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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
東京都の高校サッカー界を牽引してきた名門対決。帝京と堀越が激突するクォーターファイナルは、実践学園高尾グラウンドです。
石上輝(現・順天堂大)を中心に据えた4年前。富樫草太(現・平成国際大)が最終ラインを束ねた3年前。2年続けてファイナルまで勝ち上がったものの、共に悔しい敗退を喫し、全国からは25年近く遠ざかっている堀越。迎えた今シーズンの関東大会予選は初戦で大森学園に敗れ、インターハイ予選でも2次予選の初戦で修徳と激闘を演じながら、2-3で競り負けるなど、なかなか結果を出し切れなかった中で、今大会は1回戦で都立深沢を"ウノゼロ"で振り切ると、2回戦ではディフェンディングチャンピオンの実践学園を相手に、3-3と撃ち合ってからのPK戦を制して準々決勝へ。強烈な勢いを携えて、西が丘を懸けた一戦に向かいます。
長倉昂哉(現・武蔵大)がサイドを駆け抜けていた3年前。中瀬大夢(現・武蔵大)がチームを引っ張っていた2年前。どちらもファイナルであと一歩を突き破れず、こちらも最後に冬の全国を経験したのは9年前となっている帝京。今シーズンの3年生は、多くが1年時から出場機会を得てきた、いわば"勝負の年"ですが、駿台学園にセミファイナルで屈した関東大会予選を経て、インターハイ予選でも東京朝鮮にクォーターファイナルで敗れ、都内制覇には及ばず。ただ、「今年は去年や一昨年より全国に出たい気持ちが何倍も強い」と三浦颯太(3年・FC東京U-15むさし)が話した今回の選手権予選は、初戦で都立高島を5-0と一蹴。高いモチベーションを抱いて、この舞台へ上ります。13時の高尾もスタンドはほぼ満席。注目の80分間は堀越のキックオフで幕が上がりました。
33秒のファーストシュート。右サイドハーフの友野謙信(3年・北区赤羽岩淵中)が残し、古澤柊磨(3年・ST.FC)がミドルレンジから放ったシュートは、帝京のGK冨田篤弘(2年・FC多摩)がキャッチしたものの、開始早々のフィニッシュに堀越が滲ませた勝利への気概。4分には中央を運んだ佐々木大貴(3年・FC東京U-15むさし)が3人を翻弄し、打った左足シュートは枠を越えましたが、どちらも10番を背負ったキーマンが最初のフィニッシュを取り切ります。
6分は帝京。中村怜央(3年・FC東京U-15深川)、佐々木、赤井裕貴(3年・FC東京U-15むさし)とボールを繋ぎ、塩入颯斗(3年・横河武蔵野FC JY)のシュートは、堀越のGK宮崎拓真(3年・JACPA東京FC)にキャッチされましたが、流麗なパスワークを。9分も帝京。左サイドを三浦がぶっちぎり、折り返しを入澤大(3年・FC東京U-15深川)が枠へ収めたシュートは、宮崎がファインセーブで回避。13分も帝京。石井隼太(2年・FC東京U-15むさし)が縦への仕掛けから左クロスを上げ、ニアに入った赤井のシュートは枠の左へ外れるも、「日比先生に『自分の100パーセントの力を持ってやれば抜けるから、自信を持って行け』と言われました」という2年生サイドバックが演出した好チャンス。
さて、やや守勢に回りながらも、鋭いカウンターが持ち味の堀越も少しずつ反撃を。15分に水野洸(3年・田口FA)と古澤の連係で奪った左CK。水野の蹴ったボールは逆サイドのCKになり、そのカウンターから三浦に運ばれ、シュートは青木翔(3年・F.C.Branco八王子)が懸命にブロックしましたが、18分は流れの中からのチャンス。左サイドバックの井原祐貴(3年・田口FA)のパスから古澤が裏へ送り、走った三根碧斗(3年・あきる野東中)には帝京のセンターバック梅木遼(3年・ミラグロッソ海南)が対応したものの、悪くない連係を披露。20分に水野のパスから古澤が放ったシュートは梅木のブロックに遭うも、見え始めたゴールへの道筋。
やや押し込まれた流れの中で輝いたのは、やはりナンバー10。23分。入澤からのパスを受けた石井隼太は、「大さんから良いパスが来たので、あとは中を見て出せた」というグラウンダークロスを中央へ。ここに走り込んだ佐々木は、力の抜けたワンタッチシュートでボールをゴールネットへ送り届けます。「1点目は良い形でいつも通りに崩してでしたね」と日比威監督も納得の表情。帝京が先にスコアを動かしました。
畳み掛けたカナリア軍団。24分には右サイドをうまく抜け出した久保莞太(3年・横浜F・マリノスJY)が、そのまま狙ったシュートは宮崎がファインセーブで応酬。29分には堀越もセンターバックの伊藤優喜(3年・小山中)が左へ付け、水野のクロスに三根が頭で合わせるも、冨田が丁寧にキャッチ。33分は再び帝京。佐々木が右へ振り分け、カットインから右スミを襲った塩入のシュートは、ここも宮崎がきっちりセーブ。直後に石井隼太が蹴った右CKに、三浦が完璧に合わせたヘディングはクロスバーにハードヒット。34分にも石井隼太の右FKから、DFのクリアはゴール方向に飛んでしまったものの、宮崎は必死に掻き出すビッグセーブ。「仕留めないといけなかったですね」とは日比監督ですが、帝京の勢いが勝った前半は1-0というスコアでハーフタイムに入りました。
