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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
いよいよ2019年も待ちに待ったT1リーグの開幕。関東第一と駒澤大学高。それぞれ一昨年度と昨年度の選手権予選で東京王者に立った両者の対峙は、おなじみ駒沢補助競技場です。
昨年はインターハイこそ東京予選を勝ち抜き、全国でもベスト16まで勝ち上がったものの、3連覇を期待されて臨んだ選手権予選では東京実業にPK負けを喫し、まさかの初戦敗退という結果を突き付けられた関東第一。その試合を経験している選手たちも複数残っている今シーズンは、再び全国切符を勝ち獲ることももちろんですが、久々のリーグタイトルも目指したい所。まずは難敵相手のオープニングマッチに、必勝を期して向かいます。
関東大会予選、インターハイ予選と苦しい時期を過ごしながら、秋の東京予選で國學院久我山、駿台学園、帝京と強豪校を力強くなぎ倒し、3年ぶりに冬の全国を経験した昨シーズンの駒澤大学高。ただ、「去年は自分たちがあまりスタメンに関わっていた訳ではなくて、先輩たちに連れて行ってもらった部分があった」とは時田悠人(2年・Y.S.C.C.横浜U-15)。「個のレベルが高くて、結構団結力があると思うので、勝ち切れるチームにしていきたいですね」とセンターバックに戻った原田大渡(2年・FC東京U-15深川)が表現したチーム力で、こちらも久々のT1王者に輝くための第一歩を踏み出します。まだ寒さの残る駒沢補助には少なくない観衆が。待望の開幕戦は関東第一のキックオフでスタートしました。
まず押し込んだのは、「今日はT1開幕ということで、自分たちの中で熱量や雰囲気面に関しては1人1人が意識していたと思う」と松本悠佑(2年・ジェフユナイテッド千葉U-15)も話した駒澤。3分に手島大雅(2年・FCヴィエンタス)の飛距離を出した左ロングスローから、こぼれを叩いた松本のシュートはDFにブロックされたものの、4分にも左に開いた橋本雄也(2年・ルキナス印西)が右足でクロスを上げると、青木優音(1年・クラブ与野)のヘディングは関東第一のGK出口貴也(2年・葛飾青葉中)がファインセーブで回避。5分にも松本の右CK、6分にも松本の左CK、7分には右サイドバックに入った森田陸翔(2年・クラブ与野)のロングスローと、シュートには到らない中でもセットプレーで圧力を掛け続けます。
11分にも手島の左ロングスロー、16分にも松本の左FK、直後にも森田の右ロングスロー、17分にも松本の右CKと左右からセットプレーが続く中、24分には原田が後方から好フィードを届け、内田哲平(2年・坂戸ディプロマッツ)のシュートはDFに当たって枠の左へ。その左CKを松本が蹴り込み、こぼれを拾った小林蒼太(2年・Forza'02)のシュートはここもDFがブロック。直後の右CKを松本が蹴り入れると、小林のシュートは枠を捉えるも、ラインギリギリで出口が必死にセーブ。「フィードは練習とかではあまりうまくいってなかったんですけど、今日は調子も良かったです」と笑った原田のフィードと、左に流れて基点を創る橋本のキープはアタックの重要なポイントに。
27分も駒澤。松本の右CKに、内田が合わせたヘディングは出口がセーブ。28分に松本が蹴った右CKは、DFが何とかクリア。29分と32分に手島が相次いで投げた左ロングスローも、フィニッシュには結び付かず。33分にも橋本がドリブルで積極的に仕掛け、こぼれを収めた松本のミドルは枠の右へ。守っても「大渡はもともとセンターバックで入ってきた選手で、やりにくさはないです」とパートナーを評した小林泰晟(2年・FCクラッキス松戸)が、その原田と組むセンターバックを中心に、守備の安定感も駒澤は抜群。
さて、「選手権の後というのもあったから、駒高さんは『やり方を変えるかな』と思ったんですけど、やっぱりそのままだった」と小野貴裕監督も話した関東第一は、前線の笠井佳祐(1年・VIVAIO船橋)と横山慎也(2年・ブリオベッカ浦安U-15)までボールが届かず、時間を創れるポイントを見つけ切れません。41分に掴んだ右CKを大井航太(2年・VIVAIO船橋)が蹴り込み、キャプテンマークを巻いた田中大生(2年・横浜FC JY)が頭で折り返すも、DFが大きくクリア。逆に44分には駒澤も、清水宏晃(2年・C.A.ALEGRE)のパスから青木が枠も右へ逸れるミドルへトライ。すぐさま押し返します。
