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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2018年10月21日

高校選手権東京B2回戦 東京朝鮮×都立狛江@駒沢第2

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1020koma2-2.JPG悲願の東京制覇を狙う十条のレッドタイガーと関東大会予選のセミファイナリストの激突。東京朝鮮と都立狛江の2回戦は引き続き駒沢第2球技場です。
過去2年は共に西が丘まで勝ち上がり、とりわけ昨年の準決勝は関東第一と壮絶な打ち合いを演じるなど、いよいよ頂点が確実に見えつつある東京朝鮮。今シーズンもインターハイ予選では全国を懸けた準決勝で、関東第一と再び3-3と激しくやり合い、最後はPK戦で敗れたものの、"壁"を打ち破るタイミングは間違いなく近付いてきている所。「インターハイで全国まであと1個で負けてしまって、ここで選手権に出られなかったらみんな悔いが残ると思うので、選手権目指してみんな頑張っています」とは1トップのキム・チャンミョン(3年・埼玉朝鮮中)。まずは初戦をきっちりモノにすべく、目の前の80分間へ向かいます。
今シーズンの関東大会予選は大躍進。東海大菅生と駒込を揃って"ウノゼロ"で倒し、大成をPK戦で退け、準決勝では関東第一に0-1で惜敗しましたが、一気に注目される存在となった都立狛江。ただ、インターハイ予選は都立駒場との"都立対決"に敗れ、この選手権予選は1次予選からスタート。そこをきっちり勝ち上がると、先週の都大会初戦でも都立松が谷をPK戦の末に振り切って、この2回戦まで。「インターハイでは初戦で負けて、『また1次予選からイチからやろう』と言って、夏休みからここまでの活動は良かったかなって思います」と話すのはキャプテンの安藤貴大(3年・東京小山FC)。難敵相手のゲームにもいつも通りのメンタルで挑みます。12時開始のゲームには、より一層の観客が。注目の2回戦は東京朝鮮のキックオフで幕を開けました。


わずか3分の先制劇。東京朝鮮が左サイドで獲得したFK。キッカーのホン・リジン(3年・東京朝鮮第一中)がファーまで送り届けると、キャプテンを務めるムン・ヒョンジョン(3年・埼玉朝鮮中)の折り返しを、チョン・ユギョン(3年・東京朝鮮第一中)は豪快にボレー。クロスバーを叩いたボールは、そのままゴールネットへ飛び込みます。「リジンから良いフリーキックのクロスが来て、それをキャプテンが頑張って折り返してくれたので、当てるだけでした」とは本人ですが、相変わらずの攻撃センスをセンターバックが発揮。東京朝鮮がスコアを動かしました。
以降も「良い意味で硬さが取れた」(チョン・ユギョン)東京朝鮮が攻勢に。9分にはリ・チャンギ(3年・東京朝鮮中)がミドルを枠へ収め、ここは狛江のGK八木下悠太(3年・町田小山中)にキャッチされたものの、10分にはムン・ヒョンジョンが最後尾からスルスル上がり、ハ・ジュノン(3年・東京朝鮮第一中)とのワンツーから、シュートまで持ち込むも、狛江のセンターバックを任されている曲木雄吉(3年・世田谷尾山台中)が体でブロック。12分にもリ・チャンギの左クロスをハ・ジュノンが落とし、ユン・チス(3年・東京朝鮮中)のミドルは枠を越えるも、続く追加点機。
「今日はもう最後なので、3年生の力に賭けると。3年生は総動員してという形」と長山拓郎監督が話した通り、スタメンに3年生が10人並んだ狛江も、16分にようやくファーストシュート。右サイドにこぼれたボールを、上がってきたサイドバックの蛯名政和(3年・東京小山FC)はフィニッシュまで持ち込むも、DFがきっちりブロック。時折昨年からレギュラーを張ってきたボランチの新井湧大(3年・調布FC)を起点に、カウンターの芽は見せるものの、エリア内までは侵入できません。
すると、次のゴールも東京朝鮮に。17分にハ・ジュノンのクロスから、リ・チャンギが合わせたヘディングは八木下にキャッチされましたが、20分にも再び右サイドをえぐったハ・ジュノンの折り返しに、ここもリ・チャンギがダイレクトシュートを打ち切ると、良く反応したGKも弾き切れず、ボールはゴールネットへ吸い込まれます。同じコンビの連係から、2度目はきっちり成果を。東京朝鮮のリードは2点に広がりました。
小さくないビハインドを背負った狛江でしたが、生かしたのはファーストチャンス。34分に右サイドを崩してエリア内までボールを運ぶと、長谷川和磨(3年・町田薬師中)はグラウンダーで中へ。ファーに突っ込んだ宮原喜市(3年・みどりSC)のシュートはゴールネットへ飛び込みます。ようやく訪れた最初の決定機を確実に仕留めた集中力。点差は1点に縮まりました。
「1点取り返せて、そこからイケイケになって、自分たちの時間になったかなという所もあった」(安藤)狛江の同点機は38分。ルーキーの浪岡優太郎(1年・FC町田ゼルビアJY)を起点に、神山範佳(3年・町田木曽中)が左へ振り分け、安藤は利き足と逆の右足でクロス。飛び込んだ浪岡はわずかに届きませんでしたが好トライ。40分には東京朝鮮もホン・リジンの左CKから、キム・チャンミョンのシュートは枠を捉えるも、神山が執念のブロックで得点は許さず。「狛江さんが予想以上に踏ん張ってきました」とはチョン・ユギョン。最初の40分間は東京朝鮮が1点のリードで、ハーフタイムに入りました。


