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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
7年前も同じクォーターファイナルで激突した両雄のリターンマッチ。東京A代表の國學院久我山と群馬代表の前橋育英が再会する好カードは引き続きニッパツ三ツ沢球技場です。
都内のコンペティションにおいては常に優勝候補と目されるプレッシャーを跳ね除け、堂々たる東京3連覇を達成して今年も冬の全国のピッチに辿り着いた國學院久我山。今大会でも予選ファイナルで戦った西が丘での初戦となった広島皆実戦は、後半に押し込まれる苦しい展開にも内桶峻(3年・GRANDE FC)のセットプレー弾を守り切り、何とか1-0で辛勝すると、2回戦の明秀日立戦は後半終盤に2点のアドバンテージを吐き出す嫌な展開を強いられながら、PK戦をしぶとくモノに。2日前の3回戦は神戸弘陵を相手にやはり1点のリードを追い付かれながらも、澁谷雅也(2年・ジェファFC)の2戦連発弾で力強くベスト8まで。「今年のチームは本当に苦しいゲームを1個1個積み重ねてきたので、またこの選手権の中でも成長させていただけているのかなと感じましたね」と清水恭孝監督も認める成長曲線を描きつつ、ベスト4という新たな歴史を打ち立てるための80分間に向かいます。
今シーズンは新人戦、インターハイ予選と共に桐生第一に屈して準優勝。それでも、3度目の対戦となった選手権予選ファイナルでは10-9という壮絶なPK戦の末に、その桐生第一を破って群馬王者を奪還した前橋育英。昨年あと一歩で届かなかった全国優勝を明確に掲げて挑む今大会は、初戦から2回戦屈指の好カードと謳われた大津とのビッグマッチとなりましたが、2度のリードをいずれも追い付かれる流れの中で、後半アディショナルタイムに途中出場の馬場拓哉(2年・横浜F・マリノスJY)が決勝ゴールを叩き出して、昨年のインターハイ準決勝のリベンジ完遂。3回戦でも帝京第三を相手に、10番を背負う横澤航平(3年・前橋FC)のゴールなど3点を奪う快勝劇を演じて、今年もきっちりベスト8進出。天国と地獄を味わった埼玉スタジアムへと1年ぶりに戻るべく、重要な80分間に臨みます。関東勢同士の対決に、三ツ沢のスタンドには7000人を超える観衆が。全国4強を巡る楽しみな一戦は育英のキックオフで幕が上がりました。
立ち上がりからリズムを掴んだのは久我山。6分に宮原直央(3年・FC多摩)のパスから、澁谷が枠の左へ外れるファーストシュートを打ちこむと、13分にはやはり澁谷のドリブルで左CKを獲得。山本研(3年・横浜F・マリノスJY)の蹴ったキックは、中央でオフェンスファウルを取られて相手ボールになりましたが、「立ち上がりはあまり良くないんですけど、今日は良くてボールをみんな落ち着いて動かせた」と鈴木遥太郎(3年・東急SレイエスFC)も口にした通り、知久航介(2年・浦和レッズJY)と鈴木のドイスボランチを中心に、左右にボールを動かしながらペースを引き寄せます。
一方、「結構細かいショートパスやポゼッションが久我山は上手いので、それを連動したプレッシングで潰していかなくてはいけないなと思っていた」と山田耕介監督も話した育英は、なかなかボールを奪い返すことができずに苦しい展開。19分に横澤が右へ付けたボールを野口がヒールで繋ぎ、佐藤誠司(3年・FC東京U-15むさし)が上げたクロスは、「GKコーチと『相手はサイド攻撃がある』と話していて、クロスの対応というのは少し頭に入れている部分はあったので落ち着いて対処できた」という久我山のGK平田周(1年・FC東京U-15むさし)が冷静にキャッチ。21分にキャプテンの尾ノ上幸生(3年・東京久留米FC U-15)が入れたFKもクロスバーの上へ。なかなか攻撃の形を打ち出せません。
