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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
28年ぶりの全国へ、そして10年ぶりの全国へ王手を懸けたい強豪同士の対峙。堀越と帝京のセミファイナルは、引き続き味の素フィールド西が丘です。
2年連続でファイナルを戦ったのは4年前と5年前。その頃から継続して、選手主導のいわゆる"ボトムアップ"をベースにしながら、自主性を育むチーム作りに取り組んできた堀越。今シーズンは関東大会予選で東海大高輪台を破り、國學院久我山に惜敗。インターハイ予選でも関東第一の5連覇を阻み、最後は大成に延長戦で競り負けたものの、どちらも代表校と好勝負を演じるなど、既に頂点を狙える立ち位置であることは実証済み。「組織としては関東、インハイと戦って来ましたけど、一番まとまれてきたのかなとは思います」とキャプテンの坂本琉維(3年・ジョカーレFC)も言及した今大会は、都立東大和南を3-1で、修徳を延長戦の末に1-0で振り切って、このセミファイナルまで。難敵相手にも怯むつもりは毛頭ありません。
ここ4年間で3度の決勝進出。昨年は1年時からゲームに出場してきた三浦颯太(日本体育大)や佐々木大貴(日本体育大)、赤井裕貴(明治大)を筆頭にタレントを揃えながらも、やはり決勝で駒澤大学高に屈し、3度目の正直を叶えられなかった帝京。ただ、今シーズンはプリンス関東でハイレベルな相手と肌を合わせてきたことで、「チーム自体で良くなろうという声掛けが多くなって、チームワークが良くなっているかなと思います」と話すのはキャプテンのGK冨田篤弘(3年・FC多摩)。積み上げてきた組織力を生かして、復権の狼煙を明確に打ち上げつつあります。2試合目の西が丘には、実に4,955人の大観衆が。決勝進出を巡るビッグマッチは、堀越のキックオフでスタートしました。
お互いに手数を出し合う展開の中で、先にスコアを動かしたのは20分の帝京。左サイドでボールを持った山本乾太(3年・FC東京U-15むさし)は、「みんなで合わせてきた部分がある」丁寧なクロス。ここに飛び込んだ中瀬拓夢(3年・FCトリプレッタJY)のヘディングは、ゴール右スミへふわりと吸い込まれます。「ヘディングで全然決めたことがないですし、ちょっと右に外れたかなと思ったんですけど、いいコースに行ったので良かったです」と笑った13番の先制弾。帝京が1点のリードを手にしました。
さて、最終ラインに並んだ魚﨑由暉(3年・三菱養和調布JY)、井上太聖(2年・インテリオールFC)、馬場跳高(2年・バリオーレ日の出)の3バックから丁寧にボールを動かしつつ、縦を狙いたい堀越でしたが、「回させられていた感が凄くて、もうちょっと縦パスを多く入れたかったんですけど、どうしても外回し、外回しにさせられていましたね」とは坂本。24分には帝京の10番を背負う深澤大輝(3年・鹿島アントラーズつくばJY)がミドルを狙い、ここは堀越のGK榎本将之(3年・FC Branco八王子)がキャッチすると、27分には堀越も高い位置で齊藤篤史(3年・AZ'86東京青梅)がボールを奪い、日野翔太(2年・FC町田ゼルビアJY)の左クロスに片山信歩(3年・中央スポーツアカデミー)が飛び込むも、オフサイドの判定。33分には片山が落とし、日野のミドルは冨田がキャッチ。同点とは行きません。
すると、帝京に絶好の追加点機が訪れたのは33分。「ドリブルより、どちらかと言えば抜け出してからシュートとかの方が得意です」と言いながらも、この試合はドリブルが際立っていた中瀬がエリア内でDFともつれると、主審はPKというジャッジを下します。キッカーは小島匠瑛(3年・FC東京U-15深川)。右スミを狙ったキックは、しかし読み切った榎本がファインセーブで仁王立ち。「あのPKストップはかなり助かったというか、チームに勢いを持ってこれたと思います」とは坂本。榎本のビッグプレーで両者の点差に変化なし。
35分は帝京。レフティの石井隼太(3年・FC東京U-15むさし)が右CKを蹴り込むと、ファーに飛び込んだ鳥木秀音(3年・東急SレイエスFC)のヘディングはゴール左へ。38分は堀越。日野の左CKはニアで待っていた小島がきっちりクリア。40+1分は帝京。左から小島が蹴ったCKは、榎本がパンチングで回避。「PKを決めておけばだいぶ落ち着いてサッカーできたんだけど、そう簡単には行かないですね」とは帝京の日比威監督。前半は帝京が1点のアドバンテージを携えて、40分間が終了しました。
