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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年01月12日

高校選手権決勝 東福岡×國學院久我山@埼スタ

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0111saista.jpg憧れ、目指し、それでも届かなかったのは4142校。わずかに2つのチームだけが辿り着くことを許された高校選手権決勝。3度目の戴冠を狙う東福岡と初優勝の懸かる國學院久我山のファイナルは埼玉スタジアム2002です。
インターハイ連覇という偉業だけではなく、Jリーグのクラブユースも数多く参加するプレミアWESTでも2位に入るなど、間違いなく今年度の高校サッカー界を牽引し続けてきた東福岡。絶対的優勝候補と目されながらベスト16で散った昨年度の選手権を受けて、迎えた今大会は遠野を3-0、難敵の新潟明訓を3-1と相次いで撃破すると、大きなヤマとなった3回戦では、夏の全国決勝でも対戦した市立船橋をPK戦の末に返り討ちに。準々決勝は富山第一を1-0で、埼スタの準決勝は星稜を2-0と寄せ付けず、やはり連覇を達成した第77回大会以来、17年ぶりとなるファイナルへ。「最後は悔いのないようにピッチの上に送り出していきたいと思います」と森重潤也監督。夏冬二冠まではあとわずかにこの1勝のみです。
渡辺夏彦(慶應義塾大)を擁した2年前は初戦敗退。内藤健太(中央大)が率いた1年前はベスト16。そして、「前の2人は本当に僕からしたら上を見るような選手だったので、素晴らしいキャプテンだったと今も思っていますけど、今年のチームの良さというのは僕個人じゃなくて、本当にチーム全員が献身的に粘り強く戦うことができること」と渡辺、内藤の後を継いだキャプテンの宮原直央(3年・FC多摩)も強調したように、粘り強いチーム力をベースにしながら、とうとう偉大な先輩たちをも成し得なかった全国決勝という舞台まで駆け上がってきた國學院久我山。最後の1試合に臨むチームも「今までと一緒で目の前にサッカーの試合があるというだけで、その試合に勝つという、ただそれだけを意識してやりたいですね」と山本研(3年・横浜F・マリノスJY)が話した通り、選手たちに余計な気負いはなし。一気に日本一まで上り詰める準備は整いました。ファイナルを見届けようと、埼玉スタジアム2002に詰めかけた観衆はなんと54090人。最後の1試合は東福岡のキックオフでその幕が上がりました。


立ち上がりから押し込んだのは夏の全国王者。3分に中村健人(3年・UKI-C.FC)が右から蹴ったCKはDFにクリアされたものの、こぼれを叩いた藤川虎太朗(2年・サガン鳥栖U-15)の左足ボレーは枠の左へ。8分にもレフティの三宅海斗(3年・岡山倉敷市立北中)が丁寧なスルーパスを通し、抜け出した餅山大輝(3年・ルーヴェン福岡FC)のシュートは必死に戻った久我山のCB野村京平(3年・横河武蔵野FC JY)がタックルで回避しましたが、その野村が「やっぱり『名前負けしてしまっているな』というのがあって、東福岡だからというのでみんなちょっと逃げていた所もあった」と振り返った久我山を尻目に、まずは東福岡が攻勢を仕掛けます。
11分も東福岡。三宅が右へ流し、中村のアーリークロスは久我山のGK平田周(1年・FC東京U-15むさし)がキャッチ。13分も東福岡。相手が入れた縦へのクサビをCBの福地恒太(3年・ヴィクサーレ沖縄FC)が力強く潰し、ゴールまで約40mの位置から中村が狙ったロングシュートは平田が戻ってキャッチ。15分に右から中村が蹴ったCKは久我山のキャプテンを託された宮原がクリアしましたが、17分にもSBの林雄都(3年・レオーネ山口U-15)の突破で奪ったFKを右から中村が蹴り込むと、左SBの小田逸稀(2年・サガン鳥栖U-15唐津)が合わせたヘディングは枠の左へ外れましたが、ゲームリズムは完全に東福岡へ。