25分は久我山の華麗な連携。澁谷が落とし、今大会は際立った活躍を見せている名倉巧(2年・FC東京U-15深川)が粘って左へ完璧なスルーパス。小林和樹(3年・ジェファFC)が少し中へ潜って放ったシュートはゴールネットを揺らし、ベンチも思わず大喜びしたものの、判定は小林のオフサイドでノーゴールに。それでもらしいアタックでの惜しいシーンに、期せずしてスタンドからもざわめきが。「自分もこんなにできると想像していなかった」と鈴木も驚いた久我山の続く好リズム。
劣勢の育英も前半終盤には手数を。34分には佐藤と野口竜彦(3年・高槻FC)が粘って残し、尾ノ上のミドルは枠の左へ。37分にも佐藤を起点に右SBの綿引康(3年・鹿島アントラーズノルテJY)のクロスに、中央で飛んだ野口のヘディングはクロスバーの上へ。39分にも尾ノ上が右から蹴り込んだFKに、うまく走り込んだ吉田のヘディングはわずかにゴール右へ。ようやく掛かり出したタイガー軍団のエンジン。
すると、40分には育英にビッグチャンス到来。右サイドでボールを持った横澤は、中央にカットインしながら最高のタイミングでスルーパス。3列目から飛び出したボランチの大塚諒(2年・横浜F・マリノスJY追浜)が流し込んだシュートはGKを破りましたが、ここは素晴らしいカバーを見せた宮原が間一髪でクリア。「この選手権に入って気持ちの部分でみんなが本当に精神的にタフになって戦えているので、そういう所での成長という部分が見られていると思います」と言い切るキャプテンが、チームの大きな危機を救うビッグクリア。全体を見れば久我山が優位に進めた前半は、スコアレスのままでハーフタイムに入りました。
「前半はかなり良いゲームを彼らがしてくれたと思います。ほぼ完璧でした」と清水監督も手応えを掴んで迎えた久我山は、後半もスタートから再び主導権を奪取。45分には山本、鈴木とボールを回し、名倉が左へ丁寧にスルーパス。澁谷のシュートは枠の左へ外れたものの、持ち前のパスワークからきっちりシュートまで。51分にも右サイドを駆け上がった宮原が繋ぎ、内桶が中央へ付けると、1人外した知久の左足ミドルはクロスバーを越えましたが、「自分たちのサッカーをやっている中で相手の時間が来たら我慢という意識はしていた」と小林も語ったように、前半終盤の時間帯をやり過ごして、再び久我山が手にしたゲームリズム。
指揮官も「ビックリしました」と笑うゴラッソは52分。左サイドの深い位置から山本が蹴ったボールを、名倉が巧みにヒールで流し、澁谷はすかさず右へ。ボールを持った内桶は縦に少し運ぶと、思い切り良く右足一閃。ドライブの掛かったボールは育英のGK平田陸(3年・ジュビロSS磐田)の頭上を力強く破って、ゴールネットへ吸い込まれます。「なかなかシュートチャンスが創れるゲームになるとは思っていませんでしたので、思い切って振り抜ける状況の時には振り抜かないといけないと言っていました。李(済華)総監督から『振り抜け』と言われていたらしいですね」と清水監督も話した中で、「普段ならあそこは打っていない」という8番の強烈なドライブシュートが見事な先制弾に。流れを引き寄せた久我山が1点のリードを奪いました。
今大会で初めて追い掛ける展開となった育英。山田監督は55分に決断。1人目の交替として佐藤を下げ、ここまで途中出場で2戦連発とラッキーボーイ的な存在となっていた馬場を送り込み、高さを生かすアタックへ完全にシフトすると、直後の56分にはいきなりのチャンス。CBの大平陸(3年・前橋FC)がシンプルに送ったフィードへ馬場が競り勝ち、フリーで抜け出した大塚が狙ったシュートは枠の右へ外れましたが、早くも交替の効果が。59分にも野口のリターンを受けた金子拓郎(3年・クマガヤSC)が、左足で打ち切ったシュートは枠を越えたものの、明らかに前へのパワーが増した育英の逆襲。
ただ、「やることが逆に言えばはっきりしたかなと思います」と清水監督が話し、「1人がチャレンジして、もう1人が後ろをカバーするという統一ができていましたし、たとえその競り合いで負けようが、その後の処理が非常に良かったので全然不安要素はなかったですね」と宮原も振り返った通り、久我山は徐々に相手のパワープレーにも落ち着いてアジャスト。63分に横澤が、65分に吉田が続けて放ったシュートは、どちらもミドルレンジから枠外へ。70分にも左から金子が送ったアーリークロスも、馬場のトラップが大きくなると「GKは最後の砦なので学年は関係なくやっていくのが、3年生もたくさんいる中で試合に出ている自分の義務だと思っている」と話す平田周が確実にキャッチ。育英の掛ける圧力も決定的なシーンには結び付きません。
