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【RWC2023出場国紹介:アイルランド】7大会でベスト8止まりの伝統国。SOジョナサン・セクストンが初優勝に導く?
ラグビーW杯2023出場国紹介 by 村上 晃一
ラグビーワールドカップ(RWC)2023の優勝候補筆頭である。今年の3月18には北半球最高峰の選手権シックスネイションズ最終戦でイングランドを29-16で下し、5年ぶり4度目の全勝優勝「グランドスラム」を達成。2023年7月10日現在の世界ランキングは1位だ。セットプレーを制圧するFW、理詰めでディフェンスを突破するBKが精度の高い組織プレーで動き続ける。アイルランド史上最強チームといっても過言ではないだろう。
アイルランド代表はアイルランド共和国と英国領北アイルランドがひとつのチームとして戦っている。RWC出場国では2カ国にまたがった唯一のチームだ。理由は国が分かれる前にアイルランドラグビー協会があり、その協会を代表するチームがアイルランド代表だからである。このため両国の選手が歌えるように「アイルランズ・コール」というラグビーアンセムが作られ、テストマッチ(国代表同士の試合)の国歌斉唱時に歌われる。
ラグビーワールドカップ2023 特集ページ
アイルランド代表の初めてのテストマッチは1875年、イングランド代表との間で行われた。以降、スコットランド、ウエールズを含むホームユニオン(4カ国)の一角として世界のラグビー界で中心的な役割を果たしてきた。1960年代から1970年代に活躍したLOウィリー・ジョン・マクブライド、1999年から2014年まで代表の主力として活躍したCTBブライアン・オドリスコルなどラグビー殿堂入りを果たした伝説の名選手は多いが、ニュージーランドや南アフリカなど南半球の強豪国には、選手層の薄さもあって勝てない時代が続いた。
しかし、2016年にニュージーランド代表オールブラックスを1905年からの対戦史上初めて下し、2018年、2021年にも勝利し自信をつけている。ただ、1987年に始まったRWCではベスト8が最高位。実に7大会でベスト4の壁を破れずに涙をのんでいる。2019年の日本大会では、世界ランキング1位で大会に臨みながらプール戦で日本代表に惜敗し、準々決勝でもオールブラックスに敗れた。大会後は新任のアンディ・ファレルヘッドコーチの下で着々とチームを強化し、再び世界ランキング1位に返り咲いた。ファレルヘッドコーチは、イングランド代表オーウェン・ファレルの父。悲願の初優勝を目指し、2023年フランス大会に臨む。
ジョナサン・セクストン
チームの大黒柱は、現在、世界最高のSOと言われるジョナサン・セクストン。身長188cm、体重90kgというサイズがありながら、タイミングを巧みにずらしてSHからパスを受け、ディフェンスを出し抜き、味方を走らせる技巧派のSOだ。2018年の世界最優秀選手にも輝いた。怪我が多く、38歳という年齢的にもプレー時間をコントロールする必要がありそうだ、セクストンが万全のコンディションでプレーすれば優勝も可能といえるほど絶大な存在感だ。そのほかのBK陣は才能にあふれる。ニュージーランド出身のCTBバンディー・アキ(33歳)はパワフルな突進で攻撃の起点になり、オーストラリア出身のWTBマック・ハンセン(25歳)、ニュージーランド出身のWTBジェームズ・ロウ(31歳)の両WTBは決定力がある。
FWには常に先陣を切ってプレーするFLジョシュ・ファンダーフリヤー(30歳)がいる。身長185cm、体重104kgとサイズは大きくないが、献身的なプレーが光る。2022年の世界最優秀選手にも選出された。LOジェームズ・ライアン(26歳)は身長203cm、体重106kgで空中戦に強く、リーダーシップもある。FL/NO8ケーラン・ドリス(25歳)は、身長193cm、体重106kgのサイズでスピードがあり、ジャッカルも得意。相手チームの攻撃を寸断する。
RWC初優勝に向けて、8月はイタリア代表、イングランド代表、サモア代表とウォームアップマッチを行い、本番に備える。プールBは世界ランキング4位の南アフリカ、5位のスコットランドがいる死のプール。ここから2チームしか決勝トーナメントに行けない。悲願の優勝に向けて、タフなプールマッチを無傷で勝ち上れるか。まずは、プール戦でのアイルランドの戦いぶりに注目したい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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