最近のエントリー
カテゴリー
アーカイブ
このブログについて
J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
アジアへと続く道を歩き出すためには、どうしても破らなくてはいけない重要な扉。"城福トーキョー"のリスタートはいきなりのガチバトルから。FC東京とチョンブリが激突するACLプレーオフは東京スタジアムです。
6年ぶりに古巣へ指揮官として帰還した城福浩監督を頂き、リーグ優勝を明確な目標として新たな航海に漕ぎ出したFC東京。ただ、その青赤が迎える今シーズン最初の公式戦は、「本来であれば今の時期というのは、まだ体をいじめながらサッカー勘であったり、サッカーのコンディショニングを上げて行く時期」(城福監督)にもかかわらず、早くも負けの許されないACLプレーオフというしびれる舞台設定。相手は昨年のこのステージで柏レイソルも大いに苦しめられたチョンブリFCだけに油断禁物。選手入場前に「城福トーキョー」をコールしたサポーターが歌う"ユルネバ"も、いつも以上にエモーショナルな雰囲気が。さらなる大舞台を手繰り寄せるべく、ファーストマッチに挑みます。
昨シーズンはリーグ戦4位に終わったものの、それまでの8シーズンはいずれも3位以内は確保するなど、タイ国内でも間違いなく強豪の一角に数えられているチョンブリFC。それでも、2008年に本大会まで辿り着いたACLに関しては、2014年、2015年と2年連続であと一歩の所まで迫りながら、いずれもプレーオフで無念の敗退。試合前にはベンチ前で全選手、全スタッフが円陣を組むなど、3度目の正直とも言うべきこの一戦に懸ける気持ちは本物のはず。アウェイゴール裏にサポーターも駆け付ける中で、ジャイアントキリングを狙います。新シーズンの幕開けとなる東京スタジアムには10801人の観衆が。まだまだ寒さの残る如月の19時半。チョンブリのキックオフでゲームはスタートしました。
3分のファーストチャンスは東京。前田遼一が右へ展開したボールを、水沼宏太は左足でアーリークロス。チョンブリのGKタナチャイ・ヌーラーがパンチングで掻き出したボールを阿部拓馬が中へ戻し、東慶悟のシュートは再びタナチャイ・ヌーラーに阻まれますが、勢い良く立ち上がった青赤の先制弾はその3分後。2本のショートを経て、3本目は中央へ蹴り込んだ水沼のCKに森重真人が飛び込むと、ボールはロドリゴ・ベルジリオの足に当たってそのままゴールへ吸い込まれます。城福トーキョー初陣の1点目は何とオウンゴール。幸先よく東京がスコアを動かしました。
9分の煌めきは東スタを良く知る44番。東が左サイドで裏へ短く出したボールに、斜めから飛び出した水沼は丁寧に後ろへ。受けた阿部がカットインしながら右足を思い切り良く振り抜くと、ボールはGKの股下をすり抜けてゴールネットへ飛び込みます。「アシストだけじゃなくてその前の動きだったり、ボールを引き出す部分も求められている所だと思う」と話す水沼の"連続アシスト"から生まれた阿部のゴールに、青赤サポーターは"先代阿部"とも言うべき、阿部吉朗のチャントで大騒ぎ。あっという間に点差が開きました。
いきなり2点を追い掛ける格好になったチョンブリ。10分には左CKをヌルル・シーヤンケンが蹴り込むも、中央でオフェンスファウル。逆に12分は東京の決定機。前田の落としを米本拓司が絶妙のダイレクトスルーパス。抜け出した水沼の1対1はタナチャイ・ヌーラーのファインセーブに阻まれるも、16分にはハ・デソンが左へ振り分け、駒野友一が縦に持ち出しながら上げたクロスに、水沼はヘディングを当て切れませんでしたが、「裏への飛び出しだったり、相手の怖い所に入って行くというのは自分でも強みにしているポイント」と話した48番のニューカマーが東京にもたらす大きな推進力。
25分はチョンブリのチャンス。秋元陽太のパントキックがエリアから出ていたというハンドのジャッジを副審が下し、至近距離で獲得したFK。去年も日立台で柏を苦しめたレアンドロ・アサンプカンの蹴ったキックは、カベに入っていた前田が果敢にヘディングでクリア。絶好の得点機もモノにすることができません。
