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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2019年06月28日

インターハイ東京準決勝 駒澤大学高×國學院久我山@駒沢第2

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駒澤×久我山.JPG東京でも正反対に近いスタイルを有する両者の"因縁"対決。駒澤大学高と國學院久我山のセミファイナルは、引き続き駒沢第2球技場です。

夏過ぎまではなかなかチームビルドがうまく進んでいなかったものの、選手権予選では応援団も含めた一体感を武器に、國學院久我山や駿台学園、帝京といった強豪を相次いで撃破し、全国出場を勝ち獲った昨年度の駒澤大学高。迎えた今大会は一次トーナメントで青山学院を4-0で退けると、二次トーナメントも早大学院に4-0、多摩大目黒に2-0、都立東久留米総合に3-0と、いずれも完封勝利で無失点を継続して、この準決勝まで。「『全国で結果を残さないと評価されない』ということは監督からも言われているので、そこに向けてやっていきたいと思います」とは小林蒼太(3年・Forza'02)。関東大会予選で敗れたリベンジを果たして、一気に全国切符を奪いたい80分間へ臨みます。

T1リーグ4試合。関東大会予選5試合。関東大会3試合。そして、インターハイ予選の準々決勝。ここまで戦った今シーズンの公式戦で、圧巻の13連勝を続けている國學院久我山。この全国を懸けた試合で激突するのは、昨年度の選手権予選で悔し過ぎる敗退を突き付けられた駒澤大学高。「今季は関東予選とリーグ戦で2回勝っているんですけど、そこよりもやっぱり全国を決める選手権で負けたという所で、雪辱をしなければいけないという気持ちはあると思います」とは清水恭孝監督。「今は連勝しているので、いろいろな所がプレッシャーを掛けてくると思うんですけど、自分たちのサッカーができれば絶対に勝てると思っているので、そこは自信を持ってやっています」と山本献(3年・横浜F・マリノスJY追浜)も言い切った通り、勝ち続けている絶対的な自信をベースに、リベンジと全国出場の"二兎"を手に入れる覚悟は定まっています。駒沢は午後に入っても継続して雨模様。全国を巡るビッグマッチは、駒澤のキックオフでスタートしました。

「相手の駒澤もかなりの気持ちを入れて向かってくるというのはわかっていた」と山本航生(3年・東急SレイエスFC)が話し、保野友裕(3年・東京武蔵野シティFC U-15)も「2回やっていたので『こんな感じだろうな』とは思っていましたし、想定内といえば想定内なんですけど、想定の中の最大の圧力でした」と語ったように、駒澤の前へのパワーは序盤からフルスロットル。中盤では内田哲平(3年・坂戸ディプロマッツ)と松本悠佑(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)のドイスボランチがプレスと回収に奔走し、前線の原田大渡(3年・FC東京U-15深川)と橋本雄也(3年・ルキナス印西)も激しくチェイス。12分にはエリア内で時田悠人(3年・Y S.C.C.横浜U-15)が右足でフィニッシュ。ここは久我山のGK石渡克(3年・ジェファFC)が足で懸命に掻き出しましたが、まずは駒澤が果敢に立ち上がります。

それでも先にスコアを動かしたのは久我山。19分に右サイドを運んだ戸坂隼人(3年・FC東京U-15むさし)がグラウンダーでクロスを入れると、ニアに走り込んだ山本航生はスライディングシュート。ボールはゴールネットへ飛び込みます。「あの点の取り方が一番嬉しいというか、やっぱりフォワードはまずはニアで触れたら触るし、その後ろが空いたらトップ下が出てくるとかクロスへの入り方はずっとやってきて、それで今日も意思疎通できて戸坂のクロスに合わせられたのは、今までやってきたことが出せたという点だったので良かったです」と口にした山本航生は、これで驚異の公式戦14戦連発。ストライカーの一撃で久我山が1点のリードを手にしました。

ただ、追い掛ける展開となった駒澤に訪れる同点機。31分に左サイドで奪ったFK。スポットに立ったのは松本と時田。レフティの前者ではなく、後者が高精度を誇る右足からキックを蹴り込むと、意外にもGKがファンブル。詰めていた内田が難なくプッシュします。ほとんどノーチャンスに見えたシーンが、一転して同点劇に。ラッキーな好機を見逃さなかった駒澤が追い付いて、最初の40分間は終了しました。

