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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

2020年02月28日

Pre-match Words ~柏レイソル・工藤壮人編~(2015年5月1日掲載)

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【Pre-match Words 柏レイソル・工藤壮人編】

(2015年5月1日掲載)

Q、ユース時代の、特に高校3年時にはある程度吉田(達磨)監督の完成形に近いサッカーを経験した工藤選手としては、今のチームは監督のやりたいことで考えると、何パーセントくらいの位置まで来ていると思いますか?

A、もちろん現状には満足していないですけど、67割とか良い位置に来ているんじゃないかなと思っていますし、ユースの時に比較的表現できてきたサッカーというのはありますけど、やはりプロになって11人のクオリティや選手の質というのはもちろん相当上がっていますし、達磨さんがいくつか修正すれば、それをしっかりとピッチで表現できる選手たちが集まっているので、ユース時代よりも完成した時というのは相当素晴らしいものを見せられると思います。もっともっと見ていて良いサッカー、また1試合を通して安定したプレーだったり試合運びというのを見せられると思うので、まだ今は1つうまくいかないことでちょっとグラッときてしまう部分があったりとか、不安定な部分はありますけど、もっともっと細かく突き詰めて、またそこに結果が付いてくることで自信を持っていければ、まだまだ自分たちの伸びしろはあるなという風に思っていますね。

Q、指揮官という意味では7年ぶりに吉田監督に指導を受けていると思いますが、ユース当時と今で吉田監督の指導に何か変化はありましたか?

A、より達磨さんの中の求めることが非常に整理されていて、要点をしっかりとまとめた中で選手にアプローチしてくると。そういうような所を凄く感じますし、ユースの時は18歳とか比較的まだまだ若い選手ですし、細かいことを隅々というか、小さなことでも時には声を荒げて言われた時もありました。ただ、今はそんなに細かく言うことはなくても選手たちはわかっていますし、ここをこうすればいいという所を達磨さんの中で整理して選手にアプローチしてくるので、選手としては自然と頭の中にスッと入ってくる感覚をみんな持っていると思います。

また、試合に向けての対策でもかなり達磨さん自体がサッカーに対する時間を相当注ぎ込んでいると思うので、その分試合に入った時に「これが言っていたことなんだな」とか、本当に言っていたことが実際にピッチ上で起こったりするので、それは「達磨さんはさすがだな」と思いますし、チームをまとめるマネジメントの所でも選手を引っ張っていくというか、逆に選手が付いていきたくなるような部分がさらにユースの時より増しているような感じではありますね。

Q、個人的に吉田監督がユースとプロで考え方が違うのかなと思ったのは、ACLのアウェイの全北現代戦で3バックを採用したことでした。ユースの時はまずシステムを変えることはなかったと思うのですが、そのことに関して工藤選手はどう思いましたか?

A、僕も正直ビックリした部分はありますし、ユースの時というのは完全に自分たちのペースで、フォーメーションも自分たちのやり方で、というのがメインだったんですけど、トップチームの指揮官になったことでその時その時の状況によって、自分の戦術や考えを選手に落とし込む時に、「ああ、これだけ変えてくるんだな」というか、やはりプロというのは勝ちにこだわらなくてはいけないということを、達磨さんも感じているんだなというのは率直に感じましたね。

Q、今はみんなが単純にサッカーを楽しんでいるようにも見えますが、いかがですか?

A、そうですね。選手みんなに聞いても、やはり守備をやるよりは攻撃をやった方がもちろん楽しいので、常に主導権を握りながら自分たちが思い描いたように崩せた時というのは常にみんな笑顔ですし、特に練習もやりながら笑顔というか、歯を見せてサッカーをしている訳ではないですけど、緊張感がある中でも本当にピリッとした、選手11人が激しさの中でも楽しみながらやっているというのは昨年と僕は差を感じますし、実際にフットボールをやっている中でも11人が生き生きと楽しくやれているなというのは感じますね。

Q、工藤選手自身も普段からこういう取材に対して非常に協力的な姿勢で臨んで下さる中で、昨年よりも取材対応に余裕があるというか、表情も変わったような気が個人的にはしているのですが、ご自身でそれを感じることはありますか?

A、もちろん自分自身も感じていますし、今となれば去年の自分を冷静に見られる自分もいます。去年は比較的チームのことも考えながら、ただ自分に結果が付いてきていないという中で、色々なことを考えながらサッカーをしていたという所で、もちろん自分自身の今の立場を考えると、そこは背負わなくてはいけない部分ではありましたけど、そのあたりの割合というか、チームの仕事をやりながらも自分ではゴールを決めたい、だけどそのためにバランスを崩してチームの足を引っ張ってはいけないとか色々なことを考えていて、それがプレーや表情に出ていたというのは凄く感じていました。今はそういうストレスがないというのは非常に大きいと思いますし、僕としても去年の経験というのはまた1つ選手として、メンタル的にもこれからに向けての良い経験になったというか、チームの中での仕事という所で今となっては非常にポジティブに捉えています。

Q、ユース同期の武富(孝介)選手が戻ってきたことで、酒井宏樹選手がチームを離れてからは久々に90年組の所属選手が2人になりましたが、彼がレイソルに帰ってきたことは大きいですか?

