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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年03月14日

JFL1st-第2節 東京武蔵野シティFC×ホンダロックSC@武蔵野

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0313musashino.jpg百年構想クラブとなった新生・武蔵野が迎える船出の時。東京武蔵野シティFCがJFLの雄・ホンダロックSCをホームで待ち受ける一戦は武蔵野市立武蔵野陸上競技場です。
横河電機サッカー部時代から優に70年を超える歴史を有し、ノンプロとしてJFLや天皇杯で結果を残してきたチームに訪れた転換期。昨年末にJリーグ入りを目指すことを明言すると、百年構想クラブにも認定。クラブ名も横河武蔵野FCから変更し、新たな歴史を刻み始めた東京武蔵野シティFC。「周りから見られる目も変わりましたし、責任というのも感じるようになりましたし、そういう意味では選手にも良い刺激になっているんじゃないかなと思いますね」と話すのは、在籍9年目となる守護神の飯塚渉(30・流通経済大)。リーグ開幕戦ではアウェイでヴェルスパ大分と引き分けているだけに、このホーム開幕戦で勝利を収め、今後へ弾みを付けたい90分間へ向かいます。
2度目の昇格を果たしたJFLで戦うシーズンも今年で7シーズン目。やや下降し掛けていた順位もここ2シーズンは10位に9位と持ち直し、全国の舞台で確かな存在感を発揮しているホンダロックSC。コーチから昇格し、今シーズンから指揮を執る谷口研二監督は「もう11月からチームは始動していて、選手もほとんど去年から残っているメンバーなので、戦術的には8割くらい固まっている状況ですね」と現状にも一定の手応えを。「今までリーグ戦で8位以上に行ったことがないチームなので、まずは5位ですね」とその指揮官も語った目標に近付くためにも、FCマルヤス岡崎を1-0で下した開幕戦勝利の余勢を駆って、連勝でスタートダッシュを切りたい所です。気温10.8度と肌寒さの残る会場には、それでも891人のサッカーを愛する観衆が集結。楽しみなゲームはホンダロックのキックオフでスタートしました。


先に攻勢に打って出たのは東京武蔵野。2分に自らが蹴ったFKの流れから、岩田啓佑(29・早稲田大)が左クロスを放り込み、東郷太樹(22・東京ガス深川)が繋いだボールを金守貴紀(30・早稲田大)は思い切ってミドル。ボールは枠の右へ外れましたが、まずは「周りの人の期待という部分が変わったなというのはありますね」と話すキャプテンがファーストシュートを。4分にはホンダロックも左サイドで獲得したFKを諏訪園良平(28・宮崎産業経営大)が蹴り込むも、ニアで林俊介(30・東京学芸大)がきっちりクリア。10分は東京武蔵野のカウンター。本田圭佑(24・平成国際大)を起点に黒須大輔(24・SP京都FC)が左へ付け、石原幸司(23・明治大)のシュートはゴール左へ外れたものの、「いかに自分たちが高い位置でボールを奪って、3トップで前に行くかという所を狙っていた」と金守も言及した3トップの連携から、狙い通りのフィニッシュを取り切ります。
12分も東京武蔵野。左右に揺さぶるアタックから本田が頭で折り返したボールを、黒須は左足ミドルまで持ち込むもクロスバーの上へ。15分も東京武蔵野。本田が右へ流したボールを、石原は丁寧にクロス、ファーに走り込んだ寺島はるひ(22・流経大ドラゴンズ龍ケ崎)が頭で落とし、飛び込んだ本田はシュートを打ち切れず、ホンダロックのGK熊野一樹(25・ブラウブリッツ秋田)が何とかキャッチしたものの、「去年に比べたらだいぶ攻撃のパターンというのが増えてきた」と飯塚も認めた東京武蔵野の続く攻勢。
さて、「武蔵野さんの方が前のスピードがあって個の能力が高かったので、まずはしっかり守備のリスク管理と個で負けないという所が大事でした」と谷口監督も話したホンダロックは、ドイスボランチの諏訪園と山田貴文(23・大阪体育大)を中心に繋ぐ意識は垣間見えるものの、なかなかそれが手数に繋がらず。「中盤で付けて前向きでプレーをさせたかったんですけど、やっぱりなかなかできなかった」(谷口監督)こともあり、守備の時間が長くなってしまった中でファーストチャンスはいきなりの決定機。19分に右から諏訪園が蹴り込んだFKを、宮路洋輔(28・アビスパ福岡)はドンピシャヘッド。ボールはクロスバーに直撃し、先制点とは行かなかったものの、「僕は後ろからチームをまとめるという形で、チームが勝つために頑張りたいと思います」語るディフェンスリーダーの一撃でわずかに変わったゲームリズム。
見逃さなかった勝負の潮目。22分の歓喜はアウェイチーム。中央でボールを持った諏訪園が縦パスでスイッチを入れると、受けた山田はダイレクトではたき、市原大嗣(28・カマタマーレ讃岐)からのリターンをそのままシュート。DFに当たったボールはGKの逆を突く格好になり、左スミのゴールネットへ吸い込まれます。劣勢の時間が続いた中での先制点に「あのチャンスを決められたのは気持ち的にも大きかったですね」と谷口監督。ホンダロックが1点のリードを手にしました。
決して流れが悪くなかったものの、追い掛ける展開となった東京武蔵野。「先制以降はちょっと全体のラインが引き出したので、『慌てるな』とか、『1個パスを付けろ』と言っていたんですけど、判断するのが難しくてただ前に蹴るような状態だった」と谷口監督が振り返り、「どうしても相手の選手に高い位置を取られたことで、3バックのサイドの2人が引いてしまった」と宮路も口にしたホンダロックが意図せず引いてしまったような形になった中で、逆に金守も「引かれるとその後にどう崩していくかというのは1つの課題」と認めたように、ボールこそ握りながらテンポアップのタイミングを探しあぐねる展開に。35分にエリアのすぐ外でこぼれを収めた石原のシュートもDFがきっちりブロック。変わらないスコアボードの数字。
魅せたのは10番を背負う武蔵野の主将。36分に寺島が得意の左足で蹴り込んだCKから、ニアで1枚潰れたこぼれを拾ったのは金守。「人がいっぱいいたので、とりあえず『当たっても良いから何か起こればいいな』と思って蹴りました」というシュートは、密集を力強く破ってゴールネットへ豪快に突き刺さります。嫌な展開になり掛けていたタイミングで、「良い感じの所にこぼれてきたので、たまたまですね(笑)」と笑う金守が貴重な同点弾。両者の点差は霧散しました。
畳み掛けるホームチーム。38分には望月湧斗(22・北陸大)を起点に、林のパスから石原がクロスを送り込み、裏にフリーで抜け出した寺島はシュートまで持ち込めなかったものの好トライ。42分にも寺島が左からレーザービームでサイドを変え、黒須のミドルは大きく枠を外れましたが、ダイナミックな展開を。45分にもビッグチャンス。寺島の右CKを熊野がパンチングで弾き出すと、石原はエリア外からノートラップボレーを枠内へ。ここは熊野がファインセーブで掻き出し、黒須が残したボールも何とか熊野がキャッチしたものの、あわや逆転というシーンに歓声と溜息の混じるスタンド。ホンダロックも45+2分には山田、諏訪園と繋いで、串間雄峰(26・福岡大)がミドルを狙うも枠の上へ。白熱の前半は1-1のまま、ハーフタイムに入りました。