後半に入って歓喜を連れてきたのは、またもや久我山のナンバーナイン。46分に左サイドを圧倒的なドリブルで切り裂いた山下貴之(3年・ジェファFC)がマイナス気味に折り返すと、「ニアに入っていくという意識をずっとしていたんですけど、『それだけじゃ相手も対応してくる』という話をコーチの方からも結構されていたので」という山本航生は少し下がりながら右足でプッシュ。ボールはゴールネットへ到達します。「動き直しを何回もするというのも意識の1つだったので、そういう形で取れたのも良かったです」と笑ったストライカー。2-1。再び久我山が1点のアドバンテージを手にします。

48分に駒澤は1人目の交替。橋本を下げて、青木優音(2年・クラブ与野)をピッチへ送り込み、攻撃姿勢を鮮明に。53分には時田の左クロスから、小林蒼太はトラップを収め切れずゴールキックに。55分は右FKを時田が蹴り込み、飛んだセンターバックの大岡忠義(3年・フレンドリー)はヘディングを当て切れず、ボールは枠の右へ外れましたが、時田の右足から創ったチャンスの芽。

57分は久我山。右サイドバックの河原大輔(3年・横浜FC JY)を始点にしたらしさ溢れる細かいパスワークから、山下が狙ったループはクロスバーの上へ。58分も久我山。大窟陽平(2年・1FC川越水上公園)を起点に田中琢人(2年・ジェファFC)が縦に付け、左へ持ち出しながら放った山本航生のシュートは枠の右へ。58分は駒澤に2人目の交替。時田に替えて、田口聖也(2年・1FC川越水上公園)を投入すると、続けて63分には3人目の交替。松本と佐藤海来(2年・杉並アヤックスU-15)をスイッチして、さらに増強したい前へのパワー。

66分は駒澤。GKの礒部幸輝(3年・クラブ与野)が蹴ったFKに原田が競り勝ち、佐藤がフリーで抜け出すもシュートまで持ち込めず。68分は久我山。戸坂の右CKは、ニアで内田が懸命にクリア。直後の右CKも戸坂が蹴り入れ、こぼれを拾った大窟のシュートは駒澤のセンターバックを任されている小林泰晟(3年・FCクラッキス松戸)が体でブロック。「こっちも蹴らざるをえないみたいな所があって、後半とか蹴っちゃっていましたね」とは山本献。残された時間は10分間とアディショナルタイムのみ。

駒澤が切った4枚目のカードは71分。内田と鈴木成亜(3年・田口FA)を入れ替えて、前線に鈴木と佐藤、ボランチに原田と小林蒼太を並べ、右サイドハーフに田口、左サイドハーフに青木という形で最後の勝負に。73分に小林蒼太が蹴った左CKはDFがクリア。直後に右サイドバックの森田陸翔(3年・クラブ与野)が投げたロングスローもDFがきっちりクリア。75分に中央から積極的に鈴木が枠へ収めたシュートは、石渡が丁寧にキャッチ。保野と加納直樹(3年・ジェファFC)で組んだ久我山センターバックの堅牢も揺らぐ気配なし。降りしきる雨。消えていく時間。

76分の執念。左サイドへの展開から、小林蒼太は中央へ速めのクロスを上げると、DFに当たったボールは軌道を変えてラインの裏へ。いち早く反応した佐藤が左足を振り切って放ったクロス気味のシュートは、懸命に戻ってきたDFに当たってゴールネットへ吸い込まれます。2つのディフレクションが、結果的にどちらもゴールへの道筋上に生まれる奇跡的な同点弾。土壇場で意地を見せた駒澤。ゲームは前後半10分ずつの延長戦へと移ります。

「あの時間帯になった時に、やっぱり勇気を持って自分たちがやるべきことをやると。自分たちでボールを保持して、自分たちでボールを握って、という所に対してのトライが良くなかったかなと思います」と清水監督も終盤の同点を悔やんだ久我山のキックオフでスタートした延長。最初のチャンスは82分の駒澤。小林蒼太が蹴り込んだ右CKに、ファーへ突っ込んだ佐藤のヘディングは枠の左へ外れ、ドッピエッタとは行かず。直後の83分も駒澤。左サイドのスローインをサイドバックの手島大雅(3年・FC VIENTAS)がロングで投げ込むも、「自分は絶対的に競り合いに自信があった」と言い切る保野が大きくクリア。勝ち越しとはいきません。

