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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
2016年シーズンのTリーグ開幕を告げる文字通りのオープニングマッチ。成立学園と東京武蔵野シティFC U-18
が激突する一戦は、成立学園鷲宮グラウンドです。
新チームの立ち上げとなった新人戦は地区予選敗退。インターハイ予選も1次予選初戦で帝京にPK戦で敗れるなど、難しいシーズン序盤を強いられながらも、選手権予選では結果的に全国準優勝まで駆け上がった國學院久我山と互角の勝負を繰り広げるなど、1年の中で大きな成長を遂げてみせた昨シーズンの成立学園。迎えた今シーズンは「公式戦では何の結果も出ていないんだけど、各県の強豪チームとやって、まだ練習試合だけど内容も悪くないんですよ」と宮内聡監督も話した通り、ここまで2種の相手にはほとんど負けていないとのこと。まずはこのリーグ開幕戦を勝利で飾り、今後への弾みにしたい90分間へ臨みます。
とうとうJリーグ参入を目指す意思表明を果たし、名前も新たにクラブとしても改革の年を迎えている東京武蔵野シティFC U-18
。現在はグラウンドの改修中ということもあって、12月の2週目以降はなかなか満足の行くトレーニングのできない日々が続いていますが、結果的に決勝リーグ敗退となった東京都クラブユースU-17選手権でも、少しずつ今シーズンのチームが進むべき方向性は明確に。「今年はトップがJを目指すという所で、より個に特化させてやっていかなきゃいけないんじゃないかなと思っています」とは増本浩平監督。昨年は3位フィニッシュとなったT1リーグでも、当然狙うは3年ぶりの戴冠です。実はこの開幕戦のカードは昨年とまったく同じカード。成立のリベンジか、東京武蔵野の返り討ちか。注目の一戦は成立のキックオフでスタートしました。
ファーストシュートは8分の成立。大野泰成(2年・FCゼブラ)を起点に鈴木龍之介(2年・成立ゼブラFC)が繋ぎ、小山珠里(2年・成立ゼブラFC)がミドルレンジから枠へ収めたシュートは東京武蔵野のGK西村大樹(2年・レッドスターJY)がキャッチしましたが、大型ボランチの積極的なトライ。11分には東京武蔵野も右から和田朋也(1年・Forza'02)がCKを蹴り込むも、小山がきっちりクリアすると、13分は再び成立。鈴木が右へ振り分け、萩原幹太(2年・成立ゼブラFC)が中央へ戻したボールを大野がミドルへトライ。ここも西村のキャッチに遭ったものの、「チームとして初めての公式戦で全体的に緊張感もあった」と竹本大輝(2年・成立ゼブラFC)も振り返った中で、まずは成立がミドルで手数を繰り出します。
一方、「2トップがCBの間に効果的にいることが少なかったかなと思う」と増本監督も話した東京武蔵野は14分、相手陣内でボールを奪い返したキャプテンの角井拓哉(2年・三菱養和調布JY)がそのままミドルを放ち、成立のGK園田悠太(2年・横浜F・マリノスJY追浜)のキャッチに遭うファーストシュートを記録するも、15分は再び成立。萩原が相手のロストを収めて中へ送り、右へ流れた竹本のシュートはわずかに枠の左へ外れましたが、「最初言われた時はちょっとビックリしたんですけど、託されたからにはやるしかないという感じです」と背番号について言及した10番がきっちり結果を出したのはその5分後。
20分に成立は萩原と大野のスムーズなパス交換を経て、受けた鈴木龍之介は左へ短く。ここに上がってきたキャプテンの西羽開(2年・鹿島アントラーズつくばJY)が丁寧に折り返したボールを、走り込んだ竹本は左足で確実にゴールネットへ流し込みます。「成立らしいサッカーとして相手に当たらないでパスで崩しながら、最後は自分がただそこにいただけでしたけど、あそこまでの崩しは練習通りできたかなという感じです」とはその竹本。完璧な崩しに「ウチがやりたいことをやっているなと思いましたね」と敵将の増本監督も思わず言及。成立が鮮やかなアタックで先にスコアを動かしました。
