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このブログについて

J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年04月23日

関東大会予選東京準決勝 関東第一×成立学園@駒沢第2

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0423koma2.jpg春先から各校を率いる指導者の高い評価を獲得してきた両雄の激突。関東第一と成立学園が関東大会の出場権を懸けて対峙するセミファイナルは駒沢第2球技場です。
インターハイ全国ベスト4という好成績を叩き出しながら、選手権予選は堀越相手に延長戦までもつれ込む熱戦の末に敗退。悲願の"冬の全国"には手の届かなかった昨シーズンの関東第一。今シーズンはその経験も生かし、「今の目的は選手層を厚くするという所なので、誰が出ても戦えるチームができてきているかなと思います」と堤優太(3年・FCトッカーノ)も明言した通り、ここまでは20人近いグループでスタメンを争う好循環が。現在地を確かめる意味でも、昨年に続く関東大会進出を確実に引き寄せたい所です。
T1リーグではここまで五分に近い結果にとどまっているものの、それこそ年明け前後から「今年の彼らは強い」と周囲から注目を集めていた成立学園。関東大会予選はかえつ有明に4-2、都立松が谷に7-0、堀越に4-1と攻撃力を見せ付けてここまで勝ち上がってきたものの、この日の対戦相手の関東第一にはリーグ戦で0-4と完敗を喫しており、「相手のこともあって今週は鷲宮のグラウンドでみんな意識高くやってきた」と矢田部竜汰(3年・横浜F・マリノスJY)。彼らへのリベンジ達成は、すなわち関東大会出場とイコールです。少なくない観衆が集まった駒沢は夏のような陽射しが差し込む時間帯も。注目の80分間は関一のキックオフで幕が上がりました。


5分にファーストシュートを放ったのは成立。ボランチの大野泰成(3年・FCゼブラ)が左へ展開したフィードを、DFがクリアしたボールは中央へ飛んでしまい、エリア外から小山珠里(3年・成立ゼブラFC)がボレーで叩いたシュートは関一のGK山口公太郎(3年・横河武蔵野FC JY)がキャッチしたものの、まずは成立が手数を繰り出しますが、立ち上がりから鮮明になったのはそのゼブラ軍団の守備意識。「今日はちょっといつも意識している所よりも、奪ったボールを裏に蹴って2列目から出て行ったり、ちょっと守るスペースを後ろにした」と宮内聡監督。少しブロックを組んだ後ろ重心のような形でゲームに入ります。
8分は関一。右からレフティの左SB根本佑(3年・シュートJY)が蹴り込んだCKは、成立のGK園田悠太(3年・横浜F・マリノスJY追浜)がパンチングで掻き出し、萩原幹太(3年・成立ゼブラFC)が大きくクリア。10分も関一。今日はボランチの位置でスタートした冨山大輔(3年・FC習志野)が中央をドリブルで運び、タイミングを計ってスルーパス。左へ流れた林健太(3年・FC.VIDA)のクロスも園田がキャッチしましたが、いつも通り石島春輔(3年・JSC CHIBA)と鈴木友也(3年・VIVAIO船橋)のCBコンビがパスを交換しつつ、ボランチの石井賢哉(3年・Wings U-15)も含めてボールを動かす関一のテンポ。
唐突な先制劇は14分。最終ラインでボールを持った矢田部は、「最初の2発はちょっとダフッて行かなかったので、少し調節して蹴りました」という完璧なフィードを右サイドの裏のスペースへ。ここにフリーで走り込んだのは、斜めに飛び出してきた左SHの高橋恒樹(3年・成立ゼブラFC)。前を向いて左に流れながら放ったシュートは、GKもわずかに及ばず左スミのゴールネットへ飛び込みます。「ちょっと最近元気がなくて、サブでスタートしようかなと高橋の所だけ迷ったんですよ。ただ、起用を決めて『あの動きで1本だけ狙っておけ』と。『絶対に出てくるから』と話したんです」と宮内監督も言及し、矢田部も「試合前に高橋君にも『あそこに走るから』と言われていたので、『じゃあそこに出すから』と話していました」と認める狙い通りの一撃。成立が先にスコアを動かしました。
畳み掛けたゼブラ軍団。18分に左サイドでボールを持ったキャプテンの西羽開(3年・鹿島アントラーズつくばJY)は、DFラインとGKの間を狙って鋭いアーリークロスを送り込むと、ニアへ突っ込んだ竹本大輝(3年・成立ゼブラFC)はループシュートを選択。ボールはGKの頭上を破り、ゆっくりと綺麗な軌道を描きながらゴールネットへ吸い込まれます。「アイツはT1の関一戦の時に良い意味で周りに怒鳴り散らすぐらい怒っていたので、本人にも色々な気持ちがあったと思います」と矢田部が明かした10番の、高いテクニックを生かした華麗な追加点。あっという間に両者の点差は2点に開きました。
さて、小さくないビハインドを追い掛ける展開となた関一は、いつもよりもショートパスの段階でイージーなミスが目立ち、縦へのテンポアップをなかなか計れず。20分に冨山が左から蹴ったCKは鈴木龍之介(3年・成立ゼブラFC)が大きくクリア。こぼれを拾った冨山の再クロスは、中央で混戦を生み出すも園田が冷静にキャッチ。25分にも冨山が左から入れたFKは高橋が懸命にクリア。この前後には右に新藤貴輝(3年・フレンドリー)、左に菅屋拓未(3年・POMBA立川FC)でスタートしたサイドハーフの左右を選手間で入れ替えたものの、流れに大きな変化を加えるまでには至りません。
30分は再び成立に決定的なチャンス。中盤でボールを受けた大野は、少し時間を創りながら縦へ浮き球のスルーパスをフワリ。ここにダイアゴナルランで走り込んだのはまたしても高橋。このシュートはクロスバーを越えてしまい、宮内監督も「アイツの課題はああいうのを決められるかどうかなんですよ」と苦笑いしましたが、渡辺が関一に与える"斜め"の脅威。34分には関一も根本のドリブルでFKを獲得したものの、ゴールまで約25mの距離から冨山が直接狙ったキックは園田がパンチングで回避し、最終的にはオフサイドに。「監督からも『前半は良かった』と言われましたし、自分たちのやりたかった裏のスペースを取ることもできたので良かったと思います」と矢田部。前半の40分間は成立が2点のアドバンテージを握って、ハーフタイムに入りました。