45+1分には関東第一に決定機。2トップの連携でタメを創ったカウンターから、エリア内で類家暁(1年・東京ベイFC U-15)が右へ流すと、10番を背負うサイドバックの佐藤誠也(2年・VIVAIO船橋)がオーバーラップから好クロス。岡田琉空(2年・FC多摩)のヘディングはゴール左へ外れたものの、ようやく放ったファーストシュートはきなりのビッグチャンス。「ああいうカウンター対応の部分には課題が残るかなと思います」とは原田ですが、全体的に見れば駒澤ペースで推移した前半は、スコアレスで45分間が終了しました。
後半はスタートから駒澤に交替が。中盤センターに入った内田を下げて、林駿佑(2年・クラブ与野)をそのままのポジションに投入し、ミドルゾーンでの強度アップに着手すると、51分には橋本と林の連携で右CKを獲得し、松本の蹴ったボールは出口がパンチングで掻き出したものの、早くも林がセットプレーのチャンスを演出。52分に松本の左CKから、ニアへ飛び込んだ小林泰晟のヘディングは枠の左へ外れたものの、54分には林が左からカットインしながら、そのままフィニッシュまで。ここは佐藤が体でブロックするも、林が生み出す前への推進力。
56分には駒澤に2人目の交替。大野祥司監督も「技術的には1年の頃からこの学年での中でも一番の子」と言及する橋本に替わり、キック精度に定評のある時田がピッチへ。57分には早速「自分だったら良いボールが蹴れるという自信もあります」という時田が右CKをマイナスに蹴り入れ、森田のシュートは寄せたDFにブロックされるも、デザインされたセットプレーを披露。「松本も左足がいいんですけど、時田と2人いっぺんに出しちゃうと、両方蹴りたくなっちゃって(笑)」とは大野監督ですが、駒澤に揃った左右のプレースキッカー。
この前後の時間帯から「前半の流れのままで後半に入っていっても、同じ現象になると思っていたので」という小野監督が3-5-2にシフトした関東第一は、62分に1人目の交替。岡田と平田晟也(1年・フレンドリー)をスイッチすると、最終ラインに右から高村昂輝(2年・FC多摩)、田中、鹿股翼(1年・東急SレイエスFC)を並べ、ウイングバックは右に佐藤、左に高嶋隆太(2年・田口FA)を配置。類家をアンカー気味に、その前には大井と笠井が入る逆三角形の中盤に、平田と横山の2トップという形で整えた反撃態勢。63分は駒澤に3人目の交替。青木に替えて、ムードメーカー感溢れる大岡忠義(2年・フレンドリー)が投入されると、異様に盛り上がる駒澤応援団。
すると、すぐさま交替策は結果に直結。67分に相手陣内でパスカットした流れから、大岡が潰れたボールは時田の元へ。「相手が2枚前にいたんですけど、1回左に持っていったら2枚とも動いたので、あとは打つだけという所で、『ちょっとグラウンドがスリッピーだな』って考えていたので、『ちょっと滑らせて打とう』と」右足一閃。わずかにDFへ当たった軌道は、右スミのゴールネットへ突き刺さります。「自分はケガ明けということでベンチスタートだったんですけど、自分に求められている所は得点の部分だと思っていたし、『自分が決めて勝つ』という強い気持ちを持ってピッチに入れたかなと思います」という8番の貴重な先制弾。駒澤がスコアを動かしました。
「相手がシステムを変えたのは気付いていて、どうするかという対応は自分たちはまだ『ちょっとできなかったかな』というのはあって、前から行くのが駒澤のスタイルなんですけど、ちょっと引き気味になっていましたね」と松本も話した駒澤は再びラッシュ。71分に松本の左FKに大岡が競り勝ち、小林蒼太が狙ったミドルは枠を越えるも好トライ。74分には中央やや左、ゴールまで約30mの距離から時田が直接狙ったFKはわずかに枠の左へ。赤黒に漂う追加点の香り。
