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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2019年06月27日

インターハイ東京準決勝 帝京×大成@駒沢第2

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帝京×大成.JPG9年ぶりの全国か。はたまた初めての全国か。沖縄行きの切符を巡るセミファイナル。帝京と大成のビッグマッチはおなじみ駒沢第2球技場です。

久々に参戦しているプリンス関東でも、ここまで7試合を消化して3勝3分け1敗の3位と十分な健闘を披露。昨年からほとんど主力が入れ替わったにも関わらず、ここまでは好調をキープしている高校サッカー界の"カナリア軍団"として名高い帝京。今大会初戦となった準々決勝の東海大高輪台戦では、先制されながらもいったんは逆転し、そこから追い付かれる展開の末に、最後は延長後半に石井隼太(3年・FC東京U-15むさし)が蹴ったコーナーキックがオウンゴールを誘い、粘り勝ってこのステージまで。狙うは9年ぶりとなる夏の全国大会出場。ここで負ける訳には行きません。

昨年の選手権予選はファイナルへ、今年の関東大会予選はセミファイナルへと、どちらも代表決定戦まで勝ち上がったものの、どちらもあと一歩で惜敗を突き付けられた大成。今大会の二次トーナメントは、初戦で難敵の実践学園を1-0で振り切ると、延長戦までもつれ込んだ準々決勝も堀越相手に佐藤イライジャ(3年・FC.GLORIA)の決勝ゴールで競り勝って、3大会連続での代表決定戦へ。「3度目の正直という言葉を使いたいなと思います」と豊島裕介監督が話せば、「全国に行けるラストチャンスが巡ってきたと思って、ここで勝たなきゃここまで来た意味もないし、本当に勝ちだけを目指してやっていきたいと思います」とはキャプテンの杉田健(3年・三菱養和調布JY)。舞台は整っています。駒沢の空は1週間前と同様に、いつ雨が降ってもおかしくないような曇天模様。注目のセミファイナルは、帝京のキックオフでスタートしました。

開始1分のチャンスは帝京。右サイドバックの山川高輝(2年・FCトリプレッタJY)がドリブルから左へ振り分け、高橋岳(3年・鹿島アントラーズつくばJY)のグラウンダークロスに、突っ込んだ中瀬拓夢(3年・FCトリプレッタJY)はわずかに届かなかったものの、早くもサイドアタックから惜しいシーンを。2分に左から石井が蹴った左FKは中央でオフェンスファウルを取られましたが、まずは帝京が勢い良く立ち上がります。

ところが、意外な形で訪れた先制点。9分は大成が右サイドで獲得したFK。ゴールまで約35mの距離からレフティの宮脇茂夫(3年・練馬三原台中)が蹴り込んだキックは、中央で待つ味方ではなく、そのままゴール方向に。見切ったようにGKは軌道を見送りましたが、なんと右ポストに当たったボールはゴールネットへ転がり込んでしまいます。一瞬時間が止まったような雰囲気の後に、歓喜が爆発した応援団。「『えっ?』みたいな感じでしたね」と宮脇も笑いながら振り返る"直接FK"が呼び込んだ予期せぬ成果。ラッキーな形で大成が1点のリードを手にしました。

流れは一気に大成へ。12分には杉田の突破から右CKを奪い、右サイドバックの今西奏真(3年・府ロクJY)が蹴り入れたボールは、帝京のGK冨田篤弘(3年・FC多摩)がパンチングで回避しましたが、13分にも左から「今年に入って使い始めました」と語る杉田のロングスローが帝京ゴール前を襲い、混戦からディフェンダーがクリアするも、狙いたい2点目とその先。

それでも、15分に次の歓喜を享受したのは帝京。右センターバックの鳥木秀音(3年・東急SレイエスFC)が左サイドへフィードを送ると、走った高橋は相手のルーズな対応を突いて中央へ。ここに走り込んできた小島匠瑛(3年・FC東京U-15深川)のシュートは、きっちりゴールネットを揺さぶります。「ツキが最初に来てくれた分、ちょっと失点の仕方もウチがオフになってしまったシーンでもったいなかったですね」とは豊島監督。両者の点差はあっという間に霧散しました。

