モータースポーツは幸せのバロメーター

2019年3月に香港で開催されたフォーミュラE Hong Kong E-Prix

昔、昔。
お世話になっていたレーシングカート雑誌の編集部。
海外取材の準備をしていた編集長とカメラマンさん。
ボクは、アルバイトの編集助手。一緒に海外取材に行きたくてもお金がない。そんな若造（当時）を見ていてくれたのがエディトリアルデザイナーのIさん。

「お前行きたいのだろう。行ってこい」
「でも金ないです」
「貸してやるから行ってこい！」
かくして、初の海外取材は、1981年の香港カートグランプリとなった。

2019年3月に開催されたフォーミュラEのHong Kong E-Prix。ボクは、取材のため37年と4ヶ月ぶりに香港に訪れた。ただ当地は、以前の香港ではなくなっていた…。イギリスから中国に返還されて以降、中国の締め付けが明らかに強くなっていることが肌で感じられた。そして2020年には香港国家安全維持法が制定されて即時に施行。時はコロナ禍の最中。ウイルスの蔓延を防ぐために人が集まることを禁じてはいたが、コロナ禍が過ぎても国安法によって数人で集まり会話しているだけでも警察によって尋問、抵抗すれば検挙されるということが実際に起きている。2020年以降、香港ではフォーミュラEは行われていない。人が集まってはいけないのでイベントなど開催できるはずがない。

モータースポーツの開催は、その国の安定と経済のバロメーターであると言われる。現在世界の各地で戦争が起こり、そして続いている。また国家の内乱などで安全/経済が安定していない国々もある。そのような国家下ではモータースポーツは行われていない。行えない。

幸いなことに日本では多種異なるモータースポーツが行われている。
日本自動車連盟（JAF）のもモータースポーツライセンスホルダーは約7万名であることが同連盟のホームページで知ることができます。この保持者数は、世界的に見ても最も多いらしい。ちなみにイギリスのモータースポーツ統轄団体である王立自動車クラブ（RAC）は、約4万人。極東の小国でこれだけ多くのライセンスホルダーは国際自動車連盟に加盟している統轄団体ではナンバーワンであるとのこと。この数字は、国家の安寧を示していることを感謝して良いのでしょうね。

来年の3 月末に香港では行わられなくなったフォーミュラEが日本にやって来ますね。
モータースポーツが行われていて、それを多くのファンが楽しみ、感動を共有していただける状況を享受できることを改めて有難いと思い、今週末のSUPER GT第7戦オートポリスに向かいます。九州地方を中心としたファンのみなさんお久しぶりです。
だんだんと秋めいてきたこの季節。阿蘇外輪山の朝は冷え込みそうな気配…。

文：高橋 二朗