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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
10チーム総当たりの一巡制で行われるT3リーグもいよいよ終盤戦へ。2勝3敗の勝ち点6で7位に付ける都立東大和南と、2勝2分け1敗の勝ち点7で5位となっている東京の一戦は清瀬内山グラウンド(C)です。
インターハイ予選は大躍進。一次トーナメントで都立城東や東亜学園といった実力者たちを1点差で退けると、迎えた二次トーナメントでは難敵の堀越相手に2-1というスコア以上の完勝を収め、最後は駒澤大学高に屈したものの、東京8強という小さくないインパクトを都内に示してみせた都立東大和南。レギュラー組の3年生も多数残り、上位進出を狙って臨んでいる選手権予選も、初戦で都立日野台を7-0と粉砕して堂々と準々決勝進出。「夏休みに結構県外の強豪と練習試合ができたので、そこで厳しいプレッシャーの中でもワンタッチツータッチでというのはできるようになってきている」とは大原康裕監督。西が丘の懸かる大事なゲームに良い形で向かうべく、選手権予選の前では最後の公式戦となるこの90分間に高いモチベーションで挑みます。
インターハイ予選は支部予選決勝まで勝ち上がったものの、日体荏原に0-1で敗戦。選手権予選も一次予選の2回戦で法政大学高にPK戦で敗れ、2016年度のトーナメントコンペティションに別れを告げた東京。それでもリーグ戦はここまで白星先行と結果が出ており、「新人戦、インターハイ、選手権と全然良い結果が残せなくて、このまま引退するのは本当に悔いが残るので、Tリーグで去年一昨年にないぐらい結果が出ているんですよ。それでみんな今は凄くやる気になっていて、行ける所まで行ってやろうと思って頑張っています」と話したのは宮下創太(3年・港北FC)。残されたリーグ戦に現役続行を決断した3年生を含め、チーム一丸となって立ち向かいます。初秋の新座は今にも雨が降り出しそうな曇天模様。楽しみなゲームは18時ジャストにキックオフされました。
いきなりの決定機は東京。5分に右サイドバックの山口倫太郎(2年・港南中)がDFラインの裏へ落とすと、「センターバックの間が空いていたので、抜けたらチャンスかなというのは意識していました」という柏熊怜(2年・川崎川中島中)は巧みなラインブレイクから、GKと1対1も冷静に制して、左スミのゴールネットへボールを流し込みます。「あまりよく覚えていないんですけど(笑)、右足で冷静に押し込んだのは覚えています」という2年生ストライカーがいきなり結果を。東京が1点のリードを手にしました。
開始早々にビハインドを負うこととなった東大和南ですが、「相手が前から来ないというのはわかっていて、回させられてる感みたいなのは感じた」とプレーメーカーの平塚真史(3年・POMBA立川FC)が振り返った通り、飯島貴(3年・青梅霞台中)と石川啓吾(3年・武蔵村山第四中)で組んだセンターバックコンビを起点にボールこそ持てるものの、スイッチの入れ所を見つけ切れず。10分に広瀬将一(3年・西東京保谷中)の左CKがこぼれると、上野零史(2年・FC.GONA)のミドルはクロスバーの上へ。18分に広瀬と田中大地(3年・東京久留米FC U-15)の連携で奪った左CKを広瀬が蹴り込むも、東京の10番を背負う上田有輝也(3年・東急SレイエスFC)が大きくクリア。22分にも左から廣瀬がCKを蹴り入れ、こぼれを叩いた平塚のボレーはクロスバーの上へ。「中に中に行けなくて、外で回すしかなくなってしまって、効果的な攻めができなかった」とは大原監督。ポゼッションがゲームリズムに直結しません。
逆に26分には「相手はパス回しが上手かったので、引き気味で取ろうというのが作戦」と柏熊も話した東京にチャンス到来。上田がバイタルで時間を創り、エリア内へ飛び込んだ杉本環(3年・インテリオールFC)は1人かわしてフィニッシュまで持ち込むも、左足で狙ったシュートは東大和南のGK山本浩也(3年・日野第四中)が丁寧にキャッチ。31分には東大和南も平塚が左へ振り分け、田中が枠へ収めたシュートは東京のGK鈴木碧斗(2年・川崎西中原中)がファインセーブで回避。「とにかく注意したのはパス、パスで来られて、おびき寄せられてその裏という所で、無理に取りに行く必要はないと話した」と長根正俊監督が話せば、「ああいう後ろで回してくるタイプのチームは得意なので、そこでリトリートで固めて速攻で行こうと思っていた」と宮下。強まる雨脚の中で展開される好ゲーム。
ただ、32分の同点弾はセットプレーから。右サイドで獲得したCKを宮尾慧吾(3年・東村山第四中)が蹴り込むと、ニアへ突っ込んだ田中とDFがもつれ、最後はそのマーカーに当たったボールがゴールネットへ到達します。「ボールを持ててはいるんですけど、相手のゴール前とかでテンポの良いパス回しとか、相手の嫌な所に刺すという所ができていなかった」とは大原監督ですが、難しい流れの中でもきっちり引き寄せた同点弾。東大和南がスコアを振り出しに引き戻しました。