後半も先にチャンスを掴んだのは狛江。46分に自ら奪った左FKを安藤が蹴り込み、ファーに突っ込んだ長谷川はわずかに届きませんでしたが、惜しいシーンを。48分には1人目の交替として長谷川と前原龍太郎(3年・世田谷FC)を入れ替え、前線の顔ぶれに変化を加えると、直後にもルーズボールを拾った新井が枠を越える左足ミドル。さらに54分には左サイドハーフで奮闘した秋本恭平(3年・町田木曽中)に替えて、森航洋(3年・調布第七中)を投入する2枚目の交替も。次々とピッチへ解き放たれる3年生たち。
「グラウンドにいた中でもチーム全体に焦りが生じていて、1点差というより同点にされたみたいな感じになっていました」とチョン・ユギョンも振り返った東京朝鮮は、なかなか効果的なアタックを繰り出せず。55分にはパク・チュンボム(3年・東京朝鮮中)のスローインから、ユン・チスのカットインシュートは枠の上へ。57分にもホン・リジンの左CKはDFのクリアに遭い、流れからムン・ヒョンジョンが上げたクロスもフィニッシュは至らず。ジリジリした時間が続きます。
57分には双方に交替が。狛江はゴールを奪った宮原を下げ、中元広平(3年・目黒東山中)がそのまま1.5列目へ。東京朝鮮は一気に2枚替え。リ・チャンギとプ・リョンス(3年・東京朝鮮第五中)に替えて、パク・スンテ(3年・東京朝鮮中)とキム・ヒョンジュン(3年・東京朝鮮第一中)を投入し、奪い返したいゲームリズム。60分は狛江。安藤の左FKは東京朝鮮のGKカン・ブラマ(3年・東京朝鮮第一中)がキャッチ。62分は東京朝鮮。ホン・リジンの左FKは中央と合わず。一進一退。白熱する駒沢。
63分の主役は途中出場のナンバーエイティーン。中盤で前を向いたホン・リジンが短く付けると、ユン・チスは丁寧なスルーパスをグサリ。走ったパク・スンテはGKとの1対1も冷静に制し、左足でボールをゴールネットへ送り届けます。6分前に登場したばかりの3年生アタッカーが、この大事な局面で大仕事。東京朝鮮のリードは再び2点に変わりました。
相次いで切り合うカード。64分の2枚替えは狛江。神山と浪岡を下げて、勝見明也(3年・緑山SC)と山本由稀(3年・コンフィアール町田)を送り出し、これでピッチ上の11人は全員が3年生に。65分の2枚替えは東京朝鮮。キム・チャンミョンと右サイドバックをきっちりこなしたチェ・テソン(3年・埼玉朝鮮中)を、リャン・ユンデ(2年・東京朝鮮第一中)とアン・ジュノ(2年・東京朝鮮中)にスイッチして、図る全体の安定感向上。69分にはホン・リジンが左CKをショートで始め、パク・スンテのリターンを枠内へ打ち込むも、八木下がキャッチ。ゲームはいよいよ残り10分間とアディショナルタイムへ。
70分は狛江。安藤のパスから中元が狙ったミドルはクロスバーの上へ。71分は東京朝鮮。左からカットインしながら打ったパク・スンテのシュートは、詰めていたリャン・ユンデもわずかに届かず。73分は東京朝鮮に最後となる5人目の交替。3点目をアシストしたユン・チスとキム・スソン(2年・東京朝鮮中)を入れ替え、取り掛かるゲームクローズ。74分も東京朝鮮。リャン・ユンデの積極的な左足ミドルは枠の上へ。ラスト5分。熱戦も最終盤。
「練習内でも練習外でもみんな仲良くて、良い雰囲気でできた」と安藤も口にした狛江のラッシュ。76分にはセンターバックの奥村直木(3年・世田谷梅丘中)が好フィードを送り、前原が抜け出すもムン・ヒョンジョンが完璧なカバーでスイープ。79分に右から安藤が入れたFKはDFが大きくクリア。直後の左CKを山本が蹴り込み、奥村が叩いたボレーは枠の上へ。80+3分にも安藤の左FKに、飛び込んだ曲木のボレーがわずかにクロスバーを越えると、程なくして聞こえたのはタイムアップを告げるホイッスル。「始まったなというワクワク感はあって、待つ間が長かったなというのがあるんですけど、ちょっとずつ良くなって、ここに臨める感じは良かったなと。今日も3年生全員をスタメンで出して、途中で入った子も活躍してくれましたね」と姜宗鎭監督も語った東京朝鮮が、3年連続の西が丘へ王手を懸ける結果となりました。


