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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
茨城開催の関東大会へ乗り込むための切符を巡るビッグマッチ。國學院久我山と関東第一のセミファイナルは、おなじみ駒沢第2球技場です。
最後に本大会へ出場したのは、結果的に選手権で全国準優勝まで登り詰めた代の2015年のこと。それ以来となる4年ぶりの関東大会進出を狙う國學院久我山。今予選では初戦で桐朋に7-0と快勝を収め、続くベスト16では難敵の堀越を2-0で退けると、先週の準々決勝でも半年前の選手権予選で苦杯を嘗めた駒澤大学高に3-1で競り勝って、このセミファイナルまで。「『最近の東京のチャンピオンのカンイチに勝って、絶対関東大会に出てやろう』とは、先週駒澤に勝った時からみんな言っていて、今日のためにずっと準備していた」とはストライカーの山本航生(3年・東急SレイエスFC)。万全の状態でディフェンディングチャンピオンに挑みます。
一昨年、昨年と大会連覇を飾るなど、トーナメントマスターというイメージに加え、春の王者という印象も強くなりつつある関東第一。迎えた今大会は「自分では久しぶりに良い試合だったなと思った」と小野貴裕監督も認める初戦で早稲田実業を1-0で振り切り、好カードとなったベスト16の成立学園戦は、延長後半終了間際に佐藤誠也(3年・VIVAIO船橋)が劇的な直接FKを沈めてサヨナラ勝ち。勢いそのままにクォーターファイナルも都立国分寺を2-1で下して、5年連続でのベスト4進出。3連覇へ王手を懸けるべく、重要な80分間へ向かいます。会場の駒沢は日陰になると冬を思わせるようなコンディション。楽しみな一戦は久我山のキックオフでスタートしました。
4分のファーストチャンスは久我山。中央やや右寄り、ゴールまで約25mの位置で獲得したFKを、左サイドバックに入った山本献(3年・横浜F・マリノスJY追浜)は直接狙い、ここはカベに阻まれましたが積極的なトライを1つ。9分は関東第一にもチャンス。右ウイングの貝瀬敦(3年・田口FA)、左ウイングの類家暁(2年・東京ベイFC U-15)と繋ぎ、左サイドバックの鹿股翼(2年・東急SレイエスFC)が放ったミドルは枠の右へ外れたものの、まずは両チームとも左サイドバックのフィニッシュで立ち上がります。
そんな中で少しずつ見えてきたのはボールを動かす久我山に、「何とか焦らして焦らしてというゲームプラン」(小野監督)の関東第一という構図。前者がセンターバックの保野友裕(3年・東京武蔵野シティFC U-15)と加納直樹(3年・ジェファFC)にキーパーの石渡克(3年・ジェファFC)も加えた後方でビルドアップしていくのに対し、後者は中盤に笠井佳祐(2年・VIVAIO船橋)、佐藤、岡田琉空(3年・FC多摩)を並べて、きっちりスライドしながら1つずつ攻撃の芽を潰していきます。
11分は久我山に決定機。山本献の左CKがこぼれると、戸坂隼人(3年・FC東京U-15むさし)のボレーは関東第一のGK出口貴也(3年・葛飾青葉中)がファインセーブで弾き出し、詰めた山本航生のシュートもDFがブロック。18分も久我山。山下貴之(3年・ジェファFC)、山本献とボールを回し、大窟陽平(2年・1FC川越水上公園)のシュートもDFがブロック。直後の左CKも山本献が蹴り込み、保野が競り勝ったこぼれを河原大輔(3年・横浜FC JY)が叩いたシュートは出口が丁寧にキャッチ。先制とは行きません。
ただ、「前半の心象としてはミスしてるという感覚は相手の方が多かったはず」と小野監督が話し、「前半はあまり良い入りができなくて、ミスとかも多くなってしまいました」と山本航生も言及したように、なかなか久我山もポゼッションの高さに比例する程のテンポアップには至らず。時折セットプレーは獲得するものの、いずれも帰ってきた菅原涼太(2年・SCH.FC)と田中大生(3年・横浜FC JY)のセンターバックコンビを中心に、安定感の高い関東第一ディフェンスにことごとく阻まれ、取り切れないフィニッシュ。
