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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年02月06日

高校新人戦群馬準決勝 前橋育英×高崎@敷島

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0206shikishima1.jpg雪での延期を強いられた群馬の新人戦もいよいよセミファイナル。名門の前橋育英に伝統校の高崎が挑む一戦は、おなじみ敷島公園サッカー・ラグビー場です。
前年度の全国準優勝を受け、あと1つのハードルを越えるべく臨んだ1か月前の選手権では國學院久我山に惜敗し、ベスト8で涙を飲んだものの、改めてその強さとポテンシャルを全国の舞台で証明してみせた前橋育英。新チームの立ち上げは選手権からわずかに1週間後のこの大会。「選手権が終わってちょっと休ませて、新しいチームでキャンプインみたいな感じだよね」と笑うのは山田耕介監督ですが、初戦は桐生西を17-0という驚異的な大勝で退けると、高崎商業、共愛学園と近年の県内大会でコンスタントに上位へ顔を出す2チームをそれぞれ2-0、1-0と撃破してセミファイナルまで。昨年は桐生第一に屈した新人戦のタイトルを奪還すべく、まずは高崎退治に向かいます。
高校選手権出場1回、インターハイ出場2回と過去に全国の舞台へ立った経験も持ちながら、近年はなかなか県内ベスト8の壁を破り切れない時期が続いている高崎。それでも昨年度はインターハイ予選でベスト8に入ると、ほとんど新チームで挑んだ選手権予選でもベスト16まで勝ち上がるなど一定の存在感は発揮。迎えた今大会は東農大二を5-0、渋川青翠を9-0と相次いで下し、選手権予選ベスト8の桐生を2-0、高崎経済大附属も2-0で振り切って、4試合無失点のままこのステージまで。「選手権に負けてからはボトムアップじゃないんですけど、練習も彼らがメニューを考えて進めて、足りない部分をこちらで補っています」と話すのは2年前から母校を率いる吉田卓弥監督。今回はその選手権予選で敗れた育英とのリターンマッチ。4か月の成長を計るには格好の相手です。今日の前橋は名物・赤城おろしも自重気味で絶好のコンディション。準決勝第1試合は育英のキックオフでスタートしました。


好リズムで立ち上がったのは高崎。4分にはボランチの宮澤達也(2年・藤岡東中)が縦パスを打ち込み、1トップの山中享太(2年・FCクリロ)が左へ落とすと、粟飯原悠光(2年・高崎八幡中)が入れたアーリークロスはわずかに山中へ合わず、育英のGK松本瞬(1年・前橋FC)がキャッチしたものの悪くないサイドアタックを。5分には育英もキャプテンマークを託された大塚諒(2年・横浜F・マリノスJY追浜)のスルーパスに飯島陸(1年・クマガヤSC)が抜け出して1対1を迎えるも、高崎のGK坂本瑞貴(2年・佐波郡玉村南中)が素晴らしい飛び出しでファインセーブ。お互いにチャンスを創り合ってゲームは立ち上がります。
12分は育英。右サイドを単騎で抜け出した馬場拓哉(2年・横浜F・マリノスJY)のシュートは、坂本ががっちりキャッチ。15分は高崎。左サイドに開いた三木大輔(2年・上州FC高崎)はそのまま縦に持ち出し、シュート気味のクロスを送り込むもボールは枠の右へ。19分は育英。最終ラインでボールを持ったCBの浅賀祐太(2年・浦和レッズJY)がフィードを送ると、飛び出した右SBの長澤昂輝(2年・サンフレッチェ広島JY)はわずかにオフサイド。お互いに手数を探り合う中でも徐々にペースを手繰り寄せるタイガー軍団。
高崎で目立ったのは関口海(2年・前橋ジュニア)と長岡岳宏(2年・前橋FC)のCBコンビを中心に、時にはセンターサークル付近に設定された高い守備ライン。「前から行かせて簡単に蹴られないようにして、蹴られたら全員でダウンしてセカンドを意識するという感じでした」と関口も話したように、コンパクトなラインを必死に維持。「『ディフェンスの背後は弱いんだよ』とウチのコーチが言っていたので、ボランチがCBの位置に入って、CBが開いてサイドバックに上がれという感じで行けば一発で行けるよと話していた」と山田監督が明かした通り、19分のようなサイドバックに飛び出されるシーンは散見されましたが、「この大会はここまで細かいことは言わずに、高いラインでコンパクトにと言っています」と吉田監督。裏を取られた後のリカバーに集中力を発揮し、ピンチの目を1つずつ潰していきます。
21分は育英。馬場を起点に塩澤隼人(1年・FC東京U-15むさし)が左へ振り分け、ドリブルで潜った田部井悠(1年・前橋FC)はエリア内で転倒するも、ここはノーホイッスルというジャッジ。直後の21分も育英。左SBの渡邊泰基(1年・アルビレックス新潟U-15)のロングスローが高崎ゴール前を襲うも、混戦の中から関口が大きくクリア。26分も育英。角田涼太朗(1年・浦和レッズJY)のフィードに飯島が抜け出し掛けるも、ここはハンドの判定。28分は高崎。左SBの松井壮汰(2年・FCクリロ)が高い位置でボールを奪い、小林将也(1年・上州FC高崎)の折り返しに、飛び込んだ宮澤と山中はどちらも合わず。30分は育英。浅賀のフィードから高いラインの裏に飛び出した飯島が左から低いクロスを送り、馬場は打ち切れずに関口がクリアするも「前半はラインが高過ぎて、その対応が遅れていたというのは長岡も言っていた」と吉田監督。ジワジワと押し込み続ける育英の圧力。
先制弾は唐突に。32分に中央でボールを持った三木が右サイドへ展開すると、序盤から積極的にサイドを駆け上がっていたSBの齋藤遥平(2年・FCクリロ)はピンポイントクロスを中央へ。フリーで待っていた山中がインサイドボレーで完璧にミートしたボールは、鮮やかにゴールネットを揺らします。「元々サイドバックですけど、頑張ってガツガツ行くタイプなのでどこかで出したくて」(吉田監督)FW起用されたDF登録の2年生が見事な先制弾。「『ボールを横に動かしてサイドから点を取ろう』という話をチームでしていて、その形で点は取れたのでそこは褒めてあげたい」と吉田監督。ワンチャンスを生かした高崎が1点のリードを手にしました。
「去年選手権でやって、凄い良いチームだったんですよ」と山田監督もその力を認める高崎に先行を許した育英。34分には大塚が左からFKを蹴り込むも、高崎は大胆なオフサイドトラップで3人を置き去りに。36分にも6分前に交替で入った高沢颯(2年・前橋FC)がフリーでシュートを放つも、坂本がファインセーブで仁王立ち。37分にもエリアのすぐ外で強引にボールを奪った飯島がそのままシュートまで持ち込むも、ここも坂本が今度はワンハンドでビッグセーブ。「部分部分では守備の手応えもありました」と関口。守護神の坂本を中心に続く高崎の集中力。
38分も育英。高沢が右から蹴ったCKは長岡が大きくクリア。39分も育英。高沢の左CKは宮澤が掻き出しましたが、拾った高沢の左クロスに馬場が飛び込むも関口がきっちりクリア。40+1分には高崎最終ラインの連係ミスから飯島がフリーで抜け出しましたが、すかさず戻った長岡が決死のタックルで何とか回避。「守備は色々な選手を試しながらやってきたんですけど、最近になって後ろは今の4人に固定されてきて、ここでスライドするとかここで上げるとか共通理解ができてきた」と吉田監督も手応えを掴みつつあるDFラインが奮闘し、とりわけラスト5分間は水際で凌ぎ続けた高崎が1点のアドバンテージを握ったまま、最初の40分間は終了しました。


