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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
第2試合は古豪復活を期す進学校が優勝候補の一角に挑む構図。高崎と桐生第一のクォーターファイナルは、高崎経済大学附属高校グラウンドです。
最後に全国を経験した1997年のインターハイで、1年生ながらメンバーに入っていた吉田卓弥監督の下、毎年好チームは創り上げてきているものの、各コンペティションで決勝までの道のりが遠い高崎。昨シーズンも新人戦は前橋商業に、県総体は前橋に、全国に繋がるインターハイ予選と選手権予選は共に前橋育英に敗れ、2年前にベスト4まで躍進した新人戦以降のトーナメントコンペティションは、7大会続けてベスト8で敗退する結果に。今大会は初戦で高崎商大附属を7-1、市立太田を3-0で退けると、3回戦の高崎商業戦にも2-1で競り勝って、またもこのステージまで。「まずベスト4に入らないと目標の関東や全国にも行けないと思うので、そこの壁を越えていきたいなと思います」とは紋谷真輝(2年・上州FC高崎)。新チームで気持ちも新たに、鬼門となりつつある"準々決勝"へ挑みます。
昨シーズンは新人戦、インターハイ予選、選手権予選といずれも前橋育英に1-0で敗れ、全国出場という目標には届かなかったものの、年末に行われた参入戦では東海大相模を相手に後半だけで2点差を引っ繰り返す劇的な展開で、久々となるプリンス関東昇格を達成した桐生第一。やはり久々となる県内制覇を狙う今大会も、高崎東に7-0、高崎工業に9-0と圧倒的な攻撃力を披露してクォーターファイナルまで。「今年は去年の悔しさもあるので、全国に行きたいですし、全大会で優勝できるように努力していきたいです」と語ったのは司令塔の田中渉(2年・前橋ジュニア)。頂点を見据える上でも、ここで負ける訳には行きません。高崎でも北部にある会場は、やはり厳しい寒風の吹きすさぶコンディション。楽しみな80分間は13時30分にキックオフされました。
先に勢いよく飛び出したのは"追い風"の桐一。5分に若月大和(1年・前橋ジュニア)のドリブルから左CKを得ると、田中のキックのこぼれを中野就斗(2年・AZ'86東京青梅)が残し、梅林幹(2年・AZ'86東京青梅)のシュートは高崎のGK清水翔太(2年・藤岡キッカーズ)がキャッチしたものの、まずはファーストシュートを。7分に田代裕紀(2年・前橋ジュニア)が右へ振り分け、サイドバックの本間啄朗(2年・前橋ジュニア)が上げたクロスは、高崎のキャプテンを務める瀬宮基(2年・高崎エヴォリスタU-15)のクリアに遭うも好トライ。続けてチャンスを生み出します。
9分も桐一。田代が右から折り返し、1トップの小澤謙登(2年・前橋ジュニア)が放ったシュートは枠の右へ。12分も桐一。本間のパスを受けた田中は、右からカットインしながらシュートを打ち込むも、ボールはクロスバーにヒット。15分も桐一。エリア内へ潜った小澤が左から中へ付け、田代のシュートはゴール左へ。さらに20分も桐一。田代が丁寧に落とし、梅林のミドルは枠の左へ外れましたが、漂い始める先制点の雰囲気。
さて、「前半は風下だったので、0-0でもいいかなという感じ」(瀬宮)で立ち上がり、20分はスコアレスでやり過ごした高崎も、10番を背負う左サイドハーフの小菅竣也(2年・渋川子持中)にボールが入った時には、少しチャンスの芽が見え掛けるものの、「中盤にうまくボールが入っていないというか、そこで前を向けないことも多いし、フォワードにボールが入ってもサポートがうまく行っていない感じでした」と瀬宮も話したように、なかなか攻撃の手数まで繰り出せなかった中で、29分にはようやくチャンスが。やはり小菅が右へ展開したボールを、サイドバックの高橋良輔(2年・藤岡東中)はきっちりクロス。ファーに飛び込んだ内田圭一郎(1年・高崎群馬中央中)のシュートは、しかし中野が果敢に寄せてヒットせず。スコアは動きません。
