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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年01月10日

高校選手権準決勝 青森山田×國學院久我山@埼スタ

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ファイナルへと続く扉にほとんど手を掛けている2校の対峙。2度目の決勝進出を狙う青森山田と初の準決勝に挑む國學院久我山のゲームは引き続き埼玉スタジアム2002です。
柴崎岳を擁して準優勝に輝いたのは6年前。以降は4大会連続で3回戦の壁を突破できず、前回は初戦でPK負けを喫するなど、冬の全国に限っては難しい時期が続いていた青森山田。それでもプレミアEAST2位という素晴らしい成績を引っ提げ、臨んだ今大会は初戦の大社戦で2点のビハインドを跳ね返す大逆転勝利を収めると、3回戦でもやはり2点のビハインドを後半アディショナルタイムで追い付き、最後はPK戦で難敵の桐光学園を撃破。3日前のクォーターファイナルも「今回のラッキーボーイ的な存在」と黒田剛監督も評する高橋壱晟(2年・青森山田中)の決勝点で富山第一をウノゼロで退け、セミファイナルへ。「このチームはキャプテンの北城を中心に、凄くまとまりのある、前向きでどんな時も一生懸命やるチームとして、1年間良く頑張ってくれたチーム」と指揮官も認めるチーム力を武器に、目の前の90分間へ全力で向かいます。
優勝候補の一角という評価を受けていた一昨年は、開幕戦の国立で熊本国府に後半アディショナルタイムの失点で惜敗。昨年はベスト16で京都橘にPK戦で敗れたものの、着々と全国での結果を向上させてきた國學院久我山。史上5校目となる東京3連覇で乗り込んできた今大会は、初戦で広島皆実に1-0で辛勝すると、2回戦の明秀日立戦も終盤に2点のリードを追い付かれながら、最後はPK戦で何とか勝利。さらに、3回戦の神戸弘陵、準々決勝の前橋育英と、12月のプレミア参入戦を経験した2校をいずれも1点差で下して、同校初のベスト4まで。「ここ最近は負けない雰囲気がありますね」と鈴木遥太郎(3年・東急SレイエスFC)が話せば、「あの埼スタの舞台で久我山のサッカーをできるというのが自分自身凄く楽しみ」と1年生守護神の平田周(1年・FC東京U-15むさし)も気負う様子は全くなし。いつもと変わらないメンタルを携えて、ファイナルへと続く90分間を戦います。スタンドには第1試合を遥かに上回る25073人の大観衆が。気温は11.3度。絶好と言って良いコンディションの下、青森山田のキックオフで注目の一戦は幕が上がりました。


