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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
因縁の"十条ダービー"がクォーターファイナルで実現。今シーズンのT1でも既に対戦した帝京と東京朝鮮のリターンマッチは、雨脚の強まる駒沢第2球技場です。
ここ2シーズンは続けて選手権予選のファイナリストに。全国大会への復帰へあと一歩と迫るなど、日比威監督の下でかつての栄光を取り戻すべく、確実に復権への道を歩んでいる帝京。今シーズンは守護神の和田侑大(3年・FC東京U-15むさし)やキャプテンの菅原光義(3年・S.T.FC)といった最上級生や、三浦颯太(2年・FC東京U-15むさし)に佐々木大貴(2年・FC東京U-15むさし)の2年生コンビを筆頭に、昨年の経験値を携えた主力が多数残っており、期待値はかなりの高さ。今大会も東海大菅生に4-1、修徳に3-0と実力派を複数得点で退けた勢いを持って、この準々決勝へ挑みます。
昨シーズンはリャン・ヒョンジュ(早稲田大)にキム・テウ(朝鮮大学校)と攻守の軸にU-19北朝鮮代表を擁したものの、関東大会予選とインターハイ予選は準々決勝で敗退を突き付けられ、選手権予選でも2年続けてベスト4で涙を飲むなど、悲願の全国出場には届かなかった東京朝鮮。迎えた今シーズンはT1リーグでこそなかなか結果が出ていないものの、「イギョラ杯もそうですけど、いろいろな大会に出させていただいて、その経験を積んだことが生かされているんじゃないかと思っています」と新指揮官の姜宗鎭監督が話した通り、充実した春休みを挟んで臨んだ今大会は日大鶴ヶ丘に6-0、東京実業に2-0と連続完封でこのステージまで。明らかな上り調子でダービーへ向かいます。夕闇迫る駒沢には前述したように大粒の雨が。ライバル同士の80分間は帝京のキックオフでスタートしました。
ピッチにも水が浮き始めるコンディションの中、8分のチャンスは帝京。ミドルレンジから岡本良太(3年・FC明浜)が狙ったシュートは枠の右へ逸れるも、果敢なチャレンジを。逆に18分は東京朝鮮。ムン・インジュが自ら蹴った右CKのルーズボールを拾ってクロスに変えると、中央に飛び込んだリュウ・ユウォン(3年・千葉朝鮮中)のシュートは右のポストを叩き、左のポストにも当たってピッチ内へ。まずは東京朝鮮に決定的なシーンが訪れます。
26分は帝京。ボランチの渡辺楓(3年・横河武蔵野FC JY)を起点に、中央をドリブルで運んだ三浦はゴールまで25m近い位置から左足一閃。ボールは右のポストを直撃しますが、素晴らしいミドルに沸き上がる応援席。36分は東京朝鮮。ホン・リジン(2年・東京朝鮮第一中)が短く付けたボールから、ムン・インジュが叩いたミドルはクロスバーにハードヒット。両チームの司令塔を務めるレフティ同士が撃ち合った好ミドル。
そんな中、前半終了間際にスコアを動かしたのはカナリア軍団。38分に三浦が左サイドへ展開すると、1年生ながらスタメンに起用された左サイドバックの石井隼太(1年・FC東京U-15むさし)が丁寧なクロスをファーサイドへ。ここに走り込んだ中村祐隆(3年・西東京保谷中)のヘディングは、雨粒を切り裂いてゴールネットへ突き刺さります。「前半は押し込まれるシーンがあって、自分たちも耐える時間があった」とムン・インジュも振り返った前半は、帝京が1点のリードを奪って40分間が終了しました。
後半は「ハーフタイムに『このままじゃダメだし、もっともっと自分たちはできるから、自分たちを信じて相手チームより走って、そういう所から勝っていこう』とみんなイチからリセットした」とキャプテンのハン・ヨンギ(3年・東京朝鮮第一中)も言及した東京朝鮮のラッシュ。43分にムン・インジュが蹴った右CKはDFのクリアに遭い、直後に左からここもムン・インジュが入れたCKにチョン・ユギョン(2年・東京朝鮮第一中)が競り勝つも、最後はオフェンスファウルを取られたものの、明らかにアクセルを踏み込んだレッドタイガーの咆哮は47分。
左サイドで得たFKが中央にこぼれると、エリア右寄りでボールを収めたリ・ヒョンジェ(3年・東京朝鮮第一中)は、中央を窺いながら縦に絶妙のラストパス。「『中に出しちゃうかな』と思ったらこっちを見てくれていて、ちょうど目も合って思い通りに来てくれた」とそのパスを振り返ったハン・ヨンギのシュートはGKも弾き切れず、ゴールネットへ吸い込まれます。「人一倍声を出すのと、1点でも入れてチームの雰囲気を上げていくのを目標にしています」と語るキャプテンが気合の一撃。スコアは振り出しに引き戻されました。