追い付かれた東京もすぐさま37分に決定的なチャンス。右から宮下が入れたクロスを柏熊はスルー。逆から飛び込んできた杉本はGKと1対1になりましたが、シュートはわずかに枠の左へ。39分は東大和南。右サイドバックの野中聡太(3年・小平花小金井南中)が中へ付け、「最近は必ず1人はマンマーカーがいますね」と苦笑する平塚の左足ミドルはクロスバーの上へ。44分は再び東京に決定機。右サイドで前を向いた宮下が裏へ縦パスを流し込み、抜け出した柏熊のシュートは山本がファインセーブで応酬。45+1分は東大和南。右から廣瀬が蹴ったCKは鈴木がきっちりパンチング。「持ててはいるんですけど、相手のゴール前とかでテンポの良いパス回しとか、相手の嫌な所に刺すという所ができなかったですね」と大原監督。センターバックの阿久津敢(3年・川崎稲田中)と布施優吾(2年・大豆戸FC)を中心に、焦れずにゲームを進めた東京はほぼ思惑通り。最初の45分間はタイスコアでハーフタイムに入りました。
後半はスタートから東大和南が2枚替え。野中と上野に替えて、池谷大地(2年・あきる野FC)と嘉規泰雅(3年・FC.VIGORE)を送り込み、整える勝利への態勢。50分は東大和南。宮尾のパスから池谷の左足ミドルはクロスバーを越えるも、投入早々の右サイドバックが積極的なトライを。59分は東京に1人目の交替。上田を下げて藤村拓(2年・大豆戸FC)がピッチヘ。お互いにメンバーを入れ替える中で、降り続いていた雨の勢いはどんどん増すばかり。
60分は東京。右からレフティの小松青空(3年・大豆戸FC)が蹴ったFKはDFが何とかクリア。61分も東京。ここも小松が蹴り込んだ右FKは山本が大きくパンチング。64分は東大和南。広瀬が鋭いスルーパスを通し、走った田中はゴールネットを揺らすもオフサイドという判定でノーゴール。65分も東大和南。広瀬が短く出したFKを平塚が戻し、広瀬が狙ったミドルはDFをかすめて枠の右へ。両者が繰り出す手数。まさに一進一退。
70分の歓喜はグリーンのサザンクロス。宮尾が右へ振り分けたボールを、上がってきた池谷はGKとDFの間に速いクロス。ここへファーから突っ込んできた田中は、マーカーともつれながらも執念でボールをゴールネットへ押し込みます。最近の活躍を受けて、平塚同様にマークが厳しくなっているというサイドアタッカーが大仕事。東大和南が逆転に成功しました。
「2点目を取られた時に凄くチーム自体の雰囲気が悪かったので、そこで1回集まってみんなで話し合った」(宮下)「失点するとチームの雰囲気が悪くなって、点差が開く時もあるので、1回集まって団結してという話で、みんながまた心を1つにしてチームワークを戻していったという形」(柏熊)と2人が声を揃えたように、もう一度気持ちを新たにピッチヘ散らばった東京は、72分にはボランチの番場智幸(2年・インテリオールFC)を起点に柏熊がエリア内へ侵入するも、決定的なシュートは山本がファインセーブで仁王立ち。73分に田中と服部凌大(2年・小平花小金井南中)を、76分に柿崎と住谷大輝(3年・清瀬第五中)を相次いでスイッチした東大和南に対し、東京も78分にはボランチで奮闘した高野竜一(3年・クラブテアトロJY)と大森泰(2年・スポルティグ品川)を入れ替え、最後の勝負へ。
79分に輝いたのは「裏に出たボールにガッと行く突破力はある」と指揮官も評価する11番のストライカー。藤村からのスルーパスに走り込んだ柏熊は、少しスリッピーなピッチコンディションもあって流れ掛けたボールに、「GKが前に出ていたので、体で押し込もうとしてスライディングで」食らい付くと、GKより一瞬早く触ったボールはゆっくりとゴールネットへ吸い込まれます。「生徒も折れないで頑張った部分が出ましたね」と笑ったのは長根監督。2-2。残り10分で東京がスコアを振り出しに引き戻しました。
最終盤。勝利だけを目指してお互いに繰り出す手数。80分は東大和南。ミドルレンジから宮尾が狙ったミドルはゴール左へ。81分は東京。右から小松が蹴ったCKは山本がパンチングで対応。84分は東大和南。服部のドリブルで獲得したFKは中央右、ゴールまで約20m。スポットに立った池谷のキックは枠を襲うも、ボールはクロスバーにハードヒット。直後に東大和南は5人目の交替が。宮尾を下げて小川愛斗(2年・東京八王子FC)を送り込む一手を勝ち切るために講じます。
84分の主役は「いつもは外してばっかりなので良かったです」と笑顔を見せた3年生。左サイドの深い位置へ潜った柏熊が後方へ戻し、藤村は右足で素晴らしいクロスをファーサイドへ。「自分はフリーだと感じて、呼んだらドンピシャのボールが来てくれた」という宮下が全身を投げ出してダイビングヘッドを敢行すると、ボールは水しぶきを上げながらゴールネットへ突き刺さります。「『ああ、ホントに来ちゃった』と思いましたけど(笑)、足よりも頭の方が自信がありました」という宮下が殊勲の勝ち越しゴール。東京の再逆転。残りは5分間とアディショナルタイムのみ。
