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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年09月13日

高校選手権東京B1回戦 大成×私立武蔵@私立武蔵G

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0911musashi.JPG上位進出を真剣に狙うシード校同士が初戦から対峙することになった好カード。大成と私立武蔵の一戦は私立武蔵高校グラウンドです。
近年はとりわけトーナメントコンペティションでも存在感を発揮し、各校からも脅威として認識され始めている大成。昨シーズンの選手権予選は、都立日野台と4-4と壮絶に撃ち合った末にPK戦での敗退を経験し、迎えた今シーズンも新人戦は地区予選の初戦で明大明治にPK戦負けを突き付けられたものの、インターハイ予選では支部予選をしぶとく勝ち上がると、一次トーナメントでも國學院久我山相手に大熱戦を展開。最後は2-3で寄り切られましたが、先月はリーグ戦でも無敗だった東京朝鮮に土を付けるなど、好調をキープしてきた中で「個人的には乗り込む一昨日、昨日まで今日が待ち遠しかった」と藤倉寛監督も期待感を。まずは難敵相手の初戦に全力で挑みます。
開成高校、麻布高校と並ぶ、いわゆる"御三家"の一角。「去年も選手権に3年生はみんな残って、しかも現役で東大に5人入ったんですよ」と大西正幸監督も明かすなど、まさに文武両道を地で行きながら、コンスタントに東京の上位に顔を出している私立武蔵。今シーズンは新人戦こそ早期敗退を余儀なくされましたが、インターハイ予選は強豪の帝京に堂々と競り勝って、二次トーナメント進出。最後は東京朝鮮に0-3で敗れたものの、そのゲームも主導権を握る時間帯を創り出すなどその実力は確か。受験を控えた3年生も全員が現役続行を決断し、シーズン最後の大会に総力を結集して向かいます。晴れ間の覗き始めた江古田は少しずつ真夏のコンディションに。楽しみな1回戦は9時半にキックオフを迎えました。


先にセットプレーからチャンスを創り出したのは大成。5分に左から黒田雄大(3年・東京ベイFC U-15)がCKを蹴り込み、野島裕哉(3年・Forza'02)のシュートはDFにブロックされたものの、いきなり好機を掴むと、6分と7分には続けて右CKを栗原秋佑(3年・三鷹F.A.)が蹴り入れ、前者はDFのクリアに遭い、後者はオフェンスファウルを取られましたが、まずは森内岬波(3年・横河武蔵野FC JY)と原田晃希(1年・Forza'02)で組んだ2トップの推進力を生かしつつ、大成がペースを握ります。
ただ、武蔵も9分にファーストシュート。レフティの山田雄貴(3年・武蔵中)が左へ振り分け、松本周平(3年・武蔵中)のリターンを山田がシュートまで。DFをかすめたボールは大成のGK吉原大貴(3年・FC多摩)がキャッチしましたが、2トップでフィニッシュを取り切ると、14分にも右から司令塔の大塚信吾(3年・武蔵中)が得意の左足でCKを放り込み、柳瀬薫(3年・武蔵中)が残したボールを山田が枠へ収めるも、ここは森内が懸命にクリア。15分にも左サイドで獲得したCKを大塚が蹴り入れ、中央でオフェンスファウルにこそなったものの、徐々に掛かり始めた武蔵のエンジン。
16分は大成。黒田の左CKに野島裕哉が合わせたヘディングはゴール右へ。17分は武蔵。大塚の左CKをニアに突っ込んだ山田が頭で合わせるも、ボールは枠の左へ。20分も武蔵。センターバックの柳瀬が右へフィードを通し、飯塚健太郎(3年・武蔵中)はフリーで抜け出すも、クロスは吉原が冷静にキャッチ。21分はスリリングな攻防。中央で前を向いた栗原が強烈なミドルを枠に飛ばすと、武蔵のGK松山凛之介(3年・武蔵中)が抜群の反応で触ったボールはクロスバーを直撃。逆に22分は武蔵。バイタルでのスムーズなパスワークから、飯塚のリターンを受けた山田はGKと1対1になり掛けましたが、スリップしてしまいシュートは打てず。とはいえ、「今日は割り切って守ってというのは思っていましたけどね」と大西監督も語った武蔵も、きっちりゴールの香りを漂わせてみせます。
前半のこれ以降はかなり膠着した展開に。ベースは大成が澤頭元希(2年・ジェファFC)と黒田の両サイドハーフも走らせつつ、幅を使ったアタックを試みますが、武蔵も右から森陽暉(3年・武蔵中)、柳瀬、キャプテンの大谷拓也(3年・武蔵中)、柳原佑紀(3年・武蔵中)で組んだ"鉄板"の4バックが粘り強く対応。大成も32分には澤頭がマーカーを外してシュートを放つも、松山が確実にキャッチ。「前半は流れが悪かった」とは大成の守護神を託された吉原。守備に軸足を置いている分、武蔵のペースと言えそうな40分間はスコアレスでハーフタイムへ入りました。