「ファーストタッチの瞬間からのプレスが凄く速くて、2人目3人目とどんどん来て、考える余裕を与えてくれませんでした」と内桶峻(3年・GRANDE FC)が振り返り、「本当に圧力が凄くて前を向かせてもらえなかったので、うまく収められなかったです」と澁谷雅也(2年・ジェファFC)も口にしたように、東福岡のプレスをまともに受け、ほとんど攻撃の形を創れなかった久我山でしたが、ようやく18分に掴んだファーストチャンスは決定機。左サイドに開いた澁谷を起点に小林和樹(3年・ジェファFC)が繋ぎ、名倉巧(2年・FC東京U-15深川)は右へラストパス。待っていた内桶は左足でシュートを放つも、ボールは東福岡のGK脇野敦至(3年・West Kids Duel FC)がしっかりキャッチ。「凄く良い形で自分の所まで来てフリーだったんですけど、当たり損ねてしまった」と内桶。絶好の先制機を生かし切れません。
24分は再び東福岡。中央をゴリゴリ運んだ藤川は、そのままミドルレンジから強烈な枠内ミドル。平田が弾いたボールを藤川がきっちり拾い、今度は中村が左足で枠へ収めたミドルも平田がキャッチしましたが、シャドーの2人が打ち出す躍動感。久我山も25分にはようやくらしいパスワーク。内桶、宮原、鈴木遥太郎(3年・東急SレイエスFC)、澁谷と繋ぎ、最後は鈴木にボールが届くも、シュートまでは打ち切れず。「中盤の部分でも前の選手が挟み込んで、相手から自由を奪っていたので凄く助かりました」と脇野。手数を繰り出し切れない久我山。
すると、ワールドクラスと表現したくなるような先制弾が飛び出したのは36分。アンカーの鍬先祐弥(2年・長崎南山中)が左へ展開したボールを、橋本和征(3年・ファジアーノ岡山U-15)はシンプルにはたき、受けた中村は餅山にクサビを当て、リターンをすぐさまエリア内の藤川へ。巧みにターンした藤川が右へラストパスを送ると、待っていた三宅はダイレクトシュートでゴールネットを射抜いてみせます。わずか8秒間に5本のパスを素早く繋ぎ、左右を広く横断させながらぶち込んだ、完璧としか形容しようのないスーペルゴラッソ。ゲームリズムそのままに東福岡が1点のリードを手にしました。
準決勝に続いて先制を許した久我山。42分に鈴木のパスを山本がラインの裏へ落とし、澁谷がドリブルで運んだものの、最後は良く戻っていた児玉慎太郎(2年・レオーネ山口U-15)がカバーしてゴールキックになったシーンを見て、清水監督は早くも1人目の交替を決断。小林に替えて、準決勝で劇的な逆転弾を記録した戸田佳佑(2年・FC多摩)をそのまま左ウイングに送り込み、なかなか収まらない前での基点創出に着手。44分にはDFラインでのイージーなミスから、抜け出し掛けた餅山には上加世田達也(1年・Forza'02)が素早い対応でボールを奪い返して事なきを得ましたが、「自分たちのサッカーが全然できないまま前半が終わってしまいました」と野村。さすがの強さを見せ付けた東福岡が1点のアドバンテージを握って、最初の45分間は終了しました。


「してやられたという感じはあります」と清水監督も悔しがった後半開始早々の衝撃。藤川の縦パスに走った餅山が倒されて獲得した東福岡のFKは46分。中央右寄り、ゴールまで約25mの位置でスポットに立ったのは中村、橋本、鍬先、小田、児玉の5人。橋本が後方へ下がって助走態勢に入ると、ゴールに背を向けた鍬先、小田、児玉の2年生トリオは揃って後ろに3歩下がり、そのまましゃがみ込みます。キッカーはやはり中村。先にしゃがんだ3人と、壁の前でやはりしゃがんだ林、藤川、三宅と計6選手の頭上を越えたキックは、完璧な軌道を描いて左スミのゴールネットへ吸い込まれます。インターハイ準決勝の立正大淞南戦で相手が見せたトリッキーなFKを、この大一番で"完コピ"しながら本家が陥れられなかったゴールまで強奪。実に8人が関与したスーパーなセットプレーで、東福岡のリードは2点に変わりました。
