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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2019年09月02日

プリンス関東第12節 帝京×横浜FCユース@帝京大千住総合G(2019)

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帝京×横浜FC.JPG

プリンス関東も既に折り返しを少し過ぎた12試合目。勝ち点では並んでいるものの、得失点差で順位が振り分けられている7位の帝京と3位の横浜FCユースの対峙は、帝京大学グループ千住総合グラウンドです。

「この3年生は正直みんながみんな仲が良いので、苦しい時もみんなで声を掛け合ったり、笑う時はみんなで笑って、チームが一丸となっているという印象です」と柳大弥(3年・三菱養和調布JY)も話した通り、ピッチ内外での結束を非常に感じさせるのが今年の帝京。インターハイ予選こそ大成に壮絶なPK戦の末に敗れ、久々の全国大会出場は逃しましたが、実に14年ぶりの復帰となったプリンスではここまで4勝3分け4敗と五分の星をキープするなど、確かなチーム力を披露。「自分たちは去年みたいにパス回しとか上手くないので、運動量だったり球際の強さとか、声を掛け合うこととか、そういう部分をしっかり意識していこうと話しています」とは、昨年からレギュラーを任されている石井隼太(3年・FC東京U-15むさし)。白星先行を期したホームゲームに臨みます。

11節を終えて4勝3分け4敗。帝京とまったく同じ星取りながら、攻守のバランスの良さから得失点差でプラス5という数字を記録し、プレミア参入戦進出を明確に視界へ捉えるような3位に付けている横浜FCユース。ちなみにチームを率いる小野信義監督にとって、帝京の日比威監督は読売日本SCジュニアユース時代の1つ先輩。「やりにくさはないですけど、『お互いに残留したいよね』という感じですよね」と笑顔で言及するあたりに"らしさ"が滲みますが、1つ上のステージを望む上で、また1つ下の後輩という面でも、負けたくない90分間であることは間違いありません。千住総合のスタンドには少なくない観衆が集結。夏の終わりも感じられるような気候の中、横浜FCのキックオフでゲームはスタートしました。

3分のチャンスは帝京。エリア内でボールを引き出した山本幹太(3年・FC東京U-15むさし)が決定的なシュートを放つも、軌道はわずかに枠の左へ外れると、6分には横浜FCもスムーズな連携からチャンス創出。右サイドバックの田畑麟(2年・横浜FC JY)が斜めに入れたパスを、キャプテンマークを巻いた佐々木翔(3年・横浜FC JY)がダイレクトで裏へ。飛び出した中川瑛敦(2年・横浜FC JY)の足元に帝京のGK冨田篤弘(3年・FC多摩)が飛び込み、辛うじて危機を回避しましたが、お互いに惜しいシーンを見せ合います。

すると、先に歓喜を迎えたのはアウェイチーム。8分に右サイドを抜け出した田畑が中へ入れると、永田亮輔(2年・横浜FC JY戸塚)と中川を経由したボールは佐々木柊真(2年・横浜FC JY)の足元へ。右足で放ったシュートは奥村周太(3年・東急SレイエスFC)に当たってコースが変わり、ゴールネットへ転がり込みます。ややラッキーなゴールにも、きっちり喜ぶ奥村はアタッカーのメンタリティ十分。横浜FCが1点をリードしました。

さて、早くも追い掛ける展開となった帝京。「去年から後半にエンジンが掛かるんですけど、やっぱり前半は掛かり切らない所があるんですよね」とは冨田ですが、20分には左サイドでFKを獲得すると、「今年は去年から出ている自分たちが中心になってやっていかないといけないという気持ちがある」と言い切る石井の左FKがファーまで届き、突っ込んだ鳥木秀音(3年・東急SレイエスFC)のヘディングはゴール右へ外れるも、以降は攻守にアグレッシブさを取り戻し、少しずつペースを引き寄せ始めます。

とりわけ「もともと『中盤を制圧しろ』って監督やコーチに言われていて、今日はボールを奪い切る所まで行けたので良かったです」と話したボランチの宮崎海冬(2年・FC多摩)が圧倒的な存在感で、セカンド回収のみならず寄せて奪ってを連発。23分にはその宮崎が果敢なカットから右へ付け、運んだ中瀬拓夢(3年・FCトリプレッタJY)のシュートはDFに当たって枠の左へ逸れましたが、27分にも高い位置で宮崎が相手ボールを奪い切って縦へ。受けた山本はシュートまで持ち込めなかったものの、「相手が持った時にどこを見てパスをするかを予測して、ボールを取るように意識しています」という14番のボール奪取力が生み出す好リズム。

