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ステップ・ターンとは???
アイスダンスはステップとターンを中心に構成される、とはよく言われることである。ステップとターンはルール(ISU Rule704)によって厳密に規定されている。
ステップはフォアからバック(前向きから後ろ向き)、バックからフォア(後ろ向きから前向き)といった方向の変化を伴わないものであり、ターンはフォアからバック、バックからフォアといった方向の変化を伴うものと考えて差し支えない。
大半のステップはカーブを伴う。このカーブはフィギュアスケートではエッジという呼び方をする。スケートの刃の倒し方によってアウト、インと区別される。スケートの刃の外側で滑ることによって描かれるカーブはアウトサイドエッジ、スケートの刃の内側で滑ることによって描かれるカーブはインサイドエッジ、である。フォアアウト、フォアイン、バックアウト、バックインと4種類のエッジを使い分けることによってステップを踏むのである。これに加えてつま先で跳ねるトウステップ、スケートの刃を完全に氷に垂直に立て、まっすぐに滑るフラットエッジというものもある。
ターンはフォアからバック、バックからフォアといった方向の転換を伴うものである。片足のみで行うワンフットターン、ターンをしながら足を変えるツーフットターンがある。ワンフットターンもさらにターン前後でカーブが変わらないスリーターンやブラケットターン、ターンをすると同時にカーブも変わるロッカーやカウンターなどに分けられる。ツーフットターンもターンの前後でカーブが変わらないモホーク、ターンの前後でカーブが変わるチョクトーなどに定義されている。そして、後述するトゥイズルもルール上はターンとして扱われる。
ステップシークエンスではカップルはホールドを組みながらこれらのステップやターンを行なってゆく。難しいとされるターンやステップがあらかじめ決められており、それらを行うことによってステップシークエンスのレベルが上がってゆく。難しいとされるターンやステップはカーブの方向と逆方向にターンするブラケットやアウトサイドモホーク、カーブを変えながらターンをするロッカーやカウンター、チョクトーなどである。見ている人がこれらを一つ一つ見極めるのは至難の技であるが、カーブしている方向と別の方向に回っていると何か難しいことをやっていると考えていいかもしれない。
トゥイズル ダンスリフト ダンススピン
トゥイズルは一回転以上回りながら移動するターンのことである。アイスダンスでは“set of twizzles”という、2つのトゥイズルを連続して行うものがエレメンツとして入れられている。男女は横に並んで同じ方向に回ったり、男女が鏡のように回ったりする。トゥイズルは連続的に回転せねばならず、回転が途中で止まったりいわゆるスリーターンの連続(グルングルンと回る感じである)になったりしてはならない。トゥイズルのレベルを稼ぐには、2つのトゥイズルの回転方向が逆でなければならず、さらに、軸足でない方の足(フリーレッグ)を高く上げたり(45度以上にあげる必要がある)、フリーレッグを手で掴んだり、あるいはしゃがみながら(軸足が90度以上曲がる必要がある)トゥイズルをする必要がある。トゥイズルはミスが出やすく、トィウズルのミスで順位が大きく変動する場合が少なからず起こるのである。
ダンスリフトはパートナーがもう片方のパートナーを持ち上げる動作である。ダンスリフトの場合はリフトのやり方に制約がある。まず、リフトをするパートナーの持ち上げている方の手が自身の頭より上に行かないこと、それから上がっているパートナーが持ち上げているパートナーの頭の上に横になったりパートナーの肩や頭の上に立ったりしないこと、持ち上がっているパートナーが逆さになって足を開かないことなどである。もともとアイスダンスはステップで魅せる伝統があり、リフトなどによって力を誇示するような事は“邪道”だとされてきた。そのこともあり、ルールでも“リフトは音楽表現のために行うものであり、力の誇示のためのリフトはやってはならない”と明記されている。そのこともあるのであろうが、近年その数は減る傾向にある。リフトには7秒以内に行うショートリフトと12秒以内に行うロングリフトがある。ショートリフトにはリフトをするパートナーがカーブを描くカーブリフと、まっすぐ滑りながら行うストレートラインリフト、回転しながら行うローテーショナルリフト、止まったまま行うスタンディングリフトがある。ロングリフトはショートリフト2種類を組み合わせたコンビネーションリフトがある。