A、もちろん同期だったり、達磨さんがやってきたサッカーを一緒に体現してきた選手がまた戻ってくるというのは非常に嬉しいことですし、彼の才能やポテンシャルを考えると今のレイソルに必要で、戻ってこなければいけない時はやはり今年だったと思います。湘南や熊本での活躍は常に気に掛けて見ていて、お互いに連絡も取りあっていたので、彼もかなり逞しくなったのは知っていましたし、僕はずっとレイソルでやっていましたけど、それぞれの場所でたくさんのものを得て、またこのレイソルというクラブで一緒にプレーできるという喜びや幸せを感じながらプレーしています。

Q、この間の川崎戦のゴールやホームの全北戦のゴールを見ても、武富選手は逞しさが格段に上がった気がしますが、それは一緒にプレーしていても感じますか?

A、プレーに迷いがないというのは凄く感じますし、行くとなったら相手をなぎ倒してでも行くというような感じですよね。正直僕からしてみたら、川崎戦もあれだけディフェンスラインが揃っている所へ突っ込んで行く勇気というか、あそこからどうゴールにねじ込んでいくかというイメージを僕は想像できないですけど、彼はそこで12人をタイミングでかわして、GKが動けない状況でシュートを打つとか、そこでゴールを決めてしまうのが彼の凄さだと思います。今までだったらあそこでパスを選択したり、どうしても「うまくやってやろう」という意識が強かったと僕は思うんですけど、特にACLや川崎戦のゴールというのは、しっかりと整理した中で自分がシュートに持っていくために、どこにボールを運んていった方が良いのか、それに対してどこにディフェンスがいて、どう体をぶつけてとか、そういう所の頭の整理ができていることが、今の好調に繋がっているのかなと思います。

Q、レイソルのユースのCFは凄く特殊だと思いますが、ああいうサッカーを志向するチームのCFをやっていたことが今の右サイドや以前務めた右サイドバックのように、色々なポジションを任される上でプラスになっている部分はありますか?

A、僕もCFでずっとプレーできればそれに越したことはないですけど、右ワイドだったり右サイドバックだったり、今年なんかはインサイドハーフもやったりしましたし、そういう所で常にどこにスペースがあって、誰がボールを持った時に誰が動き出してということを、凄く頭の中で整理できたのがユース時代だと思っています。それがあるからこそ、どこのポジションに行っても「ここにボールがある時にはどこにスペースがある」とか「誰が動き出している」というような頭の判断が素早くできていますし、僕も含めてユース上がりの選手たちは、プロに上がってもそういう部分はスッとできるのかなと思っていますね。

Q、今年は大島(康樹)選手が昇格してきましたが、レイソルのユースからはCFがなかなかトップチームへ上がってこないと思います。そんなにCFが目立つサッカーではない中でプレーしてきた選手として、今まで「このサッカーのCFは難しいなあ」と感じたようことはありますか?

A、なかなかチャンスが来ないこともありましたし、あのサッカーをやっていると比較的中盤の選手やサイドの選手の方が2列目から飛び出したりするので、ゴールチャンスが増えるのかなというのは昔から思っていました。ただ、僕自身もそういう中でも数少ないチャンスだったり、最後に押し込む所にどうやってゴール前に入っていくかという所の頭の整理はユースの時からできていたので、それが今に繋がっているんじゃないかなと思っています。

Q、やはり下部組織でプレーする後輩たちへの愛情は人一倍あると感じますか?

A、そうですね。特に一貫した指導の下、一貫したコンセプトの中でこういうサッカーをやっているということで、僕がやはり模範にならなくてはいけないと思っています。後輩たちに対してどう立ち振る舞って、どう良いモノを見せていけるかということを大事にしたいと僕自身は思っているので、後輩のサッカーだったり個人のプレーや、どういう選手がいるのかというのは常に気に掛けていますし、時間が許す限りなるべくユースの練習もそうですし、試合にも足を運んで見ようというのは心掛けています。もっともっとレイソルが良いチームになるためには育成年代が重要になってくると思うので、もっともっと下からの突き上げが来るように僕も手助けをしていきたいですし、ただ手助けをしているだけではなくて自分も生き残っていかなくてはいけないので(笑)、そのへんはさじ加減を考えながらやっていければと思いますね(笑)

Q、レイソルの下部組織の小中学生を見ていて工藤選手の頃と比べても「みんな上手いなあ」と感じることはありますか?