後半もセットプレーから帝京にチャンスの連続。42分に石井隼太の右CKから、こぼれを叩いた中村のミドルは枠を越えたものの、44分にも石井隼太のFKを久保が右から折り返し、塩入が枠へ飛ばしたボレーは、ここも宮崎がファインセーブで仁王立ち。その右CKも石井隼太が蹴り込み、久保のヘディングはゴール右へ。50分の右CKも石井隼太が入れたボールに、ファーへ飛び込んだ赤井はわずかに届きませんでしたが、「左足には自信があります」と言い切る2年生レフティのキックには、常に得点の香りが。直後に帝京は1人目の交替。塩入と中瀬拓夢(2年・FCトリプレッタJY)を入れ替え、サイドに新たな変化を加えます。
51分は堀越。ボランチの坂本琉維(2年・ジョカーレFC)の配球から右サイドで古澤が粘り、友野を経由して水野が打ったシュートが冨田にキャッチされると、ベンチも53分に決断。ボランチで奮闘した米田悠哉(3年・JACPA東京FC)に替えて、1年生アタッカーの日野翔太(1年・FC町田ゼルビアJY)を投入し、一段階踏み込みたいアクセル。55分には水野の左CKに、高い打点で打ち切った青木のヘディングはゴール右へ。59分にも右サイドバックの魚崎由暉(2年・三菱養和調布JY)の仕掛けで得た右CKを古澤が蹴り込むも、ニアで三浦が大きくクリア。さらに62分にも駆け上がった青木は枠越えミドルまで。堀越が発する同点への執念。
「みんなが緊張していたので、一人だけでも声を出して、浮いてるぐらいやらなきゃなって思っていました」と言い切る8番の煌めき。65分に左サイドで手にしたFK。キッカーの石井隼太が丁寧に蹴ったボールを、ファーで三浦は完璧なヘディング。右のポストに当たった球体は、そのままゴールネットへ吸い込まれます。試合を通じて厳しい声も含め、チームを鼓舞し続けていた三浦の貴重な一撃は、「あの形は今まで1年生から4,5回決めてるんですけど、全部オフサイドになっていて(笑) 、公式戦であの形で初めて入りました」というバックボーンも。絶対的な司令塔の力強いゴールで、帝京のリードは2点に広がりました。
終盤に向けて切り合うカード。67分は帝京。萩原颯都(3年・FC東京U-15むさし)が右サイドハーフへ。68分は堀越。友野を下げて、柏原拓哉(3年・TACサルヴァトーレ)を送り込むと、75分にも古澤と山本隆紀(3年・練馬石神井東中)もスイッチして、最後の勝負へ。帝京もすぐさま3人目の交替として赤井を下げ、石川航大(2年・鹿島アントラーズつくばJY)で図るゲームクローズ。いよいよ白熱のクォーターファイナルも最終盤へ。
78分の歓喜はビハインドの堀越。右サイドから魚崎がシンプルにフィードを送ると、エリア左で飛び出したGKともつれながら水野が中央へ。ここで待っていた青木が左足でプッシュしたボールは、ゴールカバーに入ったDFと右ポストの狭いスペースをすり抜け、ゴールネットへ飛び込みます。沸騰するピッチとベンチとスタンドの紫。点差はたちまち1点に。80分には武川光軌(3年・AZ'86東京青梅)も4枚目のカードとして解き放ち、残り時間に懸ける"もう1点"。
アディショナルタイムは3分。ここで光ったのは「高さはないので、競り合いになっちゃうと負けちゃうんですけど、そこはディフェンスライン4人全員でカバーの意識を高めて、みんなで補えるようにしています」と梅木も胸を張った帝京ディフェンス陣。その梅木と鷲田優斗(3年・FC町田ゼルビアJY)のセンターバックコンビを中心に、堀越の気迫を巧みにかわし続け、聞いた勝利のホイッスル。相手の追撃を1点に抑えた帝京が、4年連続となる西が丘の舞台へと駒を進める結果となりました。
この日の帝京で際立ったのは三浦のチームに対する牽引力。「中学生の時もそんなに怒鳴るタイプではなかったです」と言うように、2年生まではそれほど多くの声を出す印象はなかったものの、最上級生になってからは的確な指示も含めて、明らかに"声"を出せる選手に変化してきた中で、とりわけこのクォーターファイナルでは、少し気合が入り過ぎてイエローカードをもらうまでの気持ちを前面に押し出していました。後半に関しては「関東大会で負けた駿台戦に展開が似ていて、前半も1点決めて『行けるんじゃないか』みたいな雰囲気があったので、また同じことをしないように引き締めました」とのこと。それを聞くと『冷静と情熱のあいだ』で自身の折り合いも付いていたようです。2週間後に待ち受けるセミファイナルに向けても、「西が丘となると自分も少し緊張するし、ちょっと雰囲気が違うので。でも、学校が近くてちょっとだけホーム感があるので(笑)、それをいい感じにチーム全体で持って行ければなって思います」と笑顔で意気込みを。カナリア軍団の司令塔が初めて全国の舞台に立つために必要な勝利は、あと2つです。 土屋
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