以降はお互いになかなか大きなチャンスは創れず、やや膠着状態に。24分は帝京。右サイドから石井が蹴ったFKは、大成ディフェンスが大きくクリア。29分は大成。阪口駿(3年・あきる野東中)のパスからボランチの内田康平(3年・FC多摩)が縦に付け、受けた杉田が右足アウトサイドで左へ出したパスは、走った大石勇冴(3年・FC多摩)もわずかに届かず。34分は帝京。ボランチに入った宮崎海冬(2年・FC多摩)が左へ流し、高橋のグラウンダークロスは中瀬とわずかに合わず。40分は大成。杉田の左ロングスローから、1トップの平川優大(3年・調布第八中)が落としたボールを内田はシュートまで持ち込むも、ここは帝京のセンターバックを託された柳大弥(3年・三菱養和調布JY)が執念のブロック。守備の中心を担う佐藤が警告累積で出場停止の中、「楽しんでやるしかないと思った」と語る金井渉(3年・FC多摩)と金井陸人(2年・三鷹F.A.)の"ダブル金井"で組んだ大成センターバックは安定感も十分。前半はお互いに1点ずつを取り合って、最初の40分間は終了しました。

後半のファーストチャンスは41分の帝京。鳥木のFKに小島が抜け出すも、放ったシュートはクロスバーの上へ。51分は大成に1人目の交替。裏へのスピードで相手のラインを押し下げていた平川に替えて、今大会のラッキーボーイ的な尾崎元(2年・FC.GLORIA)を送り込む勝負の一手を。53分は帝京。ルーズボールを拾った小島のボレーは枠の上へ。55分も帝京。右から石井が入れたFKに、飛び込んだ中瀬のシュートはヒットせず、これが公式戦初出場となった大成のGKバーンズ・アントン(1年・FCトリプレッタJY)が確実にキャッチ。やや帝京に手数が増える展開も、ゲームリズムはほとんどフィフティ。

58分は大成のセットプレー。「この代表決定戦の壁を超えないと何も結果が得られない」と意気込む宮脇の右CKは直接ゴールへ向かうも、ここは冨田がファインセーブで回避。直後に今西が入れた右FKは、デイフェンスがきっちりクリア。64分に大成が左サイドで手にしたFKを今西が蹴り込むも、ボールはクロスバーの上へ。64分には帝京に1人目の交替。同点弾の小島を下げて、市川颯馬(2年・FC東京U-15むさし)をピッチへ。動かないスコア。奪いたい自分たちのペース。

67分は帝京。石井の鋭い右FKは、宮脇が力強くクリア。70分は大成。左サイドで杉田が投げたロングスローから、宮脇が打ち切ったボレーは枠を越えるも好トライ。直後に大成ベンチは2人目の交替を決断。阪口と前澤亮太(2年・府中第三中)をスイッチして、サイドの推進力アップに着手。75分は帝京。石川航大(3年・鹿島アントラーズつくばJY)を起点に高橋を経由し、ドリブルで運んだ市川のシュートはDFに当たってゴール左へ。80+2分は大成にビッグチャンス。宮脇の右FKから内田が左へ流すと、運んだ大石のシュートはクロスバーにハードヒット。80分間では決着付かず。両チームともクォーターファイナルに続き、このゲームも延長戦へともつれ込むことになりました。

本降りになってきた雨脚も強い中、帝京のキックオフでスタートした延長は動きの少ない展開に。86分は帝京に2人目の交替。センターフォワードの位置で奮闘した中瀬を下げて、照田拓史(3年・三菱養和調布JY)をそのまま最前線へ。87分には石井が左FKを蹴り込むも、中央でオフェンスファウル。お互いにシュートを打ち切れず、いよいよゲームは最後の10分間へ。

91分に大成は3人目の交替。今西との交替で入った丸山大哉(3年・FCトレーロス)が左サイドバックに入り、その位置にいた加藤竜吾(3年・Forza'02)が右サイドバックへスライドして、全体のバランスを調整。94分は大成。丸山の左ロングスローに尾崎が競り勝つも、DFが懸命にクリア。95分は帝京に3人目の交替。ボランチで走り回った佐藤悠生(3年・三菱養和調布JY)と宮下正太郎(3年・FC東京U-15むさし)を入れ替え、宮下と照田が前線へ。98分は帝京。照田の仕掛けで奪った左FKを石井が蹴るも、軌道はそのままゴールキックに。98分は大成。宮脇がミドルレンジから右足で枠へ収めたシュートは、冨田が丁寧にキャッチ。100分は帝京。左から柳が蹴り込んだFKは、エリア内のハンドでオフェンスファウルを取られると、これがこのゲームのラストチャンス。1-1のままで100分間が終了。全国への行方はPK戦へと委ねられます。

