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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
クラブユース選手権王者とインターハイ王者が激突する"夏の全国覇者"対決。FC東京U-18と市立船橋の上位攻防戦は小平グラウンドです。
夏のクラブユース選手権では、キャプテンの蓮川壮大(3年・FC東京U-15深川)や守護神の波多野豪(3年・FC東京U-15むさし)を中心としたディフェンス陣が、7試合で2失点と鉄壁の守備網を張り巡らせ、攻撃陣も日替わりヒーローがゴールを決めるなど、攻守ががっちり噛み合った格好で8年ぶりの日本一に輝いたFC東京U-18。それでも「決して優勝したからと言って慢心する選手もいないですし、冷静に『三冠を獲ると言った中の一冠を達成したんだ』という選手が意外と多いので、僕が一番喜んでいてちゃんとしなきゃなと(笑)」と笑ったのは佐藤一樹監督ですが、その"三冠"挑戦へ向けて落とせないタイトルがこの高円宮杯。クラ選後もリターンマッチとなった清水ユースと流通経済大柏を相次いで撃破し、大宮ユースとのドローを挟むと、先週は柏U-18をホームで7-0と粉砕。現在は青森山田と1ポイント差での2位に付けており、落とせない試合が続きます。
一方、夏のインターハイではこちらも6試合でわすかに1失点。鍛錬され尽くしたオートマティズムを披露しながら、どのゲームも圧倒的なポゼッション率を誇りつつ、大会得点王に輝いた郡司篤也(1年・JSC CHIBA FC)のようなラッキーボーイも現れるなど、盤石と言っていい内容で9度目となる夏の王者に輝いた市立船橋。ただ、「前期を首位で折り返して、インターハイもチャンピオンになれたというのは、その力がない中で間違いなく足元を見てしっかりやってきたからですし、その力がないということは僕自身も彼らもわかっているし、そういう意味では彼ら自身も勘違いすることなく、緊張感を持ってトレーニングからやれているので、日本一になったということはあまり気にしていないです」と朝岡隆蔵監督。インターハイ後のプレミアでは2勝2敗とまったく五分の星で、青森山田と対峙した先週のキーゲームも0-1で落としたものの、まずは目の前の試合に全力で挑む姿勢に迷いはありません。小平はあいにくの雨模様も、注目の一戦に観衆は普段以上の多さ。楽しみな90分間は15時30分にキックオフを迎えました。
先に勢いを持って飛び出したのは市船。開始1分経たない内に、いきなり吉田歩未(2年・Wings U-15)がクロスバーを越えるミドルにトライすると、6分には左サイドバックに入った岡井駿典(1年・Wings U-15)が鋭い右FKを蹴り込み、半谷陽介(3年・FC東京U-15深川)が丁寧にクリア。7分にも岡井が右CKを蹴り込み、最後は混戦の中を波多野が何とかキャッチ。さらに11分にも新潟加入が内定している原綺輝(3年・AZ'86東京青梅)が縦にクサビを打ち込み、上手く反転した太田貴也(3年・JSC CHIBA)のミドルは枠の左へ外れましたが、まずはアウェイチームが攻勢に打って出ます。
15分も市船。矢野龍斗(3年・FC多摩)のドリブルで奪った左CKを吉田が蹴り込むと、波多野がパンチングで回避。直後の右CKを岡井が蹴り入れ、ここも波多野がパンチングで掻き出しますが、1年生レフティのキックは迫力十分。16分はFC東京。左から荒川滉貴(2年・FC東京U-15深川)が右足でクロスを放り込み、DFのクリアに反応した生地慶充(3年・FC東京U-15むさし)のダイレクトシュートは枠を越えるも、ようやくホームチームにファーストシュートが。19分は市船。矢野がミドルレンジから狙ったシュートはクロスバーの上に消えるも、「単純に市船さんがパワーがあるというか、際も強いですし、そのへんで差し込まれてしまったのかなと思います」とは佐藤監督。続く市船のゲームリズム。