1点のリードを許した東京武蔵野は「満足にトレーニングができていた訳じゃないから、ペナ角を取りに行くことを優先して、自分たちが失ったとしてもそこにボールがあるようにしようという話をしたんですけど、結局そこを取りに行くことが目的になって中央を突かなくなっちゃったから、そこは彼らも混乱したのかなというのは思った」と増本監督。28分に和田が蹴った右CKはDFがクリア。32分に右SBのモリソン健太郎(2年・東京ベイFC U-15)がスルーパスを狙い、西村悠(2年・ヴェルディSSレスチ)がエリア内へ潜るも、きっちりカバーに入った成立の右SB中能健人(2年・成立ゼブラFC)が体を入れてゴールキックに。34分にも初田優真(2年・横河武蔵野FC JY)のスルーパスから獲得した右CKをここも和田が蹴り込みましたが、ニアで西羽がクリアするとオフェンスファウルに。セットプレーから相手ゴール前を窺うものの、決定的なシーンには至りません。
35分は成立。バイタルでボールを持った竹本は、一端体勢を崩し掛けながら強引にシュートを打ち切ると、ボールはクロスバーにハードヒットして場内にもどよめきが。38分は東京武蔵野。西村悠のリターンを受け取った角口広空(1年・FC府中)がスルーパスを通すも、走った角井にきっちり付いていた成立のCB長草優之(2年・鹿島アントラーズつくばJY)がタックルで回避。直後の左CKを初田が蹴り込み、ニアにモリソンが突っ込むもオフェンスファウルという判定。東京武蔵野も徐々に押し返す中で、スコア自体に変化なし。
42分の歓喜はまたもや崩し切った形から。中能のパスを引き出した鈴木龍之介を経由して、中央の大野は縦パスをグサリ。萩原のスルーパスに抜け出した竹本のシュートは西村大樹がファインセーブで弾き出したものの、こぼれにいち早く反応した小山が左足でボールをゴールネットへ送り届けます。「前半は慎重に行っていた所もみんなあった」(大野)「前半はボールの動きやもう1つプレースピードが遅かった」(宮内監督)と2人がやや反省を口にした前半ではあったものの、崩し切った形からの2ゴールには「ああいう形で結構崩して取っているので、そこは彼らも非常に自信を持ってやっている所だと思う」と宮内監督も高い評価を。成立が2点のアドバンテージを握って、最初の45分間は終了しました。
「僕のプランミスもあったし、選手に罪はないかなと思います」と前半を振り返った増本監督は、後半開始から何と3枚替えを敢行。西村悠、角口、角井に替えて、成実浩太郎(2年・Forza'02)、中川海(1年・横河武蔵野FC JY)、猪股直希(1年・私立武蔵中)の3人を投入。「ケガもあって半分しか行けないかなという判断」の成実と「上手さがあるし、シュートのトライが凄く良い」という中川を2トップで並べ、「相手の2番と7番の連携の所で、2番のオーバーラップがルーズになっていた」と見た左サイドに猪股を送り込んで、残された45分間へ向かいます。
すると、すぐさま期待に応えたのは東京武蔵野が誇る新・10番。51分はカウンター発動。猪股がきっちり繋ぎ、中川が右へ流したボールを成実はそのまま縦にドリブル。マーカーと競り合いながら右足で対角線を狙ったボールは、ゴール左スミギリギリのコースを辿ってゴールネットへ飛び込みます。「ボールロストの仕方が悪くてああいう風に行かれるのは去年から結構あったので、あの失点の仕方はやっぱり我々のチームにとっては課題」と渋い表情を浮かべた宮内監督も、「一発持っている選手ですよね」と素直に評価を口にした成実の追撃弾。両者の点差はたちまち1点に縮まりました。
