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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
高円宮杯プリンスリーグ関東も、ここからは二巡目のガチバトル、桐生第一と前橋育英のライバル同士が関東という舞台で対峙する『新・群馬クラシコ』は、あずまサッカースタジアムです。
インターハイ予選は準決勝で健大高崎にまさかの敗退を突き付けられ、この夏の沖縄行きは叶わなかった桐生第一。ただ、「自分たちは結構甘いので、負けたのは良くないですけど、あそこで悔しさを感じられたことで、そこから良い感じで流れが来ているので、あの負けは結果良い形になったかなと思います」と遠藤青空(3年・AZ'86東京青梅)が話したように、インターハイ後のプリンス関東では川崎フロンターレU-18との打ち合いを4-2で制すると、前節の東京ヴェルディユース戦もホームで2-0と難敵を打ち破り、現在は2連勝中。さらなる勝ち点の上積みを目指し、中断前は最後のゲームに向かいます。
桐生第一をファイナルで倒した新人戦、県総体に続いて、健大高崎との激闘を後半アディショナルタイムの決勝弾で劇的に制し、群馬制覇を達成。3年連続となる全国切符を手にし、沖縄へと旅立つ日が近付きつつある前橋育英。主戦場を置くプリンス関東でも一定の好調を維持してきた中で、再開後は矢板中央、横浜FCユース、三菱養和SCユースと強豪相手に3連勝を飾り、一気に勝ち点9を獲得。その上で「やっぱり同じ群馬県のチームなので、勝ちたいという気持ちはどこのプリンスの相手よりも強かったです」とキャプテンの渡邊綾平(3年・横浜F・マリノスJY追浜)も口にしたこの一戦が、いつも以上に負けられない90分間であることは言うまでもないでしょう。注目のビッグマッチにスタンドは満員で立ち見を余儀なくされる観客も多数。楽しみな『新・群馬クラシコ』は、桐一のキックオフでスタートしました。
勢い良く立ち上がったのは桐一。5分に左サイドで獲得したFKを、落合遥斗(2年・前橋ジュニア)が蹴ったボールは育英のGK高橋怜士(3年・前橋FC)にキャッチされたものの、6分にも若月大和(3年・前橋ジュニア・湘南ベルマーレ内定)がドリブルから右へ流し、寶船月斗(1年・前橋ジュニア)のシュートは当たり損ねましたが、2トップでフィニッシュまで。8分にはレフティの遠藤が右FKを蹴り込み、ファーから折り返した眞玉橋綺人(3年・前橋ジュニア)のクロスは高橋にキャッチされるも、「入りが本当に良かったですね」と若月も口にした通り、まずはホームチームが攻勢に打って出ます。
9分の反撃は育英。ボランチの新井悠太(2年・前橋FC)が短く付け、熊倉弘達(2年・FCステラ)のシュートはDFのブロックに遭い、こぼれを拾った熊倉のクロスは眞玉橋にクリアされましたが、1つチャンスを創ると、10分には並木歩己(3年・前橋FC)のロングスローから手にした左CKを渡邊が蹴り入れ、突っ込んだ大野篤生(2年・Wings U-15)のシュートはヒットしなかったものの、やり返したい姿勢を前面に。
ただ、ゲームリズムは変わらず桐一。14分には須藤礼智(3年・前橋ジュニア)が縦に流したボールへ、抜群のスピードで抜け出した若月はGKを外すも、角度がなくなりシュートまで行けず。16分にも左サイドを運んだ遠藤のパスから、鋭い切り返しで1人外した若月の浮かせた左足シュートはゴール右へ外れるも、「どうやったらゴール前でシュートまで行き切れるかという、最後の所を常に狙っていた状態」の若月が生み出す推進力。
すると、スコアが動いたのは21分。中央で前を向いた若月が右サイドへ巧みにラストパスを通すと、抜け出したのは遠藤。「タッチもまあまあいい感じに、前の良い所に置けて」得意の左足でシュートまで持ち込むと、高橋も懸命に触りましたが、ボールはゴールネットへ転がり込みます。「キーパーに読まれていたんですけど、強く蹴ったので威力があって、それで入ったので良かったです」と笑ったナンバーセブンの先制弾。桐一が1点のリードを奪いました。
以降も「ウチのビルドアップの構築の所と、相手のハメ方はまずもって噛み合っていなかったので、相手のコートに入りやすかったですね」と中村裕幸コーチも表現した桐一の続くペース。30分には追加点機。落合のパスを受けた若月は、「1枚寄せてからサイドに付けようと思って、ギリギリまで我慢して出した」と時間を創ってから左へ。走った須藤のクロスから、絶好のボールが転がりましたが、詰めた遠藤のシュートは枠の上に外れてしまいます。