後半はお互いが手数を出し合う立ち上がり。48分は東京武蔵野。黒須が高い位置でプレスに走り、奪ったボールをそのままエリア内まで運びますが、最後は良く戻った宮路がタックルで何とか回避。50分はホンダロック。右から諏訪園が蹴り込んだCKへ、ニアに飛び込んだ市原がヘディングを枠内へ収めるも、飯塚が丁寧にキャッチ。56分は東京武蔵野。右から寺島が蹴ったCKはファーまで届き、東郷が飛び込むもヘディングはヒットせずに枠の左へ。一進一退。お互いに漂うチャンスの香り。
57分の決定的なシーンはホンダロックに。左サイドでボールを持った悦田嘉彦(31・福岡経済大)は、DFラインの裏へ絶妙なフィード。抜け出した岡田峻(23・福岡大)はGKと1対1のシーンを迎えましたが、冷静な対応を見せた飯塚がファインセーブ。こぼれに詰めた市原のシュートも飯塚が連続セーブで仁王立ち。その右CKも諏訪園が入れたボールはニアで黒須がきっちりクリア。「アレを決めたら自分たちのペースに持って行けたのかなと思います」と谷口監督。絶好の得点機を生かし切れません。
「ハーフタイムに『両サイドが高い位置を取って、サイドから中盤に当てて、そこから逆サイドに展開するイメージを持って行こう』と伝えたので、そこはできていた」と感じていた谷口監督は、58分に1人目の交替を決断。決定機を逃した岡田に替えて、坂本翔(23・鹿屋体育大)をそのまま2シャドーの位置へ送り込みますが、以降は東京武蔵野が再び引き寄せたゲームリズム。63分に中央左、ゴールまで約30mの位置から岩田が直接狙ったFKはカベにヒットしたものの、65分にも幡野貴紀(21・ファジアーノ岡山ネクスト)が左へ振り分け、石原のクロスに黒須が粘ってチャンスの一歩手前まで。勢いのままに押し切りたいホームチーム。
東京武蔵野ベンチも68分に1人目の交替を。疲労の見える幡野を下げて、上田陵弥(26・FC琉球)を3バックの左へ投入し、その位置にいた東郷をボランチへスライドさせて、整える全体のバランス。76分は東京武蔵野。自らのミドルで獲得した右CKを寺島が蹴り込むも、DFが大きくクリア。78分も東京武蔵野。石原が短いパスを付け、黒須が左からカットインしながら放ったシュートは熊野がキャッチ。「なかなか点が取れなくても後ろはしっかり辛抱していた」と話したのは宮路。東京武蔵野の攻撃をホンダロックが1つずつ潰していくような流れの中で、いよいよゲームは最後の10分間へ。
突如として起こったアクシデントは81分。相手との接触で倒れた際に、山田が報復的にラフプレーを働いたというジャッジを松本大主審が下し、イエローカードを提示。62分にも1枚貰っていた山田は退場処分に。ホンダロックは残り10分余りというタイミングで、10人での戦いを余儀なくされてしまいます。この一連を受け、谷口監督は既にタッチラインで準備していた佐々木翼(22・東京農業大)を米良に替えてそのままJFLデビューとなるピッチヘ送り込み、市原と坂本を前線に残しながら、佐々木を「足元も持っていますし運動量もありますからサイドに置いて」、3-4-2の布陣で勝ち点1は死守する構えを打ち出します。
数的優位も得て、何とか逆転弾を奪いたい東京武蔵野は83分に2人目の交替を。ボランチの岩田と金子剛(32・Y.S.C.C.セカンド)を入れ替え、183センチの金子を最前線に置き、黒須をシャドーへ、本田をボランチへそれぞれ1列ずつ落とし、右WBの大山直哉(24・鹿屋体育大)をボランチヘスライドさせて最後の勝負へ。85分はホンダロックにチャンス。市原が粘って獲得した左CKを諏訪園が蹴るも、飛び付いた古垣秀晃(24・福岡教育大)のヘディングは枠の右へ。88分は東京武蔵野。本田が懸命に残し、1人外した黒須の左足シュートは熊野ががっちりキャッチ。アディショナルタイムの掲示は3分。勝ち点3か、勝ち点1か、はたまた勝ち点ゼロか。
90+2分のラストチャンスは東京武蔵野の決定機。左サイドに開いてボールをもらった金子は、スムーズな体重移動からワンフェイクで縦に持ち出し、そのまま中央へ。ここに3列目から走り込んだ本田のシュートは転がりながらきっちり枠を捉え、思わず東京武蔵野サイドに陣取っていた観衆も歓喜の声を上げましたが、密集の中でボールを掴んでいたのはGKの熊野。際どい攻防も守り切ったホンダロック。この一連の余韻でスタンドがまだざわつく中、吹き鳴らされたタイムアップのホイッスル。両者譲らず。お互いに勝ち点1ずつが振り分けられる結果となりました。


