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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。

その他の試合レポート 2016年01月05日

高校選手権準々決勝 青森山田×富山第一@ニッパツ

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0105mitsuzawa.jpg埼玉スタジアムへと続く扉はもう目の前に。最後の4校へ勝ち残るためのクォーターファイナル。青森山田と富山第一が対峙するビッグマッチはニッパツ三ツ沢球技場です。
続く連続出場は既に19回目。もはや緑のユニフォームは冬の風物詩として認知されている青森山田。プレミアEAST2位という堂々たる成績を引っ提げて乗り込んだ今大会は、初戦で大社相手に2点のビハインドを跳ね返す大逆転勝利を収めると、東北対決となった2回戦では聖和学園を5-0と粉砕。優勝候補対決として注目を浴びた3回戦の桐光学園戦は、やはり2点のビハインドを負いながら、後半アディショナルタイムにセットプレーから劇的に追い付き、そのままPK戦も制してこのステージまで。どうしてもここまでの勝ち方で"持っている"という言葉を使われがちですが、黒田剛監督も「それも90分のプレミアを毎週毎週やってきた成果」と認める彼らが狙うのは、言うまでもなく頂点のみです。
大塚一朗監督と大塚翔(現・関西学院大)の親子鷹で、ラスト国立を飾るドラマチックな日本一に輝いたのは2年前。それから3度の全国出場権は明け渡したものの、再び冬の晴れ舞台へと帰ってきた富山第一。2回戦からの登場となった今大会は日章学園を坂本裕樹(3年・FCひがし)の決勝ゴールで1-0と沈めると、ダークホースの呼び声も高かった矢板中央と対峙した3回戦は前半で先制を許しながらも、後半に粘り強く追い付き、最後は後半アディショナルタイムに柴田丈一朗(3年・カターレ富山U-15)の決勝弾でこちらも劇的にベスト8へ。2年ぶりの戴冠がようやく見える位置まで歩みを進めてきました。球技専用スタジアムであり、素晴らしい雰囲気を持つ三ツ沢のスタンドに集まった観衆は6300人。全国4強を懸けた一戦は青森山田のキックオフでスタートしました。


ファーストシュートは4分の青森山田。右から高橋壱晟(2年・青森山田中)が蹴り込んだボールを、190センチのCB近藤瑛佑(3年・三井千葉SC)がヘディングで叩き、ボールは枠の左へ逸れたものの、いきなり披露した圧倒的な高さ。8分には富山第一も高い位置でボールを奪った柴田が右へ流し、坂本のシュートはDFにブロックされたものの、ハイプレスという狙いの一端を。11分は青森山田。もはやこの冬の"目玉商品"になりつつある原山海里(3年・クマガヤSC)の右ロングスローがゴール前を襲い、近藤のヘディングから最後は住永翔(2年・コンサドーレ札幌U-15)がシュートを放つも、富山第一のキャプテンを託された早川雄貴(3年・NFCマンデーナイトFC)がきっちりブロック。基本的には青森山田がボールを握る中で、富山第一も「入りから悪くはなかったと思っています」と大塚監督も言及したように、お互いがゲームリズムを探り合いながらゲームは立ち上がります。
13分は青森山田。「それを武器にしている所なので、そこでミスをしたら強みがなくなってしまうと思います」と話すGKの廣末陸(2年・FC東京U-15深川)は、その武器のキックを前方に蹴り込み、こぼれを拾った神谷優太(3年・東京Vユース)のミドルは枠の左へ。16分も青森山田。相手ボールを奪った豊島祐希(3年・青森山田中)が右から中へ折り返し、再び神谷が打ったシュートは枠の右へ。18分も青森山田。インターセプトのタイミングで少し持ち上がったCBの常田克人(3年・大宮FC)が右へ振り分け、豊島が狙ったミドルはゴール右へ。19分も青森山田。右から原山がロングスローを投げ入れると、ここは富山第一のアンカーを託された田畠太一(3年・FCひがし)が大きくクリア。豊島の推進力で右サイドを中心に青森山田が攻勢に出るものの、「ロングスローはどうしても仕方ないので、その後の所でいかにプレッシャーを掛けられるかなと考えていた」と大塚監督も話した部分も徹底された富山第一は、早川を中心に相手のアタックを1つずつ確実に凌ぎ、決定的なチャンスは創らせません。
逆に22分は富山第一にセットプレーのチャンス。早川が大きく蹴り込んだFKを柴田が粘って落とし、賀田凌(3年・SQUARE富山FC)が右スミへ収めたミドルは廣末がキャッチしたものの、初めての枠内シュートを。24分に原山が投げた右ロングスローも、田畠が冷静にクリア。25分にここも原山が入れた左ロングスローも、果敢に飛び出した富山第一のGK相山竜輝(3年・FC水橋)ががっちりキャッチ。26分に豊島、鳴海彰人(2年・北海道新ひだか静内中)と繋いだボールを高橋が枠の左へ外し、27分に嵯峨理久(3年・ウインズFC)のパスから住永がわずかに枠の右へ逸れるミドルを放つと、ここから訪れたのは富山第一の時間帯。
28分に柴田を起点に賀田が左から中央へ送り、収めた久保佳哉(2年・SQUARE富山FC)のシュートは常田が間一髪でブロック。その右CKを賀田が蹴り込むと、柴田が戻したボールを賀田が再びクロスを送るも、フィニッシュには至らず。35分にも早川が左のハイサイドへ蹴り込んだフィードを、アンカーの位置から飛び出した田畠がトラップするも、ここもシュートは打ち切れず。続く39分にも左から賀田が上げ切ったクロスに、飛び込んだ坂本のヘディングは枠の左へ。「全体的には良い所を出させないで上手く守備をしていたんじゃないかなと思います」と大塚監督。中盤以降は富山第一が押し戻した前半は、スコアレスのままでハーフタイムに入りました。