先にシュートを放ったのは久我山。開始わずかに39秒で名倉巧(2年・FC東京U-15深川)が左足ミドルをゴール左へ外すと、10分にも鈴木の右CKをニアのエリア内で収めた小林が、DFとの接触で転倒するもノーホイッスル。12分にも名倉が右へ振り分け、鈴木のパスから澁谷雅也(2年・ジェファFC)がターンしながら左足で放ったミドルは青森山田のGK廣末陸(2年・FC東京U-15深川)がキャッチしましたが、まずは久我山がきっちりボールを左右に動かしながら手数を繰り出します。
一方、「硬さの見られる立ち上がり」と黒田監督も評したように、なかなか前にボールを運べない青森山田。15分にようやく掴んだロングスローのチャンスも、原山海里(3年・クマガヤSC)が左から投げ込んだボールは知久航介(2年・浦和レッズJY)にクリアされてしまいますが、やはりこの"飛び道具"は最強の武器。17分、右サイドで獲得したスローインを当然原山がロングで投げ入れると、ニアで常田克人(3年・大宮FC)が競り勝ったヘディングを、ファーに突っ込んだ鳴海彰人(2年・北海道新ひだか静内中)も頭でプッシュ。ボールはゴールネットへ到達します。この大会を彩ってきた原山の"2投目"がきっちり結果に。青森山田が先にスコアを動かしました。
今大会初めて先行を許す形となった久我山。それでも「ゲームがどう動くかというのは分かりませんし、私たちが希望しているようには行きませんので、その中で何があっても動じないようにやろうと常に伝えていました」という清水恭孝監督の言葉はチームの共通理解。20分には内桶峻(3年・GRANDE FC)、名倉と繋いだボールを鈴木が左へ流し、カットインから小林和樹(3年・ジェファFC)が枠へ収めた強烈なシュートは、廣末が何とかワンハンドでファインセーブ。鈴木が蹴った直後の右CKはDFのクリアに遭いましたが、23分にも小林がミドルを枠の右へ。「『落ち着け』と。『ここで落ちるんじゃなくて、また自分たちのリズムに持って行こう』というのは話していた」と野村京平(3年・横河武蔵野FC JY)。折れなかったオレンジ軍団のメンタル。
同点の主役は「去年も決めたかったんですけど決められなかったので、今年は絶対に決めようと思っていた」という2番のCB。25分、左から山本研(3年・横浜F・マリノスJY)が入れたゴールへ向かうCKは、廣末が何とか掻き出したものの、小林が頭で残したパスから、名倉は速いボールを中央へ。ここで待っていた野村は「結構勢いがあったので、勢いを殺す形で」高速クロスに頭を突き出すと、ボールは勢いそのままに鋭い弾道でゴールネットへ突き刺さります。「昨日、去年のキャプテンの内藤君から『オマエが決めてヒーローになれ』と言われていたので、本当に決められたのが嬉しかったです」と話す野村の選手権初ゴールは貴重な同点弾。わずか8分で両者の点差は霧散しました。
以降の流れは完全に久我山へ。28分には知久がFKをクイックで始め、ボールを引き出した名倉のミドルはわずかにゴール右へ。30分にも惜しいシーン。澁谷のパスから鈴木が狙ったミドルはDFに当たってこぼれ、拾った名倉のシュートはゴールネットを揺らしましたが、ここはその名倉がオフサイドという判定。逆に青森山田も33分に決定機。CBの近藤瑛佑(3年・三井千葉SC)が長いFKを蹴り込むと、高橋が競り勝ったボールを嵯峨理久(2年・ウインズFC)が叩いたボレーはクロスバーを直撃。勝ち越しとは行かなかったものの、やはりセットプレーは確かな脅威に。
34分、35分と続いた原山の左ロングスローは、1本目こそ神谷のゴール左へ逸れるシュートに繋がるも、2本目はDFがきっちりクリア。39分は久我山。澁谷からパスを引き出した内桶のミドルは枠の左へ。40分も久我山。澁谷と内桶が粘り、小林が打ち切ったミドルはDFに当たって枠の右へ。その右CKを鈴木が蹴り込み、ファーで打ち切った山本の左足ミドルを、再び抜群の反射神経で合わせたのは野村。今度の軌道はクロスバーに跳ね返されてドッピエッタとは行きませんでしたが、ノッているCBがあわやという場面を。45分も久我山。内桶、宮原直央(3年・FC多摩)とボールを回し、知久のミドルはゴール右へ外れたものの、「前半は結構自分たちの流れでできた」(山本)「失点してからも落ち着いてゲーム運びができた」(野村)と2人が声を揃えた通り、最初の45分間は久我山が全体のゲームリズムを掌握した格好のタイスコアで、ハーフタイムに入りました。


