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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年09月12日

高校選手権東京B1回戦 國學院久我山×帝京@駒沢補助

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0910komaho2.JPG昨年度はファイナルで対峙した両雄が早くも初戦で激突。1回戦屈指の好カードとなった國學院久我山と帝京の一戦は、引き続き駒沢補助競技場です。
相次いで強豪をなぎ倒し、埼玉スタジアム2002で全国準優勝の栄誉に輝いたのはわずかに8カ月前。「準優勝した瞬間に『今年は苦しいだろうな』と選手たちには言っていて、『今年を獲るのは難しいぞ。その腹を括って1年間しっかりやろう』と言っていた」と清水恭孝監督が予期していた通り、2016年シーズンは苦戦の連続。関東大会予選は2回戦で関東第一に、インターハイ予選は一次トーナメントで都立駒場にそれぞれ屈するなど、トーナメントでは結果の出ていない國學院久我山。ただ、当然一番欲しいのはこの選手権での全国切符。「基本的にカップ戦は相手の問題ではなくて、どう入るとかということが大事」という指揮官の下、いつもの久我山スタイルで返り討ちを狙います。
5年ぶりに勝ち上がったファイナルでは國學院久我山と好勝負を演じ、最後はPK戦で涙を飲んだものの、古豪復活の狼煙を間違いなく打ち上げつつある、その名を知られた"カナリア軍団"はもちろん帝京。春先から1年生を多く起用してきた今シーズンは、関東大会予選では2回戦で当たった都立駒場にPK戦で敗れ、インターハイ予選でも一次トーナメントで私立武蔵に敗退を突き付けられているだけに、この大会に懸ける想いも並々ならぬものが。「自分たちらしく戦って去年のリベンジというのも果たしていけばいいなと思う」と意気込むのは、昨年のファイナルでもスタメン出場していた高橋心(3年・A.N.FORTE)。リベンジと2回戦進出という"二兎"を貪欲に目指します。両者は6日前にもリーグ戦で戦っており、その時は久我山が1-0で勝利。さらなる返り討ちか、念願のリベンジか。超注目の80分間は12時ジャストにキックオフを迎えました。


序盤から勢いを掴んだのは「この前のTリーグはリトリートしてやったんですけど、今日は『奇襲を掛けよう』みたいな感じで最初から前からガンガン行きました」とキャプテンの中瀬大夢(3年・FCトリプレッタJY)が明かした帝京。4分には1年生で唯一のスタメンとなったサントス・デ・オリベイラ・ランドリック(1年・Clube Andraus Brasil)が決定的なシュートを放ち、ここはゴールカバーに入ったDFがライン上でクリア。8分にもCKから五十嵐陸(3年・FCトッカーノ)がゴールネットを揺らしたものの、今度はオフェンスファウルでゴールは認められませんでしたが、「今回はバチバチ行かせた」と日比威監督も話したカナリア軍団が良い形で立ち上がります。
一方、久我山はその帝京のプレスを受ける中で、なかなか持ち前のパスワークが機能せず。「こちらが意図したものとどうしても違うアクションになってしまった所があったと思う」とは清水監督。後方から"捨て球"に近いフィードを送るシーンも散見され、前線の選手たちに有機的なコンビネーションが生まれない中で進んでいく時計の針。「相手は珍しく蹴ってきて、高さではウチの方があったので、思い通りに行ったと思います」と中瀬。ゲームリズムは帝京に。
19分も帝京。センターバックに入った原田祐次郎(3年・S-P.FUTE)のフィードに小田楓大(3年・足立第十四中)が競り勝ち、裏へ走った中瀬の左足ボレーはゴール左へ逸れるも、シンプルな形からフィニッシュまで。24分も帝京。右サイドバックの青柳寛己(3年・ESA)が、五十嵐とのワンツーでサイドを抜け出してクロス。ここは中と合わなかったものの、サイドアタックは可能性十分。25分には久我山も高橋黎(1年・ジェファFC)、キャプテンの名倉巧(3年・FC東京U-15深川)と細かく繋ぎ、安藤謙生(3年・横浜F・マリノスJY)がドリブルでエリア内へ潜るも、原田が冷静にカット。久我山はファーストシュートをなかなか繰り出せません。
30分過ぎからは久我山も知久航介(3年・浦和レッズJY)、高橋、名倉の中盤トライアングルが少しずつボールに絡み出し、窺うテンポアップのタイミング。38分には右サイドで金田直輝(3年・ジェファFC)が粘って収め、名倉が枠に飛ばしたシュートは帝京のGK和田侑大(2年・FC東京U-15むさし)にキャッチされたものの、ようやくファーストシュートが生まれると、39分には決定的なシーン。右サイドでボールを持った澁谷雅也(3年・ジェファFC)がクロスを上げ切り、ニアへ飛び込んだ金田は豪快なボレー。ボールはクロスバーにヒットし、これには日比監督も「前に入られたのは気に入らないですね」と厳しい表情。40+3分にも澁谷が粘って獲得した左CKを自ら蹴り込むも、帝京のセンターバックを託された菅原光義(2年・S.T.FC)がきっちりクリア。終盤はやや久我山にもリズムが出て来ましたが、「プレッシャーを速くして、前を向かせないというのを意識してやりました」と高橋心も口にしたように、良い距離感でのアグレッシブな守備を仕掛けた帝京ペースで、スコアレスの前半は終了しました。