双方の円陣が解け、幕の上がった11メートルの果たし合い。帝京1人目は左に打ち込み、バーンズもわずかに届かず。大成1人目は左のポストに当てながら成功。帝京2人目は左足で冷静に右スミへ。大成2人目は左を狙い、読んでいた冨田は弾けず。帝京3人目は中央やや左へグサリ。大成3人目は右スミへきっちり。3人目を終えて3-3。確実に積み重なっていく"成功"。

帝京4人目はバーンズの逆を突いて左へ成功。大成4人目も冨田の逆を突いて成功。運命の帝京5人目は鉄の心臓でど真ん中へズドン。外せば終わりの大成5人目。中央へ蹴ったボールは冨田もいったん弾いたものの、こぼれた球体はコロコロとゴールの中へ。悔しがる冨田と、セーフのポーズでおどける金井渉。この2人はFC多摩の同級生。決着はまだまだ付きません。

帝京6人目は右上の凄まじいコースに成功。大成6人目は正確に右スミへ。帝京7人目は丁寧に左スミへ成功。大成7人目は思い切り良く左スミへ成功。帝京8人目はバーンズも触ったものの、何とか成功。大成8人目は飛んだ冨田より少し右スミに成功。そして帝京9人目が強振したキックはクロスバーを直撃。とうとう均衡が崩れます。

大成の9人目はセンターバックの金井陸人。いつも佐藤が付けている4番を「イライジャも一緒にいるんだということを想って気が引き締まるかなと思った」金井渉が付けていたため、本来は金井渉が背負っている5番を付けた2年生は、短い助走から右スミへのキックを選択。ボールはゴールネットへ到達します。狂喜。沸騰。大願成就。「3度目の正直と言うとカッコよく見えちゃうんですけど、しんどかったです(笑) 今日試合を終えて選手たちを本当に誇りに思いますし、良く戦ってくれたなと思います。本当に嬉しいです」と豊島監督。9人全員が成功したPK戦を力強く制して、大成が初めての全国出場を堂々と手繰り寄せる結果となりました。

「今年はキャプテンが杉田、副キャプテンが宮脇なんですけど、僕は忘れもしないのは彼らが入学してきて初めて合宿に行った時に、杉田が1時間前に1人でグラウンドに来て、用具をもう1回チェックしていて、10分後に宮脇が来たんです。やっぱり試合に出ている人間は仕事をしないとか、そういうことはよく言われますけど、今でも彼らはそういう仕事をするんです。なので、本当に愛されるヤツらというか、コイツらはサッカーの神様がいるならたぶん愛してもらえるだろうなというのを凄く感じているので、そういう子たちが大成初の全国を決めてくれたのがアイツらで凄く嬉しいです」。豊島監督は試合後にこう言って、自らの選手たちを称えました。指揮官の想いは続きます。「ウチに入ってくる子は、正直中学校時代に優れた選手っていないんです。注目されてきた選手もいないです。ただ、彼らが1年で入ってきた時から僕がずっと見ていて、『3年後、必ず君たちを全国に出すよ』と。『どこのチームでやってたかなんて関係ないよ。いかにこの3年間でどう成長するかだから』と言って、1年時にあらゆる強豪と試合をさせに行って、ボロクソにやられたり、良い勝負をしたりしたんですけど、そういった経験を積んで、『3年後にどうなっているか』だと。そういう形で常に声掛けしてきたので、今日も相手は帝京さんだったんですけど、リスペクトはしていましたが、ビビッてはなかったと思います。だから『自分たちもできる』と。自分たちは名前がないかもしれないけれども、サッカーって全員でやれる競技で、スーパーな子が1人いても試合に勝てる訳じゃないですし、『ウチは全員でサッカーするよ』っていうのを心掛けてやってきたので、本当にその魂が今日は出てくれたゲームなんじゃないかなと思います」。この豊島監督の言葉だけで今年の大成がよくわかるんじゃないかなと。東京代表として、是非沖縄の地で大暴れしてきて欲しいと思います。         土屋

  

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