後半に入っても手数を出すのは青森山田。44分に豊島のパスを鳴海が落とし、反応した神谷のドリブルには早川が抜群のタックルでしっかり対応。50分には青森山田に1人目の交替が。嵯峨に替えて田中優勢(3年・青森山田中)を送り込み、ボランチに住永と高橋を並べ、左SHに神谷がスライドしつつ、最前線には田中と鳴海が並ぶ4-4-2でさらなる圧力を。51分、原山の右ロングスローがエリア内へ落ちると、神谷が打ち切ったシュートは久保が体の正面で完璧なブロック。52分に右から高橋が蹴ったCKがこぼれ、神谷が放ったシュートは田中に当たってしまって枠の右へ。粘る冨山第一。押し切りたい青森山田。
53分は富山第一。早川がFKを左から放り込むも、常田が大きくクリア。58分は青森山田。住永が左へ振り分け、神谷がグラウンダーで合わせたクロスを、エリア内で田中が収め掛けるも、早川が懸命に体を張ってクリア。59分も青森山田。田中のFKが相山のキャッチに遭うと、黒田監督は60分に2人目の交替を決断。鳴海を下げて、成田挙斗(3年・帯北アンビシャス)を送り込み、前線の顔触れにさらなる変化を。62分も青森山田。左から原山が投げたロングスローは、常田の頭に合うも相山がキャッチ。「神谷が嫌がって左に来ているなとはわかったんですけど、嫌がっているんならそのままやらせておこうかと」と話す大塚監督に鍛えられ、攻められる時間が長い中でも澤泉大地(3年・SQUARE富山FC)と早川のCBコンビを中心に途切れない富山第一の集中力。
62分は富山第一。相山のパントが中央に入り、受けた河﨑輝太(3年・カターレ富山U-15)のトラップは大きくなってしまい、廣末にキャッチされるも、狙い通りの「GKが奪ったらカウンター」(大塚監督)で惜しいシーンを。64分も富山第一。右に流れた坂本のパスから、SBの放生祥季(3年・FCひがし)がカットインしながら放ったシュートは枠の右へ。66分は青森山田の決定機。高橋の左CKに、中央で原山がドンピシャヘッドを打ち込むも、ボールはわずかにクロスバーの上へ。
68分は際どい攻防。原山の右ロングスローを跳ね返した流れから、富山第一のカウンター発動。賀田のスルーパスはDFにカットされましたが、あわやという鋭さが。69分には青森山田に3人目の交替。豊島に替えて吉田開(3年・FCクラッキス松戸)をそのまま右SHへ。序盤こそ豊島に切り裂かれたものの、大塚監督も「本当に粘り強く対応してくれたと思います」と評価した左SBを務める石黒絢心(3年・SQUARE富山FC)が時間を追うごとに冷静な対応を見せたことで、ロングスローも含めた青森山田の"右"を封じることに成功します。
それでも、勝負所を見極めたのは頼れるキャプテン。71分に高橋が左へサイドを変えると、持った神谷はヒールで外へ。「あまり中は見えていなかったんですけど、そこはチームの決め事として中に飛び込んできている選手がいるので、信じてファーサイドにクロスを上げられた」という北城のクロスに、3列目から突っ込んだのは高橋。「凄く打点の高い良いヘッドだったと思います」と指揮官も認めたヘディングが、とうとうゴールネットを揺らします。「完全に数的優位ができていて、背後にスペースもあったので、あそこは『リスクを負ってでも行かないとダメだ』と指示していた」という黒田監督の言葉に、「あの時間帯はずっと相手陣地に入れていて山田に流れが来ていましたし、ここで1点取らないと相手に流れが行ってしまった時に決められかねないなと思ったので、そこはチャンスだと思って上がって行った」と北城も同調。完全に崩した形で青森山田が先制弾をもぎ取りました。
「ヘディングシュートは本当に高かったですよね。早川の所でシュートされているので、アイツが負けたら仕方ないです」と失点シーンを振り返った大塚監督。75分には放生のスローインから、右サイドで縦に運んだ河﨑が際どいクロスを送るも、ファーで原山が何とかクリア。77分には青森山田が最後の交替を。田中に替えて岡西享弥(3年・愛媛新居浜北中)を中盤に送り込み、「ディフェンスの前がポッカリ空かないように」(黒田監督)バイタルを消しながら、取り掛かるゲームクローズ。富山第一も79分に1人目の交替。久保と大江紘丈(2年・カターレ富山U-15)をスイッチして、追い付くための最後の勝負へ。
80分は青森山田。原山がこの日10本目となるロングスローを右から投げ込み、近藤が競り勝ったボールは放生が必死にクリア。直後に高橋が蹴った左CKは相山が冷静にキャッチ。すると、相山はすかさずスローインで味方に付け、運んだ田畠が右から放り込んだアーリークロスはDFがきっちりクリア。80+2分には大塚監督が2人目の交替に着手。GKを相山から久我芳樹(3年・シュートJY FC)に入れ替え、PK戦を見越したスイッチでチームに諦めないメンタルを注入します。
80+3分は富山第一のラストチャンス。右サイドへ丁寧にボールを運び、早川が放り込んだクロスがこぼれると、田畠が打ち切ったミドルは枠の左へ外れ、次に聞こえたのはタイムアップを告げるホイッスル。「ロングスローで注目されている分、それ頼りだと言われているんですけど、それだけじゃないぞというのを見せたいですし、プレミアリーグで戦ってきたプライドもあるので、今日の1-0という勝ち方は本当に良い勝ち方だったと思います」とキャプテンの北城も話した青森山田が、6年ぶりにベスト4進出を勝ち取る結果となりました。