すると、先制ゴールを奪ったのはやはり市船。20分に右サイドから福元友哉(2年・横浜F・マリノスJY)がフワリと入れたフィードに、マーカーと競り合いながら上手く体を入れ替えて収めた矢野は左足一閃。波多野も懸命に体へ当てたものの、勢いの勝ったボールはゴールネットへ飛び込みます。「夏に悔しい想いをしてきた選手の1人」と朝岡監督も話した通り、インターハイはメンバー落ちを経験した中で、「終わりが見えてきて頑張り始めたので、成長のタイミングってそれぞれだなと。頑張るという才能が少し出てきたかなと思います」とその指揮官も一定の評価を口にしたストライカーがきっちり一仕事。市船が1点のリードを奪いました。
「先週の試合が終わってから今週の試合に向けて、1週間掛けてチームとして本当に毎日練習を意識高くやってきた」(半谷)中で、なかなかリズムを打ち出せずにビハインドを負ったFC東京。22分には内田宅哉(3年・FC東京U-15深川)とのワンツーから荒川が右へ付け、生地のミドルはDFがブロック。27分にも松岡瑠夢(3年・FC東京U-15むさし)がドリブルで突っ掛け、こぼれを収めた伊藤純也(3年・FC東京U-15むさし)のミドルは、「今日の朝のミーティングでスタメンということがわかった」と自ら話す、これがプレミアデビューとなった市船のGK長谷川凌(2年・順蹴フットボールアカデミー)がファインセーブ。さらに33分には、カウンターから伊藤純也が素早く縦に付けましたが、半谷のドリブルは「フィジカルのトレーニングでちゃんとやっていることが試合で出せたので、あそこでボールが取れたと思う」と振り返る、この日は全体の舵取り役を託された市船のボランチ阿久津諒(3年・FC KASUKABE)が完璧なカバーリングでゴールキックへ。決定機は引き寄せ切れません。
それでも、少しずつ差し戻したホームチーム。34分には小林真鷹(2年・FC東京U-15むさし)が右へ展開したボールを、上がってきた岡庭愁人(2年・FC東京U-15深川)はゴール左へ外れるミドルまで。40分にも右から伊藤が蹴り込んだFKに、小林が合わせたヘディングはわずかに枠の右へ。さらに45分にも左から伊藤が大きく入れたCKを、ファーでフリーの蓮川が折り返し、小林が繋いだボールは長谷川にキャッチされましたが、見え始めたゴールへの道筋。
ホームチームの歓喜は、少し足を痛めた岡井と野本幸太(3年・大宮アルディージャJY)を入れ替える市船1人目の交替を挟んだ45+2分。右から伊藤がアウトスイングに入れたCKを、「自分はセットプレーに入っていく場面は少ないんですけど、運よく自分の所に来た」という半谷が頭で折り返すと、内田はトラップから素早く右足を強振。パーフェクトなボレーはゴールネットへ豪快に突き刺さります。前半ラストプレーでの鮮やかな同点劇。FC東京がスコアを振り出しに引き戻して、最初の45分間は終了しました。
後半はスタートから福元に替えて、10番を背負うG大阪内定の高宇洋(3年・川崎フロンターレU-15)を投入した市船にファーストチャンス。47分に右サイドで獲得したFK。スポットに立ったキャプテンの杉岡大暉(3年・FC東京U-15深川)はクロス気味のシュートを狙うと、波多野が足で懸命にセーブ。51分にはFC東京も「岡庭は相変わらず岡庭という所」と指揮官も評価した岡庭が駆け上がってシュートを放つも、ここは杉岡がきっちりブロック。53分には市船も切り込み隊長の真瀬拓海(3年・JSC CHIBA)が右サイドを持ち上がって中に付け、太田のミドルは枠の右へ。お互いに手数を出し合って立ち上がります。
54分はFC東京。エリア内に生地が侵入し、松岡が打ったシュートはDFが体でブロック。55分は市船に決定機。ボランチに入った西羽拓(3年・鹿島アントラーズつくばJY)が右へ流し、馬力のあるドリブルで縦に持ち出しながら矢野が打ち切ったシュートは右のポストにハードヒットするも、対峙していたFC東京のセンターバック坂口祥尉(2年・FC東京U-15むさし)も「中学校から知っていたので、結構ああいうフィジカルの強い相手とやるのは自分自身も楽しみを感じていた」と言及した矢野の際立つ力強さ。57分はFC東京。左に流れながら生地が枠へ飛ばしたシュートは長谷川がキャッチ。やり合う両者。ヒートアップする好バトル。
