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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
それぞれ"連覇"と"二冠"を懸けたビッグマッチ。前回王者の星稜とインターハイ王者の東福岡が対峙するセミファイナルは埼玉スタジアム2002です。
延長戦までもつれ込む前橋育英との壮絶なファイナルを制し、1年前に同じステージで敗れたリベンジを見事に達成。悲願の日本一に輝いた星稜。迎えた今シーズンは9月に河﨑護監督が現場復帰を果たすと、4試合で23得点無失点という堂々たる結果で県予選17連覇を飾り、再び全国の舞台へ。2回戦からの登場となった今大会は初戦で玉野光南を2-1と振り切り、3回戦では中京大中京に1-0で競り勝って、ベスト8まで。勢いそのままに明徳義塾も3-0で粉砕して、4年連続となるセミファイナル進出。昨年は叶わなかった指揮官の胴上げまではあと2勝です。
真夏のインターハイでは並み居る強豪を打ち倒し、市立船橋以来7年ぶりとなる全国連覇を成し遂げた東福岡。ただ、「昨年、一昨年と僕自身としては本当に良いチームを創っていたと思うんですけど、そういう中で結果が出なかった」と森重潤也監督も口にしたように、選手権は一昨年も昨年も揃ってベスト16で敗退するなど、冬の難しさを痛感する2年間に。それでも二冠を目指して挑んだ今大会も、1回戦で遠野に3-0、2回戦で新潟明訓に3-1と、2試合続けて3ゴールを奪う攻撃力を披露。さらに、夏のファイナルと同カードになった3回戦の市立船橋戦は、PK戦で守護神の脇野敦至(3年・West Kids Duel FC)が2本のキックをストップして難敵撃破。クォーターファイナルでも駒澤大学高の抵抗に遭いながらも1-0で乗り切って、埼玉スタジアムの舞台まで。充実の4試合を経て、重要なセミファイナルへ臨みます。埼玉スタジアム2002には今大会最多となる17,383人の大観衆が。楽しみな一戦は星稜のキックオフでスタートしました。
ファーストシュートは東福岡。7分にエリア内へ侵入した三宅海斗(3年・岡山倉敷北中)は、巧みなフェイントでマーカーを外してシュート。ボールはサイドネットの外側に刺さりましたが、レフティが早くも切れ味鋭いフィニッシュを披露。10分にも三宅がタイミングを見計らってスルーパスを通し、抜け出した餅山大輝(3年・ルーヴェン福岡FC)のシュートは枠の右へ逸れたものの、まずは東福岡が惜しいシーンを連続して創出します。
14分も東福岡。中村健人(3年・UKI-C.FC)の左CKに、小田逸稀(2年・サガン鳥栖U-15唐津)が合わせたヘディングはクロスバーの上へ。19分も東福岡。餅山が左へ振り分け、橋本和征(3年・ファジアーノ岡山U-15)が上げたクロスがこぼれると、右足を振り切った小田のミドルはゴール右へ。22分も東福岡。今大会初スタメンとなった藤川虎太朗(2年・サガン鳥栖U-15)が浮き球のスルーパスを送り込み、走った餅山はわずかに届かず、星稜のGK坂口璃久(3年・星稜中)にキャッチされましたが、橋本が躍動した左サイドを推進力に続くヒガシの攻勢。
さて、「まず相手のワイドの所の攻撃をなるべく潰していきましょうということでこの3日間トレーニングしたのと、中盤の3枚に関してもマンツーマンで行こうということで攻撃の芽をそこで潰そうということで指示しました」と河﨑監督が話した星稜は、その守備面でこそ東方智紀(3年・エスポワール白山FC)と岡田勇斗(2年・VIENTO U-15)のCBコンビを中心に粘り強く凌ぎますが、攻撃面では1トップの大倉尚勲(3年・ツエーゲン金沢津幡U-15)とその下に入った加藤貴也(3年・FCフェルボール愛知)になかなか良い形でボールが入らず、カウンターも繰り出し切れない時間が続きます。
36分は星稜。SBの助田航平(3年・伊丹FC)を起点にして、右サイドへ開いた大橋滉平(3年・ガンバ大阪JY)のアーリークロスに大倉が走るも、収め切れずにDFがクリア。38分の星稜はこの試合1本目のCK。大橋が蹴ったキックにファーで岡田が飛び付くも、ボールはゴール左へ。40分は東福岡。中村がラインの裏へ落とし、三宅が右足で叩いたボレーは坂口がキャッチしましたが、惜しいシーンを。直後の40分は星稜。左サイドでボールを持ったキャプテンの阿部雅志(3年・FC四日市U-15)は、インサイドへスルーパス。全力で走ったSBの六田邦宏(3年・星稜中)はDFと競り合いながら、枠の右へ力なく外れるシュートまで持ち込むも、ようやく出てきた星稜の積極性。
東福岡も43分に三宅のスルーパスから、橋本が放ったシュートは東方が果敢に体でブロックしましたが、悪くない形であと一歩というシーンを見せると、スコアが動いたのは前半終了間際の45分。中村が左へ流し、受けた橋本は少し運んでマイナス気味に中へ。ここへ走り込んできた藤川は、1つ持って左へ流れながら左足一閃。ボールは右ポストの内側に当たりながら、ゴールネットへ転がり込みます。「本調子ではないにせよ、この大会を通じて彼なりのパフォーマンスがこの3日間でしっかり上がってきたので、チームエントリー30名の中でコンディション、メンタル、トータル的な所も含めて虎太郎を先発させました」という森重監督の采配ズバリ。東福岡が1点のリードを強奪して、最初の45分間は終了しました。