富山第一の健闘が光ったゲームでした。「力のあるチームですからロングスローとかそれだけでも僕らは疲弊させられましたし、総合的に見たら終盤に力を持って行けるだけのチームの総合力は山田にあったと思いますけど、僕は逆に焦らせたんじゃないかなと思っています」と大塚監督も口にした通り、最後は力で押し切られたような格好になりましたが、相山を起点にしたカウンターには十分な可能性を感じましたし、長身選手の多い青森山田のロングスローも含めた圧力に対しても早川はもちろん、メンバー表には166センチと記載されているCBの澤泉大地(3年・SQUARE富山FC)が見せた、自分より背の高い相手に対して臆することなくぶつかっていくメンタリティには心を動かされるものもありました。「選手に感謝したいなと思います。ツラい時期が本当に長くて、どうしても自分たちがやった訳じゃないのに全国で優勝した選手たちというレッテルを貼られて、しかも勝てなくてということで凄く悩んだ時期があったと思うんですけど、それを跳ね返してしっかり人間性の所をしっかり見直して、ここまでやってきたというのはやっぱり称賛に値すると思っています」と大塚監督。日本一を1年生で経験したことで常にそのチームと比較されてしまい、指揮官も「ツラい時期」と称したそれからの2年間を苦しみながら過ごしてきた3年生を中心に、最後の選手権で全国のベスト8まで勝ち進んできたというのは十分に誇って良い成果。2年前の栄冠という"見えない影"とも戦いながら、立派な成績を残した富山第一に大きな拍手を送りたいと思います。         土屋

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