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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
関東大会予選では唯一実現した、都立勢同士が激突するガチバトル。都立豊島と都立駒場の第3試合は引き続き清瀬内山グラウンドです。
選手権予選は3年ぶりに1次予選を勝ち上がって都大会出場を果たし、最後は中大杉並に0-1で惜敗したものの、T4リーグでもブロック3位という成績を残すなど、好結果を出してみせた昨シーズンの都立豊島。昨年末に行われた新チーム立ち上げの新人戦でも、本郷や日大豊山をなぎ倒して堂々の第2地区制覇を達成。こちらも3年ぶりとなる関東大会予選は、今のチームの立ち位置を図る意味でも格好の機会です。
昨シーズンは関東大会予選、インターハイ予選と共に芳しい結果は残せなかったものの、選手権予選ではきっちりベスト8まで勝ち残るなど、例年通り夏以降のチームビルディングには目を見張るものがあった、名将・山下正人監督率いる都立駒場。T3リーグの開幕は今週水曜日に控えているため、新人戦を免除されていた彼らにとってはこれが新チームになって初の公式戦。2年前に東京制覇を成し遂げた縁起の良いこの大会で、再び自信を得られるようなシーズンインを迎えたい所です。ピッチを取り囲むネットの周囲には少なくない観衆が集結。都立対決は駒場のキックオフでその幕が上がりました。
お互いに探り合うような立ち上がりを経て、先にシュートを放ったのは豊島。8分に新開悠人(3年・北区桐ヶ丘中)がエリア内で残し、岸本渉(3年・ジェファFC)が放ったシュートは駒場のGK瀧川大輔(3年・FC東京U-15むさし)がキャッチしましたが、粘り強く1本目のフィニッシュを。駒場も14分に三田健太郎(3年・三菱養和調布JY)が蹴った右CKは豊島のGK結城大雅(3年・北区滝野川紅葉中)にキャッチされたものの、直後にも国枝拓(3年・FC杉野)が右へ振り分け、奥谷友哉(2年・FC町田ゼルビアJY)が結城にセーブを強いるシュートまで。15分前後でようやく両チームのファーストシュートが出揃います。
15分も駒場。右から三田が蹴ったCKはDFのクリアに遭い、再び三田が入れた右CKはゴールキックへ。18分も駒場。駒田陸(3年・九曜FC)が右へ振り分け、三田のクロスに奥谷が合わせたシュートは豊島のキャプテンマークを任された大澤海人(3年・武南JY)が体でブロック。19分も駒場。三田が左CKを中央へ蹴り込むも、豊島はクリアから一転してカウンターのチャンス。野口生吹(3年・練馬光が丘第二中)は右サイドを単騎で50m近く運び、カットインしながらシュートまで。ここは瀧川がしっかり押さえたものの、豊島も突き付ける鋭いカウンターの刃。
ただ、「最初は大きく蹴ってシンプルにやって良いからと言っていたからね」と山下監督も話す駒場は、20分過ぎから少しずつ長短のパスを使い分ける攻撃にシフト。26分には左からSB茂木良介(3年・ARTE八王子FC)がスローインを投げ込み、受けた国枝のドリブルシュートは正面で結城がキャッチ。28分にも三田がこの日4本目の右CKを蹴り入れ、飛び込んだ奥谷のヘディングは枠の右へ外れましたが、「ボールの持ち方が下手で外へ外へ行っちゃうから、結局クロスしか上げられなくなっちゃう」と指揮官も嘆いたように、なかなかドリブルで勝負するシーンを繰り出せず、駒場も手数をなかなか増やせません。
とはいえ、五十嵐心(3年・FC町田ゼルビアJY)と高木晴(2年・府中浅間中)のCBコンビと、アンカー気味に構える木下航介(2年・三菱養和調布JY)のトライアングルに破綻はなく、流れの中からは豊島に付け入る隙を与えず。「前半は上出来だなと思ったよ。点を取られなかったから。0-0は向こうも思惑通りの展開だったんじゃない」と山下監督。最初の40分間はスコアレスでハーフタイムに入りました。
後半もまずは駒場が42分に左右から三田がCKを蹴り込むも、共にシュートまでは持ち込めなかったシーンを経て、44分には豊島に好アタック。金井蓮(3年・FCトリプレッタJY)が野口とのワンツーからエリア内へ侵入。シュートは打ち切れなかったものの、ようやく流れの中からチャンスの芽を生み出すと、45分にベンチが切った1枚目のカード。伊澤拓美(2年・練馬石神井東中)に替わって投入されたのは、10番を背負う橋本拓郎(3年・クリアージュFC)。「最初から使ってディフェンスに追われて疲弊しちゃうともったいないので、あの子の攻撃力を最大に生かすのはあのタイミング」と丹羽徳人監督も話したように、昨年のTリーグチーム内得点王のジョーカーをピッチヘ解き放ちます。
45分は豊島。左からSBの丸谷陸(3年・練馬田柄中)がロングスローを投げ込み、ニアで新開が合わせたヘディングは瀧川がキャッチしましたが、距離の出るロングスローに漂うチャンスの雰囲気。48分も豊島。良い形で前を向いた橋本が左へパスを送ると、野口がカットインしながらシュートを打ち切り、ここも瀧川にキャッチこそされたものの、「10番はボールを受けるのが上手かったからね」と山下監督も認める橋本の存在で、豊島にも出てきたゴールへの可能性。