「ハーフタイムでも言っていたんですけど、周りの皆さんはどうしても全国準優勝のチームとして見る中で、今年は単純に1回戦や2回戦で負けているチームなので、そこをちゃんと受け止めないと次には進めないというのは伝えていたつもり」と清水監督。「結果を残さないといけないというのがこの学校の宿命になってしまっているのは、子供たちにもかわいそうかもしれないけど、それをわかって入ってきているので、そこはお互い頑張って協力してもらうしかないかなと思いますけどね」と日比監督。両指揮官も難しい心中を抱える中で迎えた後半。41分は帝京。遠藤巧(3年・横浜FC JY)を起点に高橋が速い縦パスを付けるも、反応した中瀬は触れずに久我山のGK平田周(2年・FC東京U-15むさし)が丁寧にキャッチ。43分は久我山。金田のリターンを受けた澁谷のスルーパスに、中盤から高橋黎が飛び出すも、判定はオフサイド。変わりつつあるペースと変わらないスコア。
44分は帝京。和田のキックに高さの生きる小田が競り勝ち、中瀬のミドルは平田がキャッチしたものの、まさに『シンプル・イズ・ザ・ベスト』の手数。46分も帝京。高橋心の仕掛けで左CKを奪い、左からランドリックが蹴ったキックは平田が掻き出しましたが、拾った市川雅(3年・ジュビロSS浜松)のシュートは枠を捉えるも、ここはDFも体を張ってブロック。49分は久我山。ショートコーナーから澁谷が左クロスを送り、ファーで上加世田達也(2年・Forza'02)が折り返すも遠藤がクリア。直後の右CKは澁谷が中へ蹴り込み、再びこぼれを拾った澁谷のクロスに、ニアへ飛び込んだ金田のシュートは枠の右へ。一進一退。読めない結末。
先に動いたのは久我山。50分に左ウイングを務める安藤に替えて、三橋智哉(2年・大宮アルディージャJY)をピッチヘ送り出すも、またしてもシュートに結び付けられなかった52分の右CKを経て、狂喜の主役は「やる前から高校の中でベスト3に入るくらい大事なゲームだと思っていたので、気持ちの入り方も違いました」と語る帝京のキャプテン。52分にショートカウンターから左サイドでボールを持った遠藤は小田に一旦預けると、外を回ってリターンを受け取りながらすかさずクロス。「ちょっと入り過ぎちゃったんですけど、相手が触ってくれて当てるだけだった」という中瀬は確実にボールをゴールネットへ押し込みます。その瞬間、応援席もベンチも、そしてピッチの選手たちも沸騰。とうとう帝京がスコアを動かしました。
追い掛ける展開となった久我山は57分に2人目の交替。金田と宮本稜大(1年・東急SレイエスFC)を入れ替え、ルーキーに託すセンターフォワードの大役。すると、直後には名倉が右へ振り分け、上がってきたサイドバックの井上翔太(1年・ジェファFC)がクロスを送ると、宮本のヘディングは枠の左へ外れましたが、1年生ストライカーが漂わせる期待感。60分は帝京。右サイド、ゴールまで約25mの位置からランドリックが直接狙ったFKはカベを直撃。ここで訪れるクーリングブレイク。残された時間は20分間とあと少し。
清水監督の決断は65分。1年生の高橋黎を下げて、ジョーカー的なドリブラーの西條颯(3年・FC東京U-15むさし)を解き放ち、ピッチへ落としたさらなる推進力。65分は帝京。五十嵐の右クロスに小田が合わせたボレーはヒットしましたが、懸命に体を投げ出した久我山のセンターバックを務める中野英寿(2年・ジェファFC)に当たって平田がキャッチ。68分は久我山に決定機。知久が右サイドへ展開し、澁谷が丁寧に上げたクロスを、名倉は難しい体勢から左スミギリギリにヘディングで収めましたが、必死に飛び付いた和田が間一髪で掻き出す超ファインセーブ。スコアは0-1のままで、いよいよ差し掛かるラスト10分の攻防。
70分は久我山。自らのドリブルで手にした右CKを澁谷が蹴り込み、最後は宮本が当てたヘディングは枠の左へ。73分も久我山。右サイドからショートで蹴り出した澁谷のCKは、ハンドで帝京ボールに。74分に帝京は1人目の交替を。高橋心に替えて山﨑大煕(3年・S.T.FC)を投入して、図る中盤の強度アップ。76分は久我山。上加世田が蹴った長いFKは遠藤が決死のクリア。78分も久我山。中野がゴールまで40m近い距離から放ったロングは、大きくゴール右へ。久我山は三富嵩大(2年・横河武蔵野FC JY)を、帝京は荻原健太(3年・ザスパクサツ群馬U-15)を送り込んで最後の勝負に。アディショナルタイムの掲示は5分。耐える帝京。押し込む久我山。
80+3分は久我山。上加世田のパスを山口隼介(2年・東急SレイエスFC)が左へ繋ぎ、三橋が枠へ収めたミドルは和田が丁寧にキャッチ。80+5分には帝京に3人目の交替。ゴールに絡む活躍を見せた遠藤と関口海(3年・FC.VIDA)をスイッチして、3年生たちに託したゲームクローズ。80+5分は久我山のラストチャンス。中野が左からロングスローを投げ入れ、こぼれたボールを拾った中野が再び左からクロスを入れるも、和田がしっかりキャッチすると、しばらくして吹き鳴らされたファイナルホイッスル。「去年の悔しさがあって1年間やってきたので、勝てて良かったです」(中瀬)「相手はパスサッカーなんですけど、自分たちはまた違ったサッカーをして勝ったので良かったです」(高橋)と2人も笑ったカナリア軍団がリベンジ達成。久我山を撃破した帝京が2回戦へと駒を進める結果となりました。