清水監督も「もう1回という所という意味では苦しい入りになってしまったと思います」認めた久我山は、今大会初めて2点を追い掛ける展開に。55分には山本が左からFKを素早く放り込み、内桶はトラップし切れずに脇野がキャッチしましたが、57分にはビッグチャンス。高い位置で鈴木がボールを奪い切り、戸田が絶妙のターンでボールを繋ぐと、左に流れた名倉は左足でそのままフィニッシュ。ここは脇野が正面でキャッチしたものの、「後半はやれる部分が出てきて、『これは行けるんじゃないか』という想いもありました」と宮原。わずかに出てきた"らしい"リズム。
58分は東福岡。中村が右へ流し、福地が縦へ放り込んだボールを、藤川がダイレクトで打ち切ったミドルは平田がキャッチ。62分も東福岡。餅山、三宅とボールを回し、林のクロスに飛び込んだ橋本のヘディングはここも平田がしっかりキャッチ。65分は久我山。宮原とのワンツーで抜け出した内桶の右クロスはDFに当たり、こぼれたボールを宮原が左足で打ち切ったミドルは、福地が顔面で決死のブロック。そのリバウンドを知久が狙ったミドルも鍬先が頭できっちりブロック。「あれがプレミアの粘りなのかもしれないですし、夏を勝ってきたチームの粘り強さなのかなと思いました」と宮原。今大会もここまでわずか1失点。鉄壁のヒガシはこの日も健在。
赤い彗星が享受した3度目の歓喜は67分。中盤で前を向いた中村が浮き球でDFラインの背後へ落とすと、抜け出した餅山はGKの頭上を左足で破る絶妙ループを流し込み、スコアは3-0に。さらにその3分後の70分には、右サイドを駆け上がったCBの児玉が鍬先とのワンツーで右サイドをえぐってグラウンダーのクロス。走り込んできた藤川が右足で正面からゴールネットを揺らします。「インターセプトの時に縦パスを入れようかと思ったんですけど、自分の前にスペースがあったので」そのまま攻撃参加したCBのアシストが生み出した大きな4点目。夏冬二冠に向けて、東福岡の勢いが止まりません。
「3点目を取られたくらいから、『自分たちも取らなきゃ』という想いが出てきて、それで結構前に攻められた」と野村。71分は久我山。失点直後の流れから右サイドを抜け出した澁谷のシュートは、脇野がファインセーブで回避。74分も久我山。内桶、名倉とボールを動かし、鈴木が打ち切ったシュートは脇野がキャッチ。76分も久我山。内桶のドリブルで手にした右CKを鈴木が蹴ると、内桶が頭で狙ったシュートはわずかのクロスバーの上へ。「後半何回か良いプレーができてからは、自信を持って堂々とやることができました」とはその内桶。何とか奪いたいファイナルでの1点。
79分には双方に交替が。東福岡は先制弾の三宅を下げて、毎熊晟矢(3年・FC BRISTOL)をピッチヘ。久我山は内桶に替えて比留間公祐(3年・横河武蔵野FC JY)を知久と並ぶボランチの位置へ送り込み、鈴木を3トップ下へ、名倉を右ウイングにそれぞれスライドさせてゴールを狙いに掛かりますが、次の得点を記録したのも東福岡。80分に中央左で小田のパスを引き出した餅山がラストパスを送ると、右へ持ち出した中村はエリア外から右足一閃。少し巻きながら右スミギリギリを襲ったボールは、華麗にゴールネットへ飛び込みます。10番のキャプテンが圧巻のドッピエッタ。5-0。近付いてくる夏冬連覇の瞬間。
意地を見せたい久我山。83分には戸田が1人外して残し、名倉のスルーパスに澁谷が動き出しましたが、わずかに届かず脇野がキャッチ。84分に毎熊がドリブルから放ったシュートは、大会期間中に大きな成長を見せた上加世田が懸命にブロック。90分には名倉のパスから「自分の技術がもう少しあれば状況は変わっていたと思う」と話した澁谷が必死にドリブルを試みますが、東福岡ディフェンスを剥がし切れません。