50分は駒場に決定機。左サイドでボールを受けた本橋駿(3年・ソレイユFC)は、右に流れつつエリア外から思い切り良く右足一閃。ボールはクロスバーを直撃したものの、キャプテンの一撃で再び変わったゲームリズム。53分に右から三田が蹴ったCKはゴールラインを割ってしまいましたが、54分にも前半途中から出場していた木本拓夢(3年・横河武蔵野FC JY)のスルーパスで奥谷が抜け出すも、DFが何とかタックルで回避。56分に岸本と古海良祐(3年・ペラーダFC)を入れ替えた豊島2人目の交替を挟み、57分も駒場。三田が左から蹴り込んだFKを、ニアでフリックした国枝のシュートは結城にキャッチされるも、「後半はサイドは持って中へガツガツ行かせていたでしょ」と山下監督も言及したサイドのドリブルも一気に増加し、駒場が打ち出す攻撃の躍動感。
60分も駒場。本橋のパスを国枝が頭で繋ぎ、木本が左からグラウンダーで入れたクロスは、豊島のボランチを務める権田遥生(3年・FC.PROUD)が懸命に戻ってクリア。63分も駒場。ゴールまで約20mの位置で獲得したFKを本橋が直接狙うも、ボールはカベを直撃。65分も駒場。木本が繋いだボールを奥谷は枠へきっちり収めるも、結城が何とかキャッチ。押し込み続ける山下軍団。
ところが、歓喜の瞬間を迎えたのは劣勢の豊島。68分に右から野口が蹴ったCKはシュートまで繋がらなかったものの、そのままの流れで丸谷がスローインを投げ込むと、大澤は丁寧にクロス。ニアへ飛び込んだ橋本はGKに競り勝ってヘディングを枠へ飛ばし、無人のゴールへ転がったボールはカバーに入ったDFも掻き出すことができず、越えたゴールライン。先制弾を叩き込んだ千両役者はそのままアップしていたベンチメンバーの元へ。ピッチの選手もすぐさま駆け寄り、広がった赤い大きな輪。やはり魅せたのは橋本。豊島が先にスコアを動かしました。
ビハインドを追い掛ける展開となった駒場は69分に2人目の交替。三田を下げて、小林寛太(3年・アローレはちきたFC)をピッチヘ送り込むと、72分にはカウンターから木本のパスに国枝がシュートまで持ち込むも、飛び出した結城がファインセーブで仁王立ち。72分にも木本のパスからまたも国枝が狙ったシュートは、クロスバーにハードヒット。76分にはまたも国枝が奥谷のパスからシュートを放つも、大澤が果敢なブロックで阻止。77分に中央、ゴールまで30m弱のFKを奥谷が枠へ飛ばしましたが、結城ががっちりキャッチ。松舟周平(3年・練馬石神井東中)と張本仁安(3年・豊島巣鴨北中)のCBコンビも高い集中力を保つ豊島の「完璧なゲームプラン」(丹羽監督)遂行までは、あと3分とアディショナルタイムのみ。
駒場は死なず。77分に右SBの島田恵伍(2年・クリアージュFC)が丁寧に繋ぐと、開いた本橋は速いボールを中央へ。ここに「ディフェンスが後ろに下がっていましたし、ニアに飛び込むのが決まりごとだったので走り込んで行った」奥谷は体を投げ出してダイビングヘッド。ボールは豪快にゴールネットへ突き刺さります。「アイツもよくあそこに飛び込んだよね」と山下監督も評価を口にすれば、丹羽監督も「あのヘディングシュートは見事でしたね」と素直に称賛。ダイナミックな奥谷の同点弾が飛び出し、土壇場で駒場がスコアを振り出しに引き戻しました。
一気に豊島を飲み込んだ駒場の突風。同点直後の78分には「この大会の前に遠征に行ったんですけど、自分たちがPKを取られて失点して負けた試合があって、監督に『ペナルティエリアに入ったらもう仕掛けてPKを取るくらいの気持ちで行け』と言われていた」という奥谷がエリア内での仕掛けでDFともつれて倒れると、主審はPKというジャッジを下します。スポットに向かったのは「キッカーは決まっていなかったですけど蹴りたかったので」という奥谷自ら。この重要な局面で奥谷は「練習していた左スミ」を狙うと、GKが飛んだのは逆サイド。「多少やんちゃでやるかやらないかが激しいヤツ」と山下監督も言及した奥谷のドッピエッタで逆転劇が完結。豊島も80+3分には180センチの小川寛太(3年・西東京青嵐中)を投入するも一歩及ばず。駒場が信じられないような展開のゲームを劇的に制して、ベスト16へと勝ち上がる結果となりました。
『走れ』『競れ』『粘れ』のチームスローガンを体現するような、最終盤の逆転劇で次のラウンドへと駒を進めた駒場。とはいえ、「これで勘違いしなきゃいいけどね。勘違いしちゃ困るよ」と苦笑いした山下監督は、試合後に20分近く青空ミーティングを行うなどおかんむりの様子。ただ、もちろん奥谷も「内容は良くなかったと思います」と話したように、選手たちもそれは十分理解済み。まずは勝利を収めたということが何よりも大きな成果と言った所でしょうか。前述したように駒場と言えばやはり山下監督の手腕も相まって、夏以降のチームの成長が常に各校の脅威の的に。「ヤツらはモノを考えないから。教えてもらえるものだと思っているからね」と相変わらずの山下節が冴え渡る駒場が、ここからどういう成長曲線を描いていくかは非常に楽しみです。 土屋
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