「勝つためには得点を入れないといけないので、ウチが入れれば1-1で延長戦もあるし、後半の最初の20分で1点を目指していこうという所はハーフタイムに伝えました。思ったより早い時間に入ったのでちょっとビックリしたんですけど(笑)、うまく行き過ぎちゃいましたね」と笑ったのは姜監督ですが、49分には逆転のチャンス。リ・リョンジェ(3年・東京朝鮮第一中)のパスから、ホン・リジンが左足で左スミギリギリへ収めたミドルは、和田が横っ飛びで何とかファインセーブ。入れ替わったゲームリズム。ペースは東京朝鮮へ。
押し返したい帝京。50分にはここも積極的にオーバーラップしてきた石井のクロスから、佐々木が打ったシュートはDFに当たって枠の右へ。直後に三浦が蹴った右CKはシュートまで至らなかったものの、57分には同点機。佐々木が右へ振り分け、サイドバックの岩本嶺(3年・帝京中)が上げたクロスから岡本が打ち切ったヘディングは、東京朝鮮のGKチュウ・サンホン(3年・神奈川朝鮮中)がファインセーブで回避。58分にも右サイドから佐々木が放ったシュートはサイドネットの外側へグサリ。ようやく帝京にも次の得点の香りが漂い始めます。
63分は東京朝鮮。左サイドでボールを持ったキム・セリュン(3年・東京朝鮮中)が、カットインから枠へ収めたミドルは和田がキャッチ。64分も東京朝鮮。ホン・リジンが縦に打ち込み、粘って収めたハン・ヨンギの強引なミドルはゴール左へ。67分も東京朝鮮。ムン・インジュが蹴った右CKを、打ち下ろしたチョン・ユギョンのヘディングはゴール左へ。「ハーフタイムで本当に良い心構えができたと思います」とハン・ヨンギも口にした東京朝鮮が一段階踏み込んだアクセル。
狂喜の瞬間は69分。カウンター気味に相手陣内へ駆け上がった東京朝鮮のアタック。運んだキム・セリュンが左へ流すと、しっかり走っていたリ・ヒョンジェは粘って粘ってフィニッシュまで。右スミへコントロールされたボールは、ポストの内側に当たって、そのままゴールネットへ転がり込みます。「流れから点が取れるチームではないので、今まではセットプレーの点が多かったんですけど、今日は流れの中から点が取れましたね」と笑ったのは姜監督。東京朝鮮がスコアを引っ繰り返しました。
追い掛ける展開となった帝京は続けざまに交替を。70分に奮闘した石井と中田廉太郎(3年・横浜F・マリノスJY)を、72分に入澤大(2年・FC東京U-15深川)と石川航大(1年・鹿島アントラーズつくばJY)を相次いで入れ替えるも、右からチョン・リュンギョン(3年・東京朝鮮中)、チョン・ユギョン、リュウ・ユウォン、リ・ヒョンジェで組んだ4バックを中心に途切れない東京朝鮮守備陣の集中力。75分には1人目の交替として、右サイドハーフのキム・ヒョンジュン(2年・東京朝鮮第一中)とハ・ジュノン(2年・東京朝鮮第一中)をスイッチして取り掛かるゲームクロ-ズ。残り時間は5分間とアディショナルタイムのみ。
1点の遠い帝京は75分に岩本を下げて、194センチの赤井裕貴(2年・FC東京U-15むさし)を前線に送り込んで最後の勝負に打って出ましたが、80分に1年生センターバックの柳大弥(1年・三菱養和調布JY)が左から中央へ蹴り込んだFKもチュウ・サンホンのパンチングに阻まれると、これがこのゲームのラストチャンス。「ウチらの良い所は団結力なので、みんなで声を出して最後までやる所が今日は良かったと思います」とムン・インジュも笑顔を見せた東京朝鮮が、逆転勝利を手にしてセミファイナルへと駒を進める結果となりました。
雨中の激闘を制した東京朝鮮。「4月1日にT1でウチのグラウンドで当たって、内容的には悪くなかったんですけど、最後の最後にアディショナルタイムにFKでやられたので、そのリベンジということもあって選手たちのモチベーションは高かったですし、それがうまく表現できて、今日は最高の形で良かったと思います」と姜監督も話したように、前回の対戦では悔しい負けを喫した帝京にきっちりリベンジを果たした格好になりましたが、「2点目が入った時は勝ったなと思いました」とムン・インジュが口にすれば、ハン・ヨンギは「1点目でこの調子で行けるかなと。勝てる気はしましたね」とのこと。チームにも小さくない自信が芽生え始めているようです。「この関東大会予選へ臨むに当たって全員でミーティングを開いて、『出る選手だけじゃなくて全員で戦おう』と。それで気持ちを1つにして臨むという所からやって、そこがどう出ているかはわからないですし、まだまだ足りない所もあるんですけど、応援してくれている子たちも含めて1つになっていっている過程で、それが良い結果に出ているのかなと思います」と姜監督も一体感に手応えを掴みつつある様子。着実に成長を遂げている東京朝鮮も今後が楽しみなチームの1つです。 土屋
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