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J SPORTSのサッカー担当がお送りするブログです。
放送予定やマッチプレビュー、マッチレポートなどをお送りします。
第2試合は共に西が丘の激闘を勝ち抜いてきた強豪対決。兵庫代表の神戸弘陵と東京A代表の國學院久我山の対戦は、引き続き駒沢陸上競技場です。
近年代表権を争ってきた滝川第二と神戸科学技術が逆ブロックで潰し合う中、準決勝ではインターハイで兵庫を制した三田学園に2-0で競り勝ち、ファイナルでは芦屋学園をやはり2-0で下して、2年ぶりに冬の全国へ戻ってきた神戸弘陵。激戦のプリンス関西を2位で抜け出して挑んだ12月のプレミア昇格決定戦では、旭川実業とジュビロ磐田U-18を相次いで倒して来シーズンのプレミアリーグ挑戦権も獲得。迎えた今大会も初戦となった2回戦の都市大塩尻戦は、1年生のスーパーサブ竹村文明(1年・FCフレスカ神戸)が決勝ゴールを叩き出してきっちり勝ち上がるなど、絶好調と行って良い状況で22年ぶりの選手権ベスト8を目指します。
「前任者の財産の中でやらせてもらっているので、私は1パーセントか5パーセントでやらせてもらっている」と謙虚に語る就任1年目の清水恭孝監督の下、成立学園や帝京といった難敵を粘り強くねじ伏せ、東京3連覇という偉業を達成して今年も全国の舞台へ勝ち上がってきた國學院久我山。今大会は1回戦でインターハイベスト8の広島皆実を、内桶峻(3年・GRANDE FC)のヘディングで1-0と退けると、2回戦の明秀日立戦は2点を先行したものの、終盤に追い付かれる厳しい戦いを強いられながら、最後はPK戦をしぶとく制して、2年連続で全国ベスト16のステージまで。まずは7年前に記録した最高成績の全国8強を手にするため、勝負の80分間に臨みます。連日のポカポカ陽気にも誘われて、スタンドには第1試合を上回る7620人のサッカージャンキーが大集合。14時10分、神戸弘陵のキックオフで時計の針は動き出しました。
ファーストシュートを放ったのは神戸弘陵。2分にピッチ中央で獲得した、ゴールまで約30mのFK。助走を取った10番を背負う入谷子龍(3年・神戸FC)が無回転気味に狙ったキックはクロスバーを越えましたが、早くも積極的なチャレンジを。10分にも相手の横パスを鋭い出足でインターセプトした左SBの大隅育志(3年・ヴィッセル神戸U-15)が、そのまま持ち上がって中へ戻すと、受けた土井智之(3年・エストレラ姫路FC)のシュートは枠の左へ外れたものの、神戸弘陵がまずは勢い良く立ち上がります。
以降もゲームリズムを掴んだのは神戸弘陵。「足下が上手い感じだったので『一発で飛び込むな』とは言っていた」と久我山のCBを務める野村京平(3年・横河武蔵野FC JY)も話したように、中濱颯斗(3年・神戸FC)と山口翔也(3年・サルパFC)のCBコンビから丁寧に繋ぎ、ドイスボランチの下山祥志(3年・M.SERIO FC)と谷後滉也(2年・COSPA FC)もボールをきっちり引き出しながら、左右に動かすパスワークを披露しながら、そこに「1人が降りて、その降りた所に食い付いた裏を狙うというのを狙っていた」とやはり野村が振り返った、入谷と土井の2トップが巧みな動き出しで連動するなど、フィニッシュには至らない中でもはっきりと打ち出すチームの狙い。
とはいえ、なかなか自分たちのリズムを掴めなくても、焦れずにやり過ごせるのは今年の久我山の強み。「私たちが80分間ずっと主導権を握って、自分たちのサッカーをできるなんてそんな甘い世界ではない」という清水監督の言葉をポジティブに捉える選手たちは、野村と上加世田達也(1年・Forza'02)で組むCBを中心に、高い集中力でエリア周辺はきっちり掃除。ボールはやや持たれる中でも、危ないシーンはほとんど創らせません。ただ、37分は神戸弘陵も入念に準備してきたであろうセットプレー。2人が助走からお互いに見合って蹴るのを止めると、後ろから出てきた入谷が放ったFKはクロスバーにハードヒット。こぼれを叩いた中濱のシュートは宮原が体でブロックしたものの、あわやというシーンに沸き立つ赤の応援席。