「サッカーは久我山の方が上手だったんだけど、そのサッカーをさせなかったという意味では、昔の帝京らしいと言えば帝京らしいかもしれないですね。潰しに懸かって蓋をしに行くという感じで」と日比監督も話した帝京は、80分間集中力の高い戦い方を貫徹するパーフェクトに近いゲーム運びだったと思います。それを支えていたのはスタメンと途中出場も含めれば、11人がこの勝利にピッチで大きく貢献した3年生。今シーズンは1年生が主力を担ってきた中で、「ここ最近は使っていないヤツが4人くらい出ていますよ」と指揮官も口にするような陣容の中で3年生が奮起。「3年生という意地もありますし、チーム内の競争で3年生が今はスタメンで出ているということで頑張っていた」と高橋心が話せば、「相手の方が上手いですし、気持ちでぶつからないと負けてしまうと思ったので、『気持ちを出して戦おう』と3年生みんなで話しました」と中瀬。その奮闘には日頃から辛口な日比監督も「東京で一番久我山は大人びた良いサッカーをするんだけど、その良さを今日は徹底的に上級生が消し続けたというのは評価できる部分であって、それがやっぱり今の高校サッカーの原点かもしれないですね。そういう風に久我山のポゼッションのサッカーを打ち消せたというのは、それに勝るものが帝京の中にもあったのかなと思います」と笑顔。苦しんできた最上級生が、この大一番で見事に結果を掴んでみせました。「ここからです。次が修徳だとか暁星だとか考えていなかったので、一戦必勝の気持ちで戦っていきたいと思います。今日の勝利も忘れて、あと8日後なのでまた練習に身を入れていきたいですね」と気を引き締め直したのは中瀬。伝統の黄色いユニフォームを纏ったカナリア軍団の次なる相手は、こちらも難敵の名門・修徳です。     土屋

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