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田中史朗・松田力也が振り返る! ラグビーW杯2019 運命の大一番 日本代表が因縁のスコットランド代表に挑んだ感動の戦い
村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一あなたにとって、ラグビー日本代表史上最高の試合とは? そんな質問を投げかければ、答えは無数にあるだろう。観戦歴50年以上の人は、1971年のイングランドとの死闘をあげるかもしれない。世界を驚かせたという意味では、2015年ラグビーワールドカップ(RWC)の南アフリカ戦勝利であり、2019年RWCのアイルランド戦勝利だろう。優勝候補の一角を破ったのだから当然なのだが、筆者は2019年RWCのスコットランド戦がベストゲームだと思っている。この試合は「日本ラグビー史上最大の決戦」と言って過言ではなかった。
番組では、試合に出場した田中史朗、松田力也両選手とともに、キックオフからノーサイドまで一試合を振り返る。田中選手の視点は冷静だ。松田選手はあの日以来、初めてフルバージョンで試合を見たという。記憶が蘇り、生々しいコメントが次々に並び、結果を知っていながら楽しく見ることができる。
こんなシチュエーションで行われる試合に出会うのは、一生に一度、あるかないかだろう。初の決勝トーナメントを目指す日本代表だが、RWCではスコットランドに一度も勝ったことがなかった。2015年大会でも決勝トーナメント進出を阻まれている。プール戦3試合を終えての勝ち点は、日本代表が3連勝で「15」、スコットランドが2勝1敗で「10」。もし日本代表がボーナス点を1点もとれず、スコットランドがボーナス点を獲得して勝った場合は勝ち点「15」で並ぶ。その場合、直接対決の勝者であるスコットランドが日本を上回り、勝ち点「16」のアイルランドに続いて決勝トーナメント進出を決めことになる。日本代表は、前大会に続いて3勝しながら予選プールで敗退の可能性もあった。
※ボーナス点=4トライ獲得したチームに1点。7点差以内の負けに1点。
台風の影響でRWC史上初めて3試合が中止。この試合も中止される可能性があった。中止は引き分け扱いとなり、日本代表が戦わずして初のベスト8に進むことになる。これを良しとしないスコットランド首脳陣は、ホスト国の日本が試合を中止にするのではないかと、けん制する発言までした。しかし、その言葉は逆に日本代表選手とサポーターの心に火をつけた。選手もファンも、勝って決勝トーナメントに進出すること以外、眼中になかったからだ。
試合開催の最終判断が下ったのは10月13日当日朝だった。前日、横浜国際総合競技場の施設の一部は浸水していた。RWC2019組織委員会など運営スタッフは前日から泊まり込んでロッカールームなどを整備。ボランティアは早朝、ようやく動き始めた電車に乗って会場に駆けつける。キックオフの午後7時45分、スタンドは、67,666人という国内開催の日本代表戦では最多の観客で埋め尽くされた。叫ぶような「君が代」の大合唱が日本代表選手を奮い立たせる。こうして、負けられない戦いは幕を開けた。
前半、日本代表のパフォーマンスは完ぺきだった。福岡堅樹のオフロードパスから松島幸太朗がトライ。堀江翔太、ジェームズ・ムーア、ウィリアム・トゥポウのオフロードが決まっての稲垣啓太のトライ。ラファエレ ティモシーのグラバーキックを福岡がキャッチして駆け抜けたトライ。後半開始早々に決まった福岡のダメ押しトライ。28得点。これで安心を思いきや、20分以上、スコットランドの反撃を受ける続けることになる。ハラハラドキドキの連続だ。観客席の祈るような表情、ノーサイドの歓喜を見ていると、なんという幸せな時間だったのかと感慨深い。世界中に苦しくて悲しい感情があふれている今だからこそ、尊い時間を思い知る。日本ラグビー史上最大の決戦が心に響く。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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