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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2020年10月12日

高校選手権東京A1回戦 本郷×関東第一@駒沢第二

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本郷×関一.JPG

かつては全国ベスト4も経験している古豪と、3年ぶりの晴れ舞台を狙う"新小岩のカナリア軍団"の激突。本郷と関東第一の第2試合は、引き続き駒沢第二球技場です。

1973年度、75年度、78年度と過去3回の全国出場を誇り、とりわけ首都圏開催3年目に当たる78年度には並み居る強豪をなぎ倒して、全国の準決勝まで辿り着いている本郷。そんな古豪は現在でも都大会進出の常連であり、昨年度も1次予選を堂々と勝ち上がると、2次予選初戦も都立保谷に4-1と快勝。2回戦でファイナリストとなった東海大高輪台に1-3で敗れたものの、その実力は決して侮れません。

全国初出場を果たした2016年度、17年度と大会連覇を達成しながら、その後は2年続けて予選敗退を強いられ、悔しい時間が続いている関東第一。ただ、今年の3年生は1年時に三重の全国総体を経験した代に当たり、その頃からのレギュラー陣は経験値も十分。「自分たちのためにもというのもあるんですけど、下の学年とかこれからのカンイチのためにも、今年は何とか全国に行きたいと思っています」と1年時からレギュラーを務める類家暁(3年・東京ベイFC U-15)が話せば、「今年は全国の景色を後輩たちにも見せられたらいいなと思っています」とは、やはり全国経験者の菅原涼太(3年・SCH FC)。並々ならぬ決意で特別な年の、特別な大会に臨みます。降り続く雨に止む気配はなし。第2試合は12時15分にキックオフを迎えました。

「だいぶ早いゴールだったので、自分でもビックリしました」とスコアラーも驚く電光石火の先制点は開始29秒。関東第一は右サイドから、こちらも全国を経験している鹿股翼(3年・東急SレイエスFC)がクロスを上げると、DFに当たって流れたボールはファーサイドへ。ここに走り込んだ類家は「キーパーは見えていたので、脇を狙って打ちました」と冷静なフィニッシュ。あっという間に関東第一が1点のリードを手にしました。

以降も「あのゴールでうまくゲームに入れた部分はあります」と類家も言及する関東第一のラッシュ。4分には笠井佳祐(3年・VIVAIO船橋)のパスから、再び類家が放ったシュートは本郷のGK小坂大樹(2年・FCトレーロス)がファインセーブで回避。6分にも鹿股のスルーパスから、飛び出した笠井のシュートはここも小坂がファインセーブ。10分にも類家の左クロスに、2トップの一角に入った宇山輝(3年・FC杉野)が合わせたシュートはゴール右へ外れたものの、一気に狙う2点目とその先。

さて、早々にビハインドを追い掛ける展開となった本郷も、14分には左へ展開したボールから、10番を背負う野坂一聖(3年・本郷中)が縦へ運びながらクロス。最後は関東第一のGK野田好誠(3年・フレンドリー)にキャッチされましたが、藤本秀太(3年・JFC Veragista)と高野真(3年・本郷中)のドイスボランチからの配球を生かしつつ、野坂をポイントに反撃する機会を窺います。

ところが、19分に生まれたゴールも関東第一。少し中央に潜った左サイドバックの肥田野蓮治(2年・FC東京U-15深川)がスルーパスを打ち込むと、「相手が前を狙っているのが見えたので、またいでそのままゴールに行こうと」マーカーと入れ替わるようにエリアへ入った笠井は、GKとの1対1も冷静に右スミへグサリ。去年まではボランチが主戦場ながら、「点を獲ることが好きなので楽しさもあって、自分的にもいいなと思います」と笑うフォワード起用に応えた10番の追加点。スコアは0-2に変わりました。

「今年は時間がなかったので、そうなるとやれることをしっかりやっていくしかないなと思って。だから、結構攻撃の形もシンプルに行くことが多かったような気がするんですけど」と小野貴裕監督も話す関東第一は、まず前へという優先順位が明確。25分に肥田野、藤井日向(2年・C.A.ALEGRE)、類家と繋ぎ、鹿股が枠へ飛ばしたミドルは小坂が懸命にセーブ。26分にも類家の左CKから、上がっていた菅原のルーレットシュートは枠の左へ逸れたものの、アグレッシブにゴールへ矢印を。