後半はスタートから青森山田に1人目の交替が。肩に負傷を抱えた嵯峨に替えて、田中優勢(3年・青森山田中)を鳴海との2トップ気味に配し、神谷優太(3年・東京ヴェルディユース)が左SHへ回り、ボランチに高橋と住永翔(2年・コンサドーレ札幌U-15)を並べる4-4-2にシフトすると、流れは大きく変化。50分に神谷が右寄り、ゴールまで約25mの位置から直接狙ったFKは平田にキャッチされましたが、53分にも高橋がドリブルから右へ通し、鳴海のシュートは枠の右へ外れたものの、積極的なフィニッシュを披露。「徐々に後半はボールの動かしも良くなっていった」と黒田監督。ゲームリズムは間違いなく青森山田へ。
57分は青森山田の決定機。右サイドをえぐった豊島祐希(3年・青森山田中)の折り返しはファーでフリーの神谷まで。ここは「ボールが凄く鋭いボールではなかったので、寄せながら相手に打たせた方が自分も弾きやすいかなと思って」距離を縮めた平田が神谷のシュートを体で弾き出すビッグセーブで応酬しましたが、58分に黒田監督は豊島と吉田開(3年・FCクラッキス松戸)も入れ替えると、63分にもセットプレーのチャンス。ピッチ中央右寄り。ゴールまで25m強の位置から、ここも神谷が直接打ち込んだFKはわずかに枠の左へ外れましたが、「前半の出来が良過ぎるとああなるんです」と清水監督。押し返せない久我山。押し込み続ける青森山田。
64分も青森山田。神谷が左へ展開したボールから、田中のクロスをダイレクトで狙った鳴海のボレーは当たらず、平田が冷静にキャッチ。65分も青森山田。左からカットインしながら、神谷が打ったミドルは宮原がわずかに触って枠の左へ。67分も青森山田。左CKを神谷がショートで蹴り出すと、田中のリターンを受けた神谷はミドルにトライ。ボールはクロスバーをかすめ、勝ち越し弾とは行かなかったものの、「左右パワフルなシュートは持っている」と指揮官も評する神谷は、後半だけで早くも5本のシュートを際どい所に打ち込むなど、その能力の一端を発揮します。
久我山の後半ファーストシュートはいきなりの決定機。69分、澁谷を起点に名倉は右へ。独特のテンポでボールを持った内桶は、マーカーを外しながらマイナスへ丁寧なラストパス。3列目から走り込んできた鈴木のシュートはクロスバーを越えてしまい、ピッチもベンチも応援席も頭を抱えたものの、このワンプレーで息を吹き返した技巧派軍団。69分に久我山は小林と戸田佳佑(2年・FC多摩)を、72分に青森山田は鳴海と成田拳斗(3年・帯北アンビシャス)をそれぞれスイッチすると、73分の決定機も久我山。澁谷からボールを受けた名倉は、対峙したマーカーの股を通して中央をぶち抜き、廣末との1対1はゴール左へ外してしまいますが、「自分たちがボールをマイボールにして、ゲームをコントロールすれば絶対に流れを持って来れるんだというのを、常に信じてそれぞれがやっている」(清水監督)久我山が再び奪い返したゲームリズム。
79分は青森山田。神谷の左クロスがDFに当たってこぼれると、至近距離から吉田が打ったシュートはわずかにゴール左へ外れるも、一瞬の隙を見逃さない青森山田の集中力もさすが。80分も青森山田。高橋のパスからエリア内へ潜った成田のシュートは、久我山の1年生CB上加世田達也(1年・Forza'02)が懸命のブロックで阻み、平田がきっちりキャッチ。83分は久我山。右サイドをえぐり切った内桶のクロスを、ニアで掻き出した原山のクリアは右ポストをかすめて枠外へ。お互いに一歩も譲らないまま、ゲームは残り5分とアディショナルタイムへ。
85分は青森山田。原山がこの日"6投目"となるロングスローを投げ込み、常田が競り勝ったボールは「ロングスローも1つのセットプレーとして考えて、メンタル的に嫌がらずに強い気持ちを持つというのを意識していました」という平田がかっちりキャッチ。86分は久我山の決定的なシーン。知久の縦パスを受けた名倉は完璧なスルーパスを左へ。飛び出した澁谷はGKをかわしたものの、腰が回り切らずにシュートは枠の左へ。大きな溜息に包まれたスタジアム。90分に清水監督は3枚目のカードとして内桶を下げて、比留間公祐(3年・横河武蔵野FC JY)をピッチヘ。アディショナルタイムの掲示は3分。ファイナルを巡る180分間のラストバトル。
「誰が出ていてもみんなにチャンスが来るというチーム」(清水監督)の証明がこの土壇場で。その時は90+3分。右サイドで2本続けて鈴木が蹴った2本目のCKがファーヘこぼれると、「山田がCKの時に結構下がるのは何回も見ていて、セカンドボールの所がポッカリ空いていたので、とりあえずこぼれてきたらシュートで終わろうというのは考えていた」山本は左足を強振。このシュートコース上にいた戸田が、「ただ合わせるだけだったけど予測していた」と右足で軌道を変えると、ボールはそのままゴールネットへ吸い込まれます。狂喜のオレンジ。狂乱のオレンジ。劇的過ぎる逆転弾にスタジアムも沸騰。青森山田も吉田と中村圭汰(3年・鹿島アントラーズJY)をすぐさま入れ替え、最後の勝負に打って出ましたが時すでに遅し。埼玉の空に鳴り響いたのはタイムアップのホイッスル。「結果的に逆転できたことで、本当に今年のチームの成熟期を迎えた試合だったと思います」と野村が語った久我山が壮絶な90分間をモノにして、東福岡が待つファイナルへと駒を進める結果となりました。


ゲームの流れを左右したのは後半の立ち上がりから20分間だったと思います。「後半の立ち上がりが大事だと言っていたんですけど、あまり良くなくて相手のペースに持って行かれていた」と山本も言及したように、この時間帯は完全に青森山田の流れ。実際に際どいシーンも多く、久我山にとってみれば、いつ失点していてもおかしくないような展開でした。ただ、「ああいう時間帯に崩れなくなったと。本当に連続して崩れないとか、悪い時間帯は悪い時間帯として受け止めているんですよね。ずっとマイボールでずっと攻め続けているなんてサッカーではありえないと。苦しい時には苦しいなりの戦い方をするべきだと。それをよく理解してくれていると思います」と清水監督が話した、流れを"受け止める"潔さが久我山にはあったなと。「苦しい時間があるのはしょうがないですし、自分たちがずっとうまくやれる時間ばかりの試合は1つもないと思うので、それはうまくできないというのを受け入れて、もう1回1つ1つやっていこうという風に考えを切り替えて、やるべきことを1つ1つ潰していこうと思ってやっていました」と指揮官とほとんど同じようなことを1年生の平田が口にするあたりが、今年の久我山の強さを象徴しているように感じました。いよいよ辿り着いた最後の1試合。「今までと一緒で目の前にサッカーの試合があるというだけで、その試合に勝つという、ただそれだけを意識してやりたいですね」と山本が話せば、「今のチームの流れが本当に良いので、この流れを本当に崩さずに決勝も向かっていければ絶対に勝てると思います」と力強く言い切ったのは野村。"久我山らしさ"と"久我山らしくなさ"を内包した彼らを、全国ファイナルという晴れ舞台が待ち受けています。        土屋

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