後半はスタートから大成がラッシュ。44分にはCKの流れから、黒田が残したボールを野島裕哉がクロスまで持ち込み、角度のない位置から森内が放ったシュートは松山がファインセーブ。45分にも原田、森内と繋ぎ、澤頭が打ち切ったシュートは間一髪で飛び込んだ大谷がスーパーブロック。47分にもボランチの早瀬寛太(3年・FCトリプレッタJY)が粘って残し、黒田が打ったミドルは松山がキャッチ。さらに50分にも、栗原の展開からサイドバックの金秀信(3年・Forza'02)が右クロスを上げ切り、森内のヘディングは枠の左へ外れるも、「後半は自分たちの時間が増えてきた」と吉原も認めた大成の踏み込むアクセル。
一瞬で突き付けた54分の脅威は武蔵。自陣でボールを奪うと、一気に人数を掛けて相手陣内へ侵入し、松本が左へ振り分けたボールを大塚は丁寧にクロス。ここへ全力で走りこんできた山田のヘディングは、必死に戻った野島裕哉が何とか体でブロックしましたが、あわやというシーンに胸をなでおろす大成のピッチとベンチ。56分には柳原のプレー続行が難しくなり、そのまま左サイドバックに伊藤真士(2年・武蔵中)を送り込むことになったものの、武蔵も鋭い刃をちらつかせます。
65分は大成。早瀬のスルーパスに原田が飛び込むも、果敢に飛び出した松山がキャッチしてオフェンスファウル。直後の66分は大成に先制の絶好機。今度は澤頭のスルーパスに黒田がフリーで抜け出しましたが、枠へ収めたシュートはここも松山がファインセーブで仁王立ち。「僕が止めて0点に抑えるというのが一番重要かなと。極端な話、ゼロで抑えれば負けることはないですから」と言い切る都内屈指の守護神が鍵を掛ける武蔵のゴール。68分には大成も1人目の交替として、澤頭と丸山竜之介(2年・調布FC)をスイッチ。残された時間は10分間とアディショナルタイム。
74分も大成。栗原のパスから原田が右サイドで粘るも、森内はシュートを打てずに森が何とかクリア。75分も大成。右から栗原が蹴ったCKは大谷が大きくクリア。80分も大成。丸山のクロスを大谷がブロックして生まれた右CKを栗原が蹴り入れるも、松山が決死のパンチングで回避。すると、水際で粘り続けた武蔵に千載一遇の決定機が訪れたのは試合終了間際の80+2分。右サイドを運んだ飯塚のパスに、松本が突っ込んでDFともつれたルーズボールはまったくのフリーとなっていた飯塚の足元に。会場中の視線が集まる中、しかし右足から放たれたシュートは枠の右へ。「アレは大体毎年のウチの試合なら決まっているパターンですし、今年のチームもアレを決められているチームで、そこに関しては『助けられたな』という感じですね」と藤倉監督も思わず本音を。両者譲らず。勝敗の行方は前後半10分ずつの延長戦へと委ねられることになりました。


短い休息を経て突入した延長前半は膠着も、武蔵へわずかに戻ってきた推進力。88分には大成に2人目の交替。1年生ながら奮闘した原田を下げて、宮川諒也(2年・S.T.FC)を最前線へそのまま投入。89分は武蔵のアタック。松山のロングフィードにルーキーながら足の落ちない梶原健太郎(1年・武蔵中)が競り勝ち、山田が上げたクロスは吉原がキャッチ。スコア動かず。泣いても笑っても残るは延長後半の10分間のみ。
早瀬から安東瑞生(2年・Forza'02)を入れ替えた大成3人目の交替を挟み、動き出した延長後半も攻勢は大成。91分に左サイドから宮川が打ったミドルは松山ががっちりキャッチ。99分も大成。黒田の左CKにセンターバックの野島樹哉(3年・Forza'02)が飛び付いたヘディングは枠の左へ。100分も大成。右サイドを丸山が抜け出すも、絶妙の判断で飛び出した松山がファインセーブ。直後のCKを右から栗原が放り込み、丸山が頭で前へ残したパスを森内がバックヘッドで狙うも、ボールはわずかにクロスバーの上へ。100+1分も大成。栗原の右CKは中央で密集を生み出すもシュートは生まれず、これがこのゲーム最後のチャンス。「内容的に大成のゲーム」と大西監督も認めた100分間を松山と大谷を中心とした武蔵がきっちり凌ぎ切り、双方のゴールネットは揺れず。2回戦進出の権利はPK戦で争われることとなりました。