29分には東京の華麗な崩し。ハーフウェーラインを越えて相手陣内に入った森重が縦に鋭く付けたボールを、水沼はダイレクトではたき、前田もダイレクトで返すと、水沼は左足で枠内ミドル。ファンブルしたタナチャイ・ヌーラーは、阿部ともつれながら何とかキャッチしましたが、この連動性は新生東京の確かな武器に。30分にも駒野のスルーパスに水沼が抜け出し、1対1から放ったシュートはまたもタナチャイ・ヌーラーがファインセーブ。31分にも水沼が蹴った右CKに、ドンピシャで叩き付けた丸山祐市のヘディングはGKを破るも、ライン上でカバーに入ったナロン・チャンセーウォがスーパークリア。攻め続けるホームチーム。
3度目の歓喜は34分に右サイドから。水沼が溜めて縦にはたくと、全速力で駆け上がってきた徳永悠平は、縦に持ち出しながらマイナスへ最高のグラウンダークロス。ここに突っ込んだ東のダイレクトシュートは猛スピードでゴール右スミへ突き刺さります。駒野やこの日はスタンド観戦となった室屋成も加入してきた中で、やはり青赤の右サイドバックは「早い時間帯に点が取れたので、落ち着いて余裕を持ってできました」と話すこの2番が不動。スコアは3-0に変わりました。
以降も当然次なるゴールを貪欲に狙う東京。38分には水沼の右FKにチョンブリのGKとDFが重なり、こぼれを拾った森重の丁寧なシュートはDFが何とかブロック。42分にも高い位置でボールを奪った流れから、東のパスを受けた水沼の左足ミドルはタナチャイ・ヌーラーが必死にキャッチ。チョンブリも43分にはヌルル・シーヤンケンのスルーパスへロドリゴ・ベルジリオが走りましたが、丸山が的確なカバーリングでゴールキックに。「沖縄では相当重い体で3試合をやっていたのもあって、今日はちょっと軽かったかなと思います」とは水沼。東京が3点のアドバンテージを握って、最初の45分間は終了しました。
後半はスタートからチョンブリに交替が。比較的チャンスの芽を創り出していたヌルル・シーヤンケンを下げて、ポックラウ・アナンを1トップ下へ。その位置にいたレアンドロ・アサンプカンを左SHに出して反撃態勢を整えますが、47分と52分に続けて阿部が放ったシュートを挟み、後半のファーストゴールは青赤に染まったストライカー。53分に右サイドでボールを持った森重が左足フィードを送り、上手いトラップで収めた東が切り返して中へ戻すと、ニアに入った前田は左足で確実にゴールネットへボールを送り届けます。これで4-0。試合の大勢は決しました。
55分の主役は「ハビがどっしりと構えてくれていたのでセカンドボールだったり、ボールにアタックできる所はしっかりしようと思っていた」と話す7番。左サイドで東がシンプルに縦へ流し、追い越した駒野は丁寧にクロス。ここへ後方から飛び込んできた米本のヘディングは、フワリとした軌道を描きながらGKを越えてゴールネットへ飛び込みます。攻守に渡って前へのアグレッシブさを披露していたボランチが、攻撃面で明確な結果まで。5-0。東スタに響き渡る『アジアの純真~青赤ver.~』。
双方がカードを切ったのは56分。東京は4ゴールに絡んだ東がここで御役御免となり、河野広貴を投入。チョンブリはナロン・チャンセーウォに替えて、プラキット・ディープロムをそのままボランチへ送り込みましたが、61分のゴールももちろん東京。ハ・デソンの展開を起点に、徳永が右サイドから正確なクロス。マーカーの前に体をねじ込んだ水沼のボレーは、鮮やかにゴールネットを揺らします。「前半に2,3回チャンスがあったので今日は入らない日かなとちょっと思ったんですけど、入って良かったです」と苦笑した水沼のゴールで、先発したアタッカー4人は全員がゴールを記録。止まらないトーキョー。
62分には東京に2人目の交替。存在感を発揮した阿部に替えて、橋本拳人がピッチヘ。「サイドバックに入ることが多かったので、サイドバックに入ることを意識して準備していました」と笑った橋本が送り込まれたのは中盤のインサイド。このタイミングで城福監督は4-4-2から、ハ・デソンをアンカーに置きつつ、その前に米本と橋本を配し、前田を頂点に水沼と河野をワイドに張り出させた4-3-3にシフトして、残りの30分近くに臨みます。