直後に生まれたのは「わかっていても行けちゃうような雰囲気にはなりましたよね」と山田耕介監督も評価を与えるレフティの一撃。30分に左サイドでボールを運んだ倉俣健(3年・tonan前橋U-15)が中へ付けたパスを、佐藤宇(3年・横浜F・マリノスJY)が丁寧にリターンすると、倉俣は左足一閃。強烈にボレーで叩いた軌道は、右スミのゴールネットへ鮮やかに突き刺さります。「アイツは凄く個性が面白いんですけど、やる時は凄くやるヤツ」と渡邊も認める倉俣のゴラッソ。育英がスコアを振り出しに引き戻しました。
次のゴールを目指す両者が出し合うセットプレーの手数。35分は桐一。落合の左CKから、若月が粘って持ち込んだシュートはDFがきっちりブロック。36分も桐一。右サイドで得たFKを遠藤が蹴り込み、ファーに走った後藤真之介(3年・サガン鳥栖U-15唐津)がヘディングで折り返すと、眞玉橋はシュートこそ打ち切れなかったものの、デザインされたFKを。41分は育英。山岸楓樹(3年・大宮アルディージャJY)が粘って取った右CKを渡邊が蹴るも、ボールはラインを割ってゴールキックに。
前半終了間際の歓喜は再びホームチームに。45分。1年生ながらスタメンに抜擢され、冷静な仕事ぶりを披露していたボランチの金沢康太(1年・FELEZA FC)が起点になり、落合が右へ丁寧に流したパスを受けて、「相手が結構寄せが遅くて、コースもちょうど見えていたので」シュートを放ったのはまたも遠藤。左スミギリギリに飛んだボールは、ゴールネットへきっちり収まります。「前半はほぼほぼウチの狙い通りのゲームでした」とは中村コーチ。桐一が1点のアドバンテージをもぎ取って、最初の45分間は終了しました。
「『前半の失点はミスからなので、それを引きずって後半に行ったって何の得にもならないから、それはもう忘れていい。切り替えろ』と。『それは後からじっくり話すので、そのかわり後半に向けて何をしなくてはいけないかをちゃんと明確にしよう』と話しました」という山田監督はハーフタイムに2枚替え。右サイドバックの水上翼(3年・ESA)と佐藤を下げて、中村草太(2年・前橋FC)と松岡迅(3年・吉岡中)を投入。「もっと前に出るようにして、より積極的な姿勢を出そう」と選手をピッチへ送り出します。
47分は育英。渡邊の左CKは後藤が大きくクリア。48分も育英。並木の連続左ロングスローは、桐一ディフェンスも懸命にクリア。52分にも並木の左ロングスローから、こぼれに反応した渡邊のロングへッドはわずかにクロスバーの上へ。60分も育英。左サイドでタメて持った倉俣が裏へ蹴り込み、粘って抜け出した中村のシュートは枠を越えてしまいますが、「その場面場面に応じたプレーだったりもできたし、前半よりも強度も上がっていたと思います」と渡邊。反転したゲームリズム。
「相手の攻撃の時間が長くなってきていたのは感じていた」と右サイドバックを任された竹下諒(3年・セブン能登)も話した桐一は、ようやく62分に反撃の一手。右サイドで得たFKを落合が良い位置でバウンドさせながら蹴り入れると、突っ込んだキャプテンの丸山佑大(3年・前橋ジュニア)と後藤はわずかに届かず、高橋にキャッチされたものの、惜しいシーンを。64分は育英。倉俣のパスから、熊倉が狙ったシュートは後藤が決死のブロック。直後には育英に3人目の交替。熊倉に替えて、西山蓮平(3年・名古屋グランパスU15)を送り込み、アタッカー陣の顔ぶれに変化を加えます。
66分の歓喜はタイガー軍団。渡邊の左CKから、ルーズボールを回収した新井が右へ展開し、西山は丁寧なクロス。ファーサイドで待っていた倉俣のヘディングは、ゴールネットへきっちり収まります。「後半に手応えはありましたからね。倉俣はいいですよね。良い選手になると思います」とは山田監督。倉俣のドッピエッタが飛び出し、育英がまたもスコアを振り出しに引き戻しました。
「点を取りに行くという気持ちが強かったので、確かにスイッチが入ったのかもしれないです」と渡邊。畳み掛ける育英。68分には倉俣のパスを受けた西山が右へラストパスを通し、枠へ収めた中村のシュートは桐一のGK塩澤玲央(3年・SCH.FC)がファインセーブ。直後の右CKを渡邊がシュートで蹴り出し、新井のクロスにファーで合わせた倉俣のヘディングは枠の左へ。「嫌だなっていう時間帯が早かったので、どこまで持つかなという感じで見ていた」中村コーチも、69分には1人目の交替として須藤と関根大就(1年・前橋ジュニア)を入れ替えましたが、72分にも育英は新井のパスから山岸が塩澤にキャッチを強いるシュートまで。一気に寄り切りたい育英。何とか凌ぎたい桐一。
75分には桐一に2人目の交替。足の攣った眞玉橋を下げて、「とにかく倉俣にキリキリ舞いにされるんじゃねえ」と中村コーチに送り出された萩原礼士(3年・前橋ジュニア)が右サイドバックへ入ると、「21番が出てきた時はだいたい自分が左に行くので、そこまではパニックにはならなかったです」と笑う竹下を左サイドバックにスライドさせて、図る守備バランスの向上。77分は育英。山田涼太(3年・前橋FC)のパスから西山が打ち込んだミドルは、塩澤が丁寧にキャッチ。いよいよゲームは残り10分間の攻防へ。