突き放したい成立は52分、萩原のパスを鈴木龍之介が左へ展開し、高橋恒樹(2年・成立ゼブラFC)がカットインしながら放ったシュートは西村大樹がキャッチ。追い付きたい東京武蔵野は53分、ゴールまで約30mの距離から和田が直接狙ったFKは園田がキャッチ。56分は成立。竹本が右へ振り分け、萩原はスムーズなシザースから中へ戻すと、粘って収めた鈴木龍之介のシュートは果敢に飛び出した西村大樹がビッグセーブ。62分は東京武蔵野。右へ送った成実のパスから、草宏禎(1年・横河武蔵野FC JY)はグラウンダーのクロスをファーまで届かせ、突っ込んだ猪股のシュートは園田がキャッチしましたが、重要な次の1点を巡ってお互いに取り合うフィニッシュ。
67分に萩原の右カットインミドルがDFに当たって西村大樹にキャッチされると、増本監督はシステムチェンジを決断。「相手のドイスボランチを2トップの片方が下がって捕まえたいんだけど、1点返したことであまりにルーズにしちゃったから」4-4-2を4-1-4-1へ変更し、初田をアンカーに、中川を1トップにそれぞれ置きながら、2列目に右から草、成実、佐々木克矢(1年・横河武蔵野FC JY)、猪股を並べて、徐々に安定してきた猿渡菖汰(1年・横河武蔵野FC JY)と森田幸紀(2年・三菱養和調布JY)のCBコンビを中心に守備のバランスを整えながら、同点弾を奪いに掛かります。
68分は東京武蔵野。左から和田が蹴ったFKはDFがクリア。70分は成立。高橋のパスを引き出した竹本の強烈ミドルは西村大樹が横っ飛びでキャッチ。72分は東京武蔵野の決定機。左サイドを駆け上がった和田のクロスから、中央で収めた中川が巧みなボレーを枠に飛ばしましたが、ここは園田がスーパーセーブで掻き出し、これには増本監督も「思わず『ナイスキーパー』と言っちゃったもんね。あれは本来入るシュートだから」と苦笑い。一段階上がったピッチ内のボルテージ。
成立にとって1人目の交替は72分。高橋を下げて、米津天(1年・柏レイソルA.A.TOR'82)をそのまま左SHへ送り込むと、76分には東京武蔵野に4人目の交替。モリソンと倉田一輝(1年・FC府中)を入れ替え、右SBには草を、右SHへ猪股をスライドさせつつ、倉田は左SHへ配して狙う2点目。77分は成立。萩原、大野と回したボールを竹本は右へ付け、鈴木龍之介のリターンをダイレクトで叩いた竹本のシュートはクロスバーの上へ。79分も成立。米津が左からカットインしながら打ち切ったミドルは西村大樹にキャッチされたものの、積極的なチャレンジにベンチからもポジティブな称賛が。80分は東京武蔵野。初田、佐々木と縦に運び、倉田のドリブルシュートは園田がキャッチ。1点差のままで開幕戦は残り10分間とアディショナルタイムへ。
83分のゴラッソは「去年も出させてもらっていた中で今年は自分がやらなきゃいけないというのもあって、全体を引っ張っていけるように試合中も練習中も声を出しながら、自分が中心にという意識でやるようにしています」と言い切るエース。大野を起点に鈴木龍之介が右からスルーパスを繰り出すと、飛び出したGKの頭上を破る竹本のループは、美しい軌道を描きながらゆっくりとゴールへ吸い込まれます。「スルーパスをもらった時に前を向いたらGKが出てきていたので、あとはループで打てば入るかなと思って落ち着いて蹴れました」という10番がいきなり開幕戦でドッピエッタ。再び点差は2点に広がりました。