後半はスタートから両チームに交替が。関一は林に替えて、準々決勝の東京朝鮮戦で2ゴールを叩き出した堤をこのタイミングで送り出し、菅屋と石井をドイスボランチに並べ、左サイドは根本と堤のレフティコンビを縦に配し、冨山を1.5列目に上げて整えた反撃態勢。一方の成立は右SBの中能健人(3年・成立ゼブラFC)を下げて、鈴木亮祐(3年・AZ'86東京青梅)を右SHとして投入。右SHだった萩原が左SBへ、左SBだった西羽が右SBにそれぞれスライドして、残された40分間に向かいます。
41分は関一。右サイドを運んだ新藤はクロスを上げ切り、こぼれに反応した小山のシュートは勢いなく山口にキャッチされましたが、まずは追撃弾への意欲を打ち出すと、44分にも右サイドでチャンス創出。SBの佐藤大斗(3年・FC杉野)がDFの裏へスローインを投げ込み、走った新藤のクロスに重田快(2年・バンデリージャ横浜)が合わせたシュートも山口がキャッチしたものの、明らかに前半より活性化してきた関一の"右"。
"左"の穴を感じた成立の修正はピッチ内で。すぐさま選手同士で話し合い、西羽を再び左SBに戻しつつ、右SBには鈴木亮祐を1列落とし、萩原は元々配されていた右SHへ。45分に根本の左FKがこぼれ、新藤が枠の右へミドルを外す関一の手数を経て、宮内監督も46分に先制弾の渡辺と金田夏輝(3年・成立ゼブラFC)をスイッチさせ、金田を右SBへ、鈴木亮祐を右SHへ、萩原を左SHへ配置転換させてバランスの再向上に着手します。
それでも止まらない関一のラッシュ。47分に右からエリア内へ潜った重田のシュートは園田がキャッチ。49分には根本のパスから重田が左サイドをえぐって折り返し、DFのクリアを粘って収めつつ打ち切った冨山のシュートは、戻った竹本が決死のブロック。50分に左サイド、ゴールまで25m弱の位置から根本が直接枠へ収めたFKは園田がキャッチ。52分に右サイドを単騎で運んだ石井のシュートは枠の右へ。「10番がボールを持ってサイドに散らした時に、両サイドバックと両サイドハーフに速い選手が多くて、そこで崩された時に中への入りも上手いですし、中央突破も相手の5番の選手が上手かったので、そこはてこずりましたね」と矢田部。攻勢を強める江戸川のカナリア軍団。
「前半は『回させている』という意識が結構強いと思うんだけど、後半は『回されている。ヤバいな、ヤバいな』という感じだったんじゃないですか」と話した宮内監督は55分に3人目の交替を決断。大野を下げて森田裕也(3年・愛媛FC新居浜JY)をピッチヘ解き放ち、アンカーに小山をどっしり聳えさせ、最前線には森田を置いて、その間に右から鈴木亮祐、鈴木龍之介、竹本、萩原が並ぶ4-1-4-1に近い布陣で、守備時の各々の役割を明確に。57分には森田が山口にキャッチを強いるミドルを放ちましたが、これが成立にとっては後半のファーストシュート。残された時間は20分と少し。押し切れるか。それとも凌ぎ切れるか。
64分は関一。中盤でのパスカットから、右へ流れながら冨山が放ったミドルはクロスバーにハードヒット。66分に小野貴裕監督は2人目の交替を。新藤に替えて村井柊斗(2年・FC多摩)を最前線に送り込み、重田は右SHへ移って最後の勝負に。72分も関一。重田が粘って粘って左へラストパスを送るも、村井のシュートはヒットせずに枠の左へ。74分も関一。右から中央へ、中央から左へ1人でボールを持ち出し、粘り腰で狙った堤のシュートは「高校の公式戦では今日初めてセンターバックをやりましたけど、前々から『センターバックで行くかもしれない』というのは言われ続けていたので、準備はできていました」と語る矢田部が体でブロック。その矢田部と長草優之(3年・鹿島アントラーズつくばJY)で組んだCBコンビを中心に粘る成立。いよいよゲームは最後の5分間とアディショナルタイムへ。
77分も関一。鈴木友也が左へ振り分け、根本のクロスへニアに突っ込んだ重田のヘディングはわずかに枠の左へ。78分も関一。ここも左サイドをドリブルで運んだ鈴木友也を起点に、堤のアーリークロスに頭で合わせた重田のフィニッシュはクロスバーを直撃。79分も関一。左サイドで堤が後方へ戻し、根本のクロスをニアで当てた村井のヘディングが枠の左へ外れると、これがこのゲームのラストシュート。「前日の練習から成立のサッカーじゃないことも徹底してやってきたので、今日はこの試合がベストなんじゃないかなと思います」と矢田部も話したゼブラ軍団の粘り勝ち。成立が関東大会の出場権を獲得する結果となりました。