75分は関東第一に2枚替え。佐藤と類家を下げて、貝瀬敦(2年・田口FA)と北村磨央(1年・フレンドリー)をピッチへ解き放つも、76分は駒澤に決定機。左クロスを清水が胸トラップで収め、林が思い切りよく放ったボレーはクロスバーを直撃し、跳ね返りに自ら突っ込んだ林のヘディングは出口がビッグセーブで阻むも、またも林が得点の一歩手前まで。77分は左CK。時田はファーに蹴り入れ、大岡の折り返しから小林蒼太が打ったシュートはDFがブロック。78分は左FK。時田は再びファーを狙い、大岡の折り返しは流れたものの、この2本はあくまで成果への布石。
80分も左CK。「今日はコーナーキックが多くて、ずっとファーに入れていたんですよ。あの時は『やっとニア空いたな』という所で」キッカーの時田が狙ったのはニア。「前半からファーの折り返しを狙っていたんですけど、惜しいシーンで決められなくて、『ここは変えようかな』と思って、『ニアの所は自分が入っていくしかない』と」飛び込んだ小林泰晟のヘディングは、鮮やかにゴールネットを揺らします。「時田からも何本か動画が送られてきたんです」と小林泰晟が話せば、「ああいう点が欲しいという所で動画とかを送ったりして、『イメージこれだよ』みたいに泰晟と2人で話していたんです」とは時田。まさに狙い通りの一撃で、駒澤のリードは2点に広がりました。
赤黒軍団が取り掛かるゲームクローズ。84分に松本の左FKから、時田のヘディングがゴール右へ外れると、大野監督は4人目の交替を決断。清水と鈴木成亜(2年・TFA)を入れ替え、前からのさらなる圧力を。88分は関東第一に決定的なチャンス。横山が短く付け、右サイドを運んだ貝瀬が枠へ飛ばしたシュートは、駒澤のGK三浦健太(2年・S.T.FC)がビッグセーブで弾き出し、リバウンドに自ら詰めた貝瀬のシュートは右サイドネットの外側へ。ようやく掴んだ得点機を生かせません。
90分に駒澤は「結構ガチガチな感じもあったんですけど(笑)、自分の中ではT2もやってきた中で、こういう本番にはみんな気合も入れるので自信はありました」と語ったT1デビュー戦の松本を、吉田舜(2年・FC.GIUSTI世田谷)とスイッチする最後の交替を敢行すると、アディショナルタイムの3分も消し去って聞いたファイナルホイッスル。「確かに今日は良いレベルの試合をしたし、勝てたのは良かったですね」と大野監督も一定の評価を口にした駒澤が、オープニングマッチで勝ち点3をもぎ取る結果となりました。
駒澤がオールコートで発動する圧力は健在でした。とりわけ守備陣の強度は、この時点でも既に相当なレベル。「今回はたぶんシュートを1,2本で抑えられて、完封に近い形だったんですけど、もともと『シュートをゼロで』『失点ゼロで』というイメージでやっていたので、それができて良かったです」と原田が話せば、「大渡とは『シュートゼロで行こう』みたいな話はしていて、結果的にはシュートを打たれちゃったんですけど、体を張ったりして止められて、失点ゼロで抑えたというのは良かったです」と小林泰晟。試合前の目標をほぼ具現化できた事実は、小さくない自信になったことでしょう。
今年のチームを「自主的にやっているし、主体的にもやっているし、何も怒るようなところがないんです。人間的な部分とかチームワークの部分は例年以上にいいですよね」と大野監督が評したことを伝えると、「自分たちの良い所はそういうまとまりの部分とか、協力するという部分なので、そういう所は自信があります」(小林泰晟)「自分たちはまとまりとか、そういう部分が持ち味だと思っているので、そこは存分に出しながら、1人1人が成長して、より良いチームになればと思っています。仲良いがゆえに緩さもありますけど(笑)、そこはこれからちょっとずつ直していければいいと思います」(時田)「今年のチームとしてのテーマは自立ということで、1人1人がリーダー意識はしっかり持たないと、こういうテーマを掲げても自分たちの力は付いていかないと思うので、みんながリーダー意識を持ってやれば、誰がキャプテンになってもこのチームを引っ張っていけるかなと思います。去年からまとまりとか団結力は自分たちの良さかなと思います」(松本)と3人も同じような見解を。今シーズンの駒澤も非常に楽しみなチームになりそうです。 土屋
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