「東京制覇という目標は2年ぐらい前から掲げてやっていたんですけど、それがただ言っているだけじゃなくて、少しは近付いてきているかなというのは感じました。春はベスト4でしたし、私立の強い所にもボコボコにはされないというか、多少の太刀打ちはできるようになってきているのかなと思います」と安藤も話した狛江の選手権が終わりました。以前に長山監督から伺ったのは「この3年生の代は、1年生の時から遅刻が多かったりとか、提出物を出さないとか、先生に怒られるとか、なかなか応援されない代だった」という過去。そんな彼らがこの最後の大会で堂々と力を発揮し、スタンドにはサッカー部以外の応援も多数。「本当に1年の頃に比べると上出来かなという感じはしています。今日も学校から凄くたくさん応援に来てくれたんですけど、それだけでも『応援されるようになったな』って。それは凄く成長したかなと思います」と長山監督。『応援されない代』から『応援される代』へ。『やらかし世代』から『やれる世代』へ。彼らはおそらく前者から後者へと、3年間で大きく成長したのではないでしょうか。
また、長山監督には特に嬉しいことがあったとのこと。「篠田秀真という部長をやっているヤツがいるんですけど、そいつが本当に凄く成長したんです。それほど試合には出られないのに、普段の練習からいろいろな学校生活をまとめてやってくれるんですけど、凄くチームのためになってくれたかなと思います。最初は全然声とか掛けられないようなヤツだったんですけど、凄くマジメで、何でも一生懸命やる子だったので部長にしたら、本当にキャプテン以上にいろいろな所で活躍してくれるようになったんですよ。どんどんみんなにいろいろと言えるようにもなってきて、今では僕らより厳しいですね。僕らが最近は言うことがなくなってきていて。そういう瞬間が『サッカー部をやっていて良かったな』という感じですかね。篠田は教員になりたいというので、そういうヤツが活躍して、またここに戻ってきてくれるといいなと思います」。この話をされている時の指揮官は本当に楽しそうでした。
「この代が良かったのは後輩とそんなに壁がなかったかなって。普通にタメぐらいの感じだったんですけど、僕らが引退することでこれだけ泣いてくれるとは思わなかったので、良い関係が築けたと思います。なので、このベスト16の"ヤマ"を超えるのは来年に託したいですね」と笑った安藤に尋ねてみます。「これからの狛江にはどういうチームになって欲しい?」と。少し考えてキャプテンはこう話してくれました。「今後もこうやってどんな人にも応援されるというか、これだけ応援しに来てくれる人がいるような、そういう良いチームになって欲しいかなと思います。誰からも応援されて、私生活の方もしっかりやって、サッカーも泥臭く、0-0でPK戦で勝つのでも何でも良いので(笑)、そういうチームになって欲しいなと思います」。狛江の3年生が苦しみながら、悩みながら、そして楽しみながら積み上げてきた尊い3年間に、最大限の拍手を送りたいと思います。        土屋

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