先攻は大成。1人目のキッカーは左を狙うと、読み切った松山はパーフェクトなセーブ。後攻は武蔵。1人目はGKの逆を突いて右スミへグサリ。いきなり付いた点差。大成の2人目は左スミに蹴り込み、松山もきっちり反応していましたが、ポストの内側ギリギリに成功。武蔵の2人目は右スミを選択し、吉原もコースは読んでいたものの、これもポストの内側ギリギリに突き刺さって成功。大成の3人目は中央へ冷静に流し込み、武蔵の3人目は吉原に触られながらも何とか成功。3人目を終えて2-3。武蔵がわずかに前へ。
大成4人目のキッカーが左を狙ったキックは、松山が横っ飛びでスーパーセーブ。大きく傾いた勝敗の天秤。決着の時は目前に。決めれば勝利となる武蔵の4人目。チームメイトの想いを乗せて右スミを狙ったキックは、しかし「この流れでチームを救いたいなと思いました」という吉原が執念のビッグセーブ。終わらない熱戦。外せば終わりの大成5人目。中央に蹴ったボールは、松山が足でわずかに触りながらも、ボールはコロコロとゴールネットへ。決めれば終わりの武蔵5人目。「これまでもPKはほぼ決めていた」(大西監督)キッカーが左へ打ったキックは、ここも「集中していたので周りの声は何も聞こえなかった」吉原が圧巻のシュートストップ。土壇場で生き残った大成。サドンデス。ここからは何が起きても不思議はなし。
大成の6人目は左スミへ確実に沈め、一転して外せば終わりの武蔵6人目も、左ポストに当てながらきっちり成功。大成の7人目は右スミへ丁寧に流し込み、これで大成は5人目から3人連続で成功。プレッシャーの掛かる武蔵の7人目。短い助走から左を狙ったキックが、「ゾーンに入りました。2本目から読み始めたので、もうこれはコースがわかるなというような感覚でした」と明かした吉原に弾き出されると、その守護神を中心に広がった狂喜の輪は大成。「崖っぷちどころか、本当に崖から飛び降りている状態で生き返ってきたので、こういう勝ち方ができたというのは夢のような感覚ですね」と藤倉監督。壮絶なPK戦を制した大成が、ディフェンディングチャンピオンの待つ2回戦へと勝ち上がる結果となりました。


「本当に広島カープじゃないですけど、"神ってる"ですよね」と藤倉監督も笑ったように、奇跡と称しても差し支えないような勝利を収めた大成。その主役を張ったGKの吉原ですが、実は今年の3月に膝の半月板の手術をしたため、戦線復帰したのはつい先月。その4カ月余りは「ケガする前のプレーよりも良いプレーができるように、体作りをしてきました。筋トレと体幹をずっとやっていて結構頑張りました」とのこと。2試合のリーグ戦を経て、迎えた選手権の初戦はPK戦までもつれ込むシビアな展開になったものの、「小学校からPKが得意で、高校ではPK戦も勝っていたので自信は持っていました」という言葉の通り、ゾーンに入った2本目以降に繰り出された6本はすべてのコースを読み切った上で、3本をストップするという驚異的なパフォーマンスを披露。藤倉監督も「ああいう苦労した選手が報われたなと。ただただ技術だけじゃない所でドラマがあったんだなと思いましたね」と、感慨深そうに語ってくれました。次の相手は昨年度の選手権で全国8強まで駆け上がった駒澤大学高。「駒澤のスタメンに仲が良いヤツがいて、ずっとやりたいなと思っていた」と吉原が名指ししたのは、FC多摩時代のチームメイトであり、前述した昨年度の選手権で注目を集めた佐藤瑶大。「しっかり無失点で抑えてジャイアントキリングを起こしたいです」と語る吉原と佐藤の再会を含め、注目の2回戦は17日の10時キックオフ。舞台は駒沢補助競技場です。      土屋

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