後半も先に押し込んだのは育英。45分に大塚が高い位置でのボールカットから左へスルーパスを通すも、田部井悠にはわずかに届かず坂本がキャッチ。47分には大塚が左からFKを蹴り込むも、松井が懸命にクリア。49分にも中央やや右、ゴールまで約25mの距離から高沢が直接狙ったFKは坂本がキャッチ。52分は高崎に1人目の交替。「最初からああだこうだとこっちが言うのは嫌いなので、今日も選手交替は基本的に彼らと『どう思う?』と話をしていた」という吉田監督は、相手との衝突でピッチ外に出ていた宮澤を巡ってベンチの選手との話し合いを持ってから、貫井一輝(2年・図南FC前橋)をそのままボランチの位置へ送り込みます。
53分も育英。田部井悠が左へ流し、渡邊のクロスに馬場が突っ込みましたが、寄せた長岡の圧力でシュートは打ち切れずにゴールキックへ。56分も育英。右サイド、ゴールまで25m弱の位置から大塚が放った直接FKはクロスバーの上へ。56分は双方に交替が。2人目の交替は高崎。粟飯原に替えて佐藤哲(1年・前橋FC)をそのまま左SHへ投入。育英は一気に2枚替え。飯島と田部井悠を下げて、八代廉也(2年・柏レイソルU-15)と五十嵐理人(1年・ともぞうSC)をピッチヘ解き放ち、八代は馬場と最前線に並べ、前線にさらなるパワーを。
60分も育英。渡邊の左ロングスローから馬場が左サイドを抜け出すも、守備の鬼神と化していた「成績も学年トップクラス」(吉田監督)の長岡がスーパーなタックルでクリーンカット。そのスローインをまたも渡邊がロングで投げ入れましたが、関口が必死に頭で触ったボールを坂本がキャッチ。61分も育英。馬場がラインの裏へうまく蹴り入れ、八代がうまく入れ替わったものの、全力で飛び出した坂本が頭で確実にクリア。「『蹴ってきたからもっとラインを下げても良いぞ』という話はハーフタイムにした」という指揮官のメッセージを受けて、「前半よりちょっとラインは低めで、育英さんもキックモーションに入った時にプレスへ行くと、安全策で止めて後ろに戻すというのがあったので、そこは徹底してやっていました」と関口。ここまで今大会無失点の高崎ディフェンスに破綻なし。
62分は久々に高崎のチャンス。10番を背負った高橋翔太(2年・前橋FC)が右へ振り分け、全力で上がってきた齋藤のクロスがこぼれると、反応した小林のシュートはDFにブロックされたものの、「今大会はサイドからの攻撃は随分通用した」と関口も語るサイドアタックから惜しいシーンを。一方の育英は62分に4枚目の交替を。馬場と人見大地(2年・ヴェルディSS小山)を入れ替え、最前線の顔触れに変化を。64分はいきなり人見。塩澤のパスから五十嵐が上げたクロスはフリーの人見に届くも、間一髪で関口がクリア。スコアは0-1のまま、時計の針はいよいよ70分に。ざわつき始めた敷島のスタンド。
少し焦りもあってか、なかなか効果的なアタックを繰り出せなくなってきた育英を尻目に、高崎は選手交替で着々と取り掛かるゲームクローズ。73分には小林と森本涼太(2年・佐波郡玉村中)を、松井が左サイドから30m近い直接FKを枠の上に外したシーンを挟み、77分にはその松井と清水陸(2年・前橋FC)をそれぞれスイッチ。ベンチの吉田監督からは「どうしたいかを共有しろ」という檄がしきりに。掲示されたアディショナルタイムは5分。長くて短い300秒のラストバトル。
手負いの猛虎。咆哮の時は80+2分。育英は左のハイサイドまでボールを繋ぎ、五十嵐の戻したボールを渡邊は絶妙の軌道を描くピンポイントクロス。これを頭で押し込んだのは人見。土壇場での同点弾。1-1。1-1。狂喜の時は80+4分。八代が右へ冷静に流し、五十嵐の折り返しを大塚が枠内シュート。ビッグセーブを連発していた坂本がここも何とか弾き出しましたが、最後に執念で押し込んだのは高沢。土壇場での逆転弾。1-2。1-2。高崎の健闘実らず。最後の最後で王者の底力を驚異的な逆転劇で見せ付けた育英が、ファイナルへと駒を進める結果となりました。


