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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
共に東京の頂点を明確に見据える両者の対峙。関東第一と実践学園が激突する好カードは、おなじみの駒沢第2球技場です。
昨シーズンは関東大会予選とインターハイ予選を制し、夏の全国ではベスト16まで躍進するなど、相変わらずの勝負強さを発揮していたものの、選手権予選では初戦で東京実業にPK戦で敗れ、続けていた都内のトーナメントコンペティションでの連続優勝が7でストップした関東第一。迎えた今シーズンはトレーニングマッチも含めてなかなか結果が出ず、開幕したT1でもまさかの連敗スタート。苦しい状況の中で「『この試合で勝って、何とかチーム全体が自信を持って関東大会に進めるように』と言って、チームとしてテンションや熱量を高めで臨もうという試合」(佐藤誠也・3年・VIVAIO船橋)に挑みます。
関東大会予選、インターハイ予選、選手権予選の代表権獲得に加えてT1制覇と、掲げた"四冠"を見事に達成した一昨年のシーズンから一転、昨年は各コンペティションで望んだ結果には手が届かず、悔しい1年を過ごした実践学園。主力もほとんど入れ替わった今シーズンは、早くも開幕したT1のステージで絶好調。開幕戦で東京武蔵野シティFC U-18に4-0で快勝を収めると、東京朝鮮も3-0で下すなど、攻撃陣が猛アピール。その勢いを持って、怒涛の開幕3連勝を狙います。駒沢のスタンドは春の気候を思わせるポカポカ陽気。楽しみな90分間は10時ジャストにキックオフされました。
いきなり2分の決定機は実践。左サイドでボールを持った佐藤恵允(3年・ESA)がカットインから枠内ミドル。ここは関東第一のGK出口貴也(3年・葛飾青葉中)がファインセーブで応酬したものの、9番のストライカーがファーストシュートに滲ませるゴールへの意欲。関東第一も8分には右CKをレフティの岡田琉空(3年・FC多摩)が蹴り込み、こぼれを拾った宇山輝(2年・FC杉野)のミドルはゴール左へ外れたものの、まずはお互いにフィニッシュを取り合います。
すると、先に得点のチャンスを掴んだのは実践。9分にエリア内へ潜った2トップ下の佐伯紘汰(3年・FC.GONA)がDFともつれて倒れると、ホイッスルを鳴らした主審が指し示したのはペナルティスポット。実践にPKが与えられます。キッカーはキャプテンマークを巻いた古川真人(3年・ESA)。短い助走から蹴ったキックは、しかしクロスバーにヒット。絶好の先制機を生かせません。
とはいえ、以降もペースは縦への推進力で上回った実践。10分と11分にはそれぞれ左と右から佐藤恵允がロングスローを投げ込み、田中大生(3年・横浜FC JY)と鹿股翼(2年・東急SレイエスFC)に跳ね返されましたが、12分には佐伯が枠の右へ外れるミドルへトライ。関東第一も14分には佐藤誠也が右へ流したボールを、貝瀬敦(3年・田口FA)がダイレクトで枠へ収めるも、ここは実践のGK宗像岳(3年・東京武蔵野シティFC U-15)がファインセーブ。逆に17分には実践にセットプレーのチャンス。右サイド、ゴールまで約25mの位置から鈴木駿一(3年・FC.VIDA)が枠内へ飛ばした直接FKは、出口がビッグセーブで掻き出したものの、続く実践の攻勢。
そんな中で20分前後から「今週はダイレクトパスとかフリックとか、テンポを使った練習を結構していた」と平田晟也(2年・フレンドリー)も話した関東第一は、そのダイレクトパスやフリックも含めた攻撃のコンビネーションがアタックに直結。23分に岡田が蹴った右FKから、DFのクリアが右ポストに当たり、ここでの先制とは行きませんでしたが、28分には「久々にボランチというか真ん中をやれて、楽しみだった」という中盤アンカーの佐藤誠也がクサビを打ち込み、平田、類家暁(2年・東京ベイFC U-15)、宇山と細かく繋ぎ、貝瀬の右クロスは中央と合わなかったものの、スムーズな連携から惜しいシーンを生み出します。