30分は桐一。左サイドバックの細渕海(2年・GRANDE FC)が中に絞りながら、右へ大きなサイドチェンジを送り、田代のクロスにニアで合わせた田中のヘディングはヒットせず。33分も桐一。田中が蹴った右FKは、高崎のセンターバックを託された高橋凌輔(2年・高崎片岡中)がきっちりクリア。36分は高崎。センターライン付近で手にした左サイドのFKを紋谷は縦へ。内田が小粋なヒールで戻し、紋谷のクロスはDFが丁寧にクリア。「まずはしっかり守備をやるという所で、プレッシャーは行けていたので失点はなかった」と振り返る瀬宮と高橋凌輔のセンターバックコンビに、紋谷と塚越智也(2年・高崎FC)のドイスボランチも含め、高崎の守備陣が奮闘した前半は、0-0のままで40分間が終了しました。
「前半は割とプラン通りという感じだった」(紋谷)高崎に対し、桐一は後半スタートから交替カードを用意。若月に替えて、楠大樹(2年・町田JFC)をピッチへ解き放つと、41分には田中の左CKから、中野のヘディングがクロスバーをかすめて枠外へ。逆に43分は高崎。左サイドで奪ったFKを紋谷が蹴り込むも、「力が入り過ぎて上に行っちゃいましたね」と吉田監督が振り返るように、ボールはクロスバーを越えましたが、高崎がわずかに引き寄せたゲームリズム。
46分は桐一。楠が左サイドで仕掛け、田中の素晴らしいスルーパスから、小池泰誠(2年・前橋ジュニア)が抜け出すも、ここは清水が積極的に飛び出してファインキャッチ。50分は再び高崎にセットプレーのチャンスが到来するも、左サイドから紋谷が蹴り入れたFKは、ニアで田代が引っ掛けてクリア。「何本かフリーキックがあったんですけど、あまり良いボールが上げられなかったので、そこがちょっと悔しいというか、もったいなかったなと思いますね」とは紋谷。すると、スコアが動いたのはその2分後。
52分に左サイドでボールを持った楠はスルーパスを裏へ。走った小澤は1対1の局面も、飛び出したGKの鼻先を破るシュートを流し込むと、ボールはゴールネットへ到達します。「交替で入ってきた選手は切れ味がありましたね」と吉田監督も認める途中出場の楠のチャンスメイクから、最後はセンターフォワードがきっちり一仕事。桐一が1点のリードを手にしました。
追い掛ける展開となった高崎も、54分にはチャンス到来。左からサイドバックの白石悠汰(2年・高崎FC)がFKを放り込むと、瀬宮が競り勝ったこぼれを紋谷は拾い、ループシュートをチョイス。「ちょっと蹴り過ぎちゃって、浮き過ぎちゃったなと思ったので、もうちょっと低い軌道で行ったら、ゴールもあったかなと思います」と本人も振り返った軌道はクロスバーを越えてしまい、同点弾とはいきませんでしたが、この時間帯が結果的に勝負の分水嶺。
58分に生まれたゴールは追加点。田中が「とりあえずパスを出せば何かしてくれるというのはあるので、そういう意味で違いを出してくれると思っていた」という楠を裏へのパスで走らせると、その楠はマーカーを切り返して翻弄しながら、左からグラウンダーでクロス。ファーへ抜けたボールを田代は冷静に枠へ収め、ボールはゴールネットへ飛び込みます。「流れを変えたね。それは間違いない」と田野豪一監督も認めた途中出場の楠は、これで6分間で2アシスト。点差は2点に広がりました。
「相手のボランチの子が上手なのでパスが入ってきて、そこが捕まえ切れていなくて、良いボールを配球されてしまうので苦しくなってしまった感じはします」と話した吉田監督は60分に2枚替え。高橋凌輔と1トップの峰岸剛基(2年・高崎片岡中)を下げて、石川慶樹(2年・高崎第一中)と長谷川輝(2年・上州FC高崎)を送り込むと、61分に楠のシュートを清水がキャッチしたシーンを経て、65分にも右サイドハーフの福本雄己(1年・tonan SC前橋JY)と儘田樹(2年・渋川FC)を入れ替え、1トップ下の内田とボランチの紋谷を共に1列前に動かす、攻撃的な布陣にシフトします。
一方の桐一も71分に2人目の交替。小池と須藤礼智(1年・前橋ジュニア)をスイッチすると、1分後には楠の左クロスから、須藤が清水にキャッチを強いる枠内ミドルを。73分にも田中が左から中へ折り返し、ニアに突っ込んだ小澤のシュートはゴール左へ。直後の73分にも決定的なチャンス。ここも田中が左へスルーパスを繰り出し、走った楠は1対1の局面を迎えましたが、ここは清水がファインセーブで仁王立ち。高崎の守護神が繋ぐ勝敗への興味。
