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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
共に2戦無敗で迎える序盤の首位攻防戦。2連勝のFC東京U-18(B)と1勝1分けの國學院久我山が激突するサースデイナイトマッチは東京ガス武蔵野苑多目的グラウンド、"小平グラウンド"です。
開幕戦では昨年のインターハイで全国4強に入った関東第一を2-0と退け、2節でも名門・帝京にやはり2-0で競り勝ち、昇格組ながらいきなりの2連勝スタートとなったFC東京U-18(B)。開幕節を終えた直後に「正直勝った負けたは他のチームのレベルもあるのでわからないですけど、言えるのはもっともっと上手くならないと勝てないというリーグなので、絶対選手にとってやりがいはあるのかなと思います」と話したのは、今シーズンからU-18を担当することになった中村忠コーチ。プレミア、ひいてはJ3というステージを見据えた選手たちは、自らのレベルアップと勝利という二兎をこのリーグで貪欲に求め続けます。
昨シーズンは冬の全国で大ブレイク。最後はファイナルで東福岡に屈したものの、準優勝という素晴らしい結果を選手権で残してみせた國學院久我山。この日は欠場となったものの、10番を背負って前線でチームを牽引した澁谷雅也(2年・ジェファFC)、中盤で存在感を発揮した知久航介(2年・浦和レッズJY)や名倉巧(2年・FC東京U-15深川)、1年生ながらCBで奮闘した上加世田達也(1年・Forza'02)など、センターラインには主力もそのまま残り、今シーズンの目標は明確。T1でも開幕戦こそ実践学園と引き分けましたが、2試合目となった東京武蔵野シティFC U-18戦では3ゴールを奪って初勝利を記録。「選手権で決勝に行ったのでそういう見方をされるんですけど、一歩一歩チャレンジャーとして、挑戦するために1つ1つ積み重ねをしようと言っている」と清水恭孝監督が語ったように、まずはこのT1リーグでチームの土台作りを着々と進めている最中です。会場の小平には極寒にもかかわらず、少なくないフットボール好きが大集合。楽しみな90分間は久我山のキックオフでスタートしました。
ファーストシュートは3分の久我山。名倉のパスを受けた鵜生川治臣(2年・前橋JY)は左足を強振。ボールはわずかに枠の左へ逸れたものの、まずは機先を制すると、11分にも久我山はやはり名倉のパスから、安藤謙生(2年・横浜F・マリノスJY)が右に持ち出しながら枠内シュート。ここは東京のGK高瀬和楠(2年・FC東京U-15深川)がキャッチしましたが、アウェイチームが続けてシュートを繰り出します。
ただ、少しずつペースを手繰り寄せたのは東京サイド。T1でも抜群の存在感を放っている小林真鷹(1年・FC東京U-15むさし)と品田愛斗(1年・FC東京U-15深川)のドイスボランチを中心に、ボールを左右に動かしながらジワジワと攻勢に。22分に右から品田が蹴ったFKはDFのクリアに遭いましたが、やはり22分にはバイタルでうまくボールを受けた鈴木郁也(2年・FC東京U-15深川)が、久我山のGK平田周(1年・FC東京U-15むさし)にキャッチを強いる枠内シュートを。23分にも杉山伶央(1年・FC東京U-15むさし)が果敢なミドルをクロスバーの上へ。攻勢が結び付くフィニッシュ。
24分も東京。オーバーラップしてきたSBの荒川滉貴(1年・FC東京U-15深川)が左サイドをえぐって折り返し、小林幹(1年・FC東京U-15むさし)が放ったシュートは平田がキャッチ。26分は久我山。右に開いた安藤がクロスを上げ切ると、こぼれに反応した名倉の左足シュートはDFがきっちり寄せてブロック。28分も久我山。左からSBの松本雄太(1年・成立ゼブラ)が蹴り込んだFKはDFがクリア。手数はお互い取り合う中でも、「相手が上手くて攻め込まれるシーンが多かった」と名倉も口にした通り、全体の流れはやや東京に。
すると、先にスコアを動かしたのはホームチーム。30分に左サイドで獲得したCKを品田がニアへ蹴り入れると、ここに突っ込んだ篠原新汰(1年・FC東京U-15深川)はドンピシャヘッド。ボールはゴールネットへ鮮やかに吸い込まれます。1年生ながらDFラインをきっちり統率しているCBが攻撃面でも見事な成果を。東京がセットプレーから1点のリードを手にしました。