宮内監督はすぐさま2枚目の交替を。84分にとりわけ後半は再三クロスを上げるなど奮闘した中能を下げて、矢田部竜汰(2年・横浜F・マリノスJY)をそのまま右SBへ投入すると、園田のキックを矢田部が繋ぐも、竹本のシュートが西村大樹にファインセーブで阻まれた86分のシーンを経て、その1分後には大野と鈴木皓(1年・柏レイソルU-15)をスイッチさせて、中盤の運動量アップを図りつつ、ゲームクローズに取り掛かります。
何とか1点を返したい東京武蔵野は90分にビッグチャンス。成実、中川とパスを回し、右から草が絶妙のタイミングでスルーパス。終盤は1トップに入っていた猪股がエリア内へ侵入しましたが、ここは小﨑魁(2年・浦和レッズJY)が決死のタックルで回避してシュートまで至らず。後半アディショナルタイムには鈴木皓と矢田部もミドルを放つなど、最後まで4点目への意欲も見せたゼブラ軍団に凱歌。「冬の遠征でも優勝できましたし、練習試合も含めて負けずにしっかり勝てるようになってきたので、もっともっとみんなで1つになってやらないといけないんですけど、今日勝てたことは大きいなと思います」と竹本も話した成立が、昨年のリベンジを果たす格好で開幕戦の勝利をもぎ取る結果となりました。
後半に入って流れは明らかに良くなったものの、勝ち点獲得までは届かなかった東京武蔵野。前述したようにトレーニング面でのハンデがある中で、「ゲームも色々なチームとやって、新人戦も上手く使えているけど、ゲームでやるのとトレーニングでやるのはやっぱり違う部分はあるし、今は本当に彼らの財産と能力で何とかやっている部分は大きいのかなと思います」と語った増本監督は、「もっと本当はできるし、させてあげたいというのはあるので、もっと生かす方法がたくさんあるんだろうなと思うと、申し訳ないなという気持ちですね」と現状のもどかしさを隠せない様子でした、とはいえ、このチームは名前が変わっても「僕は一貫して見ていて楽しい、やっていて楽しいチームを創りたいとずっと思っている」という増本監督の理念は揺るがず。「チーム自体は今日の成立さんみたいに本当に選手が自主的に考えて動いて、ボールを動かしてやっていけるというのが理想ですよね。そういう意味では今日見ていて凄く勉強になったし、負けてすがすがしいですよ」と相手を称えた指揮官がこれからどういうチームを創り上げていくのかという期待値が、今シーズンも高値で推移していくことは間違いありません。
成立は率直に言って「今年は例年以上にやりそうだなあ」という印象です。「我々が描いているのは『攻守においてハードにもできるし、ボールを動かすことなんか当たり前だよ』と。『それは何のためにやるの?攻撃するためだよ。崩すためだよ』という所の練習をやっていて、そういう部分を理解してやろうとしているし、自分たちもそういうサッカーをやりたいと言っているので、練習が終わった後の充実感はかなりありますね」と新チームの感触の良さを口にした宮内監督は続けて、「だから、練習の中から自分たちでもっとレベルの高い所を目指すというか、そういうチーム創りを大きな目標にしようと。それをやらないと東福岡や市船や成長した久我山相手に絶対結果は出ないし、どこか大会の優勝だとか結果という意味での目標は色々あるんですけど、チーム内でのレベルアップを目標にしていますね」と明言。具体的な結果の目標は「Tリーグを優勝して、来年プリンスに上げることと、トーナメントでもすべて勝つ、全国制覇を狙っていくという意識でやっています」(竹本)「チームとしては全部のタイトルを獲る気でいます。新チームが始まってからみんなその気でいるので、全部獲れるように頑張りたいです」(大野)と既に高い位置で共有済み。その大きな目標に少しでも近付くために、"チーム内でのレベルアップ"がキーワードになってきそうなゼブラ軍団が、まずは新チームの一歩目を幸先の良い勝利で記しています。 土屋
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