87分は追加点のチャンス。ピッチ右寄り、ゴールまで約30mの位置から布施が直接狙ったFKは右ポストを直撃するも、その高精度キックにどよめく応援団。90分は同点のチャンス。嘉規のパスを受けた広瀬が裏へ流し、小川が反転しながら放ったボレーはわずかにクロスバーの上へ。そして、試合を締めくくったのはまたも11番。90+1分、諦めずに相手のパス回しの隙を狙っていた柏熊は、GKのトラップミスが乱れた所を見逃さず、「スピードを殺さないようにして」距離を詰めながらボールを奪うと、無人のゴールへボールを送り届けます。これで柏熊は圧巻のハットトリック。「ウチはスタープレーヤーもいないので、一生懸命とにかくやっているというのが現状ですけど、今日は良かったですね」と長根監督も満足そうな表情を浮かべた東京が、力強く勝ち点3を積み上げる結果となりました。
前述したように選手権予選が終わっても、10人近い3年生が現役を続けているという東京。「『Tリーグの最終戦まで3年生はやっていこう』ということで春からスタートしたんですけど、3年生も自分の進路というものがあるので、僕らも『絶対にやれ』ということは言えない訳ですよ。そこは途中の段階で『勉強する子はしていい』と。ただ、推薦とかそういう成績を持っていて、大学に行ける子には『手伝えるんだったら手伝ってくれ』と話していました。その3年生たちが手伝ってくれたおかげで、ある程度今もチームになっていますよね」と話してくれたのは長根監督。選手権予選が早々に終わってしまっても、まだ目標とすべき試合があるということも、リーグ戦が持つ1つの大きな意義かもしれません。「1日1日を大切にして、3年生と良い思い出を創れるようにしたいですし、自分たち下級生が活躍することで、3年生が気持ちよく引退できるようにと思っています」と柏熊が話せば、「自分たちにできることはTリーグしかないので、『後輩のためにも今までにない結果を残そう』と話していて、正直練習は気持ち的にキツい時もあるんですけど、そこはみんなで1つになって頑張っています。僕たちに今できることはサッカーなので、あと2試合はみんなで最後までやり切ろうと思っています」と宮下もキッパリ。10月9日と11月16日。3年生に残された公式戦はあと180分間です。
東大和南にはこの夏から1人のマネージャーが増えました。北里勇次(3年・日野第四中)。インターハイ予選で堀越を倒した一戦は途中出場で奮闘し、勝利のホイッスルをピッチ上で聞いたミッドフィルダーは、この夏に「卒業した頃に復帰できるぐらい」というケガを負ってしまい、選手権予選に出場することはできなくなりました。「ケガした後は止めようかなと思っていました」という北里ですが、「入院している時にキャプテンとかメンバーがお見舞いに来てくれて、『止めんなよ』とか『いてくれよ』みたいに言ってくれた言葉が心に残った」ことと、「入院が終わった後の練習試合で、夏休みにチームを見ていなかったから『みんな成長しているな』と感じて、『自分は出られなくてもいいからもっと近くで見ていたいな』と思った」ことで、マネージャーとして現役を続けることを決意したそうです。「選手の時は簡単だろみたいに思っていた」ものの、実際に女子マネージャーに混じって仕事をしてみると「自分でやってみたら荷物とかも重いし、テーピングとかも彼女たちが上手にやっていて、『凄いな』と思って、ありがたさがわかりました」と苦笑交じりに語った北里。卒業間近になって周囲のサポートのありがたみを肌で感じたことは、今後の彼の人生にとっても大きな糧になることでしょう。もちろん100人を超える部員の中で、試合に出ていたぐらいの実力を持っていた彼だからこそできることもある訳で、「最初の頃は『自分だったら今の所はもうちょっとこうしていたかな』と思うことが多かったんですけど、僕はもう試合に出られないし、それならできることをやろうかなと思って、今は動きがあまり良くない選手に『もっとこうした方が良いんじゃね?」とか言えるようにしています」とのこと。外からの貴重な視点をピッチの中にフィードバックするという重要な役割も意識しながら、日々の練習や試合を見守っているようです。最後にこれからのチームに期待することを尋ねると、「今日は負けちゃいましたけど、あと3週間で立て直して、パスサッカーを貫いて、次の相手はT1の東京実業ですけど、インターハイの時みたいに周りを驚かせるような試合をして欲しいです」と語ってくれた北里。"新米マネージャー"の想いも胸に、東大和南は今年度最後の、そして今年度最大の戦いへと向かいます。 土屋
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