85分の絶叫。左サイドで前を向いた山本献は「駒澤も結構疲れていて、こっちがランニングしてくると後手になることがあったので、あそこに出すことは意識していた」と絶妙のスルーパス。受けた田中がマイナス気味に送ったボールを、大窟はきっちり枠へ納めるも、礒部がファインセーブでストップしましたが、ここで待っていたのはやはりナンバーナイン。「こぼれ球に詰めるとか、そういう所に一番早く反応するというのは意識していた」山本航生が左足を振り抜いた軌道は、ゴールネットへ突き刺さります。「仕事をしますね。凄いですよね。大したもんだと思います」と指揮官も称賛したストライカーが、このセミファイナルでハットトリックの大仕事。久我山が一歩前に出ました。

87分にも中盤アンカーの福井寿俊(3年・東急SレイエスFC)、大窟、山本航生と細かく回し、戸坂のシュートは枠を越えるも、あわやというシーンを創出すると、駒澤はすかさず最後の交替。森田と上田汰一(3年・Forza'02)をスイッチしますが、久我山が刺した次の1点は89分。右へ山本献が送ったパスから、戸坂は抜群のキレ味の切り返しで縦に持ち出しながら右足一閃。ゴール左スミへ転がり込んだ球体。4-2。この試合で初めて両者の点差が2点に開きます。

延長後半に入り、久我山が取り掛かるゲームクローズ。93分には大窟と小松譲治(1年・ジェファFC)をスイッチすると、96分に手島が投げた左ロングスローもきっちりクリアした上で、98分に栗原俊真(2年・FC東京U-15むさし)、99分に河合優斗(2年・ジェファFC)、100+1分に野田祐成(3年・東京武蔵野シティFC U-15)と交替カードを切り続ける采配を。100+2分は駒澤のラストチャンス。小林蒼太の右クロスがこぼれると、上がって来ていたGKの礒部が気合のスライディングシュートを放つも、ゴール右へ外れて万事休す。「難しい試合になるというのはもう当たり前ですよね。相手も力があるし、ウチも力がないとは思っていませんけど、良く頑張ってくれたと思います」と清水監督も口にした久我山が、2年連続となる全国切符を掴み取る結果となりました。

「ちょっと今までと違う感じがしませんか?」と切り出した清水監督は、続けて「去年と性質は近いんですけど、どこかで今までの"上手かった"チームよりも強くしたかったというのがあるので、去年からそういうアプローチをしていたのもあって、今年結果が出ているのは去年の子たちの功績が大きいかなと思います。だから、プレーモデルが何となく彼らはわかっていると。今年は本当に明るくて前向きな子が多くて、そういう意味では久我山らしさプラスさらにプラスアルファという所だったので。ただ、結局負けていないといってもプレミアでプレーしている訳ではないので、そういう意味ではプレミアの子たちとやってみないとというのはあります。組み合わせはわからないですけど、挑戦権をもらえるように頑張りたいと思います」と。チームに対する手応えが窺えます。

いまだに公式戦全試合ゴールを続けている山本航生は、「沖縄って聞いた時にみんな一気に士気が上がったというか、みんな沖縄に行きたいというのもあって、環境も環境なので、修学旅行みたいな感じも若干あるかもしれないですけど(笑)、行ったからには絶対そんなんじゃなくて、楽しみながら結果が出るサッカーをして、全国にも久我山のサッカーを見てもらえるように優勝したいと思います」と意気込みながら、自身についても「自分はセンターフォワードとして今年はチームを得点という形で引っ張って行っている中で、全国は自分の結果を出すことも絶対に忘れずにいきたいですし、どこまでそういう相手に自分ができるのかというのもトライしたいですし、その中でチームのために貢献できるように全力でやりたいと思います」ときっぱり。久我山が頂点獲りに挑む沖縄の晴れ舞台は、もう1か月後に迫っています。        土屋

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