「退場者が出てからは勝ち点1で行けたらと思っていました」(谷口監督)「10人になってから残り時間も少なかったですし、まずは失点しないように守備をしっかりするということがピッチの中で統一できていたと思います」(宮路)と2人が話した通り、ホンダロックにとってみれば後半はリズムを掴み切れなかった上に数的不利も被った中で、きっちり勝ち点1を取り切ったというのは決して悪くない結果。「1人退場してさらに苦しくなりましたけど、そこで負けなかったことが今日の一番の収穫かなと思います」という宮路の言葉がチーム共通の認識という印象です。ただ、「両サイドで駆け引きしながらどこまで高い位置を取れるかと、前目は流動的に動かしながらやっていってもらいたかったんですけど、なかなかできずに苦しい展開が続きました」と指揮官も口にした攻撃面は、時折見えるスムーズなパスワークにスタイルの一端は覗かせたものの、それをフィニッシュまで昇華させていきたい所。テクニカルエリアで終始声を出し続けていた谷口監督の下、攻撃的なスタイルの構築に是非期待したいと思います。
「1点を取り切れなかったなという感じの方が強いですね。最後の決定機のような所で決められるチームが強いチームなんでしょうし、そういう所でまだまだ成長しないといけないなと思いますね」と金守も言及した東京武蔵野は、展開を考えればやや悔しいドロー決着に。それでも、「初戦に続いてまだ負けがないということは、凄く評価できる所かなと思います。ゴールが決まるか決まらないかというのは積み重ねでやっていくしかないので、そんなに悪い結果ではなかったかなとは思います」という飯塚の言葉もまた一理。この"勝ち点2"をポジティブな方向へ持って行くためにも、次のゲームが非常に大事になって来ることは間違いありません。この日のスタンドには純粋にサッカーを楽しみ、純粋に東京武蔵野を応援する観衆の方々の確かな熱量が。「こうやって今年はチームが新しく切り替わって、お客さんもたくさん来てくれたので、そういう意味では凄く勝利を見せたかった所ですけど、まだ今年は武蔵野での試合がずっと続くので、1試合でも多く勝利を見せられればまた応援に来ていただけると思いますし、頑張りたいなと思います」と話したのは飯塚。東京武蔵野が漕ぎ出した新航海時代はまだまだ始まったばかりです。        土屋

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