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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2020年01月24日

東京都クラブユースU-17サッカー選手権大会決勝ラウンド FC東京U-18×大森FC@小平(2020)

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新シーズンの幕開けはいつもこの大会から。おなじみ東京都クラブユースU-17選手権大会は決勝ラウンド。FC東京U-18と大森FCの一戦は、小平グラウンドです。

昨シーズンは堂々のプリンス関東制覇。勢いそのままにプレーオフにも勝利し、1年でのプレミア復帰を手繰り寄せたFC東京U-18。新チームの立ち上げに当たるこの大会を「勝ち負けで言うならしっかり勝たなくちゃいけないし、ちゃんと最後は西が丘で、観客のいる前で、プレッシャーの掛かった中で、今の時点でどれぐらいできるかをやっていくと。ただ、その中でいろいろな選手を使いながら、チームコンセプトの浸透だったり、チャンスを与えることで選手を伸ばしたり、そういうことも同時に考えています」とは中村忠監督。「チームとして目指しているのは三冠で、言うのは簡単なんですけど、やるのは凄く簡単じゃないと自分たちもわかっています」と佐藤恵介(2年・FC東京U-15深川)も口にした"三冠"への道もまずはここから。この90分間に全力で向かいます。

激戦の1次リーグを力強く勝ち上がり、2年連続でこの決勝ラウンドへと進出してきた大森FC。「僕らは1次予選から上がってきて、去年もこのステージでやらせていただいたんですけど、やっぱりここのレベルを肌で感じる中で、自分たちがチャレンジしている部分がどれだけ出せるのかという想いを持ってやってきました」と話すのはチームを率いる梶原大監督。1年前は0-4、0-4、0-7と各チームとの力の差を見せ付けられただけに、その時からどれだけ自分たちが『チャレンジしている部分』を積み上げてきたかを、強敵相手にぶつけるだけです。会場の小平は、折からの雪が冷たい雨に変わりつつあるタイミング。決勝ラウンドのオープニングマッチは、15時ジャストにキックオフされました。

あっという間の先制点は3分。左サイドで獲得したCKを、「自分の武器なので、左足はもう絶対誰にも負けないように去年からやってきた」と言い切るセンターバックの新良介(2年・FC東京U-15深川)が蹴り込むと、大森理生(2年・FC東京U-15むさし)が残したボールを「セカンドボールを拾うという意識は凄くあった」という佐藤が浮き球で中央へ。ここへ突っ込んできた常盤亨太(2年・FC東京U-15深川)の華麗なループは、GKの頭上を破ってゴールネットへ吸い込まれます。「ああいう"こぼれ球"は狙っているので、そこが出て良かったかなと思います」という常盤の言葉を受けて、「アレは正直狙っていなくて。セーフティーにやったつもりで、そこに常盤くんがいて決めてくれたので、自分は何もしていないです。手応えはないです(笑)」とアシストの佐藤は素直に告白。何はともあれ、早くもホームチームが1点のリードを奪いました。

「やっぱりいる選手でやれることを増やさなくちゃいけないというのを考えると、たぶん防戦一方になったら今年はやられると思うので、攻撃の質や保持率をどんどん上げていって、という所をやっていかないと」と中村監督も話したFC東京は、4-4-2の布陣でボールを動かしていくスタイルを明確に。とりわけ左センターバックに「3バックの時よりも、4バックのセンターバックの方が前に供給する回数も増えてきますし、質の高いボールを供給できれば攻撃の第一の起点になるので、そこはこだわってもっとやっていけたらなと思います」と話すレフティの新を置くあたりに滲む、2020年のチームの狙い。

14分には安田虎士朗(1年・FC東京U-15深川)の縦パスをギャップで受けた常盤がスルーパスを通し、抜け出した野澤零温(1年・FC東京U-15深川)はGKを外したものの、シュートは右ポストにヒット。15分にも「こういうのも出せるとまた自分の幅が広がるなと思いました」と振り返る常盤がピンポイントのスルーパスを打ち込むと、完璧なトラップで前に抜け出すも、シュートを右ポストに直撃させた佐藤は「トラップが思った以上に結構良かったので、そこで『オッ』てなって、ちょっとシュートの質が落ちてしまったかなと思います」と苦笑しましたが、続けざまに常盤のアイデアから2つのフィニッシュを生み出します。