ところが、再び実践に訪れた得点機。31分にエリア内へ仕掛けた鈴木駿一がマーカーとの接触で転倒。主審はこれをディフェンスファウルとジャッジし、実践がこの日2本目のPKを獲得します。キッカーはここも古川。度胸が試されるシチュエーションに、"1本目"と同じ左を狙った軌道が捉えたゴールネット。キャプテンがきっちりリベンジを果たし、実践が1点のリードを手にしました。
「オープンにドリブルされたところの対応とかはまだ昨日しかトレーニングしていないから、『しょうがねえな』っていう感じだったとは思うんですけどね」と小野貴裕監督も話した関東第一の折れなかったメンタル。38分には平田、佐藤誠也、類家とテンポ良くパスを回し、平田の折り返しを類家が打ったシュートはDFにブロックされるも、らしさはそのまま継続傾向。実践も38分には佐藤恵允が強烈なミドルをクロスバーにぶち当て、こぼれを拾った佐伯のパスから古川が蹴ったシュートは田中が体でブロックしましたが、2点目の可能性も十分に。45+1分は関東第一。佐藤誠也がシンプルなフィードを送り、走った平田のシュートは宗像がキャッチ。双方が持ち味を出し合った前半は、実践が1点のアドバンテージを握ってハーフタイムへ入りました。
後半はスタートから両チームに交替が。関東第一は前半で佐藤恵允と激しくやり合い、イエローカードを受けていたセンターバックの伊藤翔(3年・ミナトSC)に替えて、高村昂輝(3年・FC多摩)をそのまま右センターバックへ。実践は左ウイングバックで奮闘した橋本修弥(3年・FC Branco八王子)を下げて、秋葉侑亨(3年・ESA)をそのままの位置に送り込み、残された45分間へ向かいます。
48分は実践。ウイングバックの永瀬啓太(3年・バディーJY)も絡んだ流れから、右サイドで得たCKを中村昇太(3年・FC.VIDA)が蹴り入れ、鈴木がフリーで合わせたヘディングはクロスバーの上へ。53分は関東第一の決定機。貝瀬のリターンを受けた平田が丁寧なラストパスを送り、宇山が迎えた1対1は飛び出した宗像がストップ。こぼれを笠井圭祐(2年・VIVAIO船橋)がヘディングで残し、貝瀬が頭で合わせたシュートはゴール右へ逸れるも、らしい連携からチャンスを創出。55分は実践に2人目の交替。佐伯と前田青波(2年・ZION FC)を入れ替え、前田はそのまま2トップ下に配されます。
56分は関東第一。貝瀬が左へスルーパスを通し、1人かわした宇山のシュートは宗像がキャッチ。61分も関東第一。ここも貝瀬との連携から宇山がラインの裏へ抜け出すも、シュートは打ち切れず。前半は少し自信のなさそうなプレーが目立った宇山でしたが、後半は見違えるような積極性でチャンスに絡み続け、ゴールはなかなか奪い切れないものの、彼に象徴されるような流れるアタックに対し、「チーム全体でダイレクトで剥がすみたいなのは意識できていました」(佐藤誠也)「結構背後で引き出してとか、連動ができていた」(田中)「みんなで噛み合っていて、連動性が出ていたと思います」(平田)と3人が揃って手応えを口に。67分に実践も中村の右FKに、3バックのセンターを務める竹原快(3年・ESA)がヘディングで合わせましたが、ボールは枠を越えてしまい、追加点を奪えません。
