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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2020年10月16日

高校選手権東京A1回戦 東京農業大一×成蹊@駒沢補助

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農一×成蹊.JPG

5年ぶりに2次予選へ帰ってきた世田谷のグリーン桜と、こちらも5年ぶりの2次予選を戦う吉祥寺の雄が対峙する第4試合。東京農業大一と成蹊の1回戦は、引き続き駒沢補助競技場です。

初戦は都立若葉総合に6-0と快勝を収めると、ブロック決勝では成城学園を2-0で退け、2試合連続無失点で実に第94回大会以来となる、5年ぶりの2次予選進出を決めた東京農業大一。「公式戦がこの選手権しかなくなって、モチベーションのコントロールは非常に難しかったと思うんですけど、そこの想いというのは少しプレーに出せるようになってきたかなと思います」と話すのは石川創人監督。ここまで溜めに溜めたパワーを、この一戦に出し切る準備は万端です。

1次予選は接戦続き。初戦の都立小平南戦を1-0で切り抜けると、続く2回戦も都立武蔵野北相手にウノゼロでの勝利。さらにブロック決勝では、拓大一との激闘をPK戦の末にモノにして、やはり5年ぶりとなる2次予選へと勝ち上がってきた成蹊。前回出場時の5年前は都のベスト16まで進出しているだけに、その再現とさらに先を目指します。やや薄暗くなり始めた上空からは、この日一番の強い雨が。16時45分。実力伯仲の好カードはスタートしました。

ファーストシュートは3分の成蹊。左サイドをドリブルで運んだ東谷陽平(3年・小平第六中)のシュートは、農大一のGK小田桐駿(3年・フレンドリー)にキャッチされたものの、10番が滲ませたこの試合に懸ける意欲。7分は農大一にセットプレーのチャンス。左CKを田幡謙侑(2年・東京SC U-15)が蹴り込み、中田力(2年・三鷹FA)のヘディングはゴール右へ外れましたが、こちらも10番がフィニッシュに絡みます。

10分は農大一。中央右寄り、ゴールまで約30mの位置からレフティの木幡飛来(3年・田口FA)が直接狙ったFKは枠の右へ。15分は成蹊。土井徹也(2年・成蹊中)が短く流し、後藤陸(3年・西東京保谷中)が左足で放ったシュートはわずかにゴール右へ。17分は農大一。ボランチの井上大地(3年・杉並アヤックス)を起点に、木幡が左サイドで始めたドリブルから打ち切ったシュートは枠の右へ。やり合う両者。漂う好ゲームの予感。

そんな中で先制点を手にしたのは、"世田谷のグリーン桜"。23分。右のハイサイドで、競り合ったDFとうまく入れ替わった中島大地(3年・農大一中)は丁寧に中央へ低いクロス。ここに入ってきた渡邊脩太(2年・FCトレーロス)が右足に当てたボールは、絶妙のコースを描いて左スミのゴールネットへ吸い込まれます。一気に咲いた歓喜の輪。農大一が1点のアドバンテージを奪いました。

決して悪い流れではなかったものの、ビハインドを追い掛ける形となった成蹊は、川本琉生(2年・バディーJY)と郡司颯一郎(3年・三鷹FA)のドイスボランチがボールへ積極的に関わりながら、窺うチャンス。27分に農大一も中田を起点に、中島が送ったクロスは成蹊のセンターバックを務める山品拓嗣(3年・成蹊中)がきっちりクリアすると、29分には成蹊にチャンス。左FKを東谷が蹴り入れ、一旦跳ね返されたボールを右サイドで収めた今泉慶太(3年・国分寺第二中)がクロスを放り込み、ニアへ突っ込んだ山品のヘディングは枠の右へ外れましたが、サイドアタックからフィニッシュまで。

34分は成蹊。左サイドバックの城山陸(2年・成蹊中)が絡み、土井が狙ったミドルは、クロスバーの上へ。39分は農大一。渡邊が鋭い突破からクロスまで持ち込むも、ここは戻った後藤がきっちりクリア。「先制点を取って、もうちょっと落ち着いてゲームを運べれば良かったんですけど、そこがやっぱりピッチの状況とテクニック不足で、ちょっと出し切れなかったかなという所ですね」とは石川監督ですが、右から安部雅宏(3年・農大一中)、大塚愛理(2年・川崎中野島中)、樋山圭祐(3年・FCトッカーノ)、中川めい(2年・KSCウェルネス)で組んだ4バックも安定感を誇る農大一が1点をリードして、最初の40分間が終了しました。

後半はスタートから農大一にビッグプレー。42分。右サイドからのクロスを、「もともと自分は相手も味方もわからないようなああいうプレーが好きなので、狙いました」という田幡はヒールボレーを枠の上へ飛ばすも、遊び心を前面に。成蹊も46分には山品が右FKを蹴り入れ、ファーで待っていた土井のシュートが枠を外れると、47分には2枚替え。センターバックで奮闘していた坂東隼也(2年・成蹊中)と土井を下げて、福島航介(1年・FC駒沢)と長田倫(3年・成蹊中)をピッチへ送り込み、全体のバランス向上に着手します。

49分は農大一。左FKを木幡が蹴り込み、こぼれを拾った中田のシュートはDFが身体でブロック。51分は農大一に追加点のチャンス。中川がクロスを送り、DFのクリアボールは左ポストを直撃したものの、あわやオウンゴールというシーンに。54分は成蹊。福島とのワンツーから、後藤がクロスを上げ切り、今泉のシュートは農大一の複数人が懸命にブロック。どちらも高まる得点の可能性。