さて、「予選の時は4-4-2だったんですけど、今は4-3-3と攻撃的なシステムに変更しました」と梶原監督も明かした大森FCは、アンカーの田中爽太(2年・大森FC U-15)が桑田太一(1年・大森FC U-15)と地頭方輝(2年・大森FC U-15)で組んだセンターバックの間に落ちてボールを受けつつ、右から根本隆玖(1年・大森FC U-15)、河原航和(1年・大森FC U-15)、森泉光輝(2年・大森FC U-15)が並ぶ3トップへの配球を窺うものの、なかなか攻めの一手は見い出せず。23分には河原のパスから、田中が裏へボールを落とすも、走った根本にはわずかに届かず。相手を慌てさせるまでには至りません。

28分はFC東京。新が頭で送ったパスから、左サイドを切り裂いた角昂志郎(2年・東京武蔵野シティFC U-15)のシュートは、大森FCのGK重盛地球(2年・大森FC U-15)がキャッチ。29分もFC東京。左サイドを飛び出した安田のシュートはゴール左へ。32分もFC東京。大森が右へ展開し、サイドバックの上田浩大(2年・FC東京U-15むさし)が送ったクロスに佐藤が合わせるも、ここは重盛が冷静にキャッチ。35分もFC東京。常盤が左へ振り分け、サイドバックの菅原一真(2年・FC東京U-15深川)が上げ切ったクロスを野澤が頭で叩くも、ボールは枠の右へ。攻めるFC東京。守る大森FC。

すると、次の得点を記録したのも若き青赤。37分。「前日練習の時に中の選手とタイミングをすり合わせていて、ちょっと最初の方は入ってくるのが早かったんですけど、『もうちょっと遅らせて』ということを言ったんです」と明かした新の右CKから、混戦の中できっちりプッシュしたのは野澤。ボールはゆっくりとゴールネットへ転がり込みます。今シーズンのストライカー候補と目されている42番が一仕事。点差は2点に広がりました。

一気に畳み掛けたいFC東京。39分には梅原翔琉(2年・FC東京U-15むさし)を起点に、菅原を経由したボールを角が狙ったシュートはクロスバーの上へ。43分にも新の右CKがこぼれると、大森が頭で跳ね返し、拾った角の1対1から放ったシュートはゴール左へ。45分に常盤が蹴った左FKから、ファーで大森が合わせたヘディングは枠の右へ。45+1分にも菅原のパスを角が巧みにフリックし、抜け出した梅原のシュートは重盛がファインセーブで回避。「崩しまではだいぶ良くなってきたんですけど、最後のゴールという部分で決まらないのが多いのが今の自分たちなので、そこはもっとレベルを上げていきたいと思います」と佐藤も口にした通り、チャンスの数から考えれば少ない2点のアドバンテージをFC東京が握って、最初の45分間は終了しました。

ハーフタイムにFC東京は4枚替え。松本愛己(中学3年・越谷サンシンSS)、大迫蒼人(1年・FC東京U-15むさし)、米陀大洋(1年・FC東京U-15深川)、川口祐馬(2年・FC東京U-15深川)がピッチに。松本は右サイドハーフ、大迫は左サイドバックに入り、米陀は常盤とボランチに並んだことで、安田が左サイドハーフへスライド。川口は中央の1.5列目気味に配され、後半へ向かいます。