28分は本郷にチャンス。左サイドでFKを獲得すると、センターバックの両角将輝(2年・本郷中)がボールを蹴り込むも、ここは藤井が大きくクリア。30分は関東第一。笠井とのワンツーから、鹿股が打ったシュートはまたも野坂がビッグセーブ。33分も関東第一。ボランチに入った堀井榛人(2年・C.A.ALEGRE)の縦パスから、アングルを作って抜け出した笠井のシュートは野坂が弾き出し、再び笠井が押し込んだボールは左ポストを直撃します。

そんな攻勢の流れの中で、次の1点も関東第一に。36分。左サイドで奪ったCKを類家がインスイングに蹴り込むと、こぼれ球にいち早く反応した肥田野は、得意の左足アウトで丁寧にボールをゴールネットへ流し込みます。「入ってきた頃は"小さいテクニシャン"でしたけど、体がグッと伸びたこともあって、これから相当エグくなると思います」と小野監督も評価する左サイドバックが3点目。関東第一、強し。

38分にもさらなる決定機。類家が右サイドへ振り分け、鹿股のピンポイントクロスを宇山がうまく頭で合わせるも、ボールはクロスバーにヒット。40分は本郷のサイドアタック。藤本が良い形でボールカットを敢行し、高野が素早く右へ送ると、熊谷颯太(3年・板橋志村第三中)が好クロスを上げるも、野田が丁寧にキャッチ。「先制点が早い時間で決められて、自分たちでボールを持つ時間が長くなった中で、失点だけしないようにしようと意識していました」と話す菅原と池田健人(2年・大豆戸FC)のセンターバックコンビを中心にした守備陣も盤石の関東第一が、3点のリードを手にして最初の40分間は終了しました。

後半もスタートから関東第一ペース。44分には右サイドに流れた堀井がグラウンダーのクロスを入れると、突っ込んだ宇山のシュートは小坂がファインセーブ。45分に肥田野が蹴った左CKから、菅原のシュートはDFがブロック。そして、47分に生まれた4点目。類家が丁寧に繰り出したパスから、抜け出した笠井は「もう決めなきゃいけない感じ」の1対1を、左足でゴール左スミへきっちり沈めて勝利。スコアは0-4に。

反撃の糸口を掴みたい本郷は、1人目の交替。47分に熊谷を下げて、小山将治(3年)を投入し、狙うサイドの推進力アップ。54分の関東第一は、野田と宇野瑚太郎(3年・Forza'02)をスイッチする3年生GK同士の交替を。直後の左CKを肥田野が蹴り込み、こぼれを拾った北村磨央(3年・フレンドリー)のシュートはDFがブロック。55分にも宇山と笠井を経由して、堀井が打ち切ったミドルはDFをかすめて枠の左へ。

次の主役は「今年はサイドハーフになっても、振る舞い方は真ん中の時と同じ気持ちでやって、よりチームを引っ張れるようにというのは意識しています」と語るナンバー14。57分。右サイドから堀井が上げたクロスはバーに当たって落下すると、この位置に詰めていたのは類家。ストライカーのような嗅覚で、ボールをゴールへ押し込みます。「タイミングの取り方とか見ているものも良くて、コンタクトスキルも強くなってきたので、僕は相当いいんじゃないかなと思っています」と指揮官も高評価のサイドハーフがドッピエッタ。点差は5点に広がりました。

58分は本郷が2トップで好機創出。ドリブルで前を向いた小泉慎太朗(2年・本郷中)が右へ流すと、走った神山崚(2年・大田東調布中)が必死に足を伸ばすもわずかに届かず、宇野が飛び出してキャッチ。59分は"ハットトリック"のチャンス。関東第一は宇山がドリブルで運び、持ち込んだシュートは小坂がビッグセーブでストップも、こぼれは類家の足元へ。しかし、シュートは枠の右へ逸れ、ここは「2点獲ってから『ハットトリックのチャンスはあるんじゃないか』と思ってガンガン行っていたんですけど、悔しかったですね」と苦笑い。

それでもチームの得点に対する意欲は衰えず。61分は関東第一の左CK。肥田野の蹴ったボールは跳ね返されるも、再び肥田野がクロスを上げると、ここに飛び込んだのは「今年は守備だけじゃなくて、得点でもチームに貢献できたらいいなと思っています」というセンターバックの菅原。しぶとく低いボールに食らい付いたヘディングは、左スミのゴールネットへ転がり込みます。「あんな所でダイビングヘッドなんて出るヤツじゃないのに(笑)」と小野監督が笑えば、「ちょっとダサかったんですけど、プジョルが好きと言ったので(笑)、泥臭く決められて良かったです」と本人も笑顔。0-6。関東第一、強し。