71分は久我山。名倉がボールを奪い、内桶の折り返しを右に持ち出しながら鈴木が打ったシュートは育英のCB小畑達也(3年・前橋FC)にブロックされるも、完全にこの大会期間中に一皮剥けた感のある名倉が体の強さを前面に押し出してのチャンスメイク。直後に1人目の交替としてその名倉は戸田佳祐(2年・FC多摩)との交替でベンチへ下がりましたが、「特に2年生なんかは、最初の頃なら物怖じしてシュートを打たない場面でもダイレクトでシュートを打ったりとか、今までになかったことがこの選手権を通じて出てきている」と宮原も認める2年生の筆頭株として、大きな存在感を示した71分間に応援席からは大きな拍手が送られます。
73分は育英。野口が左へ丁寧に送ったボールから、金子の左足シュートがクロスバーの上に外れるのを見て、山田監督は2人目の交替を。その金子に替えて、「物凄くシュート力がある子なので、その一発に懸けました」と高沢颯(2年・前橋FC)をピッチヘ解き放つと、76分には左SBも吉田から渡邊泰基(1年・アルビレックス新潟U-15)にスイッチして最後の勝負へ出ますが、77分に替わったばかりの渡邊がクロスを放り込むも、「1試合1試合成長していると思いますし、身長は大きくないですけど元々対人に弱いタイプではないと思うので、凄く冷静にクレバーに競り合いもしていましたし、カバーリングも良くできていたと思います」と清水監督も成長を認める上加世田達也(1年・Forza'02)が馬場に競り勝って力強くクリア。「どのチームも最後になったら必死にやってきますし、最後の5分というのは強い気持ちで臨もうと思っていたので、相手のパワープレーにも動じずにしっかり対処できたかなと思います」と話すのは守護神の平田周。消えていく時間。開いていく新たな歴史の扉。
80+1分に走り切った澁谷と比留間公祐(3年・横河武蔵野FC JY)を入れ替え、ゲームクローズも万全に施した久我山を前に、育英も2分間のアディショナルタイムでチャンスを生み出すことはできず、少し冷たい空気の漂い始めた三ツ沢を切り裂いたのはタイムアップのホイッスル。「精神的にタフになったし、集中力を持って戦えたと思います。最後まで集中して良く頑張ったんじゃないかなと思います」と試合終了直後に大きなガッツポーズを見せた清水監督率いる久我山が、育英という鬼門を堂々突破し、同校初の全国ベスト4へと勝ち進む結果となりました。
「実際に目指していましたけど想像してはいなかったです。来れたら凄いなとは思っていたんですけど、まだ信じられないような感じです」と話した鈴木が、「それでもここ最近は負けない雰囲気がありますね」と続けたように、今の久我山からは簡単に負けないチームのオーラが漂っている印象を受けています。それは、「何か大きな変化はないようなチームだと思っていますし、自分たちのやりたいことは選手権に来る前に完璧に準備してきましたので、その中で信じてやりましょうということですね」と清水監督が話した自分たちの今年のスタイル、言わば「粘り強さとか我慢強さ」(小林)をチーム全体が信じて戦っていることに起因するオーラであることは間違いありません。次はいよいよ久我山にとっては未踏の地である全国ベスト4の舞台。「次の試合は久我山のサッカーというのをより多くの人に見てもらえると思うので、あの舞台で久我山のサッカーをできるというのは本当に楽しみでしかないですね」と平田周が笑顔で語れば、「緊張しないでサッカーが楽しめればなと。それで自分が攻撃のリズムを創れればなと思います」と鈴木も晴れ舞台への意欲を。「新しいことをするつもりは全くありません」と言い切る就任1年目で見事な結果を出した清水監督の下、明確に掲げてきた日本一という目標達成まではあとわずかに2勝のみです。 土屋
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