前半終了間際の39分に煌めいたのは「練習していないんですけどね」と清水監督も笑う久我山のセットプレー。左サイドでCKを獲得すると、「直前の合宿からキック精度も少しずつ良くなってきていたので、いつもと変わらないフォームでというのは意識してやっています」という山本研(3年・横浜F・マリノスJY)がニアへ蹴り込んだボールに、突っ込んだ小林和樹(3年・ジェファFC)のヘディングは密集をすり抜け、そのままゴールネットへ吸い込まれます。「自分が真ん中に蹴れなかった時に和樹がニアで合わせられるようにというのも話していたので、そこがうまくできて良かったです」とキッカーの山本も納得の表情を浮かべる狙い通りの一撃。苦しい前半を過ごしていた久我山が1点のリードを奪って、最初の40分間は終了しました。
10分間のハーフタイムを挟んで、迎えた後半はあっという間に動いたスコア。キックオフの笛から1分経っていない41分、相手の短いパスをうまくカットした入谷は素早くラインの裏へ。抜群の飛び出しから抜け出した土井がボレーで右足を強振すると、ドライブの掛かったボールはゴールネットへ突き刺さります。やはり仕事をしたのは9番と10番の強力2トップ。神戸弘陵が後半開始早々に早くも追い付いてみせました。
失点後に円陣を創った久我山は同点に追い付かれてしまったものの、「1点取っているというのがあって、1点取られても0-0の状態なので、そこは落ち着いてできたのかなと思います」と野村が話したようにチーム全体に確かな落ち着きが。46分には内桶のパスを引き出した澁谷が、左サイドをドリブルで運びながらクロス。DFに当たってコースの変わったボールは神戸弘陵のGK鈴木悠太(2年・太田F.C)が懸命に掻き出し、詰めた小林のシュートは大隅がブロックしましたが、守備面の安定感も含めて譲らないゲームリズム。
久我山が誇る2年生コンビの躍動は50分。右サイドで執拗に相手ボールをチェイスし続けた名倉巧(2年・FC東京U-15深川)は、一旦ボールを失ったものの、相手のクリアに全力でプレス。名倉に当たったボールがエリア内へこぼれると、ここへ走り込んだのは澁谷。「たまたま自分の所に転がってきただけなので思いっ切り打てたと思います」と振り返る右足シュートは、左のサイドネットへ綺麗に吸い込まれます。「昨日の1点でゴールをより意識するようになりました」という10番が圧巻の2戦連発。「全国大会が始まる前もトレーニングを見ていて、ちょっとキレてきたかなという感じはあった」と指揮官も言及するエースの一発で、久我山が再び神戸弘陵を突き放しました。
またもや追い掛ける展開となった神戸弘陵は、52分に切り札投入。野中歩真(2年・イルソーレ小野FC)に替えて、竹村をそのまま左SHへ送り込み、サイドアタック強化に着手。56分にはその左サイドでCKを獲得すると、入谷のキックを左サイドで拾った大隅がクロスを送るも、鈴木遥太郎(3年・東急SレイエスFC)が確実にクリア。逆に57分は久我山。内桶が右へ振り分け、鈴木遥太郎が枠へ収めたミドルは鈴木悠太がキャッチ。59分も久我山。らしいパスワークから、最後に山本が狙ったミドルは、DFに当たってここも鈴木悠太がキャッチしましたが、「自分たちは結構後半に強いタイプ」と野村も評した久我山が、冷静に時計の針を進めて行きます。
61分に神戸弘陵は2人目の交替を決断。右SHの安達敬祐(2年・CALDIO FC)と児谷拓希(3年・FCディアモ)を入れ替え、サイドの推進力向上を。62分には土井の仕掛けから左CKを奪うと、入谷のキックは野村が力強く跳ね返し、児谷のクロスは平田ががっちりキャッチ。64分には決定機。谷後からのリターンを受け、マーカーと体を入れ替えながら反転した土井のシュートは、しかしわずかにクロスバーの上へ。68分には3枚目のカードを。ボランチで効いていた谷後を下げて、岸本陸(3年・宝塚ジュニアFC)を最前線に送り込み、土井を右SHへ、児谷をボランチへそれぞれスライドさせて、残り10分での勝負に出ます。
