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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
T1開幕戦シリーズのラストゲームはT2でも鎬を削ってきた両雄の再会。都立東久留米総合と東京実業が激突する90分間は東久留米総合高校グラウンドです。
伝統の布陣とも言うべき4-4-2から舵を切った3-4-3も早々にフィットしたことで、齋藤登監督も春先から手応えを口にしていたものの、インターハイ予選は準決勝で國學院久我山にPK戦で敗退し、選手権予選もやはり準決勝で駒澤大学高に0-1と惜敗するなど、全国のステージにはあと一歩という所で届かなかった昨シーズンの都立東久留米総合。ほとんどレギュラーメンバーの入れ替わった今シーズンのここまでを、「あまりスタートが良くなかったので、1つ1つやっていこうという感じでやっています」と話したのは岡野雅也(2年・A.N.FORTE FC)。まずは新チーム初の公式戦を慣れ親しんだ校庭で迎えます。
インターハイ予選では駿台学園、実践学園とT1勢を相次いで撃破し、ベスト8まで躍進。選手権予選ではベスト8で多摩大目黒に屈したものの、T2リーグでも2位に8ポイント差を付けて優勝を勝ち獲り、いよいよT1の舞台へと乗り込んできた東京実業。「先週はトップチームを出してくれた中央学院大とやったんですけど、前半はパーフェクトに守れたので守備は守れるかなと。それをどう攻撃に繋げようかみたいな感じでゲームに来た」と片山智裕監督も語った通り、ここ最近は大学生相手に試合を重ねることで徐々にチーム状態も上向きとのこと。一定の自信を携えながらオープニングマッチへ向かいます。お馴染みの東久留米総合グラウンドには、ネットの外側に少なくない観衆がズラリ。注目の一戦は久留米のキックオフでスタートしました。
先にチャンスを掴んだのは「最初は入りが硬くなっちゃうかなと思ったんですけど、別にそんなこともなかったです」とキャプテンマークを巻く渡辺巧輝(2年・大田糀谷中)も振り返った東実。3分にはGKの増田大輝(2年・フレンドリー)がハーフウェーライン付近で得た左FKを蹴り込むと、突っ込んだ佐野百元(2年・世田谷FC)と谷口隼騎(2年・ジョカトーレFC)はシュートを打ち切れなかったものの、惜しいシーンを創出。10分にも左からレフティSBの竹内海斗(2年・川崎チャンプ)がFKを蹴り入れ、ここは久留米の右WB村上尽(2年・AZ'86東京青梅)にきっちりクリアされましたが、まずはセットプレーから相手ゴール前へ迫ります。
一方の久留米は「去年のチームも3年生中心で、自分たちはほとんど公式戦が初めてだったので結構緊張した」とゲームキャプテンの米山達也(2年・Forza'02)も認めたように、なかなか良い形でのアタックを繰り出せず。14分には高橋海地(2年・東京八王子FC JY)が右からアーリークロスを放り込み、CFの清川開(2年・FC駒沢)のフリックに飛び込んだ纐纈隆輝(2年・FCトリプレッタJY)は一歩届かず、増田がキャッチ。ファーストシュートを打ち切れません。
実際にボール自体は右から町田拓也(2年・明星中)、谷海斗(2年・HIBARI FC U-15)、三浦聖(1年・東海大菅生中)と並んだ3バックでビルドアップしていく久留米が握っているものの、「持たせていた所もありますね。ある程度スタンディングが多いということもわかっていたので、マークさえきっちり後ろではめ込んじゃえばあまり難しくないかなと思っていた」と片山監督も話したように、久留米はそこからのテンポアップがなかなかできず。23分は東実。谷口が左へ振り分け、日名悠太(2年・東急SレイエスFC)のカットインミドルはクロスバーの上へ。25分に右から日名が蹴ったFKは久留米のGK清水星那(2年・SP FUTE SC)がしっかりキャッチし、27分にまたも増田が放り込んだFKをファーで佐野が折り返すと、清水が再び好キャッチを見せましたが、セットプレーも含めて続く東実の攻勢。
とはいえ、「相手の勢いに飲まれてしまった」(米山)感のあった久留米も、今井と池尻隆人(2年・FC杉野)の中盤センターがセカンドを収め出した25分過ぎからは、少しずつ縦へのスピードアップも。29分に米山がスルーパスを狙い、走った高橋には届かなかったものの、横から中への狙いを1つ表現すると、31分には右から高橋がグラウンダーの好クロスを送り、巧みに体を使って収めた清川のシュートは増田がキャッチしましたが、ようやく流れの中からファーストシュートを記録します。