すると、前半終了間際の40分に飛び出した先制弾。関東第一がピッチ中央で奪ったFK。キッカーは成立学園戦での一撃が記憶に新しい佐藤。「フリーキックはもう外すとか思わなくて、決まるだろうという感じはありました」と、30m近い距離にも関わらず直接狙った軌道は、カベを越えて左スミのゴールネットへ鮮やかに吸い込まれます。「メンタル的なもので言えば、もしかしたらウチの方が優位になっていたのかなと思います」と小野監督も言及する時間帯で、またもや佐藤のFKが炸裂。関東第一が先制点を奪って、最初の40分間は終了しました。
後半はスタートから関東第一に勢い。開始早々の41分に笠井が仕掛け、ルーズボールを拾った類家のシュートは石渡が何とかキャッチ。47分には決定的な追加点機。笠井を起点にセンターフォワードの小柳陸(3年・FC府中)が落とし、
横山慎也(3年・ブリオベッカ浦安U-15)のパスから笠井が枠へ収めたシュートは、石渡がファインセーブで懸命に回避。「後半の頭は良い形で入ろうということは話しましたけど、そんなに良くなかったです」とは久我山のインテリオールを任されている田中琢人(2年・ジェファFC)。リードが生み出した思い切りの後ろ盾。
「逆に自分たちがやりたいことを相手にやられたみたいな感じ」(山本航生)の久我山も49分に反撃。中盤アンカーの福井寿俊(3年・東急SレイエスFC)が縦に付け、田中琢人が左へ。山下のクロスから、ファーで戸坂がダイレクトで合わせたシュートは出口がキャッチ。56分に山本献のパスから福井が打ったミドルは枠の右へ。60分にも左サイドを抜け出した山下のシュートは出口がファインセーブで弾き出し、山本航生が詰めるも田中大生が体でブロックし、大窟のミドルは出口ががっちりキャッチ。揺るがない関東第一の堅牢。
66分は関東第一。貝瀬が得意のスピードを生かしたドリブルでCKを獲得すると、右からレフティの岡田が蹴り入れたボールはこぼれ、類家が狙ったミドルはクロスバーの上へ。同じく66分は久我山。山下が対角のパスをグサリと差し込み、田中琢人がクロスを入れるも菅原が大きくクリア。残り時間が気になり始めた久我山でしたが、ようやく引き寄せた歓喜の瞬間は67分。
保野のクサビを大窟がダイレクトではたき、河原が右へ小さく出したパスを戸坂はマイナス気味に中央へ。「練習でも決まった形で、マイナスにいつも入っていっているので、いつも通りという感じ」という田中琢人が走り込みながら放ったシュートは、右スミのゴールネットへ到達します。「責任が重いというか、これから似合う選手になっていきたいと思います」と背番号について語る久我山伝統のナンバー14が大仕事。両者の点差は霧散しました。
双方通じて初めての交替は70分の関東第一。足を攣らせた鹿股に替えて、宇山輝(2年・FC杉野)を左ウイングに送り込み、類家が中盤左へ、岡田が左サイドバックへそれぞれスライド。72分は久我山。左から山下が思い切り良く打ったミドルは、わずかにゴール右へ。74分も久我山。戸坂の右CKから保野のヘディングが枠を襲うも、カバーに入った佐藤がライン上で掻き出し、大窟のミドルは枠の右へ。75分は関東第一に2人目の交替。小柳と安藤慎之助(2年・VIVAIO船橋)を入れ替え、残り5分とアディショナルタイムに滲ませる勝負の姿勢。
80分は関東第一。岡田が左前へ流し、ドリブルを始めた安藤がそのまま入れたクロスは、ゴール前を横切りつつわずかに枠の右へ。80+1分は久我山。右サイドから戸坂がCKを蹴ると、保野が高い打点で撃ち下ろしたヘディングは、キャプテンの田中大生が体で渾身のブロック。お互いに持ち味を出し合った80分間では決着付かず、前後半10分ずつの延長戦へともつれ込みます。