62分は関東第一が2枚替え。北村と肥田野を下げて、坂井航太(3年・ARTE八王子FC)と弓氣田葵(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)を投入。65分は本郷にセットプレー。左FKを高野が放り込み、小山がヘディングで競り勝つも、シュートまでは至らず。65分には関東第一が4人目の交替。堀井と高木駿(3年・江東深川第七中)をスイッチすると、笠井はキャプテンマークを高木へ託します。

68分は関東第一。笠井がヒールで落とし、藤井のシュートは小坂ががっちりキャッチ。70分も関東第一。鹿股のパスから類家の右クロスに、笠井が合わせたシュートはゴール右へ。72分も関東第一。左サイドで粘った坂井の折り返しを宇山が残し、笠井のシュートは小坂が意地のファインセーブ。右から三原聡一郎(3年・SKオンゼFC)、両角将輝、山本佳賢(3年・世田谷中)、小柳俊登(2年・本郷中)で組んだ本郷の4バックも、65分以降は小坂同様に集中力を高く維持し、最後の局面で粘り強さを発揮します。

73分は双方が同時に交替。本郷は中村太一(2年・本郷中)が、関東第一は平田晟也(3年・フレンドリー)がピッチへ。74分は関東第一。右サイドを切り裂いた平田のクロスに、笠井が合わせたスライディングシュートは枠を越え、本人も「もっと点を獲れたはずなので、そこは自分の実力不足です」と反省を口に。76分も関東第一。今度は笠井のパスから、走った平田の決定的なシュートは小坂がビッグセーブ。この守護神の執念、まさに鬼神の如し。

本郷のセットプレーは78分。高野が蹴った左CKから、ファーで野坂が何とかキープを試みるも残し切れず。79分は関東第一。類家のスルーパスに平田が抜け出し、シュートも打てる選択肢の中でクロスを選ぶと、走り込んだ笠井も類家もわずかに届かず。80+1分は本郷。左サイドへ丁寧に展開した流れから、小山が放ったシュートは宇野がキャッチ。

80+2分は関東第一。平田のパスから、高木が打ち切ったミドルは枠の右へ外れるも、キャプテンの果敢なトライに盛り上がるベンチサイド。80+2分に本郷は3枚目のカードとして上水流大介(3年・本郷中)をピッチへ解き放つ最後の一手を打ちましたが、程なくして聞こえたタイムアップのホイッスル。「今日は3年生がみんな仕事をしっかりしてくれていましたね」と小野監督も手応えを口にした関東第一が、2回戦へと勝ち上がる結果となりました。

試合後。小野監督は「良くなったなと思うのは、試合の中で僕が2年に厳しいことを言っていても、必ず3年がサポートしているんですよ。ウチの伝統ですけど、オレがガッて言うと必ず3年が『気にすんな』と言ってくれて(笑) でも、それでいいと思っていて、『オマエも若い頃はそうやってやられているんだから、ゲームの中で年下を支えていけばいいな』と思っているので、わざと2年に言う時は思いきり言うようにしているんです。そこはウチの選手も僕にハマるとやられるっていうのはわかっているから(笑)、そういう意味では逞しいなと思いますね」と3年生の成長について言及。確かに1年ぶりに話を聞いた笠井も類家も、その口調や言葉の力も含めて、確実に逞しくなっていたのは間違いありません。

その上で今年の3年生はとにかく元気。「去年、一昨年と自分も試合に関わらせてもらっているんですけど、その中でも結構明るい学年というか、ベンチからもガンガン声を出してくれますし、イケイケになった時が自分たちの一番の強みなのかなと考えているので、そういう展開に持っていけるような試合運びをしていけたらと思っています」とはゲームを完全に仕切っていた類家。明るく、元気な関東第一。これは強いです。

最後に、このゲームは本郷高校の岩野先生のご厚意によって、両チームの保護者を含めた関係者にLIVE配信されていたとのこと。「動画の運営に当たって、雨の中を本郷高校の生徒が撮影してくれました。会場に行けなかった本校の保護者からも『試合経過も伝えてくれて、とても見やすかった』という感謝の言葉もありましたし、寒い中で担当してくれた生徒には直接お礼ができなかったので、この場を借りて御礼を伝えたいと思います。本当にありがとうございました」と小野監督。確かにスタンドにいた私の近くで、傘を差しながら動画を撮影しつつ、試合経過を喋っている本郷高校の選手がいました。こういう時期だからこそ、こういう取り組みは一層価値のあるものだと思います。これも高校サッカーファミリーの素晴らしい所ですね。

土屋

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