次にスコアを動かしたのは成蹊。57分。スムーズなパス回しから東谷が左へ振り分けると、後藤はピンポイントクロス。中央に走り込んだ福島のヘディングは、柔らかい軌道を辿ってゴール左スミへ飛び込みます。途中出場の1年生が、この大事な一戦で最高の結果を。1-1。試合は振り出しに引き戻されました。

追い付かれた農大一は57分に1人目の交替。中島とスイッチした嶋野春太郎(1年)を前線へ。59分は成蹊。右サイドバックの山村怜有(3年・成蹊中)がクロスをファーまで届け、川本のシュートはゴール左へ。66分は農大一に2人目の交替。渡邊と中島薫(3年・農大一中)を入れ替え、前線の顔ぶれに変化を。67分は農大一。嶋野がエリア内へ侵入するも、ここは成蹊のGK中村直輝(3年・さいたま南浦和中)が果敢な飛び出しでセーブ。68分も農大一。木幡の左クロスがこぼれると、大塚が枠へ収めたミドルは、中村がライン上でファインキャッチ。一進一退。勝敗の行方はラスト10分間の攻防へ。

70分は成蹊3枚目のカードとして、澤智生(3年・GA FC)がピッチイン。74分は成蹊。川本のミドルは小田桐がキャッチ。76分は農大一。左サイドのアタックから木幡がクロスを上げ、大塚のミドルはクロスバーの上へ。78分も農大一。井上、中田と細かく繋ぎ、木幡のシュートはDFをかすめて枠の左へ。80+1分は成蹊。東谷の左CKから、今泉が打ったシュートはDFがブロック。80+2分も成蹊。今度は右CKを川本が蹴り込むと、福島のシュートはゴール左へ。両者譲らず。勝敗の行方は前後半10分ずつの延長戦へもつれ込みます。

84分の主役は、石川監督も「僕らが教えてできないことができる選手」と評した23番の2年生。左サイドで農大一が獲得したFK。木幡が「『中に味方が入ってくるかな』と思ったので、低いのを蹴って流れるよりは、ちょっと高めに蹴って合わせに行った方が良いかなと思って」左足で入れたボールに反応したのは、「なかなかチャンスが創れない中であのチャンスが来たので、絶対に決めたいなと思っていました」という田幡。体全体で打ち付けたようなヘディングは、ゴールへ力強く飛び込みます。「もう喜びに行きたかったですけど、足が攣っちゃったので(笑)」と殊勲の田幡はそのままピッチに大の字に。2-1。農大一がとうとう一歩前に。

「延長に入った時にちょっと押され気味だったので、我慢強くやるということと、ディフェンスを崩さないことを徹底しました」という石川監督が続けて切ったカード。85分には水上遼人(2年・GA15Academy)を、88分には大江翔(1年)を投入し、全体の運動量にテコ入れを。ラスト10分。泣いても笑っても、残された時間はわずかに10分。

93分は成蹊。左サイドから後藤が蹴ったFKは、中と合わずにゴール左へ。直後には4人目の交替として竹馬慈雄(2年・成蹊中)をピッチへ解き放ち、最後の勝負へ出ましたが、眩く輝いたのは悪魔の左足。96分。農大一が右サイドで奪ったFK。やや角度のない位置でスポットに立った木幡が「あの角度だったら狙いたいと思っていました」と直接狙った軌道は、凄まじいスピードで左ポストを叩きつつ、ゴールネットを激しく揺らします。「何回か今までも勝負を決めるシュートを決めてきたので。今日はゾーンに入っていたと思います」と指揮官も納得の衝撃弾。3-1。大きな、大きな追加点が農大一に記録されました。

98分に農大一は5人目の交替として景山大生(1年)を送り込み、取り掛かるゲームクローズ。99分は成蹊のセットプレー。後藤が蹴った左CKはDFが大きく掻き出すと、100+1分も成蹊のセットプレー。右から川本が入れたCKも、DFがきっちりクリア。「今も毎日1時間ぐらいしかグラウンドを使ったトレーニングができていないので、そういう制限がある中で、3年生を中心に本当によく規律を持ってやってくれたかなと思います。そういった意味でも、今日は本当に3年生に感謝ですね」と石川監督も笑顔を見せた農大一が延長戦を逞しく潜り抜け、次のラウンドへと勝ち進む結果となりました。

「コロナで練習も試合も全然できなくて、選手権は一番先輩たちがずっとやりたかった大会だと思うので、僕たち2年生も盛り上げてやっていった結果が、今日の勝利だと思います」と田幡も胸を張る延長戦での勝利を手に入れた農大一。「今まではああいうオープンなゲームでテンションが上がってくると、もうやらなくなっちゃっていたんですけど、今日はやり切れた所がこの夏で彼らが1つ成長した所かなと思いますね」と石川監督も認めたように、こういう難しいゲームを勝ち切ったことで、この100分間の中でも彼らは大きく成長したのかもしれません。

次の相手は強敵の関東第一。「毎年選手権予選の決勝とかでテレビで見るようなチームなので、自分たちもあまりそういうチームとやる機会はないんですけど、自分はフォワードとして点を獲って勝てるようにしたいです」と田幡が意気込めば、「西が丘を目標にチームはやってきていたので、そこに行ければ一番いいですし、それ以上に今のメンバーでサッカーが続けられたら、より嬉しいですね」とは3年生の木幡。相手にとって不足なし。農大一の快進撃は果たしてどこまで。

土屋

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