A、感じますね。僕らの小学校の頃というのは、まだ今みたいなサッカーは確立していなかったのでとにかく個で、デカくて速くて1人で抜けるヤツが凄いというサッカーの中で、僕がどうやって生きていくかという所も凄く模索していました。たまに練習場で見ている最近の小学生の子を見ていると、あまり1人でゴリゴリ行くというよりは自分を抑えながらもチームのためにやっているんですよね。「自分が目立ってやろう」という気持ちが強い頃だと思うんですけど、うまくスペースを共有しながらパスサッカーをできているのを見ると、不思議というか凄いなと思いますけどね。

Q、「もうちょっと自分を出してもいいのにな」と感じることもありますか?

A、そうですね。もちろんそれは小学生年代だから許されるというのもありますし、行ける時は行っても良いと思いますけど、それがレイソルの良さというか、その子がプロに上がってきた時にすんなりトップチームに入れる状況を創れているというのは、本当に見ていて「良い子たちが育っているな」と感じますね。

Q、最後は背番号に関してお話を聞かせて下さい。良く聞かれていることだと思いますが、もうレイソルの9番というのは工藤選手のことしか知らないサポーターもいると思います。改めて9番という番号の重みを感じることはありますか?

A、毎試合本当にプレッシャーを感じますし、僕自身も付けた時から見える風景というのも変わりました。スタジアムに、特に日立台のピッチに立った時には、良い言葉も厳しい言葉も掛けられますけど、それを自分で理解した上で「9番を付けたい」と言いましたし、今の所はその背番号を背負ってきて良い時も悪い時もあったので、それもある意味で楽しみながらやれているのかなと感じています。ゴールを取ることがこの背番号には求められていますし、口でというよりも背中で語るような選手に、僕がもっと結果を残すことでなっていなかくてはいけないなと思っていますね。

Q、"前任者"から最近声を掛けられたりしましたか?

A、最近はもう"前任者"もコーチの眼になっちゃっているので(笑)、アドバイスというよりは世間話じゃないですけど、連絡を取っても「キタジさん、最近コーチの方はどうですか?」みたいな感じの話しかしないですよ。でも、僕が一緒にプレーしてきてキタジさんの凄さとか、「9番とはこうあるべきだ」というようなものを近くで勉強させてもらったので、今になってキタジさんから特に何かを言われることもないと思いますし、ある意味でここから僕の9番像をしっかり見せていければと思っているので、それをたぶんキタジさんも温かく見守ってくれていると思いますし、毎試合良い報告ができるように、僕は自分の9番像を創っていけるように努力していくだけですね。

Q、改めて「レイソルの9番は大変な番号だな」と実感したような瞬間はありますか?

A、それは僕がスタメンで出ていようが、途中出場であろうが、やはりチームの勝敗に対する責任というのは凄く感じますし、それをダイレクトな言葉でスタンドのサポーターから言われた時に、9番の重みというのは凄く感じました。残り5分で出た試合で負けた時にも「オマエが点を決めろよ」と言われたこともありましたしね(笑) だからこそ、そこは残り2分でも3分でも負けていたら引き分けに、同点だったら勝ちに持っていくとか、そういうゴールを決めなくてはいけないと実感しましたし、常にピッチに入る時にはそこを求められるということを、9番を付けてから凄く感じましたね。

Q、実は柏の重鎮とも言うべきライターの鈴木潤さんにお聞きしたのですが、北嶋(秀朗)選手が柏で決めたJ1でのゴール数にあと2点で並ぶそうです。そのことを聞いて率直にいかがでしょうか?

A、僕自身キタジさんをずっと超えたいと思ってやってきた中で、実際にキタジさんがゴール数という意味ではそこまで多くなかったんだなとは正直思いました。ただ、そういう中でもあれだけサポーターに愛されて、実際に要所要所で記憶に残るゴールを残してきたという所で、本当に凄いなと思いましたし、記録で抜けたとしてもサポーターからの「9番とはこうべきあるもの」だとか、キタジさんと比較された時に自分自身もまだまだ物足りなさは凄く感じるので、記録の所では早く超えなくてはいけないですし、あと2点は早めにクリアしたいと思っていますけど、チームの中での存在やサポーターからの見られ方で超えるのはまだまだ先だと感じています。ゴール数では他の選手たちが簡単に超えられないくらい、まだまだたくさんゴールを決めたいですけど、近くで見てきたからこそもっと背中で語れるようになれるくらい、キタジさんを超えられるようにさらなる努力をしないといけないと思っています。

【プロフィール】

U-12U-15U-18と柏の下部組織でプレーし、2009年にトップチームへ昇格。2012年、2013年と2シーズン続けてリーグ戦二桁ゴールを記録するなど、チームのエースストライカーに成長した。一昨年は日本代表にもデビュー。国際Aマッチ4試合出場2得点。


※所属チームを含めた情報は、当時のものをそのまま掲載しています。

ご了承ください。

取材、文:土屋雅史

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