32分は東実。「3バックの外側で基点を創れていた」と片山監督も評価した日名が右サイドでボールを受け、中央へ潜りながら打ち切ったシュートは枠の左へ。33分は久留米。纐纈のドリブルで奪った左CKを高橋が蹴り込み、こぼれを叩いた町田のボレーは増田がしっかりキャッチ。39分は東実。朝日凱大(2年・LARGO.FC)が裏へ落としたボールに日名が全力で走るも、少しエリアの外へ飛び出しながら巧みに足で収めた清水がキャッチ。お互いに探り合う先制点への筋道。
44分には東実にアクシデント。「『どこでも行きます』というようなヤツ」とその運動量を指揮官も評価する谷口が、相手のタックルを受けてプレー続行が難しくなり、森翔太(2年・横浜FC鶴見JY)をそのまま1トップ下へ送り込む交替を。44分は久留米。今井凱斗(2年・世田谷桜丘中)と米山の連携でCKを獲得すると、左から高橋が蹴り入れたCKは佐野がきっちりクリア。45分も久留米。米山の右CKに村上が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。「前半は1点欲しかったですけど、自分たちのサッカーができていた」と渡辺も振り返ったように、やや東実ペースで推移した前半はスコアレスのままで45分間が終了しました。
ハーフタイムを挟むと、「みんなの緊張もだいぶなくなってきた」(米山)久留米が立ち上がりから好リズム。49分に村上が短く右に付け、大外を果敢に駆け上がった町田の素晴らしいグラウンダークロスはDFのクリアに遭ったものの、3バックの一角がチャンスメイクに顔を出し切ると、51分に今度は町田が外へ流し、村上のアーリークロスへニアに突っ込んだ清川のボレーは枠の右へ外れましたが、ワイドへ張り出し気味だった高橋がインサイドに潜ってできた右のスペースから、続けて好機を創出します。
俄かに動き出したゲーム。54分は東実の決定機。その能力に「最初で使うか、ジョーカー的に使うか」と指揮官もまだ頭を悩ませている森翔太のパスを受けた日名が右へラストパスを送ると、朝日が右足を振り抜いた強烈なシュートはクロスバー直撃。56分は久留米の左。相手の縦パスを抜群の読みでインターセプトした米山は、そのまま縦に持ち出しながらクロス。ニアで合わせた高橋のボレーは枠の左へ逸れたものの、続けて双方に生まれた崩した形のフィニッシュ。
先にスコアを動かしたのは「後半もそのままやり続ければ、いずれ点は取れると思っていた」と渡辺も話した東実。59分に七尾耕生(2年・FC駒沢)の仕掛けで獲得した左CK。日名が蹴ったキックは一旦弾き出されましたが、ファーで拾った佐野が鋭いクロスを送り込むと、中央に飛び込んだのは萩原。頭で叩き付けたボールは、バウンドしながらゴールネットへ吸い込まれます。昨年から10番を背負っていた副キャプテンの萩原が新チームの公式戦ファーストゴールを。東実が1点のアドバンテージを手にしました。
61分にも日名の右CKから萩原がヘディングをゴール左へ外したシーンを経て、齋藤監督が63分に下した決断は何と3枚替え。清川、高橋、村上の3人に替えて、内山隆弘(2年・清瀬第五中)、岡野、島村優志(1年・FC.VIDA)の3人をピッチヘ解き放ち、内山は右WBへ、岡野は右ウイングへ、島村はCFへそれぞれ配置されると、1分後の主役は「『スタメンかな』と思っていたのにベンチスタートだったので結構ショックでしたけど、やってやろうと思って入りました」と話す2分前までのベンチメンバー。
64分に左サイドへ展開したボールから、纐纈が粘って縦に持ち出しながらクロスを上げ切ると、「(纐纈が)キックフェイントを入れたタイミングでも1回入って、『タイミングが早いな』と思って動き直したらフリーになれたので、あとは突っ込んだだけ」という岡野がニアへ体を投げ出しながら合わせたダイビングヘッドは、GKを破ってゴールネットへ転がり込みます。「倒れながらでも入ったのが見えたので、メッチャ嬉しかったです」と笑った岡野はファーストタッチで貴重な一撃を。ホームの久留米がスコアを振り出しに引き戻しました。
「個が強いからスピードで上げられることもあるかなと、クロスの対応だとかそういうこともトレーニングしてきたんですけど、案の定やられちゃいましたね」と苦笑したのは片山監督。幕が上がりっぱなしの岡野劇場。65分に左から三浦が得意の左足でFKを蹴り込むと、飛び込んだ岡野のヘディングは枠の上へ外れるも、投入から3分で早くも自身2本目のシュートを。さらに69分にも中央でタメを創った島村が右へ振り分けたボールから、エリア内へ侵入した岡野は少し運んで右足一閃。ボールはGKの手を掠めてクロスバーを直撃しましたが、「『点を取りに行かないといけないから、ゴールを狙っていけ』という話をされてピッチに入った」という5番のアタッカーが、続けて3度の決定的なシーンに絡んでみせます。
