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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年10月30日

高校選手権群馬準決勝 前橋商業×新島学園@敷島

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1030shikishima1.JPGファイナルへの最終関門となる一戦は全国経験校同士の激突。11回出場の前橋商業と2回出場の新島学園が対峙するセミファイナルは敷島公園サッカー・ラグビー場です。
最後に冬の群馬を制したのは何と12年前。以降はファイナルで3度、セミファイナルで6度の敗退を突き付けられ、全国へと届かない時期が続いている前橋商業。ただ、今シーズンは新人戦こそベスト16で姿を消したものの、県総体で連覇を達成すると、インターハイ予選では準々決勝で桐生第一を退け、決勝では伊勢崎商業に競り勝って堂々頂点へ。広島に乗り込んだ全国の舞台でも、西京と帝京大可児を相次いで下し、最後はベスト16で昌平にPK戦で敗れましたが、「全国でも慌てずに我慢して粘り強くできたのが自信になっています」と話すのはキャプテンの木村海斗(3年・伊勢崎第三中)。今大会も初戦で高崎北に8-0と大勝を収め、準々決勝では高崎を4-1で倒してこのステージまで。まずは2年ぶりのファイナル進出を目指して、目の前の80分間に挑みます。
1960年代には県内を牽引する存在として全国3位も経験。フランスワールドカップ日本代表の小島伸幸を輩出するなど、いわゆる"古豪"としてその名を知られる新島学園。近年でも7年前に選手権予選でファイナルまで勝ち進んだ躍進を筆頭に、コンスタントに県内ベスト8の常連になりつつある雰囲気も。今シーズンは新人戦こそ前商を1-0で倒す"ジャイアントキリング"を達成したものの、県総体ではその前商にリベンジを果たされ、インターハイ予選でも準々決勝で伊勢崎商業の前に敗退。今大会は市立前橋に4-0、前橋に1-0と連続完封で5年ぶりにセミファイナルへと進出しており、前商にリベンジを果たした先にはファイナルの舞台が待ち受けています。スタンドには1000人を超える上州のサッカージャンキーが集結。注目の好カードは前商のキックオフでスタートしました。


ファーストチャンスは2分の前商。右サイドで獲得したCKを金枝晃平(3年・吉岡中)が蹴り込むも、ここは新島のセンターバックに入った唐澤佳吾(3年・高崎群馬中央中)が大きくクリア。新島も3分に反撃。勅使河原滉介(3年・前橋FC)、長谷川幹(2年・新島学園中)とボールを繋ぎ、諸田友輝(2年・前橋第七中)が左へ流したパスは、走った村山紘基(2年・新島学園中)へわずかに届きませんでしたが、スムーズなパスワークを披露。5分は前商。金枝が蹴った右FKは、新島の左サイドバック坂井裕喜(3年・新島学園中)がきっちりクリア。7分は新島。右サイドバックの岡田敬太(3年・新島学園中)が上がって取ったスローインを、小林廉(3年・前橋FC)はロングで投げ込むも、こちらも前商のセンターバックを務める風間朝陽(3年・図南SC群馬)が確実にクリア。お互いセットプレーから手数を出し合って立ち上がります。
ただ、少しずつリズムを掴んだのは「しっかりボールを動かして広い方からきちっと攻めていく」(内藤秀和監督)新島。12分には坂井のフィードに勅使河原が抜け出し、飛び出した前商のGK田村健太朗(2年・前橋ジュニア)と交錯。こぼれを拾った村山はオフェンスファウルを取られたものの、好アタックを繰り出すと、13分に左サイドから長谷川が枠へ飛ばしたFKは田村がパンチングで回避。その右CKを長谷川が蹴り入れ、村山が残したボールは木村にクリアされましたが、「迫力があって前半はビビってしまった部分はあったと思います」と木村も話したように、続く新島のペース。
逆に「正直ボールを取りに行っちゃうと楽かもしれないですけど、入れ違っちゃってというのがあるので、ウチはちょっと我慢させてという形を採った」と笠原恵太監督も話した前商は、まず守備からきっちり入る流れに。20分には風間が長いFKを蹴り入れ、藤生春樹(2年・FCおおた)が頭で競り勝ったボールに金枝が飛び込むも、新島のGK飯田潤(3年・新島学園中)が丁寧にキャッチ。26分は新島。長谷川が鋭く入れた右FKに、諸田と内山拓実(2年・藤岡北中)が突っ込むもシュートには至らず。29分は前商にファーストシュート。右から金枝が蹴ったFKへ、ファーに突っ込んだ木村のヘディングは枠の上へ。「前半はもう少し行けた気はするんですけど、守備からという考えはありました」と木村が話せば、「非常にボールも動いていたし、相手の中央の選手をサイドに引っ張り出して、そこからクロスか中央突破という所で意図していたので、その策が結構ハマっていた」と内藤監督。やや新島のリズムで推移した前半は、スコアレスで40分間が終了しました。