69分に飛び出したのは「輝けない時期がずっとあって、徐々にポジションも奪われて、『このまま落ちてっちゃうのかな』とか思ったりして、焦りはありました」という悩める男のスーペルゴラッソ。自陣でボールを持った佐藤誠也は前を見据えるとドリブル開始。「最初は『そのまま左に、ずっと縦に行こうかな』と思ったんですけど、ちょっと体力的にも結構息が上がっていたので、相手の中に入って」とコースを巧みに取りながら50m近い距離を単騎で運ぶと、右に流れながら右足一閃。ボールは左スミのゴールネットは鮮やかに転がり込みます。「みんな動き出してくれて、相手がつられて一瞬ディフェンスが迷ったと思うんですけど、そこで自分が勇気を持ってシュートまで、最後まで行けたのは良かったです。シュートは気持ちでねじ込みました」と笑った8番の衝撃弾。関東第一がスコアを振り出しに引き戻しました。
勢い付いた新小岩のカナリア軍団。72分は佐藤誠也が縦に付け、貝瀬の落としに宇山が呼応するも、ドリブルが大きく宗像がキャッチ。73分にも類家のパスから上がってきた鹿股が右へ流すと、貝瀬のスライディングシュートはゴール右へ。77分に実践は3人目の交替として、中村と面谷悠希(3年・FC多摩)のボランチ同士をスイッチするも、79分はここも関東第一。笠井を起点に平田が左サイドをえぐり、貝瀬のシュートの跳ね返りを宇山が叩いたシュートは枠の右へ。漂わせ続けるゴールの香り。
右から多田大志(2年・FC.GONA)、竹原、森田礼(3年・Forza'02)で組んだ3バックと宗像を中心に、何とか水際で凌いでいた実践はセットプレーに活路。81分に古川が蹴った長めのFKは、田中がきっちりクリア。直後にはベンチも鈴木を下げて、井出陽翔(3年・府ロクJY)を2トップの一角へ解き放ち、打ち出した勝負の一手。84分には古川と佐藤恵允の連携で奪った右CKを古川が放り込むも、中央でオフェンスファウル。88分には佐藤恵允の右ロングスローも、DFが大きくクリア。フィニッシュには至りません。
勝負を決めたのは「いつもアシストとか、最後にパスを出すことが多かったんですけど、『やっぱり自分が決めないと』と思っていた」ストライカー。88分に中央で前を向いた平田は左へ流すと、宇山は短く中央へリターン。「シンプルにまずはたいて、ゴール前に流れたらヒカルくんに『横パスあるよ』というのを言って、それで横パスが来たので、迷わずシュートしました」という左足でのフィニッシュは、右スミのゴールネットへグラウンダーで吸い込まれます。「今日がT1初スタメンで、チャンスもそんなにすぐいっぱい来る訳でもないので、『今日で絶対点を取ろう』とは思っていました。持っていきましたね(笑)」と笑顔の平田が大仕事。最終盤で関東第一が逆転に成功します。
とうとう決壊した実践も最後の意地。90+2分に古川が右へ展開すると、面谷のクロスに佐藤恵允が高い打点のヘディングで合わせるも、ボールはクロスバーの上に外れて万事休す。「引き分けで終わっても良かったかもしれないですけど、負けるとまた自信がなくなっちゃうから、最高だったんじゃないですかね。一番ベストな勝ち方だった気もします」と小野監督も語った関東第一が、劇的な逆転勝利でリーグ戦の初勝利を掴み取る結果となりました。
苦しんでいた関東第一には久々に"カンイチらしさ"が戻ってきた印象を受けました。「本当にずっと勝てなくて、ゲームに向けてのトレーニングを組んじゃうとどうしても悪い所の修正のトレーニングになっちゃうので、それを今回はあまり入れないで、自分たちの良さが出るようにトレーニングを3時間ぐらい、怖がらずにボールをいっぱい触ろうかなと思ってやったので、そういう所は良かったかもしれないですね」と小野監督。その成果がダイレクトにピッチへ出たのかなと。「キャプテンとしてチームを勝たせなきゃいけないので、しっかり勝てて良かったです。今日は凄く嬉しかったです」と田中が笑えば、「チームとしても物凄く自信になったと思います」と平田も笑顔。改めて勝利の味を噛み締めた関東第一の巻き返しが非常に楽しみです。 土屋
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