49分はFC東京。川口の丁寧なパスから、松本がミドルを枠へ飛ばすも、ここは重盛がファインセーブ。54分もFC東京。果敢なオーバーラップからエリア内へ侵入した上田が、強烈なシュートを見舞うも、再び重盛がビッグセーブで応酬。57分もFC東京。常盤とのワンツーでディフェンダーを剥がした松本の枠内シュートは、三たび重盛がファインセーブ。「ウチはリーグ戦も含めて、東京の中でプリンスやプレミアのレベルとやれるのは、もうこのクラブユースの、この大会しかないんです」と梶原監督も言及した中で、昨年のこの大会も経験している守護神がゴールに堅い鍵を掛け続けます。

大森FCベンチが動いたのは59分。右サイドバックで奮闘した小財駿汰(1年・大森FC U-15)に替えて、五十嵐雄(2年・大森FC U-15)を投入し、「前半を見ていて後ろ向きな攻撃が多かったので、『取った瞬間にまずセンターフォワードを見よう』と。『そこは無理せず落として、次が反応しようね。そこのランニングが勝負だよ』と言っていた」(梶原監督)"ランニング"の部分に着手。FC東京も60分に常盤が重盛にまたもファインセーブを強いるボレーを打ち込むと、62分には2枚替え。熊田直紀(中学3年・ESTRELLAS FC)と生地慶多(中学3年・松庵小SC)の"中3コンビ"をピッチへ解き放ち、目指す次の1点とさらなるゴール。

63分もFC東京。エリア内にドリブルで熊田が侵入するも、重盛が絶妙のタイミングで飛び出してシュートは打てず。64分もFC東京。大迫のパスを受けた生地のフィニッシュはゴール左へ。70分もFC東京。常盤が送ったパスから、マーカーを外した松本のシュートは枠の左へ。「最後のフィニッシュの精度が欠けていて、今シーズンチームを立ち上げた時からそういう所が課題に上がっていたんですけど、そこはもっと突き詰めてやっていかないといけないかなと思いました」と新も言及した通り、なかなか3点目が奪えません。

71分にはFC東京が7人目の交替として、GKを彼島優(1年・FC東京U-15深川)から齋藤朝陽(中学2年・二寺SC)へスイッチ。71分には常盤のラストパスから、川口がフリーで打ったシュートを枠の上へふかすと、直後には8人目の交替として「自分は焦れないで、ゲームが壊れないようにしながらみたいには意識していた」と語るなど、確かな存在感を発揮していた大森が下がり、古屋颯眞(2年・FC東京U-15むさし)がそのままセンターバックへ入ります。

大森FCも71分に創り出したフィニッシュ。左サイドバックの中島大河(1年・大森FC U-15)を起点に、中央でインサイドハーフの飯村直(2年・大森FC U-15)と加藤蓮(2年・大森FC U-15)がボールを動かし、最後は右に張り出した根本がミドルにトライ。ボールは枠の右へ外れたものの、「自分たちで攻撃を生み出せる、前にアクションを取れるサッカーは目指してやっている最中ではあります」と指揮官も口にした狙いの一端を。74分はFC東京。常盤、熊田とボールを繋ぎ、松本の枠内シュートは重盛がこの日6本目のファインセーブで仁王立ち。75分もFC東京。熊田が落とし、生地がドリブルでエリア内へ切り込むも、地頭方がきっちりカット。77分もFC東京。生地の丁寧なスルーパスから、松本のシュートは枠の右へ。スコアは2-0のままで、残り10分間の攻防へ。

80分には大森FCにチャンスの芽。飯村が前向きにボールを運び、右前方へパスを送ると、走った加藤にはわずかに届かず、新にクリアされましたが、その前にも飯村から加藤というラインで惜しいシーンを創出したシーンに触れて、「ウチが前向きでF東さんの最終ラインに2回向かえたというのは、攻撃で言ったことをやってくれたので、その2回は良かったかなと思います」と梶原監督も一定の評価を与えます。