「3枚替えてくるというので、『集中しろ、集中しろ』と自分たちの中で話していたんですけど、集中が欠けてしまってワンチャンスで決められてしまったという感じ」(渡辺)の中で、続けてピンチを迎えた東実は71分に2人目の交替を。七尾を下げて上原広大(2年・FC台東)を送り込み、少し崩れ掛けた中盤のバランス維持とサイドのケアに着手。73分は久留米。右サイドを抜け出した内山のクロスはDFに引っ掛かり、こぼれに反応した村上もシュートは打ち切れず。75分は久留米が左サイドで得たFK。三浦が密集を避けてマイナスに戻すと、今井はフリーで走り込みましたが、シュートはDFが懸命に体で弾き、拾った纐纈のシュートは枠の左へ。78分は東実の好アタック。上原のパスを日名はダイレクトで右へ展開し、上がってきたSBの笹森柊吾(2年・杉並FC)が入れた鋭いクロスは日名へわずかに合わなかったものの、両チームが勝ち越し弾の香りも漂わせつつ、ゲームは残り10分間とアディショナルタイムへ。
82分は久留米。内山の仕掛けでFKを獲得するも、右から三浦が入れたキックはクロスバーを越えてしまい、そのままゴールキックへ。84分も久留米。右から岡野がクロスを蹴り込み、直後にも左から今井がやはりクロスを入れるも、共に東実のCBを託された今津駿(2年・K.Z.ヴェルメリオ)が冷静にクリア。「ディフェンスは誰を軸にするのかというので2ヶ月ぐらい掛かりました」とは片山監督ですが、少し劣勢の時間帯でも今津と佐野のCBコンビは落ち着いて相手のアタックを凌ぎ続けます。
86分は東実が3人目の交替を。左SBの竹内を高田裕斗(2年・東京ベイFC U-15)にスイッチして、活性化していた相手の右サイドを抑えに掛かると、87分に増田へキャッチを強いた今井のミドルを経て、89分には4人目の交替も。最前線の朝日を赤井優太(2年・インテリオールFC)と入れ替えて最後の勝負に。90+1分は東実。日名が蹴った左CKを森翔太が頭で残すも、DFが大きくクリアすると、これがこのゲームのラストチャンス。「勝ち切れない所がまだまだ自分たちは未熟なので、ここから勝てるチームにしていきたいと思っています」(米山)「自分的には勝ちゲームだと思っていたので、しっかり勝ち点3を持ち帰りたかったですね」(渡辺)と両ゲームキャプテンも悔しさを口にした開幕戦はドロー決着。両者に勝ち点1ずつが振り分けられる結果となりました。
苦しい展開を強いられた前半から一転して、後半はだいぶ改善傾向が見られたものの、勝ち切るまでには至らなかった久留米。「前半の途中から何回か崩せて、そこから自分たちのゲームが創れたんですけど、まだまだですね。基本的な所でパスだったり、ビルドアップの所だったりがまだ全然ダメなので、そういう所が課題だと思います」と話したのは米山。それでも、最終的に都内屈指の実力を有するまでになった昨年のチームも、シーズン開幕時はビルドアップにも四苦八苦していた印象があり、それを考えれば十分に伸びしろを感じさせる90分間だったのは間違いありません。ここ2年は齋藤監督も自信を持ったチーム創りが進んでいた中でも、夏冬共に東京制覇には届かなかっただけに、「全国に行きたいという話はしている」(岡野)「全国に出るために自分たちは頑張っている」(米山)と新チームも目標は明確。久留米の今シーズンも非常に楽しみです。
「自分たちはT1も今年が初めてでチャレンジャーなので、しっかり気合いを入れてやろうと話していましたけど、空回りしていたとかはなかったです。練習の時も球際や声は激しくバチバチやっているので、そういう所が今日の試合も出たかなと思っています」と渡辺が話した通り、T1デビュー戦という緊張感など微塵も感じさせず、強豪相手に球際でも果敢なファイトを見せて勝ち点1を獲得した東実。そのT1での目標を「昇格ですよ。プリンス昇格です」と言い切った片山監督は、続けて「昇格ですけど、実際は結果ということではなくて自分たちのやることをもっと積み上げて行きたいというか、4週間ぐらい前からずっと大学生とやっていて、徐々に良くなって、今日も多少自分たちでも満足したみたいだからまた自信になったと思うので、目先のものに囚われるんじゃなくてそういうことが目標かなと思います」と過程の重要さを強調。そういう意味でもトータルで意義の小さくない開幕戦になったのではないでしょうか。「僕らの代は人数も多くて、今年は結構我が強いヤツとかいっぱいいるんですけど、そういうヤツらが1つになったら、かなりの力になるんじゃないかなと思っています」と今年のチームを評したのは渡辺。新シーズンのT1に旋風を巻き起こす可能性を"蒲田のデンマーク"は十分に秘めています。 土屋
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