後半はまずセットプレーの応酬。42分は堀越。日野の左CKは中央でオフェンスファウルに。44分は帝京。石井が蹴った右CKは魚﨑が懸命にクリアすると、直後の右スローインからこぼれを拾った鳥木のシュートはゴール左へ。46分は堀越。左から日野が入れたFKは小島のクリアに遭うも、お互いに目指した次の1点は積み重ねてきたトレーニングの証から。
47分は「今年はこういう感じで崩せて、みたいな所のイメージとしては凄く一番綺麗に形として決まった」と佐藤実監督も言及したスムーズなアタック。魚﨑を起点に、日野を経由したボールを坂本が右へ展開。勝負した堀田五月馬(2年・横浜F・マリノスJY)のクロスはDFが跳ね返すも、こぼれに反応したのは「クロスを堀田が上げたら何かが起きるかなと思って、あそこの位置取りをしていた」坂本。右足で振り抜かれたボールは、左スミのゴールネットへ飛び込みます。「いつもだったらフカしていたと思うんですけど、良いコースに行って良かったです」と笑ったキャプテンの貴重な同点弾。シーズンを通じてトレーニングしてきたサイドアタックが決まり、スコアは振り出しに引き戻されました。
先に選手交替を決断したのは堀越。得点直後の48分に「帝京の3番は良いキックを持っているので、守備力という面だと市村の方があると思って、前半の終わりぐらいからそこはスイッチしようと話していた」(坂本)と、同点クロスの堀田を下げて、市村大基(2年・FC府中)をそのまま右ウイングバックへ。49分は帝京。ボランチの宮崎海冬(2年・FC多摩)が右へ振り分け、本山大器(2年・FC東京U-15深川)のクロスから、こぼれを叩いた中瀬のシュートは井上がきっちりブロック。さらに50分には小島が左CKを、続けて本山が右ロングスローを放り込むも、共に井上がはっきりクリア。「もう1点取りに行くというよりも、ちょっとゲームを落ち着かせたかったですね」とは佐藤監督でしたが、次にスコアが動いたのは52分。
左から高橋岳(3年・鹿島アントラーズつくばJY)が中央へ付けると、深澤は「右サイドには2回ぐらい展開していたんですけど、そこでまた展開したら相手が付いてくると思ったので、そこでアングルを変えて」縦にグサリ。「目が合ったので、良いボールが来た」と振り返る中瀬はシュートを打ち切れなかったものの、「自分の前に来てくれたので流し込むだけでした」と話す山本が丁寧にボールをゴールネットへ流し込みます。「あそこで中に入れられたというのは、1つアイツの良さが出たかな」と日比監督も評価した深澤の縦パスから、最後は5番を付けたストライカーが一仕事。またも帝京が一歩前に出ます。
「1-1にできたことで自分たちも結構前に行こうという感じになれたんですけど、取ってから早い段階で得点されちゃいましたね」と坂本も振り返った堀越は、またもや追い掛ける展開に。54分には左サイドで花枝龍之介(3年・あきる野FC)がクロスを上げるも、富田がパンチングで掻き出し、詰めた市村のシュートはヒットせず。60分にも右から日野が蹴ったFKは、ファーサイドで本山がクリア。同点とは行きません。
64分は帝京。安定した統率力で最終ラインを牽引する柳大弥(3年・三菱養和調布JY)がFKを蹴り込み、ルーズボールを収めた高橋のボレーはゴール右へ。66分は帝京に最初の交替。小島を下げて、切り札の石川航大(3年・鹿島アントラーズつくばJY)をピッチへ。67分は堀越に2人目の交替。齊藤と若松隼人(3年・田無第一中)を入れ替え、前線の顔ぶれに変化を。69分は堀越。魚﨑の右アーリーに突っ込んだ片山はわずかに届かず、富田が丁寧にキャッチ。70分も堀越。若松、坂本と繋いだボールを日野は縦に打ち込むも、片山とはわずかに合わず。ラスト10分。1点差のままで最終盤の攻防へ。
71分は帝京も2人目の交替として、殊勲の勝ち越し弾を叩き出した山本と照田拓史(3年・三菱養和調布JY)をスイッチ。72分は堀越も3人目の交替。ボランチで奮闘した前田晃侑(3年・TACサルヴァトーレ)と斎藤光(2年・東京武蔵野シティFC U-15)を入れ替え、その斎藤をアンカー気味に置き、坂本と日野がその前に並ぶ逆三角形の中盤で、1点を奪いに行く勝負に打って出ます。