今はシニアではロングリフト1つとショートリフト2つ、またはショートリフト3つ、ジュニアではロングリフト1つ、またはショートリフト2つのみ行うことができる。リフトは持ち上げるパートナーと持ち上がっているパートナーが難しいと規定される動作によってレベルが上がってゆく。ダンスリフトでは男性が片足になったり足を180度開いて滑りながら持ち上げたり、女性の足だけが支えられて上半身は完全にフリーな状態で上がったり、などが見られる。“力の誇示となってはならない”が先述した通りだが、実際にスケーティングの技術とは関係なく、スケーターの運動神経やチカラでレベルを稼ぎやすいエレメンツでもある。
ダンススピンとはパートナー同士が組んで行う、1つの軸で片足で回転する、回転動作のことである。スポンのポジションには軸足を曲げる(しゃがむ)シットポジション、足を後ろにお尻よりも高く上げるキャメルポジション、普通に立った状態のアップライトポジションがある。それぞれのポジションの中で体を反らせたり足を持ったりしながら独創的な形を作ってゆくのである。
アイスダンスの採点基準
ジャンプがないアイスダンスは具体的に成功失敗の区別をつけるのが難しいので順位の判定がとても難しい競技と言われている。順位の付け方はステップシークエンス、トゥイズルシークエンス、ダンスリフト、ダンススピンなどのエレメンツの難易度と出来栄えによる技術点と、スケーティング技術、つなぎのステップ、パフォーマンス、音楽の解釈、タイミングの5つの構成点の合計で順位が決まる。点数のつけ方については細かく、非常に細かくルール(ISU Rule504)で定められているが、それを一つ一つ説明するのはこの稿での本意とするところではない。どんなアイスダンス演技がうまい演技に見えるか、であろう。
アイスダンスにおいて、スピードのあるスケーティングは大変重要である。スピードを出すにはスケーティングレッグ(滑る方の足)に体重がまっすぐしっかりかかってくること、片方の足からもう片方の足に体重がしっかり移動することが必要である。スケーティングレッグに体重がまっすぐかかるためには上半身の動きがコントロールされていることが大切であり、しっかり体重がかかるには重心(ちょうど骨盤辺りになる)がスケーティングレッグの上に低い位置でおりていることが大切になってくる。ステップを踏む時の重心の移動は片方の足からもう片方の足にスムースに行われないと、ブレーキになってしまう。したがって、膝のよく曲がった上半身とフリーレッグのよくコントロールされたフォームを多くとっているカップルはスピードのある上手い選手であるということが分かるであろう。
アイスダンスにおいてはカップルとしての二人の調和(ユニゾン)も大切である。ユニゾンというものは二つの意味を考えることができる。一つは完全に男性と女性の動きが揃っていること。一寸の狂いもなく二人が揃って動くことである。そしてもう一つは男性は男性らしく、女性は女性らしく動くということ。その際には男性と女性の間に関係性が見えるべきである。お互い相手を気にしている、あるいは見つめ合っている雰囲気が見えるとカップルとしての一体感を感じられるのである。二人の動きが揃っているか、そのダンスカップルがカップルとしての一体感を感じられるとその組は上手いダンスカップルである。
アイスダンスでは音楽との調和も非常に大切である。アイスダンスにおける音楽はビート(拍)が重要となってくる。実際にルール上もフリーダンスにおいてでも“音楽はビートとメロディ、またはビートのみで構成されるべきで、メロディのみで構成される音楽は使ってはならない”とされている(ISU rule710)。ビートを取りやすい音楽でカップル自身がはっきりとビートを刻んでいるとそれが正しいアイスダンスの音楽に対する調和と言える。実際にはっきりと音楽のビートを刻むと動きが音楽に合っているどころかあたかも音楽が 動きに合わせて鳴っているかのように見えることがあるのである。