後半も先にチャンスを創ったのは新島。41分にルーズボールを収めた勅使河原が、そのまま打ち切ったミドルは田村にキャッチされましたが、44分にも坂井が裏へ落としたボールに勅使河原が反応し、ここも田村と交錯すると、最後は村山がオフサイドを取られるも、アグレッシブに前へ。51分にも再び坂井が縦パスでスイッチを入れ、GKを確認した村山のミドルは大きく枠を外れるも、「本当にプラン通り」と指揮官も認めた新島が後半も攻勢に打って出ます。
52分には新島にアクシデント。負傷した唐澤のプレー続行が難しくなり、MF登録の清水友哉(2年・新島学園中)がそのままセンターバックへ。直後の52分は新島。小林の右ロングスローはDFがクリア。54分は前商。右から金枝が入れたFKは村山がクリア。直後の左CKも金枝が蹴ると、ニアで藤生がフリックするも中央の混戦からシュートは生まれず。56分は新島。長谷川の左CKに、内山が何とか合わせたヘディングは田村がしっかりキャッチ。お互いにセットプレーで探り合う先制の空気。
新島にとって2人目の交替は62分。足の攣った村山を下げて、阿部雅茂(2年・新島学園中)を最前線に送り込み、長谷川を左サイドハーフへスライドさせましたが、この前後からやや新島に足の攣る選手がチラホラと。65分は前商の決定機。金枝の左CKに飛び込んだ信澤蓮(3年・FCトッカーノ)がフリーで放ったヘディングは、しかし枠の左へ。すると、67分は新島に決定機。再三好フィードを送っていた坂井が、ここも左のハイサイドに良い軌道で落とし、走った勅使河原は角度のない位置からワントラップボレー。ボールはGKを破ったものの、クロスバーにハードヒット。「『ウチにはエースストライカーがいない』と言って、本当に痛め付けて痛め付けて、この大会はあれだけのパフォーマンスになってきてくれた」と内藤監督も言及した勅使河原が惜しいシーンを創出。気付けば残り時間は10分とアディショナルタイムに。
70分は新島。関井祐太(2年・新島学園中)の展開から、右サイドを運んだ小林のグラウンダークロスに、ダイレクトで合わせた長谷川のシュートはクロスバーの上へ。直後は新島に3人目の交替。抜群の展開力で奮闘した諸田と大塚築(2年・新島学園中)をスイッチ。72分も新島。勅使河原が右へ振り分け、阿部がクロス気味にニアを狙ったシュートは田村がキャッチ。76分は前商。ボランチの高橋直希(2年・図南SC群馬)を起点に大?洸紀(2年・図南SC群馬)のパスから、星野周哉(3年・渋川子持中)が中央へ戻すも、清水友哉がきっちりカバーリングで対応し、飯田が何とかキャッチ。77分も前商。サイドバックの若林泰輝(3年・図南SC群馬)が攻撃に絡み、星野のドリブルで獲得した左FKを金枝が蹴り込むと、「大きい風間をおとりにするというか、相手はそこをまず警戒すると思うので、自分が決められればと思ったんですけど」という木村はわずかに届かず。ゲームはいよいよ最終盤へ。
輝いたのは「試合前からイメージしていたので、自分が決めて勝ってやろうという気持ちはありました」というナンバー10。後半終了間際の79分。右サイドの高い位置までボールを運んだ前商は、「前半に上げてGKにキャッチされた場面があったので、次は低いグラウンダーのクロスを上げようと思っていました」という木村が鋭い低空クロス。「トラップして振り向きざまに」右足を振り抜いた金枝のシュートは、マーカーの股下を抜けて左スミのゴールネットへ一直線に突き刺さります。笠原監督も「練習通りというか、ウチの特徴が出て点数が取れた」と認めたゴールは、「新人戦の新島戦で自分が決定機を外して負けてしまったので、そこからやるしかないと努力してきました」という金枝が記録。土壇場で前商が1点のリードを手にしました。
最終盤でビハインドを負うこととなった新島は、80分に内山と岩井嘉紀(2年・新島学園中)を入れ替えて最後の勝負へ。そして80+1分には、小林が投げ込んだロングスローの流れから右CKを獲得します。キッカーの長谷川は中央に入れるフェイクから、マイナスにグラウンダーのボールを送ると、これに反応したのは「相手のコーナーはしっかり分析できていた」という木村。かっさらったボールを「前に凄くスペースがあったので、行っちゃおうかなと思って」グイグイ運んで数十秒を1人で潰し切ると、程なくして敷島に鳴り響いたファイナルホイッスル。風間と李守文(2年・ザスパクサツ群馬U-15)のセンターバックコンビを中心に築いた、白と黒の堅陣は最後まで揺るがず。「色々なモノがあって、普段通りの力が出せないのが選手権ですよね」と笠原監督も苦笑いを浮かべた前商が劇的にセミファイナルを制し、来週の決戦へと駒を進める結果となりました。


