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このブログについて
J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
「僕はまだまだですけど、『ここでやりたいな』と思いましたし、自分をこのレベルに持っていきたいと思います」。それまで少し恥ずかしそうに話していた16歳の言葉に一際力が宿る。「まだまだ負けられない部分が見えてきたし、もっともっと頑張らないといけないのかなと思いました」と受けた刺激を口にした、チーム最古参でもある前田悠佑の年齢はちょうど2倍。2017年2月4日。V・ファーレン長崎U-18に所属する高校1年生は、トップチームの一員としてKIRISHIMAハイビスカス陸上競技場のピッチに立っていた。
来たる新シーズンに向けたプレシーズンマッチに当たる『2017 JリーグDAZNニューイヤーカップ』。アビスパ福岡と対戦する長崎のメンバーリストに見慣れない名前を見つけた。江川湧清。背番号30。生年月日は2000年10月24日。「最初は凄く緊張したんですけど、選手の皆さんがどんどん声を掛けてくれて、練習でもいつも通りのプレーができたりする所も出てきました」と話す"ミレニアムベビー"を、高木琢也監督は「ユースだと結構やれるから、今は後ろの選手も少なかったし、ちょこちょこトップチームでも練習させようとは思っていたので今回使いました」とスタメンに抜擢する。3バックの左がその持ち場。7分に2人掛かりの強いプレッシャーを受けるも、あっさり門を通すパスで局面を打開。その後はロングスローも披露すると、30分には邦本宜裕のクロスに飛び込んだ松田力へ激しく寄せ、間一髪のクリアで危機を脱してみせる。
ただ、「たぶん大人のスピードに付いていけないというのが実際だったんだと思います」と高木監督も言及したように、厳しい現実も突き付けられる。7分には自らの裏に潜り込んだ松田を見失い、先制点を奪われると、34分にもやはり松田に自らの前へ入られ、3失点目を献上。前半だけで2失点に絡んでしまう。「ユースでやっている時はちょっとずつ確認したら相手の位置がわかりますし、スピードにも対応できるので、クロスも対応できていたんですけど、プロになるとちょっと目を離したら背後を取られたりとか、間合いをちょっと取られたと思ったら、自分がまったく前で触れない距離を取られたりして、そこがユースレベルと違う所だと思いました」と唇を噛んだ江川。45分間を通じてみても、決して彼が"穴"になっていたような印象は受けなかったが、局面のわずかな勝負のポイントで後手を踏むと失点に直結してしまうプロの怖さは、おそらく脳裏に刻まれたことだろう。
0-3で迎えたハーフタイム。高木監督は江川にこう話したという。「こういう場に出られるということはなかなかそうない。ましてや今Jリーグのキャンプをしている中で、協会の人間がここにもいるかもしれない。オマエなんてまだアンダーカテゴリーの代表だってチャンスがあるんだし、誰が見ているかわからないぞ」。16歳のメンタルにこの言葉が響く。「自分でも『やらないといけないんだ』と思って、前半より強い気持ちで入れたと思います」と振り返る後半は大きな破綻もなく、きっちりと1つ1つのプレーをこなしていく。「後半はしっかり確認しながらやれて、前にも強く当たれたりして、取れなかったんですけど相手のミスを誘ったりとか、そういう所ができたと思います」と一定の手応えを口にした江川。指揮官も「前半はそれなりに彼も"準備"していたと思うんですけど、守備の所が足りなかった。でも、前半よりは後半の方が良い"準備"をしていましたね」とこちらも一定の評価を下す。88分にもう1点を追加され、ゲームは0-4で敗れたが、江川は90分間ピッチに立ち続け、大きな経験を自らの中に蓄えた。
元々長崎は島原の出身。「アイツのお父さんも良く知っているし、家もウチの実家の近くなんですよ」と笑ったのは高木監督。江川も「お父さんは国見高校で高木さんの後輩です。年代はカブっていないと思いますけど」と笑顔で明かす。中学時代はJFAアカデミー熊本宇城に在籍。平日はアカデミーで薫陶を受け、土日は熊本の第3種で存在感を放っているFCKマリーゴールド熊本でプレーしていた。「どうしてV・ファーレンのユースを選んだんですか?」と問うと、「自分はユースでやりたかったんです。高校だと人が多かったら1年生の時はボール拾いとかあって、ボールに触れる時間が短いと思ったので、ユースだったら人数も限られていて環境も整っていますし、1年生から自分を磨くことができたり、試合にも出られるのかなと思いました。それにチャンスがあればトップチームにも練習参加に行けると思いましたし、そういうことを考えてV・ファーレンのユースに来ました」とのこと。この日の90分間で得たものを考えても、江川が自身の選択に滲ませた思惑は想像通りに進み始めているのかもしれない。
3バックの真ん中を務め、自分のちょうど半分の年齢に当たる左センターバックをサポートした前田は、クラブのことも考えた少し大局的な視点からこう語っている。「こういうことは非常に良いことですよね。やっぱりユースの選手がどんどん来てくれることによってクラブ自体がどんどん活性化しますし、より強くなれると思うので、こういうことはどんどんやって行って欲しいなと思います。彼もまだ高校生ながら堂々としたプレーができているので、そのへんに関しても良いのかなと感じましたね」。高木監督も「まだトップで練習をあまりしていないから。2種登録するかしないかというのは、もうちょっと練習してからですね」と慎重な姿勢を見せつつも、「でも、ユースだと逆に物足りなさが彼の中にあるはずなので、こっちでやった方が良いかなとも思います」とも言及している。「今日の最初は『どこまでできるかな』というワクワクと緊張もあったんですけど、試合をしていく中で『ああ、これがプロなんだ』と感じましたし、自分の今の実力の位置がわかったので凄く良かったです」とゲームを思い出しながら言葉を紡いだ江川。もちろんまだまだこれからの素材であることは言うまでもないが、会話やしぐさの端々にあどけなさの残るこの16歳の名前を覚えておく必要は間違いなくありそうだ。
取材、文:土屋雅史
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