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先制トライの船曳涼太
第58回全国大学ラグビーフットボール選手権大会の準々決勝が埼玉・熊谷ラグビー場で行われた。京都産業大学にとって2年ぶりの熊谷、相手はその時と同じく日本大学。2年前は19-24で惜敗している。
今年の京産大は関西王者として全国の舞台に挑む。伝統を継承し廣瀬佳司新監督と歩み出した新たな京産大、全国優勝への初戦は強風の中での接戦となった。
京産大は風下からキックオフ、パントキックやタッチキックを使いながらじわじわと敵陣に侵入する。前半9分、京産大は敵陣でボールを展開する。外に待っていたWTB(ウィング)船曳涼太(神戸科学技術・2)が抜きにかかるとオフロードパスでCTB(センター)堀田礼恩(京都成章・4)に渡しラックに。すぐに走り出していた船曳が、もう一度ボールをもらうとタッチライン際にトライ、5-0と先制した。
また19分、ハーフウェーライン付近でディフェンスの京産大、SH(スクラムハーフ)廣田瞬(天理・4)がジャッカルに成功し、ペナルティを獲得した。そのペナルティから敵陣で攻撃に移る。ラインアウトモールから展開すると廣田がパスダミーでラックサイドを突破、約20mを走り切リトライ、12-0とした。
しかし22分、自陣に攻め込まれるとここからは日大の時間帯。勢いのあるアタックに対し京産大はペナルティを犯してしまう。26分、自陣深くで相手ボールのラインアウト、ピンチを迎える。モールが崩れたところショートサイドを突破されトライ。12-7と迫られる。
30分にはハーフウェーラインから連続攻撃の日大。ゴール前でオフロードパスを繋がれ突破される。抜け出した日大選手の目の前に京産大の選手はおらずトライかと思われたが、インゴールで船曳が後ろからタックル、ノックオンを誘った。
グラウンディングしていればトライというシーン、値千金のタックルだ。その後、京産大はPG(ペナルティゴール)を1本決め、15-7で前半が終了。日大ペースに引き込まれるシーンもあったがリードして折り返す。
竹下拓己、試合中に風を読みキックを調節した
日大に遅れてピッチに戻ってきた京産大。後半開始から敵陣へ入り込むと、連続攻撃でペナルティを獲得し、ショットを選択する。これをFB(フルバック)竹下拓己(東福岡・3)がしっかりと決めて18-7。
また6分、敵陣へキックを蹴り込むとカウンターアタックを仕掛けた選手に対してPR(プロップ)野村三四郎(西陵・3)がジャッカル、このPGも決めて、21-7とリードを広げた。
しかし9分、自陣深くに攻め込まれると京産大はペナルティ、日大FW(フォワード)得意のラインアウトモールを押し込まれトライを許してしまう。ここから日大の猛反撃に遭う。
15分には背後にキックを蹴られ、京産大はなんとかボールを回収したが日大の黒いジャージに囲まれジャッカルされた。日大はラインアウトモールを組むとサイドにアタック、そのまま飛び込み21-19。さらに18分、ラインアウトのピンチ。今度は外へ展開され連続トライ。21-26と逆転されてしまった。
残り20分で5点差を追う展開となった京産大。24分、敵陣22mゴール正面で伝統のスクラム、ペナルティを獲得できればというところで日大に反則。組み合う前の反則だったが、PGを竹下が決めて24-26の2点差に詰め寄った。
さらに36分、敵陣でスクラムを押し込むとペナルティを獲得。少し角度はあったがショットを選択した。決まれば逆転のキック、大活躍の船曳が抑えるボールを蹴り込んだ竹下、いつも通りにしっかりと決めた。3点を追加し、27-26と逆転に成功。
今季、関西リーグで幾度となく接戦を演じた京産大、残り時間をどう使うかだった。残り3分、日大のノックオンをマイボールにするとケガから復帰したSO(スタンドオフ)家村健太(流経大柏・3)が裏へキック。逆転へと前に重心が傾いていた日大は背走し追いかける。敵陣ゴール前で京産大のディフェンス、今シーズンの強みであるディフェンスの粘り強さ、前への出足が80分間近でも衰えない。
ラグビー 全国大学選手権 準々決勝
【ハイライト】日本大学 vs. 京都産業大学
なんとか得点をと外に展開した日大に対し、堀田が前へ出てインゴールでタックル。そのまま押さえ込みキャリーバックでマイボールとした。ここで80分のホーン、ボールを蹴り出して試合終了。15年ぶりのベスト4、国立競技場への切符を獲得した。
平野共同主将が「試合を通して、誰一人諦める選手もいなくてひたむきに京産らしく戦えた」と語るように全員の意思が1つになった逆転勝利だった。逆転のキックを蹴った竹下は「外す気は全くなかったです」と当時の心境を語った。
廣瀬監督に「自信をつけるためにとにかく蹴り込め」とアドバイスをもらったという竹下、接戦を制してきた京産大の強力な武器だ。リードを許すも伝統のスクラムとキックの名手・廣瀬佳司監督から指導を受けた竹下のキックで次戦へと駒を進める。
準決勝は年明け1月2日に国立競技場で行われる。相手は帝京大学、接戦だった今年の関東対抗戦を全勝で優勝している。帝京大には関西出身の選手も多く顔見知りの選手も多いだろう。
今大会の優勝候補である帝京大に対して京産大らしさをぶつける。勝てば京産大として初の決勝、常に全国制覇を目標に掲げてきた伝統の赤紺ジャージを決勝の舞台で見られるだろうか。
文/写真:出口敬介(京産大アスレチック)
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