少し前述したように成立はこの試合へ臨むに当たって、「たぶん前から行っていたら体力が続く時は続いたと思うんですけど、もうなかなかボールを奪うだけだと難しいと。だから、ゴールを守るということと、ボールを奪うということを区別して、ちょっと割り切ってボールを奪うんじゃなくてゴールを守ろうという所を意識した」と宮内監督。多少自分たちのスタイルを捨ててでも、勝つことを1つの目的として戦った中で、見事にその目的を達成。公式戦では初のCBとして挑んだ試合で完封勝利に貢献した矢田部も「耐える時間も長かったですけど、みんなで一丸となってやれたのでそれは良かったと思います」と一定の手応えを口にしていました。「このゲームをこのタイミングで経験できるというのは、非常に良かったなと思います。『こういう風に守ればこういう良い所があるんだ』とか、『でも、ボールを取った後にゴールが遠いな』『そうするとやっぱりスプリントするヤツがいないとダメだな』『前でボールを奪ったらショートカウンターでゴールが近いな』とか、そのへんを今日から勉強できていると良いんですけどね」と宮内監督も話した通り、今日のような勝利を得ることで、彼らのようなスタイルのチームに今後どういう変化が起きていくのかは非常に楽しみな所。まずは関東大会の舞台でも大いに躍動してきて欲しいと思います。      土屋

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