64分も東京。水沼が左からシンプルに中へ放り込み、エリア内に入った米本の落としを橋本が狙ったミドルはタナチャイ・ヌーラーにキャッチされましたが、早速インサイドハーフの2人でフィニッシュまで。65分も東京。「守備に戻るパワーは去年のベースがしっかりある中で、リアクションの守備だったという部分では去年とは違う所で、今年は前に出ていく守備というのも求められる」と言及する米本が積極的なインターセプトから、すかさずスルーパス。抜け出した水沼のシュートはタナチャイ・ヌーラーが足で弾き出したものの、チーム全体に向けて「奪った後のクオリティはもっともっと高めていかないといけない」と指揮官も明言する中で、米本の披露するクオリティが光ります。
66分はチョンブリにとって最後の交替。CBのスッティナン・プーコムとノッパノンをスイッチさせて、ノッパノンは右SBに入り、右SBを務めていたチョンラティットがCBへ。70分にはそのチョンブリがFKのチャンスを掴むも、レフティのプラキット・ディープロムが蹴り込んだボールは森重が確実にクリア。「試合前から見ても圧倒的に強くて、選手もプレーの内容もウチより上にいることもわかっていて想定内でした」とジャッカパン・パンピー監督もお手上げの体に。
73分の追加点は城福チルドレンで。米本が左へ付けた流れから、少し溜めた水沼が右足でクロスを入れると、GKの前に飛び込んだ河野の左足アウトサイドボレーは、ゆっくりとゴールネットへ転がり込みます。城福監督と共に2007年のU-17W杯を戦った25歳トリオの見事な競演が呼び込んだ7点目。後半は東スタに響き渡り続ける『アジアの純真~青赤ver.~』。
東京最後のカードはフィールドプレーヤー最年長。「もうちょっと決められたかなという反省点もあるので、もっともっと上に行くにはこだわってやっていかないといけないかなと思います」と話しながらも、抜群の躍動感を見せた水沼に替わり、76分にピッチヘ飛び出した羽生直剛は80分に珍しくCKのキッカーを務めると、84分にはパスを預けながらそのまま走り込んだハ・デソンへ狙いすましたスルーパス。懸命に足を伸ばしたチョンラティットのクリアは、GKの逆を突いて綺麗なオウンゴールになってしまいます。思わず苦笑いは"アシスト"の羽生ですが、ベテランもきっちりゴールに関与。8-0。これで並んだクラブの公式戦最多得点。
新記録達成の一撃はこの日唯一のドッピエッタ。90+1分に米本のスルーパスへ抜け出しながら、ノッパノンにエリア内で倒された河野が自らPKのキッカーに。左スミギリギリを狙ったキックは、同じ方向へ飛んだタナチャイ・ヌーラーもわずかに及ばず。途中出場の河野が締めたゴールラッシュの最終結果は9-0。「何点入ろうがCKが終わった瞬間にCBが全力で帰り、何点入ろうがキックオフの時に全力で奪いに行く、この姿勢こそが今日の9-0という結果になったんだと思いますし、シュートを打たせない、絶対ゼロで抑えるというこの志は今日は見せられたかなと思います」と城福監督も評価を口にした東京が大勝でプレーオフを制し、ACL本大会へと駒を進める結果となりました。
結果はこの日の相手を考えれば妥当なものだったと思いますが、何より新戦力の躍動が既存戦力のポテンシャルを引き出すような相乗効果が、この90分間で見られたのは東京の大きな収穫ではないでしょうか。「今日出た選手もベンチの選手もベンチ外の選手も含めて、高い競争レベルの中で試合に出て行くことが一番大事であって、やはり沖縄キャンプで相当走り込みましたし、そこで先頭を走っていたような選手が今日のメンバーにも入れないと。その代表で彼らが試合に出て行く訳で、当たり前ですけどキックオフから追わなくてはいけない。これは他の選手がいたからこそハードワークができるのであって、高いレベルの競争というのが絶対に必要だと思います」と城福監督も話した通り、高いレベルの競争をここまでのプレシーズンで繰り広げてきていることが十分に窺えるような内容だったことは間違いありません。「Jリーグの1年、ACLの1年を戦う上では、ここから先の宮崎キャンプでももう一度体を作り直すことはしなくてはいけない。その中でチームのスキルというのはさらにステップアップしなくてはいけないし、そうでないと全北とはおそらく対等には戦えないという風に思いますし、我々は1年間高いレベルで戦い抜きたい、そのための色々なレベルアップの時期の真っ最中である、それを明後日からやり直したいと思います」と宮崎キャンプへの意欲を口にした指揮官の下、理想的な再出発を果たした城福トーキョーの今シーズンは非常に楽しみです。 土屋
J SPORTS フットボール公式Twitterをフォローしてフットボールの最新情報をチェック!