市船は61分、2人目の交替として太田と郡司を入れ替えましたが、大枠の流れは「ハーフタイムに『もっと走らなきゃいけない』と選手も話をしていましたし、『ギアを上げるんだぞ』という所でしっかり入ってくれたと思う」と佐藤監督も話したFC東京へ。63分には荒川が鋭いパスカットを披露し、生地のミドルは長谷川がキャッチしたものの、1段階踏み込まれたアクセル。65分は市船に3人目の交替。吉田を下げて、ルーキーの佐藤圭祐(1年・栃木SC JY)を投入すると、直後に訪れたゲームの大きな分岐点。
66分に「自分は立ち上がりは動きも鈍かったりして、だんだん自分のペースに持って行く感じなんです。直したいんですけどね」と苦笑しながら、その言葉の通りに後半は自らのギアをより踏み込んでいた半谷がエリア内へ持ち込むと、後ろから追っていた阿久津と接触して転倒。主審はペナルティスポットを指差しつつ、阿久津にはレッドカードを提示します。やや厳しいジャッジのように見えましたが、判定は判定。千載一遇のチャンスにキッカーは「後期のエスパルス戦で自分でPKをもらって外してしまっていて、そこから次にもらった時は自分で行こうと思っていたので、今日も自分でもらったから自分でセットした」という半谷。「蹴るコースは決めていた」というように中央を狙ったキックは、自らの右へ飛びながらも大きな体で足を残した長谷川がファインセーブ。「体を張ってくれた阿久津さんの想いとか、初出場であまり信頼のない自分が出たので、『こういう大事な場面で止めるぞ』という強い気持ちを持ってやりました」という2年生守護神のビッグプレーに、「夏以降変わってきたので、1回勇気を持って使おうかと思っていた」という朝岡監督も「良い刺激、良い経験を彼に与えることができましたよね」と笑顔。スコアは変わりません。
69分は市船。真瀬の右クロスに佐藤が合わせたヘディングは枠の左へ。71分はFC東京に1人目の交替。松岡と鈴木郁也(3年・FC東京U-15深川)をスイッチして、さらなる前への推進力を。74分はFC東京。小林のパスから内田が枠へ収めたミドルは、「ワンプレーワンプレーを大事にやっていました」という長谷川が冷静に弾き出すファインセーブ。80分は市船。高のパスを西羽が粘り、高がエリア内から狙ったシュートは波多野が残した足でファインセーブ。直後にも郡司の左ロングスローを矢野が落とし、高のミドルはゴール左へ逸れたものの、「退場者が出てからのゲーム運びは難しかったですけど、そこからは受け入れて上手くやれましたね」と朝岡監督が言及し、坂口も「相手は1人減ってから選手の1人1人のやる気やモチベーションが上がった感じがしました」と話したように、むしろ勢いは10人の市船に。
81分に朝岡監督は5枚目のカードとして、奮闘した矢野と杉山弾斗(2年・FC東京U-15むさし)を入れ替え、郡司が4-4-1の最前線へ。84分も市船。野本の左FKに原がダイレクトで叩いたシュートは枠の上へ。86分も市船。郡司の右クロスにニアへ突っ込んだ原のシュートはわずかにゴール右へ外れましたが、この時間帯に10人のチームのセンターバックがシュートシーンに顔を出しても問題なく保てる、市船の驚異的なバランス感覚。90分はFC東京。内田のパスから鈴木が打ち切った左ミドルは枠の右へ。掲示されたアディショナルタイムは3分。いよいよ熱戦もクライマックスへ。
90+2分はFC東京。鈴木が左へ展開したボールを、荒川は右足で好クロスに変えるも、フリーで飛び込んだ生地のボレーはヒットせずに長谷川がキャッチ。90+4分はFC東京のラストチャンス。左から生地が蹴ったFKはGKを越えましたが、難しい高さに飛んできたボールは蓮川に当たり、こぼれを懸命に長谷川がキャッチすると、吹き鳴らされたファイナルホイッスル。「退場者が出る前の内容や質には課題を感じられるし、まだ詰めが甘い。今日の試合も仕留めて勝ち切るという、そういう勝負強さを持たないといけない。そういう意味では良くやったけれども最高の評価を出せる訳ではないですよね」と朝岡監督が口にすれば、「相手が少なくなってからオープンになって、多少ピンチも増えた所はゲーム運びとしてはやりようがあったかなと思いますが、最低勝ち点1は取らないといけないゲームでしたからね。僕自身も『何とか勝ち点3が転がってきてくれればありがたいな』と思っていたんですけど、さすがに市船の伝統と言いますか、まざまざとしぶとさを見せ付けられたなという感じでしたね」と佐藤監督。雨中の熱闘はドロー決着。双方に勝ち点1ずつが振り分けられる結果となりました。