75分は帝京に3人目の交替。右サイドバックが本山から山川高輝(2年・FCトリプレッタJY)に変わり、攻守の推進力アップに着手。76分は帝京のセットプレー。石井の右CKから、ニアに走り込んだ高橋のヘディングはゴール右へ。80分は帝京に4人目の交替。2ゴールに絡む活躍を披露した中瀬を下げて、宮下正太郎(3年・FC東京U-15むさし)の投入で明確なゲームクローズを。アディショナルタイムは3分。西が丘バトルは最終局面へ。
80+1分に堀越が打った交替策は最後の一手。片山と長谷川遥輝(3年・東京ヴェルディJY)をスイッチして、チーム屈指の高さを誇るセンターバックの井上を最前線へ。80+2分は堀越のラストチャンス。市村が右からロングスローを投げ込み、こぼれを再び市村がクロスまで持ち込むも、ボールがゴールラインを割ると、しばらくして聞こえたのはファイナルホイッスル。「見ている方は面白いかもしれないですけど、やる方は本当にキツいですよね。今日は何があっても負けられない試合を取れたのは大きかったかもしれないです」と日比監督も安堵の表情を浮かべた帝京が1点差勝負を制して、2年連続でのファイナル進出を手繰り寄せる結果となりました。
「チームとして全体を通しての意思統一はできていたと思いますし、ブラスバンドもあって声が通りづらいという所で、しっかり横との繋がりを普段よりも意識してやっていこうという話をして、そういった所ではしっかり繋がりという部分は持てていたのかなと思います」と坂本が話した堀越は、ボールを大切にするという基本コンセプトの徹底がピッチ上に色濃く現れていました。「おそらく"ザ・高校サッカー"がボールが空中に浮いて、セカンドを拾って、ゲームをしたたかに終わらせるみたいな感じだとしたら、そもそもその質がウチにはないので、それを我々が求めたとしても、たぶんやり切らずに終わっちゃうかなと思ったんです。それだったらたぶん育成の中で積み上がってきたものを大事にしながら、何とか勝負ができればいいかなという所で、少しチーム自体もそういうふうにシフトしながら、良いものを目指していくと。その中でどれぐらいこういうレベルのチームに対抗できるのかという所を考えるシフトに変わってきているので、そこは継続してやりたいなと思います」という佐藤監督の言葉も印象的でした。
「今までは選手だけでいろいろなことをやって、我々は静観しているような感じだったんですけど、今年はスタッフも含めてチームみんなで創ろうという切り替えをしているので、スタッフも選手も最大値をみんなで出し合おうという形です」と佐藤監督が明かしたように、今年の堀越はある意味で新たなチャレンジに取り組んだ1年。結果としてこの帝京戦は集大成という形になりましたが、特にゴールシーンはその取り組みが実った一局面。「どっちかと言うと選手たちだけだとブレるんですよ。『じゃあもういいよ。相手にお付き合いしようよ』みたいな。そこで『いや、自分たちがやってきたのはここだよ』というベースにちゃんと戻すのは大人の力が必要なのかなって。それを今年は継続できたことで、ああいうことをやり切れるという部分での所が、今日の得点も含めて良かったのかなと。今まではなかなかああいうふうに自分たちで綺麗に崩して得点、みたいな所が出づらい状況だったと思うので、それを出せたというのは1つ良かったかなと思います」という指揮官の言葉には、非常に頷ける部分が多かった印象です。
キャプテンとしてチームを牽引してきた坂本は「確かに大変でしたけど、こういうやり方をさせてもらえるのもここだけですし、入学した時は『キャプテンはやらないだろ』みたいに思っていたんですけど、良い経験ができましたし、他では味わえないようなことも味わえたりしたので、厳しい局面での決断も難しさはありましたけど、キャプテンをしっかりやれて良かったかなと思います。中学でも選手主体のチームでキャプテンをやっていて、少しやり方が似ている堀越を選んで、自分の他にも齊藤とか魚崎をはじめとした他の3年生も支えてくれて、充実した3年間になりました」と最後は笑顔。彼らが積み上げてきた1年間、そして3年生がみんなで積み上げてきた3年間に大いなる敬意を。 土屋
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