後半ファーストシュートは大きな決定機。82分。左サイドを少し運んだ寶船が、最高のタイミングでスルーパス。3列目から飛び出した落合は完全にGKと1対1の局面を迎えますが、シュートはわずかに枠の右へ逸れていってしまいます。これには頭を抱えたピッチとベンチとスタンド。「最後の局面でボランチからあそこまで出て行けたというのはアイツの半歩成長で、決められなかった所がまだまだ」とは中村コーチ。勝ち越しゴールとはいきません。
84分は桐一。関根からのリターンをもらった寶船が打ち切ったシュートはクロスバーの上へ。86分は育英に4人目の交替。山岸と本間士悠(1年・田口FA)をスイッチすると、90分にも並木に替えて「部長をやっていて、サッカー以外のこととか、凄く私生活とか学校生活のことにこだわっていますし、凄いなって思う所はあります」とキャプテンの渡邊も言及する久林隆祐(3年・前橋FC)をピッチへ送り出し、最後の勝負へ。アディショナルタイムの掲示は4分。240秒のラストバトル。
90分は育英。倉俣の仕掛けで奪った左CKを渡邊が放り込み、エリア内での混戦の中から大野が執念でヘディングを枠内へ飛ばすも、ここは桐一ディフェンスがほぼライン上でスーパークリア。90+4分も育英。中村が左へ展開し、サイドバックに下がった倉俣のクロスから、西山が狙ったループは枠の左へ。桐一も90+4分に3人目の交替として、足を攣りながら最後まで奮闘した落合と上野山信也(3年・FC Consorte)を入れ替えると、それからしばらくして吹き鳴らされたタイムアップのホイッスル。「まあ、もう1点欲しかったですけどね。惜しいのはいくつかあったんだけど、『おお!やった!ああ、ダメかい』みたいな(笑) でも、負けずに良かったかなと」(山田監督)「最後の勝負を決定付けられそうなチャンスも遥斗もありましたし、その前の所までも少しあったので、前期の3-3よりは実りがあるゲームだったかなと思います」(中村コーチ)。双方にとって収穫の少なくないゲームは2-2。プリンス関東での"新・群馬クラシコ"は、前期に続いて勝ち点1を分け合う結果となりました。
「自分たちのスタイルでやれたかと言ったらやれてはいないんですけど、ただサッカーなので、その中で同点に追いつくことができて、後半はチャンスが増えたので、そこは自分たちの収穫にしていい所なんじゃないかなと思っています」と渡邊も一定の手応えを口にした育英は、インターハイ初戦でいきなり青森山田とのビッグマッチが控えています。それでも山田監督は「いやいや、もう頑張りますよ。どっちかと言うと『いや~』というよりも、ワクワクします。そっちの方が強いですよ。『よっしゃ!やったるぜ』みたいな感じです。僕はね(笑)」と笑い、渡邊も「楽しみです。たぶんビビってるヤツはいないと思うので大丈夫だとは思うんですけど、相手も負けなしということなので、いろいろ相手のストロングを警戒しつつ、僕たちの良さを出して勝てたらなと思います」と小さくない期待感を。今夏の沖縄は最注目のビッグマッチへ、上州のタイガー軍団は確かな自信を持って挑みます。
桐一で奮闘が目立ったのは、右サイドバックで倉俣に食らい付き、終盤は左サイドバックで西山とやり合った竹下。本人は「2点とも倉俣選手にやられて、もうちょっと自分が止められた所もあったのかなと思いました」と後悔しきりでしたが、中村コーチは「インターハイが明けた後、一番は精神的な部分で、ディフェンスラインを統率するとか、チームを鼓舞するという意味で、間違いなく唯一無二の存在になっています」と絶賛に近い評価を。チームの中での存在感を高めているのは間違いのない所です。もともとは石川県の出身。「中学の時から遠征で前橋ジュニアと練習試合をしたり、桐一とも練習試合をしたことがあって、そこでクラブチームのコーチに『セレクションに行ってこい』って言われて、行ってみたら良かったのでこっちに来ました」という経緯で桐一に入学したものの、最初は寮生活が大変だったとのこと。それでも、今はその生活が逆に楽しくなってきたそうで、「みんなで仲良くできていますし、みんな基本うるさいです。ムードメーカーは後藤とか、あとはやっぱりたまに泊まりに来る大和ですね」と笑顔で語る姿からは充実感も窺えます。今後については「まずは1つずつ勝って行けるように、チームとしてはまずプリンスで勝っていって、選手権に良い流れで入っていけるようにしたいです」ときっぱり。竹下のこれからにも大いに注目したいと思います。 土屋
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