とはいえ、横浜FCも一撃に潜ませる鋭い刃。32分には佐々木柊真が左へ流したボールを、上がってきた小林佑熙(3年・横浜FC JY)は得意の左足で高精度クロス。ファーで永田が折り返したボールは、富田のファインセーブでクロスバーに当たり、詰めた中川は押し込めませんでしたが、右の田畑、左の小林と両サイドバックの推進力は大きな武器に。帝京は37分に右サイドバックで守備に奔走した本山大器(2年・FC東京U-15深川)に替えて、「負けている状況でしたし、前からどんどん仕掛けて追い越したり、チームを良い方向に持って行こうと思っていました」という山川高輝(2年・FCトリプレッタJY)を同じ位置に送り込み、サイドの主導権を奪い返しに掛かります。

ところが、次のゴールを記録したのも横浜FC。前半終了間際の45+1分。中盤で前を向いた佐々木柊真は右へ展開。ここも絶妙のタイミングで上がっていた田畑がクロスを上げると、3列目から飛び込んできた中川のシュートは冨田がファインセーブで掻き出したものの、そのリバウンドへ真っ先に反応した中川のヘディングはきっちりゴールネットへ収まります。「アンカーが今日は1年生だったので、そこで今日は『助けてあげよう』と、いつもよりちょっと抑えめだったのはあるかもしれないですね」とは小野監督ですが、アンカーの増田健昇(1年・横浜FC JY)を気遣いながらも、やはり勝負所でゴールを嗅ぎ分ける能力はこのリーグでもトップクラス。北田悠慎(3年・横浜FC JY)と蛯名亮太(3年・横浜FC JY)のセンターバックコンビも盤石の横浜FCが、2点差を付けて最初の45分間は終了しました。

後半はスタートから動いた日比監督。中盤で奮闘していた宮本航平(3年・三菱養和調布JY)を下げて、「昨日の練習で相当厳しく言ったんですけど、アイツにはもっと頑張って欲しいんですよ」と期待を寄せる石川航大(3年・鹿島アントラーズつくばJY)をそのままボランチに送り込み、石井も「自分たちは後半からどんどん掛けていくというサッカーなので、『まだ0-2でも下を向くことなくしっかりやれ』って日比先生が言ってくれました」と話したように、帝京は改めて気合を入れ直して後半へ向かいます。

その効果は1分経たずに。後半開始早々の46分。キックオフの流れから、うまく前進した帝京は中盤で前を向いた宮崎が縦に入れると、うまくギャップで受けた小島匠瑛(3年・FC東京U-15深川)はスムーズなターンから右足一閃。ボールは左スミのゴールネットへ鮮やかに突き刺さります。あっという間の反撃弾。帝京が1点を返しました。

畳み掛けるカナリア軍団。48分にはルーズボールを収めた石川がミドルを狙い、枠の左へ外れたものの好トライ。50分にも山川、石川とパスが回り、中瀬が叩いたミドルはDFに当たってゴール左へ。53分にも中瀬が奪った右CK。レフティの石井が蹴り込んだボールに、ファーへ回った宮崎はわずかに届きませんでしたが、「後半は最初に攻撃陣が決めてくれて、行くぞって感じになりました」と石井。視界に捉えた同点とその先。

56分の衝撃は2年生レフティによって。ここも高い位置に張り出してきた中川が右サイドに振り分けると、トラップで良い場所に置いた永田は躊躇なく左足で巻いたシュートを選択。綺麗な軌道を描いたボールは鮮やかにゴール左スミへ吸い込まれます。「アレは引き出し方が上手かった。ずらしてターンして中で受けたでしょ」と敵将の日比監督も認めるゴラッソ。再び横浜FCのリードは2点に戻りました。

折れなかったホームチーム。失点から2分後の58分。後半から右サイドハーフにスライドしていた山本が外へ流すと、「自分は背が小さいので、付けて、回って、走って、受けて、みたいなプレーでオーバーラップしたりというのは結構意識してやっていますね」と語る山川がオーバーラップから中に潜りつつ、果敢にシュート。ボールはニアサイドを破って、豪快にゴールネットを揺らします。「ゴールはあまり見えていなかったんですけど、感覚で打った感じです。あんな点は決めたことがなかったですし、しかもプリンスリーグということもあったので、凄く気持ち良かったです」と笑った2年生サイドバックの強烈な一発。2-3。30分近くを残した段階で漂う激闘の予感。