すかさずやり返したのは古巣対決に燃えるファンタジスタ。35分に中央でボールを持った名倉は「チームとしてシュートがなかったし、点を取れる雰囲気がなかったので」少し運ぶと、ミドルレンジから右足一閃。左スミギリギリを捉えたボールは、そのままゴールネットへ吸い込まれます。「いつもだったらもう1個手間が掛かりそうな所を良く迷わず振っていたんじゃないかなと思います」と清水監督が評価すれば、「個人的には上手い選手じゃなくて怖い選手になっていきたいので、そういう意味で結果を出せる選手になりたいと思っている」と名倉も決意を露わに。あっという間にスコアは振り出しに引き戻されました。
俄かに動き出したゲーム。38分は東京。最終ラインから篠原がシンプルに左へフィードを送ると、左へ流れながら鈴木郁也が打ち切ったシュートは豪快にゴールネットへ突き刺さります。中村コーチも関東第一戦後に「彼に関してはこっちで結果を出すのは当たり前で、どんどんプレミアで結果を出してもらいたいという選手」と評する鈴木郁也が、モノの違いを見せ付けるようなゴラッソで再び東京が1点リードも、際立つ久我山の反発力はその1分後。
39分にハーフウェーライン付近でボールを持った名倉は、食らい付くマーカーをハンドオフとショルダーで吹き飛ばし、視界を確保するとすかさずスルーパス。そのこぼれをかっさらった鵜生川が枠内へ収めたシュートは、右スミのゴールネットへきっちり収まります。鵜生川の嗅覚もさることながら、特筆すべきは技術に体の強さも併せ持つ名倉のチャンスメイク。44分に東京がキャプテンマークを巻く吉村寿輝(2年・鹿児島国分中)のクロスから、小林幹が打ち切ったボレーも平田がファインキャッチで応酬。最後の15分間で点の取り合いとなった前半は、2-2でハーフタイムに入りました。
前半の終盤に三富嵩大(1年・横河武蔵野FC JY)と戸田佳佑(2年・FC多摩)を入れ替えていた久我山は、後半のスタートからアグレッシブなアタックを。51分にはオフェンシブな中盤から左ウイングにスライドした鵜生川のパスを受け、安藤が抜け出し掛けるも飛び出した高瀬ががっちりキャッチ。53分にも安藤がミドルを枠の右へ外すと、直後にも松本のクロスから1人かわした名倉のシュートはDFのブロックに阻まれるも、打ち出しつつある久我山らしさ。
54分に輝いたのは上州の星。東京の最終ラインでパスが乱れ、左サイドで待っていた鵜生川が左足を振り抜くと、送り出されたボールは左スミのゴールネットを激しく揺さぶります。「インターハイの時は出ているんですけど、相変わらず怒られることが多くて、そこから選手権も一切出していなかった」と言及した清水監督も続けて「良いキックを持っているので、そういった意味ではテクニックはまだまだですけど、違ったカラーの選手かなと思っています」と認めたキックで55番が一仕事。鵜生川のドッピエッタが飛び出し、とうとう久我山がスコアを引っ繰り返しました。
追い掛ける展開となった東京。61分にルーズボールを収めた鈴木郁也の強烈なシュートは、平田がファインセーブで弾き出し、詰めた小林幹もシュートは打ち切れず。66分に吉村のオーバーラップで獲得した右CKを品田が放り込むも、「今は最終ラインが全員新2年生で中心を任されているので、自分が引っ張っていこうという想いはある」という上加世田が大きくクリアしたシーンを経て、ベンチは67分に1人目の交替として好パフォーマンスを続けていた鈴木郁也と原大智(1年・FC東京U-15むさし)をスイッチ。70分には小林真鷹がミドルを放つも、ボールはクロスバーの上へ。前述したように右から川野裕大(1年・横浜F・マリノスJY追浜)、澤田雄大(1年・FC多摩)、上加世田、松本で組んだ4バックに平田も含めた新2年生守備陣が、時間を追うごとに安定感を発揮し始めた久我山が1点のリードを保ったまま、ゲームはいよいよ終盤へ。
76分には久我山に久々のシュート。「ここに来て抜群の動きを見せてくれている」と指揮官も称賛する知久が右へ振り分け、前半から推進力を見せていた三橋智哉(2年・大宮アルディージャJY)が狙ったミドルはクロスバーの上へ。78分に東京は2人目の交替として杉山と吉田和拓(1年・FC東京U-15深川)を入れ替えると、その直後に1本のフィードで右サイドを抜け出した吉田は左足で枠内シュートを放つも、ここは名倉同様に古巣対決へ気合の入る平田がファインセーブで回避。79分には久我山が三橋と加藤玲児(2年・國學院久我山中)を、84分には東京も吹野竜司(2年・FC東京U-15深川)と長谷川大貴(1年・FC東京U-15深川)を、さらに久我山は84分にも殊勲の2ゴールをマークした鵜生川と内田祐紀弘(1年・Forza'02)をそれぞれ入れ替え、向かうは最後の5分間とアディショナルタイム。