アイスダンスは滑りのうまさ、カップルとしてのユニゾン、音楽との調和がどれだけできているかによって上手さを見ることができる。
2016-2017シーズンのショートダンスのエレメンツ
ジュニア
パターンダンス:ブルース2パターン(半周を2回)。ステップが完全に決まっていて全員が同じステップを踏む。今年はブルースというステップを各カップルが用意した音楽に合わせて踊る。
7秒以内のショートリフト:まっすぐゆくストレートラインリフト、カーブで行うカーブリフト、くるくる回るローテーショナルリフト、その場に立ったまま行うスタンディングリフトの中から一つ選ぶ。
ステップシークエンス:男女が組まずに平行に行うノットタッチングステップシークエンス
セットオブトゥイズル:2つのトゥイズルを一歩以内のステップを挟んで行う。
シニア
パターンダンス:ミッドナイトブルースステップ5からステップ14まで)本来26あるステップの5番目から14番目までを各カップルが準備したブルースの音楽に合わせて行う。
パーシャルステップシークエンス:ミッドナイトブルースの残りの部分を各カップルがステップを創作する。
7秒以内のショートリフト:まっすぐゆくストレートラインリフト、カーブで行うカーブリフト、くるくる回るローテーショナルリフト、その場に立ったまま行うスタンディングリフトの中から一つ選ぶ。
ステップシークエンス:男女が組まずに平行に行うノットタッチングステップシークエンス
セットオブトゥイズル:2つのトゥイズルを一歩以内のステップを挟んで行う。
2016〜2017シーズンのフリーダンスのエレメンツ
ジュニア
ダンスリフト:1つのコンビネーションリフトか、2種類のショートリフトどちらか。
ダンススピン:どちらかの足で回るダンススピンか足替えを含むコンビネーションスピンかどちらか。
ステップシークエンス:2つ。一つはまっすぐ進むストレートラインステップシークエンスか、斜めに進むダイアゴナルステップシークエンス。もう一つは円の上でステップを踏むサーキュラーステップや2種類のカーブの上でステップを踏むサーペンタインステップなどのカーブステップシークエンス。
セットオブトゥイズル:2つのトゥイズルを3歩以内のステップを挟んで行う。
1種類のコレオグラフィックエレメンツ:このエレメンツは全てがレベル1として捉えられ、出来栄え点のみで差がつく。くるくる回りながら進むコレオグラフィックスピニングムーブメントか、音楽に合わせてルールの範囲内で自由にリフトをするコレオグラフィックリフトかどちらかから選ぶ。
シニア
ダンスリフト:1つのコンビネーションリフトと1種類のショートリフトか、3種類のショートリフトどちらか。
ダンススピン:どちらかの足で回るダンススピンか足替えを含むコンビネーションスピンかどちらか。
ステップシークエンス:2つ。一つはまっすぐ進むストレートラインステップシークエンスか、斜めに進むダイアゴナルステップシークエンス。もう一つは円の上でステップを踏むサーキュラーステップや2種類のカーブの上でステップを踏むサーペンタインステップなどのカーブステップシークエンス。
セットオブトゥイズル:2つのトゥイズルを3歩以内のステップを挟んで行う。
2種類のコレオグラフィックエレメンツ:このエレメンツは全てがレベル1として捉えられ、出来栄え点のみで差がつく。くるくる回りながら進むコレオグラフィックスピニングムーブメントと、音楽に合わせてルールの範囲内で自由にリフトをするコレオグラフィックリフト両方を入れること。
木戸 章之
1975年8月28日生まれ。 千葉県松戸市出身。芝浦工大柏、筑波大卒業。 小学校低学年でスケートを開始し、5年生からアイスダンスを始め全日本ジュニアで5度優勝。渡辺心とカップルを組んでからは2003-04シーズンから引退するまで全日本選手権で4連覇。2006年トリノ五輪に出場し15位。現在は専属コーチとして新横浜スケートリンクで、アイスダンスをはじめとしてフィギュアスケートの指導にあたる。
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