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JUDO IS BACK!8か月ぶり再開のワールドツアーにビロディド、モラエイら豪華メンバー集う/グランドスラム・ブダペスト大会
柔×コラム by 古田 英毅IJF(国際柔道連盟)による開催宣言に付されたタイトルは「JUDO IS BACK!」。新型コロナウイルスの感染拡大によって3月から閉じられていた柔道ワールドツアー大会がいよいよ今週末、23日からハンガリーで行われるグランドスラム・ブダペストから再開される。この模様はJ SPORTSで生中継される。
欧州でなお収まらぬ新型コロナウイルスの脅威に対してIJFが採った策は、徹底した検査と隔離、そして消毒と「ソーシャルディスタンス」。選手は出国前から畳に上がる直前まで最低5度のPCR検査をクリアせねばならず、入国後はホテルに隔離されて専用車で試合場を往復。練習場の使用時間も厳しく制限され「密」は徹底的に排除される。選手は畳に上がる直前までマスクの着用が義務付けられ、まさに試合をしている間のみしか外すことは許されない。
そんな中で果たして本当に大会は行われるのか。当初700人近かったエントリー選手の数は本番が近づくにつれ漸減。テディ・リネール(フランス)ら大会の目玉になるはずだった選手何人かも姿を消し、20日には100kg超級の現役世界王者ルカシュ・クルパレク(チェコ)が出国直前のPCR検査で陽性反応を示して棄権。ドロー当日にも現地入りしていたイタリアチームがまるごと出場停止(複数選手に陽性反応との情報)となるアクシデントがあったが、それでも最終的に409人の選手の出場が確定した。
そしてこの残ったメンバー、日本代表の参加こそないものの、驚くべき豪華さである。大会開催自体が8か月ぶりということもあろうが、ツアーの最高峰である2月の2大会(パリとデュッセルドルフ)と比べてもまったく見劣りしない。簡単にそのみどころを紹介してみたい。
ダリア・ビロディド(ウクライナ)
今回は女子から。なんと言っても注目すべきは48kg級で世界選手権2連覇中の絶対王者ダリア・ビロディド(ウクライナ)。今回はなんと1階級上げて52kg級での参戦である。173センチという高身長ゆえかねてから減量の厳しさが指摘されていたが、五輪本番まで10か月近くを残したこの調整期に敢えて無理をする必要はないとの判断か。実戦で試合勘を養いつつ、しかし調整ペースは崩さないという「いいとこどり」の戦略と推察されるが、ファンにとってはこれほど面白いことはない。上背を生かして遠間から飛び込むあの強烈な大内刈、そして長い脚を利して相手を決して逃がさぬ必殺の「横三角」は、パワー自慢が揃った52kg級でも通用するのか。おそらく東京五輪後は階級を上げるであろう彼女の能力をあらためて測る上でも、その試合ぶり絶対に見逃せない。この階級には昨年12月に阿部詩を破ってセンセーションを巻き起こしたアモンディーヌ・ブシャー(フランス)がエントリーしており、ぜひ直接対決に期待したいところ。
女子全体としては、この52kgが最注目。ほか、現役世界王者マリー=イヴ・ガイ(フランス)が参加する70kg級、出口クリスタ(カナダ)との代表決定戦が控えるジェシカ・クリムカイト(カナダ)が第1シードを張る57kg級、五輪王者ティナ・トルステニャク(スロベニア)の63kg級、売り出し中のパワー派でワールドマスターズを制したばかりのディストリア・クラスニキ(コソボ)の48kg級など、軸になる選手がハッキリしている階級が面白い。
フランスのレベルの高さが目を引く。63kg級の絶対王者クラリス・アグベニューこそ出場を見送っているが、78kg級のマドレーヌ・マロンガと現役世界王者2人を投入。78kg超級には秘蔵っ子であるロマーヌ・ディッコも送り込んだ。フィジカルの強さが売りの彼女たちが、コロナ禍の「自主トレ期間」を経てどれほど仕上がっているのかはみもの。特に、東京五輪をにらんで伸び盛りのディッコの出来は注目に値する。
サイード・モラエイ(モンゴル)
男子、世界選手権王者の称号を持つ選手としては東京世界選手権100kg級王者のジョルジ・フォンセカ(ポルトガル)、90kg級のニコロス・シェラザディシヴィリ(スペイン)、そして母国イランを飛び出した81kg級サイード・モラエイ(モンゴル)らがエントリー。彼らが出場する階級がそのまま大向こう的な注目階級と言えるが、個人的に推しの激戦区は100kg級。陽気な現役王者フォンセカ(ちなみに5月に新型コロナウイルスに感染、快癒との情報)はもちろんのこと、伸び盛りのシャディー・エルナハス(カナダ)、腰技一発の威力でキャラの立つユニバーシアード王者ゼリム・コツォイエフ(アゼルバイジャン)に、掴みどころのない仙人的な柔道という意外な方向に仕上がってきたリオ五輪2位のエルマー・ガシモフ(アゼルバイジャン)と若手からベテランまで役者が揃い、そして何より激しく代表を争うニヤズ・イリアソフとアルマン・アダミアンというロシアの強豪2人が同時参戦するのだ。本格派から戦術派、一発屋に業師とあらゆるタイプが揃ったこの階級はぜひ注目してもらいたい。
ちなみにこのロシアの代表争いは今大会ウォッチの裏テーマとしてなかなか面白い。60kg級は建前上の1番手ロベルト・ムシュビドバゼと、メキメキ売り出し中の変則巻き込み技ファイターのヤゴ・アブラゼが同時派遣されて雌雄を決する。才能豊かな若手2人が激しく争う100kg超級は担ぎ技が得意で一時1番手確実と目されたタメルラン・バシャエフと、もっかワールドランキング5位の怪力選手イナル・タソエフが同時起用された。どちらの階級も今大会の結果次第でほぼ先行きが見えるはず。気に掛けてウォッチすると、観戦の豊かさが増すこと請け合いだ。
文:古田 英毅
古田 英毅
「eJudo」編集長。国内の主要大会はほぼ全てを直接取材、レポートを執筆する。自身も柔道六段でインターハイ出場歴あり。2019年東京世界選手権から、全日本柔道連盟の場内解説者も務める。J SPORTSワールドツアー中継ではデータマンを担当。
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