負けたくない東京のラッシュ。85分に小林真鷹のパスから小林幹が打ち切ったミドルは枠の右へ。86分にも右のハイサイドへ潜った吉田がルーズを収め、自ら狙ったミドルはクロスバーの上へ。87分はセットプレーのチャンス。右から品田が蹴ったFKは平田がパンチングで掻き出し、再び品田が入れた右クロスに長谷川光基がバイシクル気味のボレーで飛び付くも、平田が冷静にキャッチ。89分に久我山は3人目の交替。ウイングに上がっていた松本を下げて、金田直輝(2年・ジェファFC)を送り込み、取り掛かるゲームクローズ。
90+2分は東京。小林真鷹が左へスルーパスを通し、上がってきた荒川の思い切ったミドルは枠の左へ。久我山は90+4分に山口隼介(2年・東急SレイエスFC)を4枚目のカードとしてピッチヘ解き放ち、勝利への念押しを。90+4分も東京。長谷川光基が狙ったスルーパスから、小林幹が抜け出してシュートまで持ち込みましたが、「入学してからの1年間も、新チームになってからも、フットワークは"三栖トレ"でかなりやっているので、そういう部分が守備に生きていると思います」と話した上加世田がスムーズなステップから的確なブロックで失点を阻止。その右CKを品田が蹴り入れ、ニアで吉田が触ったボールは混戦を生み出すも、久我山DFが何とかクリアすると、しばらくして小平に鳴り響いたタイムアップのホイッスル。「FC東京さんが非常に良いチームでしたので、苦しくなることは覚悟していたんですけど、思った以上に選手たちが良く頑張ってくれましたし、悪い面よりも良い面が出たかなと思います」と清水監督も一定の評価を口にした久我山が粘り強く逆転勝利を収め、勝ち点3を上積みする結果となりました。
「正直数試合やっていて出来は苦しいなと。練習をやっていてもゲームをやっていても、3年生の抜けた穴はかなり大きいかなという感じだったのでどうかなと思っていた」と清水監督も話した久我山は見事な逆転勝ち。前述した通り、指揮官もこのゲームに関しては手応えを掴んだ様子でした。個人に目を移すと名倉や知久はもちろん、平田と上加世田の1年生コンビは全国で自信を付けたのがはっきり窺えるパフォーマンス。とりわけ上加世田は「3年生の中で1年生1人で頑張っていれば良かったのが、一気にリーダーになっちゃったので、そこの負担は大きいなという気はします」と清水監督も言及する中で、「声を出すことは野村(京平)君からも言われていたので、そういう部分はやっていかないといけないと思っている」とディフェンスリーダーとしての自覚も十分。水際で粘れる彼の存在は、まだ立ち上がったばかりのチームに大きな安心感をもたらしているように感じました。「今は何せトライをして、負けても良いじゃないかと。リーグというのはずっと勝ち続けないとチャンピオンになれない訳で、それを初めから取るのはそんなに簡単じゃないと思っています。今はやれるチャレンジをして、失敗したらそれをいかに受け止めてインターハイ、選手権に向けて自分たちをどれだけ見つめて行けるかが大事だと思うので、変にうまく行っちゃっていて何となくできちゃっているよりはボロが出るのも良いと思いますし、彼らは『あまり良いゲームじゃないな』という評価はきちんとしていると思うので、そういう意味ではそんなに心配していないんですけどね」と先を見据えながら現状を的確に見つめる清水監督の下、今シーズンの久我山がこれからどういう"らしさ"を身に付けていくのかは非常に楽しみです。
連勝は2でストップした東京でしたが、この日も難敵の久我山相手に2度のリードを奪うなど、その実力は十二分に誇示。最後は逆転負けという結果を突き付けられてしまったものの、個人の特徴を最大限に生かしつつ、チームとしての完成度もこの3試合で非常に高まっている印象もあり、T1リーグに新たな旋風を巻き起こしてくれていることは疑いようがありません。実は彼らの次節は4月というスケジュールになっており、その頃には高円宮杯プレミアリーグEASTも開幕を迎え、新1年生も加入してくるため、おそらくこのメンバーでT1を戦うのはこれが最後のゲーム。それゆえに際立ったパフォーマンスを披露した、この時期のFC東京U-18(B)を目撃できたことは、ある意味で非常に幸運なことだったのかなと。当然これから新たな戦力が台頭してくるであろうチームの成長が楽しみだということは大前提として、2016年のT1リーグを3試合戦ったこのチームが、しっかりと記憶にとどめておきたい好チームだったことは記しておきたいと思います。 土屋
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