少し主導権を相手に握られる展開の中でも、「『0-0の状態を楽しめている』という言い方が良いのかわからないですけど、選手の方が全然慌てていなかったので、そこは良かったと思います」と笠原監督も話したように、落ち着いてゲームを運んでいく姿勢が印象的だった前商。「我慢する展開が長かったんですけど、絶対に自分たちに流れが来ると思っていた」と決勝アシストの木村が語れば、「ベンチの方から残り10分くらいで『ここはもう笑ってやれ』と聞こえたので、気は楽になりましたし、延長になっても自分たちが走り切れると思っていました」とは決勝ゴールの金枝。「インターハイ前までだと『1点取られると終わりかな』という感じでしたけど、夏休みを過ぎて『1点取られても1点は取れる』という部分はあったので、1失点ぐらいでは慌てないですし、ゼロに抑える自信もあります」という指揮官の言葉をピッチに立つ全員が共有している雰囲気が窺えました。12年ぶりの全国を懸けたファイナルはもうすぐ来週に。「ここ10年以上全国に出ていないので、自分たちの代で出て、歴史の新たなページを刻みたいと思います」と言い切ったのは金枝。ゼブラ軍団の戴冠まではあとわずかに1つの勝利のみです。
「相手が蹴って来ることもわかっていたので、『柔よく剛を制す』じゃないけれども、『ウチらしいスタイルで行こうよ』と言って、そこもプラン通りでしたけど、ほんの一瞬でしたね。何で負けたのかはまだわからない状態かな」と言葉を絞り出しながら、「悔しいです。本当に悔しいですよ。本当に」と内藤監督が続けたように、まさに"惜敗"という表現が当てはまる新島。確かにゲーム自体を支配している時間は長く、ボランチの諸田がきっちりと左右に振り分けながら、両サイドハーフの小林と村山の推進力を生かすアタックにはハッキリとした意図があり、「ボールをしっかり動かして、相手の背後を取って、しっかり守ってというスタイル」(内藤監督)が、見る者に鮮烈な印象を残したことは間違いありません。「バランスは非常に良いチームに仕上がっていたんですけどね。このサッカーで勝ちたいという感じです」と最後まで悔しそうな表情を浮かべていた内藤監督。それでも、このステージで前商相手に互角以上の戦いを繰り広げた新島にも大きな拍手を送りたいと思います。       土屋

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