編集部町田樹がさいたまスーパーアリーナの内部機構に潜入!
「ルポルタージュ」「アーカイブ」「ダイアログ」をテーマに、スポーツをする・見る・支える人々にお届けするスポーツ教養番組「スポーツアカデミア」シーズン2。
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町田樹のスポーツアカデミア【Reportage:アリーナの今を訪ねて】 ~さいたまスーパーアリーナ~
Part.1 国内随一のアリーナ 建設の経緯
今回は《さいたまスーパーアリーナ》をご紹介しております。現在スポーツ庁は、スタジアム・アリーナ改革のガイドラインや指針を打ち出していますが、この中でスポーツ庁はこれからの日本のアリーナやスタジアムは「多機能複合型」「民間活力の導入」「街中立地」「収益性の改善」この4つを抑えるべきだと提唱されています。実は、このさいたまスーパーアリーナはこの4つのポイントを全て抑えています。
それでは、今回はニーズに合わせた変幻自在の内部機構を見ていきましょう。
ニーズに合わせた変幻自在の内部機構
2.ニーズに合わせた変幻自在の内部機構:スライド式可動席機構
ナビゲーター:イベント技術部 小峯さん(以後敬称略)
コミュニティーアリーナ
◆コミュニティーアリーナ(収容人数:4000人)
4000人が収容できるコミュニティーアリーナは、自然光や風を取り入れた開放的な空間。運動会やお祭りにも使われています。
町田:ここは言ってみればサブアリーナのような感じですよね。
小峯:主に展示会とか物販を行う会場として想定されています。上の方がガラス面になっておりまして、自然に近い形で展示会等が開催できます。
町田:2014年の世界選手権ではここにサブアリーナができて、ここで練習してメインで試合をするという流れでした。なので私は一度ここに来たはずなんですけど、全く印象が変わっていて驚きました。
メインアリーナ
◆メインアリーナ(収容人数:6000人〜37000人)
主にコンサートや国際的なスポーツイベントで使われるメインアリーナ。内部はこの二つのアリーナに別れており、その用途や収容人数によって様々な顔を見せます。メインアリーナの収容人数は6000人〜37000人まで。どうやってそこまで観客数を増減しているのか、そこには驚きの仕組みが隠されていました。
町田:やっぱり壮観ですね。この状態は言わばスーパーアリーナの素の状態ですよね。貴重な光景だと思います。席に取り囲まれているわけすが、あそこだけ歯抜けみたいになっています。
小峯:今からお見せするスライド式に出てくる客席になっておりまして、360度全部同じ仕様になっています。何ブロックかに分かれていますので、コンサートやイベントによって客席のレイアウトパターンも複数できます。椅子も自動で起き上がります。
町田:さいたまスーパーアリーナに来たことがあって、この席に座ったことのある人は視聴者の方にもいらっしゃると思いますが、こうやって席が出てきていたと知れば驚くと思います。
スライド式可動席機構
舞台の周り360度、およそ1万3000席を引き出したり収納したりできる《スライド式可動席機構》。これにより様々な客席配置が可能となり、例えばステージが小さく客席が多いコンサートのときは座席が前に迫り出してきます。展示会など大きくスペースを使う場合は椅子をスタンドに収納。およそ1万3000席をわずか1時間で出し入れできるのです。客席を自由にコントロールできることで、大型機材の搬出入もスムーズに行うことができます。もちろん自動で出し入れできるからと言って、座席は簡易的なものではなく、座り心地の良いに布製。プラスチック製の椅子の場合、音が反響してしまいますが、布であれば音を吸収してくれて、より良い音質を提供できるとのこと。
町田:音響って大事ですもんね。私もここで滑っていて、音響の素晴らしさは群を抜くというか。見ている方も同じように口を揃えて言っているので、本当にここの音響は素晴らしいのだと思います。
小峯:使いやすいとイベンターさんにも使っていただけるようになりますので、来場者さんもその分いろいろな恩恵を受けるのかなと思います。
町田:双方にとってメリット尽くしの機構だということですね。
小峯:通路を見ていただくと、縦に1本ずつしかありません(横通路がありません)。お客さまが移動する際に横通路ですと、どうしても座っている方の目の前を遮ってしまうということがありますので、当施設の特徴として全部縦型通路による移動となっています。
町田:私は何度もこの階段を上り下りして照明さんの機構のところに行ったことを覚えています。無自覚に上り下りしていましたが、実はそんな工夫があったということですね。
この縦型通路を日本で初めて導入したのがさいたまスーパーアリーナ。近年では当たり前になってきたものの、20年前から想定していました。なかには設計段階では想定していませんでしたが、施設を利用していく内に発明されていく機能もありました。
町田:アリーナモードで2万人くらい入るんですよね? 2万人集められる競技会とか、2万人集められるライブミュージシャンは結構限られてくると思いますが。
小峯:1万人規模のコンサート、スポーツにも対応できるように、当施設の特徴として天井自体も全て昇降できるようになっていまして、天井を途中まで降ろすことによって、上にある席を隠すことができます。
天井を昇降させてスタンド上部を隠してしまう発想
音響や照明を吊るすために昇降する天井。この天井を巧みに使い、アリーナ上部の客席を隠し、観客席に合わせた収容人数にすることが可能になります。これにより、収容人数を2万人から1万人に減らしても空席が目立たなくなり、イベントはより盛り上がります。設計時には想定されていなかった使用方法。それを利用者が発見し、アリーナが持つ機能を最大限に有効活用しています。
小峯:元々2000年にオープンしたときは1万人モードという考え方があまりなくて、フルキャパシティーで売っていましたが、世の中的に1万人のコンサート、スポーツの需要がどんどん伸びてくるなかで、どうすればうちが1万人のキャパの施設として運用できるのかということを考えて、天井を下げて客席を隠してしまえと。
町田:2万人のイベントってなかなか無いと思うのですが、天井を降して1万人規模にすることによって、開催できるイベントのバリエーションって一気に増えますよね。そういうことが施設の稼働率とかにもつながっているということですよね。このシステムを導入している国内施設は無いと思うのですが、スタンダードになっても良いくらい便利なシステムですよね。
文:J SPORTS編集部
J SPORTS 編集部
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