最後は10人になりながらも、さすがの集中力とアグレッシブさで勝ち点1をもぎ取った市船。この試合のスタメンを見ると、インターハイの決勝からは6人が変わっており、「今は色々な選手に経験も試しも含めて、交替枠を最大限使いながら、誰がどういうテンションで、どういうパフォーマンスをできるかというのを見ている段階なので、なかなかフィットしてこない部分はあるけど、こっちは上手くいかないとか、フィットしてこない中でも打開できるメンタリティとか個の力が出てくることを期待しているんです」と語った朝岡監督は続けて、「高がケガで外れたり、金子が外れたり、原が代表で外れたりとか、色々なヤツが外れてもそんなに総崩れすることなく、成績こそ伸びていないけど、そんなにチームのクオリティが大崩れはしてないんですよ。そういう意味ではチームの総合力が夏以降上がってきているし、競争は間違いなく激化してきているので、そこで逞しい選手が出てきて欲しいなと思いますけどね」とのこと。そういう意味ではPKを止めた長谷川の台頭を筆頭に、迫ってきた選手権予選へ向けてチーム内でも高いレベルでのポジション争いが繰り広げられているようです。当然周囲からは"三冠"も含めた高い期待が掛かる中で、「周りが三冠とか言っているので、選手も三冠とかなっていますけど、そんな力はないので1試合1試合しっかりやっていくということだけ」と朝岡監督が話すと、「選手権もそうですし、プレミアも一戦一戦戦うという所で、目の前の試合をやっていくという所は変わらないですね」と阿久津もまったく同じフレーズを。目の前の試合を積み重ねた先に待っているのが"三冠"であっても、このチームなら何の不思議もありません。
この日も翌日のJ3に向けて主力2人は既にチームを離れており、先日は2種登録の"入れ替え"が行われるなど、相変わらず難しいチームマネジメントを強いられる中でも、きっちり結果を出し続けている今年のFC東京U-18。「2種を外れた3年生は『モチベーション的にどうなのかな』と、ちょっと心配はしていたんですけど、純也にしても半谷にしても前向きに取り組んでくれているので大したものだなと思いますし、気持ち的に落ちる選手もいないですからね。もちろん会話は個別にしますけど。ケアを特別するというよりは、思った以上に大人の振る舞いをしてくれているなと思います。今日だって半谷も純也も90分しっかりプレーしてくれるので、それが今年の強みなのかなと。コンスタントにずっとやり続けてくれているので、頭が下がります。監督が頭を下げちゃいけないですけど(笑)」と笑った佐藤監督ですが、この状況でチームを前に進めていくのは選手も指揮官も含めてなかなか簡単なことではないと思います。特に半谷はPK失敗こそありましたが、前からのプレスも含めて90分間フルスロットル。「守備自体は局面ではそんなに得意ではないんですけど、チーム全体のスイッチだったり、コースを限定することだったりというのは"技術"ではなくて、運動量とかそういう部分だと思うので、できることをやっていますね。なかなか守備になると攻撃で質を出せない試合も多いんですけど、そこは頑張って前から行くようにしています」と話しつつ、「三冠を目指してやっているので、クラブユースを獲れたのは凄く嬉しかったですし、もちろん優勝した1種間ぐらいはそういう喜ぶ気持ちもありましたけど、特にクラブユースもそうだったと思うんですけど、活躍するメンバーがいっぱいいて、チーム内の競争も激しいので、スタメンで出てはいるけど安心できないというのもあって、そういう部分ですぐ切り替えてましたし、特に今年はプレミアでも優勝争いをしているので、そういう所にも意識をしながら毎日練習を行っています」と危機感を持ちながらも、"三冠"に向けてやり切る覚悟を鮮明に。こちらも『夏の王者』のみに許された"三冠"を目指すだけの実力と資格を十分に持ち合わせていることに疑いの余地はありません。 土屋
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