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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
昨年のインターハイでも全国を懸けて戦った両者が再会する好カード。関東第一と東京朝鮮が激突する関東大会予選準々決勝は駒沢第2球技場です。
ディフェンディングチャンピオンとして臨むT1リーグは、初戦こそFC東京U-18(B)に敗れたものの、以降は4試合で13ゴールを奪うなど、攻撃陣が好調をキープして4連勝。今シーズンも各校の監督から非常に高い評価を得ている関東第一。こちらも連覇を狙う関東大会予選は、初戦で日体荏原を11-0という衝撃のスコアで退けると、いきなり対峙した國學院久我山とのビッグマッチも、冨山大輔(3年・FC習志野)と重田快(2年・バンデリージャ横浜)のゴールで2-0と制してこのステージへ。公式戦7連勝とベスト4進出を同時に狙います。
T2リーグはいきなりの開幕6連勝と猛烈なスタートダッシュに成功。「今年は本当に良いメンバーが揃っているので、全国に行かないとダメだと思います」というキャプテンのリャン・ヒョンジュ(3年・大宮アルディージャJY)の言葉にも頷ける実力を有している東京朝鮮。今大会は初戦こそ創価相手に押し込み続けながら、2-1というスコア上では辛勝を余儀なくされたものの、2回戦では選手権予選のリターンマッチとなった都立日野台相手に前半だけで5ゴールを奪って快勝。前回王者をここで破ることで、今シーズンの実力を都内に示したい80分間に挑みます。駒沢は徐々に雨と風が強まっていく観戦者には厳しいコンディション。注目の一戦は関一のキックオフでスタートしました。
立ち上がりにセットプレーからチャンスを窺ったのは東京朝鮮。4分に右からレフティのクォン・ジュンソク(3年・山梨学院高)が蹴ったFKはDFのクリアに遭いましたが、11分には左からキム・ソンホ(3年・東京朝鮮第五中)が入れた左CKがこぼれ、CBのキム・テウ(3年・西東京朝鮮第一中)が叩いたシュートはDFに当たってクロスバーの上へ。13分にもSBのハン・チュンヒョン(3年・東京朝鮮中)が絡んで獲得した右CKをクォン・ジュンソクが蹴り入れ、ファーで合わせたキム・セヨン(3年・東京朝鮮中)のシュートはやや弱く、関一のGK内野将大(3年・ジェフユナイテッド千葉U-15)がキャッチしたものの、まずは東京朝鮮が手数を繰り出します。
14分はまたも東京朝鮮。最終ラインからキム・テウがフィードを送り、少しルーズになったボールを収めて打ったリャン・ヒョンジュのシュートは枠の右へ。16分は関一のファーストシュート。左SBの根本佑(3年・シュートJY FC)を起点に、重田、堤優太(3年・FCトッカーノ)とスムーズにパスが繋がり、3列目から飛び出した景山海斗(3年・FC.GLORIA)のシュートは左ポストをかすめて枠を外れましたが、らしいパスワークから決定機を。19分も関一。景山が右へ振り分け、SBの佐藤大斗(3年・FC杉野)が縦に付けたボールを新藤貴輝(3年・フレンドリー)はクロスまで持ち込み、シュートには至らなかったものの、「天候を見ていて守備を安定させた方が良さそうかなと思って、相手の高さのアドバンテージをなくしたくて景山にした」と小野貴裕監督も守備面を考慮して起用した183センチのボランチが、アグレッシブに打ち出す攻撃的な姿勢。
27分も関一に決定的なシーン。堤が左へ流したボールを、上がってきた根本はGKとDFラインの間へ高速で通す絶妙なグラウンダークロス。新藤のシュートは東京朝鮮のGKチュウ・サンホン(2年・神奈川朝鮮中)がファインセーブで回避したものの、「あれは練習しています」と堤も話す形からチャンスを創ると、30分も関一。右から新藤がここもグラウンダーで中へ入れたクロスを、重田がエリア内で収め掛けたボールはカン・ガンホン(3年・東京朝鮮中)が素晴らしいタックルで回避しましたが、ジワジワと押し込む江戸川のカナリア軍団。
歓喜を呼び込んだのは10番の献身。32分に果敢なチェイスが実り、高い位置で相手ボールを奪った冨山はそのままエリア内へ侵入すると、GKとの1対1も冷静に右スミのゴールネットへボールを送り届けます。「相手が大きいモーションになったら取りに行けるように、ちゃんと寄せられる距離感にさせておいた」(小野監督)というチームとしての狙いもハマった格好ですが、何よりその指揮官も「去年は前に点を取ってくれるヤツがいたけど、今年は自分でも点を取りに行かないといけないと自覚していると思う」と話す冨山のゴールに対する意欲がきっちり結果に。関一が1点のリードを手にしました。
完璧な展開から生まれた追加点はわずかに2分後。34分に「左利きなので空いた内側に入って行った」堤は、「ちょっとパスミスだったんですけど」右サイドへ。ここに開いていた石井賢哉(3年・Wings U-15)がやはりGKとDFラインの間に完璧なグラウンダーを流し込むと、突っ込んだ重田のスライディングシュートはゴールネットへ飛び込みます。「凄く伸びてきていて賢くなってきている」と指揮官も評価するボランチのアシストから、ゴール量産中のストライカーが今日も確実に一仕事。関一が2点のリードを手にして、最初の40分間は終了しました。