それでも手数は久我山。69分には澁谷と名倉が細かいパス交換でエリア内へ侵入し、澁谷のリターンを引き出した名倉はシュートを打ち切れず、小林のシュートもDFに阻まれたものの、この最終盤で華麗な連携を。70分にも中央やや右、ゴールまで25m強の位置から、「自分のキックでチームの状況を変えられたり救えたりするなら、それは凄く良いこと」と話す山本が直接狙ったFKは枠の上へ。71分にも中盤でルーズボールを収めた鈴木の思い切り良いミドルはクロスバーを越えましたが、果敢に目指す3点目へのチャレンジ。直後に清水監督も最初の交替を。内桶に替えて比留間公祐(3年・横河武蔵野FC JY)をボランチへ投入し、鈴木を3トップ下へ、名倉をCFへそれぞれ1列引き上げ、澁谷を右ウイングへ移して、取り掛かるゲームクローズ。
74分は神戸弘陵にとって最後の交替。途中出場の竹村が下がり、長身のベハラノ・ナオキ(3年・ヴィッセル伊丹U-15)を最前線に岸本と並べ、土井と入谷の先発2トップをサイドに張り出させる、実質の4トップで最後の勝負に出ましたが、「昨日はラストの交替でちょっとバタバタしたかなというのがあったので、そういった意味では我慢もしながらゲームの流れを変えないように、『どうやって3点目を取ろうか』と考えていました」と清水監督。「後半の終盤も相手の足が止まっている中でも、自分たちは走れていたのかなと思います」と野村も言及したように、落ちない久我山の運動量。アディショナルタイムの掲示は4分。80+1分には清水監督も勝ち越し弾の澁谷と戸田佳佑(2年・FC多摩)をスイッチして、試合をこのまま終わらせに掛かります。
80+4分に神戸弘陵へ訪れた最後のチャンスはFK。ハーフウェーライン付近から入谷が大きく蹴り込んだボールがこぼれ、上がってきたGKの鈴木悠太がシュートを狙いましたが、きっちり寄せていた鈴木遥太郎がブロックすると、しばらくして駒沢の空に吸い込まれた試合終了のホイッスル。「今年のチームは本当に苦しいゲームを1個1個積み重ねてきたので、またこの選手権の中でも成長させていただけているのかなと感じました」と清水監督もチームの成長を口にした久我山が、同校史上最高成績に並ぶベスト8進出を手繰り寄せる結果となりました。
前述したように2回戦では最終盤に2点を追い付かれ、PK戦で薄氷の勝利を手にした久我山は「残り5分の中で崩れた2回戦の修正というか、子供たちもよくそこで集中力を保ってくれました。ゲームクローズは素晴らしかったと思います」と清水監督が話した通り、前日の教訓を生かした格好で、とりわけ最後の5分間とアディショナルタイムは危なげなく逃げ切りに成功。野村も「11番の背の高い選手が出てきてちょっと『セットプレーは怖いな』と思いましたし、そういう所でやられるのが今年の弱みでもあったんですけど、そこでセットプレーを与えなかったというのも大きかったかなと思います」と手応えを語るなど、シーズンの集大成とも言うべきこの大舞台でも確実にチームとして進化を遂げている様子が窺えます。次の相手は奇しくも7年前に同じ準々決勝で敗れた上州のタイガー軍団・前橋育英ですが、「自分たちは落ち着いて一戦一戦戦ってきているので、前橋育英ですけど自分たちのプレーができれば強豪でもしっかり勝負できると思います」と野村が言い切れば、「連戦になって肉体的にも精神的にもキツい中でやっているんですけど、部員全員の気持ちを背負っているという部分だけはしっかりと持って戦っていきたいと思っています」と山本もチームの一体感を強調。「1つ1つ色々な歴史を塗り替えられる所にチャレンジさせてもらえることは非常にありがたいことだと思っています」と清水監督も言及した、歴史を塗り替えるための一戦も209人の部員全員で戦う覚悟は整っています。 土屋
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