FC東京が83分に切った9枚目のカードは高橋安里(1年・FC東京U-15むさし)。85分には川口が単騎でエリア内へ持ち込み、そのまま蹴ったシュートは重盛がキャッチ。90+1分に常盤が打ち切ったミドルはクロスバーの上へ。ラストチャンスは90+3分。新の右CKに、高い打点で合わせた常盤のヘディングは枠の上へ消え、ここでタイムアップのホイッスル。「結果的にはもっともっと点を取ってというのが気持ちいい試合ですけど、ただ、チームとしてやろうとしていることをやろうとはしていたので、本当にここから先、技術を付けていかないとという部分は見えましたね」とは中村監督。FC東京がひとまず新チームの立ち上げを白星で飾る結果となりました。

昨年のチームより、現時点ではよりボールを丁寧に動かしていくスタイルを打ち出したこの日のFC東京。その変化について指揮官に尋ねると、「僕がどれくらい我慢できるかですよ。チームが強くなる方向というより、選手たちが上手くなる方向でどれぐらいやれるか、僕自身もチャレンジできるかとか我慢できるかとか。だけど、それができないんだったら、『もう全員で守ってカウンターしかないよね』って。僕は負けたくないから、どこかで我慢できなくなったらシフトチェンジすると思うので。可能性がそっちの方が高いんだったら、僕のチャレンジにもならないし、選手のチャレンジにもならないし。間違いなく去年いる子と今年いる子は違うので、今年いる子が上手くなるようにやっていかないといけないのかなという。すぐ我慢できなくなる可能性もありますけどね(笑)」とのこと。その見極めが今年のチームは1つのカギを握って来そうな気がします。

また、ACLに臨むタイトなスケジュールもあってか、トップチームのキャンプに帯同する選手がいなかったことについても、中村監督は「今年の昇格はタイシ(野澤大志ブランドン)が上がっちゃったから、今の段階では"ゼロ"というふうに正直思っているので、もう最初のミーティングでそれは伝えたし、『相当頑張らないと上がれないよ』と。でも、表面上じゃなくて本当に上がりたいと思っている選手は数人いそうなので、『見返してやる』というのが出てくればいいと思います」ときっぱり言い切る中で、その"数人"の筆頭格であるはずの常盤も「タイシは寮も同部屋でいつも2人でいるんですけど、同じ学年で、すでにトップ昇格して、代表とかも呼ばれて、差を付けられてるなと思っていて、今年は去年J3とか出ていたので、自分もキャンプに呼ばれるんじゃないかなと考えていたんですけど、呼ばれなくて、『そんなもんなのかな』と思いつつ、『そんなもんだからこそ、もっと練習しないといけないかな』と思いました。『これから見てろよ』って感じです」と頼もしい言葉を。いろいろな角度から今年のFC東京U-18にも注目していく必要がありそうです。

「なかなか難しかったですけど、強いてやれた所を挙げれば守備の所で90分間は切らさずに、守り切った訳ではない中でも、『こうやろうね』と僕が伝えたことは、選手たちはひたむきになってくれたのかなというのは感じますね。逆にやれなかったのは攻撃の部分で、どうしても慌ててしまってミスが多いし、そもそも個人の所で相手のプレッシャーに対して後ろ向きな攻撃が多くて、結局前に運べないというのはやっぱり『まだまだだな』というのは感じます」と梶原監督も話した大森FCは、それでも昨年のこの大会で経験した3試合よりは拮抗したスコアに。「まだまだですけど、去年はこのステージに先輩たちが連れて来てくれて、今の2年生もそれを見ている訳で、それは少なからずウチの伝統として『あのステージに行くんだぞ』という、『1次予選で負けちゃいけない』というプレッシャーは残っていて、選手たちも自分たちが壁を破ればここまで来れるというのは歴代の先輩たちを見て、もうわかっているので、僕らとしてはこのステージは正直逃したくないんですよね。今はまだ2年ですけど、来年も再来年もここまではウチとして来られるように、その伝統をもっと積み上げて、意識して、良いチームはいっぱいあるんですけど、負けないようにというのは思っていますね」と前を向いた指揮官の元、残された2試合にも彼らは間違いなく全力で立ち向かうはず。大森FCの伝統は確実に積み上げられ始めています。        土屋

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