「前半ゼロで終わって欲しいなという矢先の失点でしたね」と河﨑監督も話した星稜を尻目に、後半も立ち上がりから東福岡がラッシュ。47分に餅山が見せた突進は、飛び出した坂口と東方で何とかブロックしたものの、49分に右SBの林雄都(3年・レオーネ山口FC)が中央へ付けると、収めた三宅のシュートは枠の右へ。53分にも中村の右CKに突っ込んだ小田のヘディングは枠の上へ外れましたが、追加点の香りを漂わせます。
一方、「まだ0-1でしたし、十分勝機はあるので、『もう1回気持ちを切り替えて』と『奪ったボールを足元足元ではなく背後を突け』というような指示をハーフタイムにしました」と河﨑監督。星稜も54分には六田がミドルを狙うも、脇野が確実にキャッチ。逆に55分は東福岡。星稜ディフェンスのクリアが、エリア内で橋本に当たったリバウンドはゴールへ向かい、ここは坂口が懸命にファインセーブ。56分にも橋本の左カットインシュートは坂口がファインセーブで回避。昨年の優勝メンバーでもある守護神が必死に食い止め続けますが、抗えない東福岡の圧力。
2度目の歓喜は57分。中村のパスを受けた三宅が繋ぐと、3列目から駆け上がってきた中盤アンカーの鍬先祐弥(2年・長崎南山中)は少し持って右足一閃。右スミを襲ったボールは坂口も掻き出し切れず、そのままゴールネットへ飛び込みます。どちらかと言えばこのチームにおける中盤のクサビとして、守備面での貢献度が高かった2年生アンカーがこの重要なセミファイナルで大仕事。東福岡のリードは2点に広がりました。
小さくないビハインドを追い掛ける格好となった星稜。61分には右SHの根来悠太(3年・星稜中)に替えて、窪田翔(2年・SQUARE富山FC)を送り込み、何とか苦しい展開の打開を図りますが、63分は東福岡。餅山が右へラストパスを通し、三宅のダイレクトシュートは坂口がキャッチ。69分に河﨑監督は2人目の交替として片山浩(2年・M.SERIO FC)と敷田唯(1年・星稜中)を入れ替え、全体の運動量向上を改めて。70分には窪田がエリア内まで運んだものの、東福岡もCBの福地恒太(3年・ヴィクサーレ沖縄FC)と小田が2枚で挟み込むと難なくカット。フィニッシュまで至りません。
74分は東福岡の好連携。三宅が左へ回したボールを小田が中央へ戻し、中村はトラップから流れるようにヒールパス。1人かわした三宅のシュートはDFに当たって枠の右へ逸れましたが、「連戦が続いてちょっと運動量の所は気になりましたけど、ウチらしいボールを繋ぎながらフィニッシュまで持って行く攻撃はできたのかなと思います」と森重監督。78分に1人目の交替として餅山と毎熊晟矢(3年・FC BRISTOL)をスイッチすると、80分にも橋本のパスを中村はダイレクトで繋ぎ、林の折り返しは中央と合わなかったものの、攻撃の手を緩める気配はありません。
85分も東福岡。橋本のスルーパスに飛び出した毎熊のシュートは枠の左へ。86分も東福岡。インターセプトの流れからそのまま40m近くドリブルで運んだ林は、パスの選択肢を排して自ら坂口にキャッチを強いるシュート。87分に三宅と福田湧矢(1年・小倉南FC)を、88分に「キレは本来もっと持っているプレーヤーだと思うんですけど、しっかり仕事をしたと思います」と指揮官も評価を口にした藤川と高江麗央(2年・ロアッソ熊本JY)をそれぞれスイッチして、ゲームはいよいよ最終盤へ。
89分も東福岡。GKの位置を見た中村が、ゴールまで40m近い距離から狙ったループロングは戻った坂口がしっかりキャッチ。直後の89分も東福岡。ドリブルで持ち運んだ毎熊のシュートは枠の右へ。3分のアディショナルタイムに突入した直後の90+1分も東福岡。中村のパスを引き出した橋本のシュートは坂口がキャッチすると、この一連がゲーム自体のラストチャンス。「星稜の攻撃をいかに止めるかという所で、選手たちは集中してうまく抑えたのではないかと思っています」と森重監督も認めた通り、守っては福地と児玉慎太郎(2年・レオーネ山口U-15)のCBコンビがほぼパーフェクトな仕事を果たし、攻撃陣も2ゴールを奪い切った東福岡が、連覇を達成した第77回大会以来となる17年ぶりのファイナル進出。二冠に王手を懸ける結果となりました。
東福岡の完勝でした。公式記録のシュート数は1対21。ほとんどハーフコートゲームと表現して差し支えないような時間も長く、逆に決定機を仕留め切れないシーンも目立ちましたが、最後までゴールを目指す意欲も十分。「昨年のチームは個の力に少し頼っていた部分があったのかなという中で、今年のチームは個で突出した部分が少ない所で、チームの中でハードワークというか、数的有利を創りながら攻撃も守備もしていこうというチームを目指さなくてはいけないのかなと思い、それができるプレイヤーがエントリーも含めて先発で出ている選手だと思っています」と指揮官も口にしたように、しっかり味方と関わりながらプレーできる選手が非常に多い印象を受けました。これでとうとう二冠まではあと1つ。「本当に3年生が最後までサッカーがしたいという気持ちの中で、1月11日までサッカーがやれることの喜びと幸せを常に持って、昨年のチームを超えた彼らというのは本当に素晴らしいと思うし、自分自身もチームとして何十年も指導者をしている中で彼らに学ぶ部分もいっぱいありましたし、そういうことも含めてメンタル的な所でしっかり戦いに行く、そして最後は悔いのないようにピッチの上に送り出していきたいと思います」と森重監督。280人の大願成就はもうすぐそこです。 土屋
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