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第3戦で初優勝を果たしたNo.244 たかのこの湯 GR Supra GT。
2021年のSUPER GTは、GT500のみならず、GT300クラスも激しいトップ争いが繰り広げられており、前半の4レースを終了した時点でランキングの上位4台が10ポイント以内にひしめいている。今週末の第5戦SUGOから始まる後半戦は、チャンピオンをかけたバトルがさらに激化していきそうだ。
ここまでは前年王者のNo.56 リアライズ日産自動車大学校GT-R(藤波清斗/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ)が安定してポイントを重ねランキング首位を守っていたが、予定より3ヶ月延期されて開催となった第3戦鈴鹿では、注目の若手2人がスーパーGTで初の勝利を手にした。No.244 たかのこの湯 GR Supra GTを駆る三宅淳詞/堤優威だ。
今シーズンの開幕戦から安定して上位に食い込む走りをみせていたが、第3戦の鈴鹿では 予選3番手から終始トップ争いに絡む走りを披露。最後までライバルが食らいついてくる状況だったが、きっちりとトップを守りきり、GT300初優勝を飾った。
パルクフェルメで公式映像のインタビューを受けた2人は、喜びを爆発させるというよりは、安堵の表情をしているのが印象的だった。それだけ、ここに来るまでは苦労が多かった。
三重県出身の三宅は、レーシングカートでの活躍を経て2018年に鈴鹿サーキットレーシングスクールを受講。そこでスカラシップを獲得し、翌年にはFIA-F4に参戦するが、佐藤蓮とのチャンピオン争いに敗れ、ランキングは2位となった。勝利した佐藤はフランスF4へ進出したのだが、その一方で三宅はホンダの若手育成プログラムから外れることに。2020年はフォーミュラカテゴリーのシートを失うことになったが、SUPER GTでMax Racingのシートを獲得。1年目から時より光る走りをみせ、この鈴鹿ラウンドでは“自身ベスト”と言えるスティントをこなした。
GT300クラスのスープラ勢で唯一未勝利だっただけにチームにとって優勝は悲願だった。
「僕は去年からSUPER GTに参戦させていただいていますが、これまでの中では一番満足のいくスティントにできたように思います。予選でミスがあって、最前列からスタートするチャンスを失いました。それを挽回するために、前日のうちからレースをいかに戦うかを考えていました。それが実際にできて、トップで前半スティントを終えることができました」
同じく、堤もここに来るまでに、様々な努力を積み重ねてきた。最近の国内トップカテゴリーで活躍する若手ドライバーは、自動車メーカーの育成プログラム出身者がほとんどだが、堤の場合はそうではない。4輪レースにステップアップした直後も、なかなか参戦チャンスを得られなかったが、マツダのロードスターパーティーレースやMX-5カップ、86/BRZレースにスーパー耐久など様々なカテゴリーに挑戦。徐々に頭角を現し、昨年GT300クラスに初参戦。そして今年は、244号車でフル参戦のチャンスをつかんだ。
後半スティントではNo.5 マッハ車検 GTNET MC86 マッハ号に先行されるも、冷静に状況を見極めて、逆転トップに浮上。チャンスを与えてくれたチームに恩返しをするトップチェッカーを受けた。
「僕はGT300にフルシーズンで参戦させていただくのは今年が初めてで、まさかこんなに早く優勝できるとは思っていませんでした。今シーズンでは、GT300でGRスープラを使う3チームの中で僕たちだけが表彰台に乗ることができていませんでした。それに対して、思うところがいろいろあったんですけど、今回しっかり結果を残せたことで、チームオーナーであるGo Maxさんをはじめとするチームの皆さんや、スポンサーさんに対して良い恩返しができたんじゃないかと思っています」
これで三宅/堤組は合計で34ポイントとなり、一気にランキングトップに浮上。2人とも、ポイントリーダーに躍り出たことについては驚きを見せていたが、同時にひとつ結果を残したことに、自信を深めている様子でもあった。
第5戦SUGOではサクセスウェイトの上限100kgに達した中でのレースとなる244号車。これまでほど簡単にはいかない週末となりそうだが、間違いなく今年のGT300チャンピオン争いに絡んでくることだろう。
時には挫折も味わい、様々な苦労を経験してきた2人。それでも諦めずに努力を積み重ねてきたことが、今こうして結果となりつつある。それだけに、サクセスウェイトを多く積んだ状態で、どんなレース運びを見せるのか。目が離せない第5戦SUGO、そしてシーズン後半となりそうだ。
文:吉田 知弘
吉田 知弘
幼少の頃から父親の影響でF1をはじめ国内外のモータースポーツに興味を持ち始め、その魅力を多くの人に伝えるべく、モータースポーツジャーナリストになることを決断。大学卒業後から執筆活動をスタートし、2011年からレース現場での取材を開始。現在ではスーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久、全日本F3選手権など国内レースを中心に年間20戦以上を現地取材。webメディアを中心にニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載している。日本モータースポーツ記者会会員。石川県出身 1984年生まれ
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