86分に餅山と佐藤凌我(2年・福岡次郎丸中)、90+2分に橋本と高江麗央(2年・ロアッソ熊本JY)を相次いで入れ替え、来年を担う2年生に森重監督が託したゲームクローズ。90+5分のラストチャンスは久我山。右から知久が浮き球を送り、澁谷が粘って左へ繋ぐも、戸田はシュートまで持ち込めず、鍬先が大きくクリアした94分21秒に埼玉スタジアム2002へ響き渡ったのは、試合終了と戴冠を同時に告げるホイッスル。「指導者として全国選手権で優勝するという自分の夢を生徒たちが叶えてくれました」と微笑む森重監督が、2度のインターハイでは封印していた胴上げを受けて宙を舞い、堂々たる今年度の二冠達成。東福岡にとって17年ぶりとなる冬の日本一を巡る戦いはここに完結する結果となりました。


東福岡の完勝でした。「今までとのレベルの違いを本当に感じさせられた試合」(野村)「今までの相手とは格が違った感じはあります」(内桶)「前への圧力とプレスの速さには桁違いのものを感じましたし、最後の"壁"の部分は全国のトップレベルというものを肌で感じました」(宮原)と久我山の選手たちが声を揃えたように、攻守両面で相手を圧倒。改めてヒガシの実力を日本中に知らしめる、素晴らしい勝利だったと思います。部員281人は今大会最多。「部員全てを僕1人で見ることはできないんですけど、数多くのスタッフがそれぞれカテゴリーに分かれて、常にトップチームを目指すという元に各グループがプレーしています」(森重監督)というチームコンセプトの中で、「Aチームに上がってくるのが難しそうだなという選手もいるんですけど、本当に同じ練習メニューをしっかりこなして、最後まで諦めずに目指している生徒というのは本当に凄いなと思っていますし、その子たちがいなければAチームも刺激を受けていません」と強調した森重監督は続けて、「今日もスタンドでも本当に久我山の応援の生徒たちの方が多いにもかかわらず、それに負けないくらいの声援をベンチの中からも感じていました。それぞれが与えられた仕事をしっかりこなした結果だなと思います」と部員全員に感謝の意を。"最多"の高校生が辿り着いた"最強"の証。281人のピッチ内外における"ハードワーク"によってもたらされた夏と冬の日本一に、大きな拍手を送りたいと思います。
「一言で言えば本当に東福岡さんが強かったと。私たちはベストゲームをできるように準備をして挑んだんですけど、ベストゲームをしていたとしても力の差があったかなと感じています」と素直に完敗を認めた清水監督。「プレスの速さとか体の強さも全然自分たちと違うなと感じました」(野村)「『最高の流れで来たのかな』と思っていましたけど、この試合を終わって振り返ると、決勝は本当に相手が強かったなと思います」(宮原)「今シーズンやった中で一番強かったです」(内桶)と、どの選手からも少し力の差を感じた様子が窺えました。それでも、全国準優勝という結果は十分に誇って良い結果。今年のチームの弱みとして精神面を挙げることの多かった指揮官も、「チームを見ていて躍動感を感じましたし、成長具合は言葉にするのは難しいですけど、彼らが自信満々にサッカーをやっているなと。本当に色々なシチュエーションが今回の大会でありましたが、彼らは色々なことを、そして起きていることを受け止めて、乗り越えて、ここまで勝ち上がってきたと思います。そういう意味では精神的な部分の成長が一番大きかったのかなと思います」と改めてその精神面の評価を。その上で、この敗北を受けても清水監督は「久我山というチームが日本一を目指すために大きな変革はないと思っています。久我山は久我山のスタイルで久我山らしく日本一を目指したいですし、そこはブレないでやっていきたいと思います」とスタイルを貫き続ける決意を新たに。「久我山の勉強もサッカーもどっちも頑張っているスタイルだったり、細かいパス回しのスタイルだったりに憧れているサッカー少年もたくさんいると思うので、そういう人の希望にはなれたかなと思います」という内桶の言葉を証明するためにも、この全国準優勝という結果を久我山がどういう形に昇華させていくのかは、是非今後も注目していきたいと思います。           土屋

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