64分は帝京。左CKを小島が蹴り込むと、ここは横浜FCのディフェンスリーダーを務める北田が大きくクリア。65分は横浜FC。細かいパスワークから右サイドへ持ち出し、田畑の鋭いグラウンダークロスはファーまで届くも、全力で走り込んだ佐々木翔はわずかにシュートまで持ち込めず。73分は横浜FCに2人目の交替。増田と小倉陽太(3年・横浜FC JY)を入れ替え、「ボランチの所から自分たちの2列目の背中の所にゴロのパスが通され出したから、そこは5枚にして間をちょっと狭めにしました」(小野監督)と4-5-1にシフトして、向上させたい安定感。74分は帝京に3人目の交替。山本と宮下正太郎(3年・FC東京U-15むさし)をスイッチして、踏み込みたい攻撃のアクセル。残された時間はあと15分。

78分は帝京。左の石井を起点に宮下が繋ぎ、高橋岳(3年・鹿島アントラーズつくばJY)が枠へ収めたシュートは横浜FCのGK深宮祐徳(2年・横浜FC JY)がファインセーブで弾き出し、走り込んだ勢いそのままに詰めた小島のシュートはわずかに枠の右へ。79分も帝京。宮下のパスから高橋が左クロスを上げ切ると、「試合をやっていくたびに少しずつやれないことはないと思ってきています」という宮崎はヘディングを当て切れませんでしたが、前線まで駆け上がる運動量を。79分の横浜FCは2人目の交替として、佐々木柊真と山崎太新(1年・横浜FC JY)を入れ替え、サイドの好守にテコ入れを図ります。

86分は帝京。中央右寄り、ゴールまで約25mの位置から鳥木が直接狙ったFKはカベにヒットしましたが、意外な形での同点機はその3分後に。89分。右サイドから山川がアーリークロスを放り込むと、エリア内に潜った高橋は相手ディフェンダーと接触して転倒。デリケートなシーンではあったものの、主審はホイッスルを鳴らし、ペナルティスポットを指し示します。キッカーは途中出場の石川。この緊迫したシチュエーションに、8番が選択したのはど真ん中。ボールは確実にゴールネットへ収まります。「アイツは良かったかな」と日比監督も納得のパフォーマンスを披露していた石川の冷静なPKが決まり、スコアはとうとう振り出しに引き戻されました。

「自分たちは点数を決めてから流れに乗っていくという感じ」と石井が評する帝京は最後のラッシュ。90+1分に高木翔青(2年・鹿島アントラーズつくばJY)を、90+3分に市川颯馬(2年・FC東京U-15むさし)を相次いでピッチへ解き放つと、90+5分に訪れたラストチャンス。左サイドから石井が渾身のクロスを上げ切り、ファーへ残っていたのは鳥木。豪快に右足で叩いたボレーは、しかし枠の右へ外れてしまい、しばらくして聞こえたタイムアップの笛。「今日はもう前から行こうという形で、前線から守備に行けて、後ろはインターセプトを狙うことができて、後ろからも楽しい試合だったなという印象があります」とは柳。ハイスコアの打ち合いは両チームに勝ち点1が振り分けられる結果となりました。

「去年だって結局リーグ戦は3連敗ぐらいからスタートして優勝している訳で。1つ言えるのは、この子たちは脚力が付いてきていて、夏が過ぎて、これから涼しくなってくる中で、他の高校よりは走っている走行距離は相当あると思うので、そこですよね」と日比監督も口にしたように、この試合も後半の帝京のラッシュはかなりの迫力。その迫力をこのプリンス関東という素晴らしい舞台で発揮できている所も、今年の選手たちの逞しさを感じます。「プリンスで強い相手とやることで、自分たちから『ミーティングしよう』とか、『チーム自体で良くなろう』という声掛けが多くて、やっぱりプリンスでやっているからこそ、チームワークが良くなっているかなと思います」(冨田)「J内定の選手とやれて、凄く自分自身も成長していると思いますし、いろいろな面で自信になるので、チームとしても個人としても良い経験ができているのかなと思います」(山川)「やる相手がすべて格上なので、いつもチャレンジャー精神で臨めて、試合をやっていくたびに少しずつやれないことはないと思っています」(宮崎)と3人が声を揃えたように、このリーグでの経験はチームにとっても、個人にとってもこれから迎えるであろう勝負所での拠り所になってくるはず。2019年の帝京は間違いなくチームとして前に進みながら、まだまだ成長できる余地を十分に残しているようです。     土屋

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