延長前半に入り、先にセットプレーのチャンスを掴んだのは関東第一。83分に相手クリアの乱れを突いて得たCK。左から佐藤が蹴ったボールを保野がクリアすると、そこから一気に久我山のカウンターが発動。山本航生が残し、戸坂が縦に入れたパスで山下が独走。運んで運んで右へ送ったラストパスから、「トラップが自分の思ったより若干外側に流れたんですけど、今日はもう振り抜いて来いというのもベンチから言われていて、もうチャンスはこれしかないなと思っていた」山本航生は右足一閃。左スミへ飛んだボールは、そのままゴールネットへ転がり込みます。「正直あまり全体的に良いプレーはできていなくて、『何とか自分が結果だけでも出してやろう』という気持ちで最後はずっと試合をしていました」と語る9番のストライカーは、これで驚異の公式戦7試合連発。久我山がとうとうスコアを引っ繰り返しました。
「相手に回される時間が多くなって、それは見越していたので大丈夫だったんですけど、徐々に体力が削られていった所はありました」と佐藤も口にした関東第一は、1点を追い掛ける展開に。86分には佐藤の右FKに、ドンピシャで合わせた菅原の決定的なヘディングはゴール左へ逸れ、スタンドとベンチが抱えた頭。87分は久我山。山下の左クロスから、戸坂のヘディングはゴール右へ。88分も久我山。戸坂が右から中へ付け、山本航生が粘ったボールを戸坂が狙ったシュートは枠の右へ。90分も久我山。山下とのワンツーを経て、田中琢人のシュートは菅原が頭で防ぎ、大窟のシュートはゴール左へ。久我山が1点をリードしたまま、ゲームはいよいよ最後の10分間へ。
延長後半開始から関東第一は3人目の交替。先制弾の佐藤を下げて、大井航太(3年・VIVAIO船橋)をボランチの一角に投入して類家と並べ、最前線に宇山、その下に笠井を置く4-2-3-1に近い形で最後の勝負に打って出ると、91分には入ったばかりの大井が縦に配球し、笠井が粘ったボールを安藤がシュートに変えるも、軌道はゴール右へ。追い付けません。
93分は久我山。保野の好フィードに田中がトラップで落とし、山下の左クロスをダイレクトで叩いた戸坂のシュートはクロスバーの上へ。96分に久我山も1人目の交替。大窟に替えて、栗原俊真(2年・FC東京U-15むさし)を中盤へ解き放ち、託したゲームクローズ。97分も久我山。田中琢人、戸坂、山本航生とパスを回し、田中琢人が打ったシュートはDFが必死に寄せて、こぼれを出口がキャッチ。99分も久我山。山本献の左CKを、飛んだ保野はシュートまで持ち込めなかったものの、これがこのゲームのラストチャンスとなり、しばらくして聞こえたタイムアップのホイッスル。「『代表決定戦は雰囲気が違う』と言っていて、そういう意味ではかなり硬かったですけど、良く引っ繰り返してくれたと思います」と清水恭孝監督も笑った久我山が激闘を制し、関東大会への出場権を獲得する結果となりました。
「今年はいろいろなフェスティバルをやっていく中で、非常に手応えも感じているし、それこそ選手権に向けていろいろな課題を彼らに与えればたぶん乗り越えるであろうと思っているので、もっとチームを成長させられるんじゃないのかなと思っています」と清水監督も話した通り、ここからの伸びしろも含めて、非常に楽しみなチームであることは間違いのない久我山。「最近久我山では去年のインターハイは出たんですけど、全体的にこういう代表とか獲れていなくて、今年は周りからも結構いいみたいに言われていたものの、自分たちは成し遂げたものがまだ1つもなかったので、そういう中で1つ目の目標をまず成し遂げられたというのがとても大きいです」とは山本航生。周囲の評価と確かな結果を結び付けた所に、この1勝の持つ意義があるような気がします。試合終了の瞬間には泣いている選手もいたほどに、気持ちの入っていた様子を問うと「今年の子たちは非常に明るいんですよ。良いも悪いもこちらが怒った時に良い切り替えができると思います。あとは、宮原たちの代と似ているんじゃないですかね。凄く雰囲気がいいので」と清水監督。"令和の久我山"も大いに注目する必要がありそうです。 土屋
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