育英は苦しみながらも、アディショナルタイムまでの80分をそのまま序章にしてしまうような鮮やかな逆転勝利。「去年のこの時期に比べると良いでしょ」と話した山田監督も、「伸びしろはあると思いますよ。どんどん良くなる選手は良くなるだろうし。今はどういうストロングがあるのか、朝の練習からずっと付き合っていますけどね」と一定の展望は開けている様子でした。昨年のレギュラーは大塚1人という中でも、次から次へと楽しみなタレントが出てくるのは相変わらず。「今日はジャパンユースで御殿場に行っているチームがあるんですけど、昨日の紅白戦ではコイツら負けましたからね。だからわからないですよ。これから、これから」と笑顔を見せた指揮官。今シーズンの育英にも"伸びしろ"を含めて大きな期待を寄せて良さそうです。
「やっぱり立ち上がりは『黄色と黒のユニフォームを見てしまうと焦っちゃっているのかな』という感じはあった」と吉田監督も話したように、圧倒的な実力と実績で県内に君臨している育英を向こうに回し、金星をあと一歩という所で取り逃がした高崎。後半のアディショナルタイムに関しては「共通理解としては時間を潰す感じだったんですけど、交替した選手が前からガンガン行く感じだったので、そこの食い違いがあったのかなと思います」と関口も話し、「CKの所で時間稼ぎに行く子と点を取ろうという子と、そのあたりの共有ですよね。ああいう所で落ち着いて下さなくてはいけない判断ができていなくて、どんな判断でもいいんですけど、『その判断がバラバラだとそういう所を突いてくるチームだよね』という話はしました」と吉田監督も同様の想いを。大きな宿題を突き付けられた格好で、育英へのリベンジは次の機会へと持ち越されることになりました。「こういう経験からちょっとずつ理想の形ができて行くと思うので、この時期では上出来じゃないですか。ここで育英とやった経験も必ず生きると思いますし、これで色々なチームと練習試合がやりやすくなると思います(笑)」と笑わせた指揮官は続けて、「この学校は文武両道が求められる学校なので、まず自分の中では練習時間を2時間と決めていて、そういう時間の中から判断を磨いたりすることがゲームの中にも繋がってくるんじゃないかなと思っています。結局彼らは社会に出ても人を引っ張っていかなくてはいけない子たちだと思うので、サッカーばかりじゃなくて全体を見た時のマネジメント力を自分は大事にしていますけど、マネジメントだけではなくて、『君たちはこの学校にいる限り、結果も出さないといけないんだ』という話もしていますし、文武両道かつ社会に出た時にトップに立っていけるような人材の育成ということは指導の中で大事にしている部分です」と自身の指導理念を。「去年は本当に勝てなかったんですけど、去年出ていたのも今の2年が中心だったので、その借りを返すためにも"この年"を全力で取りに行きたいなと思います」と話したのは関口。"この年"で全力で取りに行く"結果"とは、すなわちインターハイ予選のタイトル。『All for Hiroshima』を掲げた高崎の新たなチャレンジは、まだその幕が上がったばかりです。        土屋

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