前半の内になかなかチャンスに絡めなかった1トップのパク・チャンフン(3年・第一学院高)とリ・ヨンギ(3年・東京朝鮮中)を入れ替え、そのリ・ヨンギを左SBへ送り込み、中盤はドイスボランチにクォン・ジョンソクとキム・ソンホ、右にリ・トンソン(3年・東京朝鮮第五中)、左にカン・ガンホンを配し、前線はリャン・ヒョンジュとチョン・リョンホ(3年・埼玉朝鮮中)を並べる4-4-2に移行して反撃態勢を整えた東京朝鮮ですが、頼みのリャン・ヒョンジュまでボールを入れられず、荒天模様の天候を差し引いても持ち味のダイナミックなサイドチェンジや、中央へのクサビから始まるコンビネーションを後半になっても繰り出せません。
すると、次の得点を記録したのも関一。50分に相手陣内でボールを奪った堤は重心の低いドリブルスタート。「ボールを持った瞬間に相手のCBが離れていて、中央が空いていたので自分の持ち味のスピードを生かして」中央をそのまま単騎で切り裂くと、GKとの1対1も「右に重心を掛けて左に蹴りました」という冷静さでゴールネットへボールを流し込みます。「スタートで出られたり出られなかったりというのがあるので、たぶん悔しさも持っていると思う」と小野監督の言葉を受け、「なかなかスタートでは出られなかったんですけど、今日は出られたので強気に戦おうとは思っていました」と話した7番の"マラドーナ"ゴール。点差は3点に広がりました。
小さくないビハインドを追い掛ける東京朝鮮は、52分に2枚目のカードとしてキム・ファンジュ(3年・東京朝鮮中)を送り込みましたが、鳴りやまないカナリア軍団のハーモニー。53分に左へ展開した流れから、ポジションを移していた新藤がここもグラウンダーでクロスを蹴り込むと、DFが掻き出し切れずにこぼれたボールへ突っ込んだのは「いつもクロス練習をしている中で、3人目は遅れて入って行くということをやっているので、詰めていくことを意識していました」という堤。試合前にメッシの動画を見てきたというレフティが堂々のドッピエッタ。スコアは4-0。意外な大差が付いてしまいました。
大きなリードを奪った関一は55分に1人目の交替。4点目に絡むなどサイドで存在感を発揮した新藤に替えて、林健太(3年・FC.VIDA)を左SHへ投入。60分には東京朝鮮もチョン・リョンホが左へ流し、走ったリャン・ヒョンジュが縦への突破からクロスを上げるも、きっちり付いて行った関一のCB石島春輔(3年・JSC CHIBA)が力強くブロック。その左CKをキム・ソンホが蹴ったボールもシュートには繋がらず。変わらないゲームリズム。
63分は関一。「たぶん体が去年より少し強くなったんですよ。去年の華奢な感じがなくなったというか」と指揮官も言及する冨山が、マーカーを腕でしっかりブロックしながら極上スルーパス。数十秒前に重田と交替でピッチへ入っていた村井柊斗(2年・FC多摩)のシュートはわずかに枠の右へ外れましたが、惜しいシーンを創出すると2分後にも決定機。ここも冨山が中央をドリブルで運んで左へスルーパスを送り、林のネットを揺らしたシュートはオフサイドを取られて幻のゴールとなりましたが、10番が見せ続けるチームキャプテンとしての自覚。
65分は関一に3人目の交替。CBの石島を下げて、立石爽馬(3年・フレンドリー)を送り込み、これでCBは抜群の安定感を誇っていた今日のゲームキャプテン鈴木友也(3年・VIVAIO船橋)と立石の副キャプテンコンビに。少し全体のブロックがお互いにほどけてきた中でも、カウンターをちらつかせながら関一が確実に進めていく時計の針。
東京朝鮮も意地の一発。キム・ソンホとピョン・ヨンジュ(3年・西東京朝鮮第一中)を入れ替え、リャン・ヒョンジュとクォン・ジュンソクの2トップ気味で最後の攻勢に打って出た1分後の78分。相手GKのキックミスをかっさらったリ・トンソンは、そのままドリブルでエリア内まで持ち込むと落ち着いてフィニッシュ。左スミへ向かったボールはゴールネットへ到達します。このゲームに関しては本来の実力を出し切れなかった東京朝鮮も、最終盤に1点を返しましたが反撃もここまで。最後は堤と矢越隆晟(3年・三菱養和調布JY)のスイッチでゲームを締めた関一に凱歌。前回王者がその強さを見せつける格好で関東大会出場権獲得に王手を懸ける結果となりました。
「今日のゲーム前には今までの中でも一番言ったことは少なくて、最小限のことだけ言いました」と話した小野監督。なぜなら「あっちも大勝した後ですし、こっちも山を越えた後で、このゲームは一番曖昧なゲームになりがちだったので、そういうメンタルコントロールだけして、あとは思い切りやれるメンバーを使ったという感じ」だったからとのこと。そのゲームでも出場したメンバーが思い切ったプレーを披露し続けながら、これだけの内容と結果を引き寄せられるあたりに、今シーズンの関一の強さが良く現れているように感じました。ドッピエッタで今日の主役を張った堤も「今の目的は選手層を厚くするという所なので、誰が出ても戦えるチームができてきているかなと思います」と語った通り、今のチームには指揮官がシチュエーションを見極めた上で、信頼を持って起用できる選手たちが多数台頭中。ポジティブな意味でレギュラーの決まっていない彼らのチーム力は、試合で得られる結果と比例して着実に上がり続けているようです。 土屋
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