74分は高崎。左の深い位置から白石がFKを蹴り入れ、「言葉だけじゃなくてプレーで引っ張ることも大事」と話すキャプテンの瀬宮が競り勝ったボールは、シュートまで持ち込めずに桐一のGK杉浦駿介(2年・ヴェルディSS小山)にキャッチされると、75分に訪れた追加点機。須藤のパスからエリア内へ侵入した小澤が、マーカーともつれて転倒。主審はペナルティスポットを指し示します。自らキッカーを務めた小澤は、GKの逆を突いてきっちりPK成功。試合を決める次の1点は桐一に記録されました。
3失点目の直前に鈴木郁也(2年・高崎豊岡中)と柿沼尚暁(2年・高崎第一中)をピッチへ解き放った高崎は、78分に儘田がミドルレンジからフィニッシュを取り切るも、杉浦ががっちりキャッチ。逆に79分には桐一も、投入されたばかりの竹下諒(1年・セブン能登)のラストパスに、田中が抜け出して狙ったシュートは清水が意地のファインセーブを見せましたが、角野寛太(2年・ウイングス鹿沼SC)と中野で組むセンターバックコンビを中心に、桐一守備陣の堅陣は最後まで揺るがず、ファイナルスコアは0-3。「前半は追い風もあってシュートの数も少なかったですけど、後半はしっかり決める所を決め切れて、勝てたので良かったです」と話したのは田中。桐一が前橋商業の待つ準決勝へと勝ち上がる結果となりました。
3年前のインターハイ予選以降はなかなか県内のタイトルを獲得することができず、その間に再興してきた前橋商業と前橋育英との3強時代に巻き込まれた感のある桐生第一ですが、前述したように昨シーズンも日本一に輝いた育英との実力差は紙一重。田中も「自分たちが県の決勝で勝っていれば、選手権の全国でどうなっていたかわからないですけど、そこはまだ勝ち切れない所の差があると思うので、今年は差を縮めて勝ちたいですね」と言い切るように、今シーズンの主役の座を彼らがさらっていっても、何の不思議もありません。「プリンスに今回参入できたのは本当に大きい。ここからもう1個突き抜けなきゃってずっと思っていたから、育英には全国優勝されちゃいましたけど、ここで『まだ桐一もいるんだぞ』というのはこの1年間でアピールしながらね。育英とはプリンスも含めて何回も戦えるから、そこを譲らないようにしてやっていかないと。県の中でも力を見せなきゃいけないと思います」とは田野監督。プリンス関東での動向も含め、桐一の1年間は大いに注目する必要がありそうです。
「フィジカル、キープ、止める技術、考えるスピードも、個人としても、すべてにおいて相手の方が全然上だったと感じました」(瀬宮)「横に動かして、食い付いてきた所を突いていくとか、ウチがやりたかった所を全部相手にそのままやられて、そこが差かなと思いました」(紋谷)と2人が声を揃えたように、現時点での立ち位置を突き付けられる格好となった高崎。ただ、当然新チーム初の公式戦で得た"気付き"を無駄にはできません。この80分間を受けて、「駆け引きというか"遊び"がないと、いっぱいいっぱいになり過ぎたりするので、『"遊び"や余裕を自分たちで創らないと厳しいんだろうな』という話はしたんですけどね」という吉田監督は続けて、「その"遊び"を創るためには、フィジカルもアジリティもスキルも、すべてにおいてこの2月と3月で上げないと。入試があったりテストがあったりで、2月はほぼまとまってやることができないので、『そこは君らの自主性だ』という話はしました。やるヤツはやるし、やらないヤツはやらないと思うんですけど、そこは彼らを信じてやってもらうしかないと思います」とのこと。それは瀬宮も「もっとチームの中を活性化させて、もっと競争を上げていくことで個々の能力が上がって行けば、チームでまとまった時に大きな力になると思うので、まずは個々の能力を1月、2月、3月で上げて、リーグで試しながら総合力を上げなくてはいけないと思います」と重々承知。「高高生なのでみんな1人1人が考えを持っているし、考える力も持っている」とキャプテンが口にした"考える力"を、どうやってグループで共有し、どうやってチームに落とし込むかは、彼ら自身の意欲と向上心に懸かっています。 土屋
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